図解!相続税申告書の書き方

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相続税申告を人生で何度も経験することはないため「相続税申告は難しい」と思われていないでしょうか?

確かに、複雑な土地や非上場株式の評価は専門家でなければ相続税評価の計算が難しい場合もありますが、相続税申告書のルールさえ理解すれば自分で相続税申告書を作成して税務署に提出することが可能です。

ここでは、相続税申告書の書き方についてご紹介します。

1.相続税申告書作成の基本的な流れ

相続税申告書は第1表から第15表まであり、その他に付表まで合わせるとその数は50枚以上になります。

また、第1表から順番に作成していくわけではなく、全ての帳票を使用するわけでもないため、初めて相続税申告書を作成する方はどこから手をつけてよいのか分かりにくい構造になっています。

ここでは、相続税申告書の作成を次の4つのパートに分けて見ていきます。

手順➀ 相続財産及び負債の記載

相続税申告書作成では、まず、相続財産及び負債の記載を行います。

この帳票を作成する前に財産と負債の洗い出しを行い、相続税評価額を算出しなければなりません。財産が多い場合は、この財産負債の洗い出しと相続税評価額の算出が一番重要になります。

使用する申告書

  • 第9表 生命保険金などの明細書
  • 第10表 退職手当金などの明細書
  • 第11表 相続税がかかる財産の明細書
  • 第11・11の2表の付表1 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書
  • 第13表 債務及び葬式費用の明細書
  • 第15表 相続財産の種類別価額表

手順②  相続税総額の計算

相続財産及び負債の計算を基に相続人が全員で納める相続税の総額を求めます。

使用する申告書

  • 第1表 相続税の申告書
  • 第2表 相続税の総額の計算書

手順③ 税額控除及び相続税の加算の計算

相続税では「配偶者の税額軽減」など、納める相続税額を減らすことができる制度があります。

一方、一定の状況では相続税に加算される税額が発生することもあります。ここでは、税額控除及び相続税の加算の計算を行うための帳票を作成します。

使用する申告書

  • 第4表 相続税額の加算金額の計算書
  • 第5表 配偶者の税額軽減額の計算書
  • 第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書
  • 第7表 相次相続控除額の計算書

手順④ 相続税額の計算

手順①~③に基づいて最終的な各相続人の相続税額の計算を行います。

手順➀ 相続財産及び負債の記載

相続財産と負債を記載します。

第9表から第15表を使用しますが、必ず作成する帳票と状況により作成する帳票があります。

➀-1.必ず作成しなければならない申告書

相続税申告書で必ず作成しなければならない帳票は、第11表・第13表・第15表になります。

記入方法を見ていきましょう。

第11表 相続税がかかる財産の明細書

相続財産を記載し、相続した人を記入する帳票です。

①「財産の明細」

➀には、相続財産の種類・細目などの詳細を記載します。財産の詳細を種類ごとに記載します。財産の種類と明細、相続税評価額を記入し、細目ごとに「小計」、種類ごとに「計」を入れます。

「価額」の欄には相続税評価額を記載します。

②「分割が確定した財産」

②には「財産の分割状況」を記載します。対象の相続財産を誰がどれだけ相続するのかを記載します。
共有持分で遺産分割を行う場合は、相続人の氏名と相続する財産の価格を二段書きします。

③「遺産の分割状況」

③には、遺産分割の状況を記載します。遺産分割が終わっている場合、または一部終わっている場合には、遺産分割が行われた日を記載します。

 

第11表の下部には、②の分割が確定した財産を各人ごとに集計し、合計額を記載します。

第13表 債務及び葬式費用の明細書

借入金や未払金などの債務と葬式や葬儀などに支出した費用を記載します。

これらは「マイナスの財産」になるため、相続税の計算では相続財産から差引くことができます。

債務の明細書

債務の明細には、債務の種類ごとに記載します。主な債務の種類には、次のようなものがあります。

  • 公租公課(固定遺産税や住民税など)
  • 未払金(カードの支払いや病院の入院代など相続発生時に支払いが終わっていないもの)
  • 銀行借入金(銀行からのローンなど)
  • 買掛金(事業を行っている場合)
  • その他の債務(上記以外の債務)
    など

 

葬儀費用

葬式費用には、次のような費用を記載します。

  • 通夜、告別式に際し葬儀会社に支払った費用やその飲食代
  • お寺、神社、教会などへ支払ったお布施、戒名料、読経料など
  • 埋葬、火葬、納骨にかかった費用
  • 通夜や告別式の会葬御礼費用
    など

申告書の下部では、債務と葬式費用を各相続人ごとに集計した金額を記載します。

第15表 相続財産の種類別価額表

第15表では、第11表で記載した財産と第14表で記載した債務と葬式費用の種類別の合計額を記入します。転記もれがないように注意しましょう。

この帳票では、各人が相続した財産債務の合計と全体の財産債務が分かります。

➀-2.状況によって必要な申告書

次の申告書は、必ず作成しなければならないものではなく、死亡保険金控除や小規模宅地等の特例などを利用する場合に必要になる帳票です。

これらの申告書を作成しなければ控除や特例を受けることができませんので、対象になる場合は忘れないように作成しましょう。

第9表 生命保険金などの明細書|死亡保険金の受取りがある場合

生命保険の死亡保険金には、相続税の優遇措置があります。以下の非課税枠があり、次の帳票でその非課税枠の計算を行います。

生命保険の非課税枠

 500万円 × 法定相続人の数

以下を記入します。

  • 保険金の支払い会社と住所
  • 支払額
  • 保険金の受取人

第9表の下部では、死亡保険金の非課税金額を計算します。

非課税金額は、受取った保険金の総額について均等に割り当てることになります。

受け取った保険金が1つの場合は、受け取った保険金から非課税金額を差し引き、残額に相続税が課税されることになります。

第10表 退職手当金などの明細書|死亡退職金の受取りがある場合

死亡退職金についても、死亡保険金と同様に相続税が課税されない非課税枠があります。

 

第10表は、第9表と同じ構成の申告書になっています。上部に退職金の支払先と支払金額、受取人を記入します。

下部では、退職金の以下の非課税枠と課税される退職金の額の算定を行います。

非課税枠を超える退職金が支給された場合に相続税が課税されます。

退職金の非課税枠

500万円 × 法定相続人の数

第11・11の2表の付表1|小規模宅地等の特例を利用する場合

相続税の計算では、小規模な宅地について一定の要件を満たす場合に相続税評価額を最大80%減額できる特例があります。この特例を受ける場合には、次の申告書を作成する必要があります。

第11・11の2表の付表1の帳票は、宅地を居住用に利用しているのか事業用に利用しているのかで控除額が異なり、帳票が複雑なため、ここでは簡単に触れる程度にします。

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手順② 相続税総額の計算

第15表で記載した全体の財産債務の金額をもとに相続財産にかかる相続税の総額を算出します。

第1表 相続税の申告書

第1表の上部を使用して課税価格を計算します。

 

第2表 相続税の総額の計算書

第1表で課税価格を算出し、第2表で相続税の総額を計算します。

基礎控除額を課税価格から差引き「課税遺産総額」を求め、課税遺産総額を法定相続分で按分します。

各人の按分額に相続税率を乗じ相続税額を算出します。各人の相続税額を合計したものが「相続税の総額」になります。

詳しくは、以下の関連記事を是非ご一読ください。

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第2表で求めた相続税の総額を基礎に各人の相続税の納付額を計算していきます。

手順③ 税額控除及び相続税の加算の計算

相続税の総額を求めた後は、各相続人が受けられる税額控除や相続税に加算する金額を求めていきます。主な税額控除と相続税に加算する金額を見ていきましょう。

③-1.第4表 相続税額の加算金額の計算書

被相続人の配偶者や一親等の血族以外の人が財産を相続する場合は、その人の相続税額に20%の税額が加算されます(2割加算制度)。

対象になる相続人がいる場合には、第4表を使用して加算額の算出を行います。

③-2.第5表 配偶者の税額軽減額の計算書

相続人に配偶者がいる場合には「配偶者の税額軽減」を受けることができます。

配偶者の税額軽減」とは、配偶者が相続する財産の額が1億6,000万円または法定相続分までは相続税が課税されない制度です。節税効果が高いため、相続税申告で頻繁に利用されます。

申告書の提出が適用条件となっているため、適用を受ける場合は作成が必要です。

③-3.第6表 未成年者控除額・障害者控除額の計算書

未成年者や障害者が相続人にいる場合に使用する申告書です。

相続人が未成年者の場合は、以下の税額控除ができます。障害者の場合は、一般障害者と特別障害者の場合で控除額が異なりますので、よく確認しましょう。

(20歳 - 相続開始日の未成年者の年齢)× 10万円

未成年者が相続人となった場合、相続税を一部控除することができます。未成年者が相続人として残された場合、働くことも難し…[続きを読む]
障害者が相続人となった場合、相続税を一部控除することができます。障害者が相続人として残された場合、状況によっては働く…[続きを読む]

③-4.第7表 相次相続控除額の計算書

10年以内に支払った相続税があった場合は、支払った相続税の一部をこの相続税申告で控除することができます。

この控除をうける場合には、前回の相続税申告書の控えが必要になります。

手順④ 相続税額の計算

税額控除及び相続税の加算の計算を終えたら、各人の相続税額の算出を行います。相続税額の算出は、第1表を使用して行います。

第1表 相続税の申告書

各人が相続する財産債務を記入し、法定相続分ではなく総財産のうち各人の実際に相続する財産の割合を求めます。求めた割合を相続税の総額に乗じることで各人の相続税額の算出を行います。

上記申告書を例に相続税額の算出してみましょう。

各相続人の取得する財産が全体の財産に占める割合を計算

田中二郎氏(相続人)が相続する正の財産(プラスの財産)から負の財産(債務及び葬式費用)を差し引いた純の財産が「全体の純の財産」に占める割合を計算します。

正の財産48,253,311円(①)-負の財産2,749,441円(③)=準の財産45,503,870円 (④)

⇒千円未満切り捨て 45,503,000円(⑥)

※ 数式の中の括弧内の数字は、「財産を取得した人」欄の数字を指します。

45,503,000円 ÷ 全体の純の財産81,165,000円(⑥)=0.56062342(⑧)

※ 数式の中の括弧内の数字は、「各人の合計」欄の数字を指します。

相続人個人の相続税額を算出

相続税総額に上記で求めた割合を乗じて個人の相続税額を算出します。

3,474,700円(⑨)×0.56062342(⑧)=1,947,998円

⇒百円未満切り捨て 1,947,900円(⑨)

※ 数式の中の括弧内の数字は、「各人の合計」欄の数字を指します。

田中二郎氏(相続人)の個別の相続税額は1,947,900円となります。

第1表の記入が終わると相続税申告書が完成します。税務署へ相続税申告書を提出する際は、ここまで使用した第1表~第15表までの申告書と財産の相続税評価計算の基になる資料、相続人がわかる戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書などの多くの書類を税務署に提出しなければなりません。

また、相続税の納付も申告期限内に行わなければなりませんので注意が必要です。

まとめ

今回は「相続税申告書の書き方」についてご紹介しました。

相続税申告書は、あまり馴染みのない申告書ですが、ルールさえ分かれば決して自分で作成することが難しい申告書ではありません。評価の計算が難しい財産がない場合は、税理士に依頼することなく申告書を作成することも可能です。

ただし、控除や特例を利用する場合や相続人の関係が複雑なケースなどは、専門家でなければ解決できないことがあります。相続で不安を抱えている場合は、一度税理士に相談することをおすすめします。

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