震災(災害)で被害を受けたときの相続税・贈与税の軽減・減免制度

東日本大震災

2016年4月14日21時26分と2016年4月16日1時25分に熊本県熊本地方を震源とする大きな地震が発生し、周辺各地に大きな被害が生じました。今もなお余震が続いており、予断を許さない状況となっています。約5年前の2011年3月11日には東日本大震災が発生し、死者・行方不明者が約18,500人、建物の倒壊は全壊・半壊は合わせて約400,000戸にも達しました。日本各地には地震を引き起こす断層が点在しており、全国どこでも地震が発生してもおかしくない状況となっています。

ひとたび地震が起きると、建物の倒壊や土砂災害、火災など、個人が所有する財産も甚大な被害を受けます。その救済のため、災害減免法により、相続税・贈与税には、震災(災害)で被害を受けたときの軽減・免除制度があります。

なお、相続税と贈与税のそれぞれ軽減される条件については、ほぼ同じですので、以降は相続税に絞って記載します。また、本記事は、平成27年4月1日時点の法令に基づいていますが、災害減免法は改正されることがありますので、必ず最新の情報をご確認ください。

相続税の軽減・免除の条件

次の2つの条件のどちらかに該当する時が相続税軽減の対象となります。

(1) 相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(債務控除後の価額)のうち、被害を受けた部分の価額(保険金、損害賠償金等により補てんされた金額を除きます。)の占める割合が10分の1以上であること。

(2) 相続税の課税価格の計算の基礎となった動産等の価額のうち、動産等について被害を受けた部分の価額(保険金、損害賠償金等により補てんされた金額を除きます。)の占める割合が10分の1以上であること。

(注)動産等とは、動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産(土地及び土地の上に存する権利を除きます。)及び立木をいいます。

条件(1)は相続財産全体に対して被害部分の割合が10分の1以上かどうか、条件(2)は建物・車両・家財などの主に動産に対して被害部分の割合が10分の1以上かどうかを判定しています。震災では、土地よりも、建物・車両・家財などの動産の被害のほうが大きいことに考慮して、条件(2)が設けられているものと考えられます。また、相続財産に現金や株式が多くて相続財産全体で見たら条件(1)に当てはまらない場合でも、建物・車両・家財だけに限って条件(2)に当てはまれば適用を受けられることになります。

相続税の軽減・免除の内容

①申告期限前に被害を受けた場合と、②申告期限後に被害を受けた場合とで、相続税の軽減・免除の内容が異なります。

①申告期限前に被害を受けた場合

まだ相続税の申告を終えていませんので、本来の相続財産の価額から、被害を受けた部分で、保険金・損害賠償金等で補てんされなかった部分の価額を差し引いて、再度、相続税の計算をします。

修正後の相続税の財産の価額=相続財産の価額-被害を受けた部分の価額
「相続財産の価額」について、小規模宅地等の特例などの特例の適用を受けている場合は、特例適用後の価額となります。
「被害を受けた部分の価額」について、受け取った保険金・損害賠償金を除きます。

相続税の申告書に、被害の状況や被害額等を記載し、原則として申告期限内に提出します。

②申告期限後に被害を受けた場合

相続税の申告は終わったが、延納でまだ払っていない相続税がある場合です。普通に現金一括で納税済みの場合は、適用を受けられません。
免除される相続税額は次の式で計算されます。

免除される相続税額=被害のあった日に納付すべき相続税額×(被害を受けた部分の価額)/(相続財産の価額)

すでに相続税額は決まった後ですので、改めて相続税額を計算し直すことはせず、被害を受けた部分の割合分だけ相続税が免除されます。
被害の状況や被害額等を記載した申請書を、災害のやんだ日から2ヶ月以内に、税務書に提出します。

ここで「被害のあった日に納付すべき相続税額」がポイントですが、この金額には延滞税や滞納している金額は含まれません。つまり、相続税の申告はしたけれどまだ払っていない、あるいは、もう全額払ってしまっている場合は、相続税免除の適用を受けられません

では、どんな時に適用を受けられるのかですが、次の場合が該当します。

・延納中の場合 → 被害のあった日以降に分納期限が到来する税額
・延納または物納を申請中 → 延納又は物納の許可前の徴収猶予中の税額
・農地等についての納税猶予の特例の適用を受けている途中 → その税額

それぞれ特殊なケースであり、現金一括で支払う一般的なケースでは、適用を全く受けられません。

震災(被害)にあった日が、申告期限前なら相続税が軽減されますが、申告期限後だと全く適用されないというのは不公平ではないかと感じられるかもしれません。申告期限の日に建物が無事だったとしても、その後に被災して建物が倒壊してしまえば価値がなくなってしまうからです。

現在の相続税法では、原則、相続財産の価値は相続発生時の時価で評価することになっていますので、致し方ないとも言えますが、申告後、一定期間内に被災した場合も考慮して災害減免法の何らかの改正が望まれるところです。

被害を受けた部分の金額の計算

被害を受けた部分の価額(金額)の計算は、それぞれの財産ごとに、被害割合をかけて計算します。

被害を受けた部分の価額=被害を受けた相続財産の価額×被害割合

次に、被害割合の計算ですが、被害額が明らかな場合と不明な場合で計算方法が分かれます。

被害額が明らかな場合の被害割合の計算方法

「被害額(保険金・損害賠償金を除く)」を「被害があったときの時価(被害を受ける直前の価額)」で割った値となります。

被害割合=(被害額)/(被害があったときの時価)

被害額が不明確な場合の被害割合の計算方法

保険金等が支払われていない場合

別表1被害割合表に従います。

保険金等が支払われた場合

次の計算式になります。

被害割合=(被害があったときの時価×被害割合-保険金等の金額)/(被害があったときの時価)

被害があったときの時価の計算

「被害があったときの時価」については、建物、家庭用財産、車両、その他の財産の場合によって計算方法が異なります。
取得価額が明らかな場合は、取得価額から減価償却費を差し引きます。取得価額が不明確な場合は、別表に従います。
ここでは、詳細な計算と表は省略しますので、詳細はこちらをご確認ください。

【参照】国税庁:相続税又は贈与税の災害減免措置のあらまし

別表1被害割合表の損壊のみ抜粋します。

区分被害区分被 害
割 合
摘要
損壊全壊 ・流出 ・埋没 ・倒壊100%被害建物の残存部分に補修を加えても、再び建物として使用できない場合をいいます。
(倒壊に準ずるものを含む)建物の主要構造部の被害額がその建物の時価の50%以上であるか、損失部分の床面積がその建物の総床面積の70%以上である場合をいいます。
半壊50%建物の主要構造部の被害額がその建物の時価の20%以上50%未満であるか、損失部分の床面積がその建物の総床面積の20%以上70%未満で残存部分を補修すれば再び使用できる場合をいいます。
一部半壊5%建物の主要構造部の被害が半壊程度には達しないが、相当の復旧費を要する被害を受けた場合をいいます。

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