事業承継税制の平成25年度改正のポイント

事業承継

中小企業経営者が後継者に事業承継をする際には、相続税制度・贈与税制度が大きな課題となります。この課題に対して、平成21年度から「事業承継税制」を実施し、事業承継をしやすくなるように制度を整えました。
そして、より企業経営者や後継者が事業承継をしやすくなるように、平成25年度に改正され、平成27年度に施行されています。
ここでは、平成25年改正のポイントを解説します。

【参考】事業承継税制:自社株に対する相続税・贈与税の納税猶予

平成21年度の事業承継税制のあらまし

相続税と贈与税の納税猶予制度

事業承継税制は、「相続税」と「贈与税」の納税猶予措置を定めた制度です。この制度は、中小企業経営者が後継者に対して事業承継をしやすくするために平成21年度に施行されました。

猶予できる納税額は、相続税が「最大80%」で、贈与税が「最大100%」となっています。さらに一定要件を満たせば納付免除も認められます。したがって税制措置が整備されれば、事業承継は加速すると考えられていました。

事業承継税制の利用状況(改正前)

ところが、実際に事業承継制度の制度を利用した企業は下記の通り、かなり少ないです。

  • 相続税の納税猶予:521件
  • 贈与税の納税猶予:303件
    ※平成26年2月末時点

こうした現状を省みて、より事業承継税制が使いやすくなるように「平成25年度改正」が行われるに至りました。

平成25年度の事業承継税制改正の6つのポイント

平成25年度に行われた「事業承継税制」の改正による変更点は、大きく6つにわけることができます。

(1) 経済産業大臣の事前確認制度を撤廃

平成25年4月より「事業承継税制」を適用する中小企業は、経済産業大臣の事前確認を必要としなくなりました。これによって、手続きの簡略化につながります。

今までの制度では、後継者を含む相続人等が制度の申請をするにあたって、「経済産業大臣の事前確認を受ける」必要がありました。そして、大臣の認定を受けた会社だけが制度の申請ができます。ただし、この確認は相続税や贈与税の申告期間に行う必要があり、後継者にとって負担になっていました。

そこで、平成25年度改正によって、経済産業大臣の事前確認が必要なくなり、後継者はスムーズに納税猶予の申請手続きをできるようになります。

(2) 対象となる後継者の範囲を拡大

2つ目の改正ポイントとして、納税猶予の対象となる「後継者の範囲を拡大」することになりました。

かつての事業承継税制では、後継者は「現在の経営者の親族に限定」されていました。したがって、親族以外が後継者の場合は納税猶予の制度を利用できません。経営者からすると選択肢が限られていました。

しかし、平成25年度改正によって、親族以外の後継者でも適用可能になり、後継者の引き受け手が広がります。今まで親族に適任者がおらず親族以外への事業承継では税金の問題で躊躇してしまった人も、従業員や関係者等から後継者を選びやすくなります。

(3) 雇用の維持要件を緩和

3つ目の改正点として、雇用の維持要件を緩和しました。具体的には、過去5年間の雇用の維持率を「平均で8割以上」とする内容に変更しました。つまり、ある年度は8割未満になっても適用を受けることができます。

改正以前の事業承継税制の場合は、過去5年間の雇用の維持率を「8割以上」で保つ必要がありました。しかし、近年の景気変動に対応できずに、8割未満になってしまう会社もあります。相続・贈与発生時に対する雇用割合がたった1年でも8割を切ってしまうと、維持要件を満たしていないということで適用できなくなりました。

そこで、この維持要件を「5年間、8割以上維持」から「5年間の平均が8割以上維持」に変更となりました。これにより景気変動があって一時的に雇用が維持できなくても、別の年度で維持できていれば良いことになったのです。

なお、こちらの改正要件は、改正以前から納税猶予の適用を受けている後継者も適用可能です。

(4) 納税猶予打切に対するリスクを縮小

4つ目の改正ポイントは、納税猶予打ち切りに対するリスクを縮小することです。これは具体的には2つあり「利子税の引き下げ」と「免除要件に事業再生も追加」です。

まず、「利子税の引き下げ」についてです。かつての事業承継税制では、納税猶予要件を満たせなくなった場合は、相続税・贈与税の納税に加えて「利子税」を納税する必要がありました。しかし、平成26年1月より、利子税率を「2.1%から0.9%に」引き下げました。また、承継5年以上経過している企業に関しては、「利子税は免除される」ことになっています。

続いて「免除要件に事業再生も追加」についてです。改正以前の免除要件には、後継者の死亡か企業倒産の2つがありましたが、改正後は、民事再生・会社更生等の事業再生時も免除要件に追加されました。これにより後継者は事業を再出発する際の足かせがなくなります。

なお、こちらの変更点も改正以前に申請した企業も適用可能です。

(5) 先代経営者の退任要件を変更

5つ目の改正点は、先代経営者の退任要件の変更です。変更内容として、先代経営者は「有給役員として残留可能」になっており、事業承継後も先代経営者が経営に携わりやすくなりました。

税制の改正前は、申請するためには先代経営者が役員を退任しなければなりませんでした。つまり、実質上は経営に携わることができません。しかし、後継者が育っていない中小企業にしてみれば、先代経営者の影響力が大きいのも事実です。

そこで改正後は、先代経営者が「有給役員として残留できる」ようになっていて、後継者の経営に対してアドバイスができるようになり、後継者も従業員も安心して勤められるようになりました。

(6) 債務控除を株式以外からに変更

最後の改正ポイントは、債務控除方式の変更です。具体的には債務控除を「株式以外の財産から行う」ことになり、納税猶予制度の効果を最大化できます。

今までの納税猶予では、先代経営者の葬式費用等を株式から控除する方式が採用されていました。その結果、猶予される納税額が少なく算出されることになり、これではせっかくの猶予制度を最大限に活用できませんでした

そこで25年度改正によって、債務控除を「株式以外の相続財産」から控除することに変更しました。これにより猶予される納税額に控除分が加わり、納税猶予制度の効果が高くなりました。

 

事業承継税制の適用に当たっては、複雑な要件がありますので、具体的検討をされたい場合は税理士にご相談ください。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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