認知症保険の目的と活用法

介護

高齢化が進む日本では、それに伴い認知症患者も増えています。認知症になると生活するだけでも様々な支障をきたしかねません。そのため、介護サービスを受ける方もいるでしょう。
ただ、介護サービスは高額な費用がかかってしまうケースも珍しくなく、本人にお金がない場合には周囲の家族にも金銭的負担を強いることにもなりかねません。

そんな時のために誕生したのが「認知症保険」です。認知症保険は最近登場した新しい分野の保険ですが、ここでは認知症保険の目的や活用法についてまとめます。

認知症と認知症患者について

認知症保険が生まれた背景には、日本社会に認知症患者が増加しており、介護・医療サービス面での本人や家族の経済的負担が増加していることが挙げられます。

認知症とは「認知障害の1つ」

認知症は認知障害の1つで、代表的には下記のような病気が挙げられます。

  • アルツハイマー型認知症(認知症の約60%)
  • 脳血管型認知症(認知症の約20%)

認知症になると記憶力が低下し、直前の出来事を思い出すことができなくなります。また過去の記憶もだんだんと失われてしまいます。
また認知症によって妄想を抱いたり、深夜に徘徊する等の行動を起こす場合もあります。

認知症患者は「年々増加傾向にある」

認知症患者は2012年時点では462万人いるとされており、年々増加傾向にあると言われています。つまり、高齢者の内「7人に1人」が認知症患者なのです。
また、厚生労働省の2015年1月の発表では、2025年には日本人700万人超が認知症患者になると予測されています。これは高齢者「5人に1人」という計算になります。そのため、認知症患者のための介護サービスや、認知症患者を支える周囲の家族のためのサポート作りなどが急務となっています。

認知症患者と介護サービス

認知症患者の生活を維持し継続するためには家族の介護だけでは苦しいことが多く、他者による介護サービスが不可欠です。

介護サービスとは?

介護サービスとは、介護士が介護を必要とする人に対してお世話をするサービスのことです。居宅サービスと施設サービスとに分けることができます。この違いは下記の通りです。

  • 居宅サービス:自宅などでの支援・介護
  • 施設サービス:老人ホームなどでの支援・介護

また、介護の必要度合い(要支援、要介護)に応じて様々な支援を受けることができます。

介護サービスの費用について

介護サービス費用は、利用者が1割を負担し、残りの9割を介護保険から給付されます。また施設介護であれば、食費や居住費などの費用も別途発生します。
これらの費用は、介護の必要度合いに応じて異なります。あくまで目安ですが、要支援1(一番軽いレベル)であれば毎月5,000円程度で済みますが、要介護5(一番重いレベル)ですと毎月40,000円弱の費用が必要です。

さらに、実際問題としては在宅サービスをした場合には約220万円/年、施設サービスなら約350万円/年の費用がかかるとも試算されており、実際は目安費用よりも相当高いお金がかかる可能性があります。そのため、万が一、認知症になった場合のために介護サービスを受けられるだけの準備をしておく必要があります。

認知症保険について

認知症保険とは?

2016年3月に太陽生命保険株式会社から、初めて「ひまわり認知症治療保険」という名前の認知症保険が販売されました。数ある保険サービスの中でも新しい商品です。

認知症保険では、器質性認知症(アルツハイマー型認知症など)になり、「時間」「場所」「人物」のいずれかの認識ができなくなったと診断され、その状態が180日継続した際に保険金が支払われます。認知症治療給付金の特則を付加することで、認知症治療給付金が300万円支給されます。保険商品についての詳細は、保険会社のサイトをご覧ください。

【外部サイト】ひまわり認知症治療保険 | 太陽生命保険

他の保険会社でも認知症保険の販売が開始されています。また、「認知症保険」という名前ではなかっとしても、従来の生命保険や医療保険の特約の一つとして、認知症になった場合の保険金支払いを用意している場合もありますので、各社の保険商品をご確認ください。

認知症保険の活用方法とは?

日本では公的介護保険制度がありますが、将来的に認知症患者が増えると予想される中、介護保険だけに頼るのは心細い所があります。今でこそ支給はあるものの、医療介護費用が増加しており、将来どのくらい支給されるかはわかりません。
そこで民間の認知症保険に加入し、万が一のために認知症に備えておくことが有効な活用手段と言えます。

また、認知症になると家族であってもご本人の財産を自由に管理・処分することができなくなります。その場合、家庭裁判所に成年後見人を選任するための申し立てを行い、後見人が選任されると、その後見人が本人の預金口座からお金をおろして介護サービス費用に充てることができるようになります。ただ、仮に選任されても、基本的には本人のための用途以外には自由に使うことができませんし、家庭裁判所に対して報告書の提出も必要になります。

認知症保険であれば指定した受取人が保険金を受け取り、その受け取った保険金は受取人の固有の財産ですので、自由に使うことができます。よって、介護をしてくれるであろう家族に負担をかけないで済むようになります。ただ、保険金が支給されるのは、認知症と判断されてから180日後としばらく期間がありますので、その間の介護費用は工面する必要はあるでしょう。

認知症保険の費用は?

認知症保険は最近できたばかりの保険サービスであるため、他の保険と比べると比較的高い印象を受けます。上に紹介した「ひまわり認知症治療保険」では、保険期間・保険料払い込み期間が終身のケースで50歳男性の場合は月額約5,000円です。

認知症保険はまだ市場に誕生して日が浅いサービスです。これから保険料が安いサービスや保障内容が厚いサービス等も生まれてくると予想されますので、自分に合う保険に加入するといいでしょう。

監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
プロフィール この監修者の記事一覧
この記事が役に立ったらシェアしてください!