贈与税がかからない場合とは?生活費、教育費など
通常、年間で110万円(基礎控除額)を超える贈与を受けた場合は「贈与税」が課されます。ただし、贈与税の課税対象にはな…[続きを読む]
生前贈与をすると、相続までに遺産を減らすことができるため、相続対策としては最も一般的な方法です。しかし、贈与税がかかるのが難点です。
ご存知の通り、贈与税は贈与者から受贈者へ贈与があったときに受贈者に発生する税金です。
では、具体的に現金500万円を贈与すると、贈与税はいくらかかるのでしょうか。また、この贈与税をかからないようにすることはできるのでしょうか。
ここでは、現金500万円を例に取り、贈与税について考えてみたいと思います。
目次
贈与税の課税方法には、暦年贈与と相続時精算課税制度があり、受贈者が贈与者ごとに贈与税の最初の申告をする際に選択します。
そこで、現金500万円にはいくらの贈与税がかかるのか、各々の方法で計算してみましょう。
暦年贈与では、年間110万円の基礎控除を超える部分に贈与税を課税します。計算式にすると、次の通りです。
(贈与額-基礎控除110万円)×贈与税率-控除額=贈与税
暦年贈与には一般税率と特例税率の2つの税率があり、特例税率は、一般税率より贈与税額が少なくなるように設定されています。
例えば、2024年3月12日に18歳になった子供が、同年の4月2日に祖母から500万円の現金を贈与されると、子には48万5,000円の贈与税が課税されます。
特例税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
【出典】「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」|国税庁
(贈与額500万円ー基礎控除額110万円)×15%―10万円=贈与税48.5万円
例えば、父親から未成年者の子へ現金500万円を贈与すると、子には次の通り53万円の贈与税がかかります。
一般税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
【出典】「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」|国税庁
(贈与額500万円ー基礎控除額110万円)×20%―25万円=贈与税53万円
相続時精算課税制度は、18歳以上の子や孫が60歳以上の父母や祖父母から贈与を受けたときに、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出すると利用できる制度です。
相続時精算課税制度では、累計2,500万円までの贈与を非課税とし、2,500万円を超えた部分に一律20%の贈与税が課されます。
したがって、相続時精算課税制度では、現金500万円を贈与する前に2,000万円を超える贈与をしていない限り、贈与税はかかりません。
生前贈与を利用して相続財産を減らせたとしても、相続時には、贈与した財産を一定の条件で相続財産に持ち戻して相続税を計算します。
ただし、贈与税を支払った部分については、贈与税額控除として相続税から差し引くことができます。
暦年贈与には「生前贈与加算」があり、贈与者に相続が開始すると、相続前一定期間内の贈与すべてを相続財産に加算して相続税を計算します。
2023年度の税制改正で、この一定期間が3年から7年へ延長されました。2024年1月1日に発生する相続から徐々に延長され、2031年1月1日以降に発生する相続では、相続開始前7年間の贈与がすべてが生前贈与加算の対象となります。
相続時精算課税制度を利用すると、その名の通り、贈与者の相続開始時に生前贈与した財産すべてを相続財産に持ち戻して相続税を計算します。
しかし、2023年度の税制改正では、この制度にも年間110万円までの基礎控除が追加され、相続時精算課税制度では、基礎控除内の贈与が相続財産に加算されないことになりました。
現金500万円の生前贈与を非課税で受け取る方法もあります。
2023年度の税制改正により、暦年贈与、相続時精算課税制度いずれにも、年間110万円の基礎控除が存在します。
基礎控除を超えない範囲で、500万円を少なくとも5年に分けて贈与すれば、贈与税が課されることがありません。
そのうえ、贈与者の資産額が相続税の基礎控除額を超えていなければ、相続税の心配もいりません。
民法は、配偶者、直系血族、兄弟姉妹には扶養義務があると規定しています(民法752条、877条2項)。
したがって、例えば、親から子へ教育費や、結婚、出産資金を名目にいくら贈与をしても、扶養の範囲内と認められれば非課税となるはずです。
ただし、扶養の範囲内の贈与と認められ、贈与税が非課税になるには、「通常必要と認められるもの」に限ります。
贈与税には、控除や特例が存在します。それぞれの控除、特例の要件を満たすことができれば、現金500万円を非課税で受け取ることができます。
最後に生前贈与の注意点を解説します。
定期贈与は、あらかじめ贈与の総額が決まっている贈与です。
例えば、子が住宅ローンを組む際に、あらかじめ親がローン全額を肩代わりする約束をして月々の返済をしていれば、定期贈与として、年間の返済額に対してではなく、ローン全額に対して贈与税が課税されます。
ローンの月々の返済額が10万円として、合計年120万円の暦年贈与に課される贈与税と、住宅ローン全体に課される定期贈与の贈与税とでは額が大きく異なります。
税務署に定期贈与とみなされないためには、贈与の都度贈与契約書を作成することです。さらに、現金での贈与を避け、銀行振り込みをして通帳に記録を残しておけば贈与の証拠となるでしょう。
また、親が子供のあずかり知らなぬところで、子供名義の口座を作り貯蓄をすると「名義口座」として親が亡くなった際に、相続税の課税対象になります。
口座の管理を口座名義人が行っていれば、名義口座とみなされることもありません。
贈与をしても税務署にバレなければ大丈夫と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、贈与税が課されるような大きな贈与は、早晩税務署に知られてしまいます。
詳しくは、以下の記事をご一読いただきたいと思いますが、申告していないことが税務署に知られれば、無申告加算税などのペナルティが課されてしまいます。
贈与税が発生するかどうか不明な場合は、税理士に相談することをお勧めします。
前述の通り、暦年贈与を選択しても、相続時精算課税制度を選択しても、贈与者の相続時には一定の条件で贈与財産に相続税がかかります。
したがって、贈与税がいくら安くなったとしても、相続税とのセットで考える必要が出てきます。
特に2023年度の税制改正によって、暦年贈与の生前贈与加算が延長され、相続時精算課税制度に基礎控除が追加されたことで、どちらを選択すればより節税になるかは大きな問題です。しかし、贈与期間や贈与の金額、相続時の状況などにより変わるため、一概に言うことができません。
このサイトにも、暦年贈与と相続時精算課税制度との比較計算表を搭載しています。
ここまで、現金500万円を生前贈与すると贈与税はいくらかかるのか、非課税にするにはどのような方法があるのか、生前贈与する際の注意点などを解説しました。
税金はすべての人にとって頭の痛い問題です。
このサイトにも、暦年贈与と相続時精算課税制度を利用した場合の比較計算表を載せていますが、あくまで簡易なものです。実際に比較するには、資産の額や贈与の額や期間、ご家族の状況などを元に、綿密なシミュレーションをする必要があります。
贈与を使った相続税の節税をお考えの方は、相続税に強い税理士にぜひご相談ください。