相続定期預金のメリット/デメリット

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銀行 預金

 相続定期預金という商品を聞いたことのある人もいるかもしれません。あまり知られていませんが、実は、意外と多くの金融機関が取り扱っています。通常の定期預金より預金金利が高いことが魅力ですが、預ける場合は注意点もあります。相続定期預金について詳しく解説します。

1.相続定期預金とはどんなものか?

1-1.相続定期預金の概要

相続定期預金とは、相続の発生により相続人が受け取ることになった資金を原資として預け入れる定期預金で、通常の定期預金より高い利率がつきます。相続人が受け取る資金は現金に限らず、相続により取得した不動産や株式を換金した資金でも構いません。金融機関により、通年預け入れ可能なところや、期間限定で預け入れ可能なところがありますが、期間限定の場合でも、同じ内容で繰り返し相続定期預金を募集しているケースが多いです。

1-2.取扱金融機関

相続定期預金は、主に地方銀行、信用金庫、労働金庫などで取り扱っています。
今回は、相続定期預金の実態を解明するために、全国の40の金融機関(地方銀行、信用金庫、労働金庫)の相続定期預金について商品内容の詳細な調査(調査日:2017年4月3日~4月4日)を行いましたので、その結果も踏まえ、以下詳しく説明します。

1-3.販売対象(取扱対象者)

相続定期預金の販売対象は、個人のみです。法人は販売対象外です。そして、多くの金融機関では「被相続人の死亡日から(「相続手続き完了の日から」としている場合も)1年以内に、相続による資金を原資として預け入れること」としています。つまり、あまり昔に発生した相続による資金を原資にすることはできません。なお、今回の調査では9割にあたる36の金融機関が「1年以内」としていましたが、「1年10ヵ月以内」が1社、「6ヵ月以内」も3社ありました。

他、相続手続きを自社(相続定期預金を預け入れる先)で行うことは必ずしも要件にはなっておらず、他社で相続手続きをした場合でも、相続定期預金を預け入れることができる場合がほとんどです。ただし、自社で相続手続きを行った場合と他社で相続手続きを行った場合では、預け入れ時の提出書類がかなり異なります。これについては、1-11.申し込み時の必要書類で説明します。

1-4.預入期間

預入期間は金融機関によってさまざまですが、3カ月、6ヵ月、1年が多いです。他にも3年が8社、5年も4社ありました。

1-5.預入金額

預入金額も金融機関によってさまざまです。下限は、「100万円(100万円以上)」としている所が多いですが、他にも「10万円以上」、「50万円以上」、「300万円以上」、「500万円以上」もあります。上限は、「相続により取得した金額(相続資産の範囲内)」としているところが多いですが、なかには「1億円まで」と金額指定しているところも見られます。なお、預入単位は1円のところがほとんどです。

1-6.適用金利

適用金利の決め方は、主に次の2パターンです。

  • 店頭表示金利に関わらず、固定金利とする方式
  • 店頭表示金利+α(上乗せ金利)とする方式

ただし、固定金利としている場合でも、ほとんどのところが、金利を随時見直しています。
金利水準については、今回の調査では、固定金利方式で最も高かったのは、「3ヵ月で1.5%」でした。他に「6ヵ月で1.0%」というところもありました。上乗せ金利方式で最も高かったのは、「3ヵ月で店頭表示金利+1.0%」でした。他に「3ヵ月で店頭表示金利+0.75%」や「6ヵ月で店頭表示金利+0.55%」というところもありました。いずれにしても、日本銀行によるマイナス金利政策が導入され、預金金利自体が大きく低下している現在では、驚くような優遇金利になっているといえます。
また、これはその金融機関の戦略と思われますが、当該金融機関に公的年金の受取口座や給与振込口座、NISA(少額投資非課税制度)口座を持っているような場合では、さらに金利を優遇する例も見られました。

1-7.預入形態(商品種別)

相続定期預金と銘打っていますが、新しい仕組みの定期預金が開発されたわけではありません。相続定期予期それ自体は、商品種別で見るとスーパー定期や大口定期です。金融機関によってはスーパー定期300や自由金利型定期預金の場合もあります。

1-8.払戻方法

払戻方法は、満期日以降一括払戻し(支払い)が基本で、分割払戻しはできません。これについては今回調査では、例外はありませんでした。

1-9.満期時の取扱い

預入時に満期時の取扱いを「自動継続」とする場合がほとんどです。なお、2-2.利用者にとってのデメリットで触れていますが、相続定期預金の場合、優遇金利が適用されるのは最初の預入期間だけであることに注意しましょう。自動継続にした場合、満期時以降の適用金利は、1-7.の預入形態(商品種別)によって変わってくることになります。

1-10.中途解約時の取扱い

相続定期預金を中途解約した場合は、当該金融機関が定める所定の中途解約利率が適用されます。この利率については、「解約日時点の普通預金金利」としているところが多いですが、「約定利率×○%(預入年数によって変わる)」としているところも見られます。

なお、なかには「中途解約は原則不可」と明確に謳っているところもあります。今回の調査でも3社がそのような取扱いをしていました。ただし、「原則不可」としつつも、「当社が認めるやむを得ない事由が発生した場合は、中途解約可能」としています。つまり、中途解約しても普通預金金利は保証されているわけで、これは、同じように金利優遇のある円建ての「仕組預金」とは性質が大きく異なるといえるでしょう。円建ての仕組預金は通常、中途解約時には所定の解約控除が徴収され、場合によっては大きく元本割れすることがあります。

1-11.申し込み時の必要書類

相続定期預金の性質上、申し込み時の必要書類は多いです。金融機関によって異なりますが、ケース別に分けると次のとおりです。

1-11-1.(自社で)相続手続きを行った場合

自社で相続手続きを行っている場合は、その相続事案の概要を当該金融機関が把握していますので、必要書類は少なくてすみます。主に必要になるものは、次のとおりです。

  • 本人確認書類
  • 届出印

1-11-2.(他社で)相続手続きを行った場合

自社で相続手続きを行っている場合は、その相続事案の概要を当該金融機関が把握していませんので、必要書類は増えます。主に必要になるものは、次のとおりです。

  • 金融機関での相続手続き完了時期が確認できる書類(例:金融機関に提出した依頼書の写し、被相続人名義の解約済通帳と計算書の写し等)
  • 預け入れる人が相続人または受遺者であることが確認できる書類(例:戸籍謄本の写し、遺言書(公正証書遺言または自筆証書遺言検認済みのもの)の写し等)
  • 預け入れ原資を相続により引き継いだことが確認できる書類(例:金融機関に提出した依頼書の写し、被相続人名義の解約済通帳と計算書の写し、遺言書(公正証書遺言または自筆証書遺言検認済みのもの)の写し、金融機関発行の領収書等の写し、遺産分割協議書のある場合はその写し等)
  • 本人確認書類
  • 届出印

上記以外にも、預け入れ原資が相続により取得した不動産や有価証券の換金代金である場合は売買契約書や売却代金計算書等が、生命保険の死亡保険金の場合は保険会社から送付された保険金等支払通知書等が、それぞれ必要になります。

1-12.その他の注意点

相続定期預金には、上記以外にも、次のとおり注意すべきことがいくつかあります。

  • 通常、他の金利優遇やキャンペーンとの併用はできません。
  • 通常、窓口申し込みのみで、インターネットやATMでの申し込みはできません。
  • 金利情勢により、事前の予告なく適用金利が変更となる場合や、取扱が中止になる場合があります。
  • 相続定期預金の受け入れ総額を予め設定し、上限に達した時点で取り扱いを停止する場合もあります。
  • 主に信用金庫で見られますが、当該金融機関(支店)の営業エリア内に住所がある個人のみを販売対象としている場合があります。
  • 預金保険制度の付保対象預金です。
  • マル優制度の適格者の場合は、非課税制度を利用できます。
  • 手数料はかかりません。
  • 通常、1相続人につき1回しか利用できません。

2.利用者にとってのメリット・デメリット

2-1.利用者にとってのメリット

2-1-1.高い金利が適用される

相続定期預金のメリットは、何といっても高い金利が適用されることでしょう。例えば、現在(2017年4月7日時点)のメガバンク3行の定期預金金利は、預入年数にかかわらず一律0.01%です。これは、他の金融機関もほとんど変わりません。リスクを取る投資を好まず元本保証型の運用を重視する人にとっては、この超低金利時代、相続定期預金の高い金利は大きな魅力といえるでしょう。

2-1-2.相続資金の緊急避難先としても活用できる

相続定期預金は、相続資金の緊急避難先としても活用することができます。相続は予期せず発生することが多く、相続によって取得した資金の使途をすぐに思いつかないことも多いかもしれません。そのような場合、一時的に預け入れる先としても相続定期預金は適しているといえるでしょう。相続税の納税準備資金の預け入れ先としても適してます。

2-1-3.手続きの負荷が小さく、利便性が高い場合も

相続手続きをある金融機関で行い、その金融機関が相続定期預金を扱っている場合は、相続定期預金への預入れ手続きの負荷が小さくてすみます。相続手続きの際に併せて相続定期預金を申し込めるという利便性もメリットといえるでしょう。

2-2.利用者にとってのデメリット

2-2-1.申し込み手続きが煩雑(金融機関が異なる場合)

相続定期預金のデメリットは、何といっても申し込み手続きが煩雑なことです。上述のとおり、相続手続きを行った金融機関と相続定期預金を申し込む金融機関が同じ場合はよいですが、異なる場合は、1-11-2.(他社で)相続手続きを行った場合で見たとおり、さまざまな書類を提出しなければなりません。

2-2-2.金利優遇期間が短い

金利優遇期間が短いこともデメリットとして挙げられます。例えば、3ヵ月や6ヵ月預け入れただけでは、よほどの高額資金でない限り、高金利といっても税引き後の利息の実額はたかが知れています。また、優遇期間が終わると通常の定期預金金利が適用されることになりますので、当該金融機関にそのまま預け入れておく必要性は薄れます。しかし、この資金を他の金融機関に移し替えるとなると、再度負荷が生じてしまいます。

2-2-3.中途解約すると高金利を享受できない

中途解約すると高金利のメリットが享受できないこともデメリットです。相続で取得した資金ですので、相続定期預金に預け入れたあとで、一時的に資金が必要になることもあるかもしれません。しかし、中途解約してしまうと普通預金程度の金利しか付利されないため、これでは「何のために預けたのか」ということにもなりかねません。

相談

2-3.金融機関側の意図

相続定期預金を取り扱っている金融機関には、さまざまな狙いがあります。
まず何といっても、相続を通じて発生した資金を自社に取り込むことです。他社で扱った相続による資金を相続定期預金で受け入れれば、当然資金の流入になりますし、自社で扱った相続による資金を他社に流出させない防衛手段にもなります。
また、相続定期預金を預け入れた相続人以外の親族の資金を取り込む狙いもあるといえるでしょう。地方銀行や信用金庫などの地域密着型金融機関にとっては、相続を含む個人情報を多く入手し、広く親族全体にまで広げて顧客を囲い込むことのできる有力なツールといえるでしょう。

3.まとめ

相続定期預金は複雑な金融商品ではありませんが、相続により取得した資金を原資とするだけに、利用する場合は慎重に行いたいものです。相続定期預金のメリットやデメリットを理解して賢く活用し、相続発生時にあわてないようにしたいものですね。

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