1.岸和田市の相続税申告の特徴
岸和田市は大阪府南部の海沿いに位置し、南北に長い地形をしています。
周辺の市と同様に、大阪市や堺市など都心部のベッドタウンとして機能している都市ですが、全国的に有名な「だんじり祭り」をはじめとして、趣ある城下町、和泉山脈の自然、大阪府内トップの漁獲量を誇る海産物、米などの農産物など、多様な魅力が共存しています。
今回は、そんな岸和田市の相続税申告について詳しく解説していきます。
1-1.岸和田市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、岸和田市を管轄している岸和田税務署、大阪府、全国における相続税申告状況は次の通りとなっています。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
岸和田税務署 管轄エリア | 9.42% | 7.35% | 823万円 |
大阪府平均 | 10.65% | 8.40% | 1,881万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万 |
1-2.課税割合は高くはないが油断は禁物
大阪府31の全税務署管轄エリアで課税割合が岸和田税務署管轄エリアを超えるエリアが約半数となっているため、つい安心してしまうかもしれません。
ただ、課税割合の全国47都道府県ランキングで7.35%に該当するのは、17位の位置にあたります。
全国的に見ると、まだまだ課税割合が高いエリアであることが分かります。
1-3.納付税額は低い
岸和田税務署の相続1件当たりの納付税額は823万円となっており、全国平均や大阪府平均と比較しても非常に低い結果となっています。
相続税がかかる可能性は低くはありませんが、いざかかったとしても税額は比較的少ないということであり、何年もかけて行うような節税対策に力を入れるケースは少ないエリアでしょう。
1-4.岸和田税務署の管轄内で最も栄えている
岸和田税務署は岸和田市、貝塚市を管轄しており、上記の数値は2市の平均値になります。
岸和田市と貝塚市を比較した場合、市街地として栄えているのは圧倒的に岸和田市になります。
都心部に近いのも岸和田市の方であることから、都心部の高所得者層の居住者も多いと考えられ、課税割合を底上げしている側になるでしょう。
岸和田市のみでの課税割合は公表されていませんが、岸和田税務署の7.35%よりも高いものと推測されます。
2.岸和田市の特徴
岸和田市は面積72.72平方キロメートル、人口約20万人の都市で、貝塚市、和泉市、忠岡町に挟まれ、南部は和歌山県に接しています。
路線が集中している北部を中心に市街地が形成され、和歌山県に近い南部は和泉山脈が連なる自然豊かなエリアです。
明治中期以降に、泉州綿織物を主とする紡織工業都市として発展した都市で、現在でも臨海部の埋立地に建設された木材コンビナートや鉄工金属団地を中心に、鉄鋼業や木材製造、機械器具製造など、ものづくりが積極的に行われています。
もっとも、近年の岸和田市は、人口のうち第3次産業に従事している人の割合が70%以上となっており、「ものづくりの街」を目指す市政とは逆の方向に進んでいるようです。
それでは、岸和田市の詳しい特徴とそれが相続税課税へどのように影響しているのかを見ていきましょう。
2-1.北部は電車・南部は車が主な交通機関
市内北部には、大阪都心部まで直通しているJR阪和線と南海電鉄南海本線が2本並行して走っており、難波までは乗り換えなしで30分程度、梅田までは乗り換え1回で50分程となっています。
世界の窓口とも言われている関西国際空港へは、車で15分、電車で20分程度となっており、飛行機を使うことが多い人にはうってつけの居住地といえるでしょう。
都心部へ通勤する高所得者は、電車路線が集中している北部に多く居住していると考えられます。
2-2.中心地は岸和田駅周辺
市の中心地は、南海電鉄南海本線の岸和田駅周辺です。
「岸和田カンカンベイサイドモール」などの商業施設や商店街、市役所などの行政機関も集中しており、利便性が高いエリアとなっています。
居住地としての人気も高く、駅周辺には多くのマンションが建ち並んでいます。マンション住まいの富裕層はこのあたりに集中しているでしょう。
2-3.高級住宅街はないが優良住宅街はある
岸和田市には町名がブランド化しているような高級住宅街はありませんが、五軒屋町、行遇町、春木宮本町、東ケ丘町などは、比較的大きな家が立ち並ぶエリアであり、富裕層が多いようです。
2-4.都市農業には要注意
岸和田市では、米、玉ねぎ、みかん、桃、春菊などの栽培が盛んに行われています。
特に岸和田市包近の桃は、糖度の高さでギネス世界記録に認定され、一躍有名になりました。
農地は地価の低い市内南部に集中してはいますが、住宅地とは比べ物にならない面積になるため、不動産の評価額に注意しましょう。
また、個人事業で農業を行っている人は、事業に使っている預金や機械装置などすべてが事業主の相続財産になる点にも注意が必要です。
サラリーマンの相続よりも相続財産が多くなる可能性が高いということを念頭に置いておきましょう。
2-5.岸和田市の地価
岸和田市の平均地価は1㎡あたり9万5,124円で、大阪府全43位中26位となっています。
岸和田税務署で同じ管轄にある貝塚市は、1㎡あたり6万3,815円で33位となっており、地価に大きな差があることからも、相続税課税の状況にも大差があると想定されます。
市内で最も地価が高いエリアは中心駅となる岸和田駅で、1㎡あたり13万円となっています。
駅から数百メートル圏内にある野田町の一部では23万円にもなるエリアがあります。駅周辺は商業地が中心ではありますが、その中に建っているマンションを所有している人は、資産価値の変動に十分注意してください。
反対に最も地価が低いエリアは、市南部の下松で1㎡あたり8万となっています。
そのうち、和歌山県との県境近くにある大沢町では500円という低さとなっており、岸和田市は南部に行くほどに地価が下がることが分かります。
南部の山辺りに居住している人は、それほど大きな不動産課税は起こらないでしょう。
3.岸和田市の税理士情報
全国には、令和4年3月末日時点で80,163人の税理士がいます。
そのうち近畿税理士会(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県)には15,219人、さらにそのうち、岸和田市と貝塚市の税理士が所属している近畿税理士会岸和田支部には、131人の税理士がいます。
近畿税理士会 岸和田支部 | 人数 |
岸和田市 | 102人 |
貝塚市 | 29人 |
合計 | 131人 |
岸和田税務署の令和元年における相続税申告件数は287件であったことから、税理士1人あたりの相続税申告数は0.45件となり、大阪府全体での0.95件(日本税理士会連合会 平成30年5月発行税理士界)よりは低いものの、都心部以外は0.3件台が多い大阪府内においては、比較的税理士が充足しているエリアといえます。
ただ、岸和田市内には高級住宅街はなく、岸和田税務署の相続1件当たりの納付税額が低かったことから考えても、相続税に強い税理士は非常に少ないでしょう。
それでは最後に、岸和田市の居住者におすすめの税理士探しの方法について解説します。
3-1.圧倒的な税理士数を擁する大阪市
まず、税理士探しの第1候補地としておすすめするのが大阪市です。
岸和田市を含む都心部周辺のベッドタウンに税理士が不足している理由は、大阪市に5,000人を超える税理士が集中しているからです。
高級住宅街を数多く有している大阪市では、岸和田市とは桁違いの相続税申告が頻繁に行われておいることは想像に難くありあません。対応する税理士は、相続税に強いと推定されます。
岸和田税務署エリアの相続税申告は、納付税額が低いことが多いため、大阪府トップクラスの相続税専門税理士に依頼する必要まではないかもしれません。しかし、個人事業で都市農業を行っているなど相続財産が多く、節税対策が必要な場合には、大阪市での税理士が市を強くおすすめします。
自分で事業を行っている方には、事業承継という問題が必ず付いて回ります。
生前に相続について相談しておくことで、事業承継についてもそのままサポートを受けることができ安心です。
中小企業、個人事業主が多い大阪市では、その面においても成熟した税理士が多くいるでしょう。
3-2.堺市もおすすめ
大阪市よりも近い堺市は大阪府第2の都市であり、堺市のみの税理士で構成されている近畿税理士会堺支部は、371人の税理士が所属している大規模な支部となっています。
税理士数はもちろん、富裕層の数も大阪市に比べれば格段に減りますが、相続税がかかるか否かくらいの相続財産であるなど、大阪市のトップキャリアの税理士に依頼するまでもない場合にはおすすめです。
【参考サイト】「税理士登録者数」 | 日本税理士会連合会、近畿税理士会HP、近畿税理士会 岸和田支部HP