一般動産の相続税評価について
相続税評価というとどうしても不動産が注目されますが、自動車や被相続人のコレクション、美術品など一般動産もその種類が多岐に渡る重要な課税対象です。
では、そういった一般動産は相続税においてどのように評価されるのでしょうか?
今回は一般動産の相続税評価について解説します。
目次
1.一般動産って何?
1-1.相続税における動産の区分
財産は不動産・動産・債権・無体財産の4つに分かれます。
動産とは、その漢字の通り動く財産です。土地や建物などの不動産以外で形があるものはすべて動産です。 さらに動産は、財産評価基本通達では次の5つに区分されます。
- 一般動産
- たな卸商品等
- 牛馬等
- 書画骨とう品
- 船舶
1-2.一般動産とは
一般動産とは具体的には、事業に使われている自動車、機械装置、工具器具備品や、家庭用に使われている自動車、家具家電、衣服などです。コップやお皿など家の中にある生活用品は、ほとんどが一般動産になるので、その種類は多岐に渡ります。
ただし、空調設備、エレベーター、給排水設備などは建物に付随している物であるため、建物付属設備として別途評価され、一般動産には含まれないので注意しましょう。
2.一般動産の評価単位と評価方法
それでは今回の本題である、一般動産の評価についてみていきましょう。
2-1.評価単位
一般動産の評価は原則として、1個または1組ごとに行います。 1組とは複数の物が合わさることで、最大の能力を発揮する物のことをいい、例えば、カップとソーサー、ソファとオットマンなどです。
ただし、一般動産はその種類がとにかく多いため、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等でコップなどその1つ1つを評価していくのは気が遠くなる作業になってしまいます。
そこで、1個または1組あたりの評価額が5万円以下の物に限っては、1世帯、1農家、1旅館などごとに評価することが認められています。
2-2.評価方法
一般動産の評価は原則として次の金額を参考にしながら評価します。「参考に」となってはいますが、実務上ではこれらの金額をそのまま評価額とする場合が多いです。
- 売買実例価格
市場における実際の取引価格 - 精通者意見価格
その財産に関する専門家の鑑定結果などの価格
これらの金額が明らかでない場合には、その一般動産の課税時期における新品小売価格から、経過年数に応じた減価分を控除した金額が評価額となります。この場合における減価償却方法は定率法によります。
2-3.【参考】2008年の財産評価基本通達改正
一般動産の評価方法は2008年に改正され、前項で解説した評価方法になりました。
2007年12月31日以前 | 調達価格 (その課税時期において同程度の中古品を取得するための金額相当額) |
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2008年1月1日以降 | 売買実例価額、精通者意見価格等を参考にして評価 |
改正の背景には、インターネットの普及によって納税者でも簡単に取引価格の把握が可能となったことが挙げられます。一般動産の評価方法もそれに応じて、現在の方法に簡便化が図られました。
3.評価の具体例
3-1.自動車
自動車は市場価格が充実しているので、所有している自動車の車種や走行距離などに応じた売買実例価格を簡単に把握することができます。
中古車買い取り業者のホームページから査定をしたり、中古車オークションなどで同じような条件の自動車と比較すると良いでしょう。
ただし、新車を購入する場合の下取り価格には新車値引きも含まれているので、動産評価には参考になりません。注意しましょう。
3-2.コレクション品
フィギュアや切手など、趣味でコレクションしているものの中には、意外にも高額な価値があるものが含まれている場合があります。
比較的多く流通しているものである場合には、ネットオークションやスマホのフリマサイトなどで売買実例価格を調べることができます。
レアな品の場合には、専門店に持っていき買取価格の査定をしてもらうと良いでしょう。
4.課税されない一般動産もある
数ある一般動産の中には、課税対象外のため財産評価をする必要がないものがあります。
4-1.祭祀財産
祭祀財産とは、仏壇、仏具、墓地、墓石など祖先を祭るための財産のことをいいます。この他にも神棚などの日常的に礼拝をしているものも含まれます。
これらの一般動産に関しては国民感情を考慮すると、財産評価をして相続税を課することはなじまないと考えられるため、課税対象外となっています。
ただし、祭祀財産であっても商品、骨とう品、投資目的などの理由で所有している場合はこれに該当しません。財産評価をして相続税の課税対象とする必要があります。
4-2.美術品
歴史的価値がある美術品などの一般動産を、相続税の申告期限までに国や地方公共団体、特定公益法人に寄付をした場合については、相続開始時点で所有していても課税対象外となります。
まとめ
一般動産とは、自動車や家具家電など一般的に「物」とされるものが該当します。
その評価は、売買実例価額や精通者意見価格等を参考にする方法で、不動産に比べて容易に計算できますが、その種類の多さには要注意です。 1つ数万円でも一般動産を合計すると数百万単位になる可能性もあるからです。
相続税対策の際には、動産の存在も忘れないようにしましょう。