国際相続、外国人や海外財産の相続税・贈与税はどうなる?

外国に移住した日本人が亡くなったり、日本在住の外国人が亡くなったりすると、国際相続が発生します。

国際相続が開始すると、日本の相続税は課税されるのでしょうか?

また、国際贈与で、海外の財産に日本の贈与税が課税されるのはどのようなケースなのでしょうか?

1.国際相続における準拠法

国際相続とは、被相続人や相続人、相続財産が国境をまたぐ相続です。国際相続では、どの国の法律に基づいて相続をするかが問題になります。

1-1.どの国の法律に準拠するかが問題になる

準拠する法律が異なれば相続のルールが変わってしまうため、国際相続の手続き上重要なのは「どの国の法律に準拠するか」です。

例えば、2023年1月時点で3億円を配偶者と子供2人が相続した場合の相続税の負担率は以下の通りです。

3億円を配偶者・子供2人が相続した場合の相続税負担率

国名負担率
イギリス12.72%
日本9,53%
フランス7.89%
ドイツ1.25%
アメリカ0%

【出典】「主要国における相続税負担率の比較(配偶者+子2人)」|財務省

このように、準拠する法律が異なれば、相続税の税負担でさえ大きく異なってしまうのです。

1-2.準拠する法律は「被相続人」の国籍で決まる

日本で発生した相続についてどの法律に準拠するかは、「被相続人」の国籍によって決まります。

「法の適用に関する通則法」第36条によれば、「相続は、被相続人の本国法による」と規定されています。したがって、被相続人が日本国籍であれば、どこに居住していても日本の法律が適用され、被相続人が外国籍であれば、その国の法律が適用されます。

外国籍の方が亡くなれば、たとえ配偶者や子供が日本人であっても、被相続人の母国の法律に従って相続することになります。そのため、被相続人の母国の法律で被相続人の住んでいた国の法律によるべきと規定されていれば、日本の法律に従うことになります。

1-3.母国の法律を適用する国、日本の法律を適用する国

イタリア、ドイツ、オランダ、ブラジル、日本、韓国、台湾などは、種類を問わず全ての相続財産について、被相続人の母国の法律に従って相続します。

一方、スイス、デンマークなどは、被相続人が住んでいた国の法律に従って相続します。

また、、イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー、中国、北朝鮮などは、不動産については所在地の国の法律に従い、動産(預貯金・株式等)は被相続人が住んでいた国の法律に従います。

このように、相続についての法律は国によって異なるため、国際相続の手続きは、国際相続に強い専門家に相談すべきなのです。

2.国際相続での相続税の課税対象

ここでは、日本で国際相続が発生すると、被相続人の国内財産のみに相続税が課税されるのか、国外財産にも課税されるのかを解説します。

2-1.国際相続でも国内にある財産は日本の相続税の課税対象

日本では、納税義務者となる相続人を、国外財産も課税対象にする無制限納税義務者」と、国外財産は課税対象にしない制限納税義務者」とに分けています。

区分課税対象となる財産
無制限納税義務者国内財産、国外財産すべて
制限納税義務者国内財産のみ

上表からお分かりの通り、日本国内にある財産については、相続人・被相続人の国籍や居住期間にかかわらず、すべて日本の相続税の課税対象です。

2-2.相続人が日本国籍の場合

日本国籍の相続人が日本に居住していれば「居住無制限納税義務者」に当たり、被相続人の国内財産、国外財産すべてが相続税の課税対象です。

他方、日本国籍の相続人が海外に居住していれば、「相続人と被相続人両方が、10年超にわたりり海外に住んでいるか」がポイントになります。

被相続人・相続人のどちらか一方でも海外居住が10年以下であれば、「無制限納税義務者」の中でも「非居住無制限納税義務者」に該当し、被相続人の国内財産、国外財産すべてが相続税の課税対象です。

これに対して、被相続人・相続人とも10年超海外に居住していれば、「制限納税義務者」に当てはまり、被相続人の国内財産のみが相続税の課税対象です。

日本国籍の相続人

相続人の居住地納税者の種別相続税の課税対象となる財産
日本居住無制限納税義務者国内財産+国外財産
海外被相続人・相続人どちらかの海外居住が10年以下非居住無制限納税義務者国内財産+国外財産
被相続人・相続人とも海外居住10年超制限納税義務者国内財産のみ

2-3.相続人が外国籍の場合

相続人が外国籍であれば、「被相続人がどこに居住しているか」がポイントになります。

相続人・被相続人ともに日本に居住していれば「無制限納税義務者」に該当し、国内財産・国外財産すべてが相続税の課税対象です。ただし、どちらにも在留資格があり、相続人が相続開始前15年以内に日本に住んでいた期間の合計が10年以下であれば、国外財産は相続税の対象になりません。

一方で、被相続人が海外に居住していれば、「制限納税義務者」に当たり、国内財産のみが相続税の課税対象です。

しかし、2021年度の税制改正では、出入国管理法別表第1の在留資格により、外交、医療、教育目的などで一時的に日本に滞在している外国人については、居住期間にかかわらず、「制限納税義務者」として国外資産は課税対象から外されました。専門的な技能を持つ外国人の長期就労を促すためです。

2-3.国内財産と国外財産の判定

相続した財産が国内財産に当たるのか、国外財産に当たるのか、判定方法は財産内容に応じて次のようになります。

財産の種類所在の判定
動産・不動産それらの所在地
預貯金・積立金受入れをした営業所・事業所
合同運用信託・投資信託等
営業上の権利(売掛金等)
貸付金本店または主たる事務所
株式・社債等
生命保険契約・損害保険契約の保険金(※)
退職手当金
国債・地方債日本国内
外国の国債・地方債発行した外国

※国内に本店がなく営業所・事務所があるときは、国内の営業所・事務所の所在で判定する。

外資の金融機関でも、受入れをした支店が日本国内であれば、国内財産と判定されます

3.国際贈与での贈与税の課税対象

国際相続と同様に、国際贈与についても国内・国外のどの財産が対象になるかという問題が発生します。

しかし、基本的には、国際相続と同様の考え方で、「被相続人」を「贈与者」、「相続人」を「受贈者」と置き換えて考えます。

贈与税 納税義務者

3-1.贈与税が国外財産にかかるケース・かからないケース

上図で、受遺者が「居住無制限納税義務者」と「非居住無制限納税義務者」に該当すれば、国内・国外財産の両方が課税対象となります。

一方で、「制限納税義務者」に該当する場合は、国内財産のみが課税対象となります。

贈与者が外国に10年超在住しており、かつ、受贈者も外国に10年超在住するか、外国籍であれば、国内財産のみが課税対象です。

区分課税対象となる財産
無制限納税義務者国内財産、国外財産すべて
制限納税義務者国内財産のみ

3-2.生前贈与加算の考え方

暦年贈与があると生前贈与加算として、相続開始前一定期間内の贈与を相続財産に加算して相続税を算出します。

しかし、贈与した時には、贈与者・受贈者ともに外国に10年超在住していたが、相続が発生したときには、被相続人が日本に在住していたという場合にはどのように相続税を計算すればいいのでしょうか?

別の言い方をすると、贈与時には、国外財産には贈与税が課税されず、相続時には、国外財産にも相続税が課税されるケースです。

この場合には、贈与されたときには「制限納税義務者」であったため、国外財産は生前贈与加算の対象にはなりません

生前贈与加算では、贈与税のかからなかった贈与を相続財産に加算する必要はありません

まとめ

国際相続における相続税・贈与税の課税のポイントをまとめます。

  1. 被相続人の国籍が準拠する法律を決める
  2. 被相続人の居住地、相続人の国籍・居住地が課税対象を決める

国際相続は、ただでさえ準拠すべき法律が異なることがあるため、複雑でトラブルが起こりやすくなります。

国際相続の税務については、専門の税理士に相談をすることをお勧めします。

当サイトでは、国際相続に強い税理士を紹介しています。ぜひ、ご活用ください。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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