地銀が危ない!ペイオフ制度と優良な地銀の見分け方

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銀行 預金

 多くの地銀が本来の融資業務で利益を出せておらず、「経営が苦しい」と言われています。
地方では、地元の地銀に多くの預金を持っている人もいると思いますが、ペイオフ対策をしたほうがよいのでしょうか?
また、都市部に住んでいる人は、地方の親族の預金を相続した後、自分の都銀の口座に移してしまうことも多いようですが、もし自分がその立場になったら、どうすべきでしょうか?

一方、地銀のなかには優良行もあり、また、定期預金の金利が高いなどユーザーメリットのある地銀もあります。主に相続の発生可能性がある人向けに、地銀の現状とペイオフ制度、優良地銀の見分け方について解説します。

1.地銀の現状

1-1.地銀の数

金融庁の「銀行免許一覧」の資料によれば、地方銀行は現在、全国46都道府県で64行あります。愛知県のみ地方銀行はありません(第二地方銀行はあります)。なお、第二地方銀行は全国で41行あります。

1-2.地銀の預金量

一般社団法人全国地方銀行協会(以下、「地銀協」といいます)の「地方銀行主要勘定(月次)」によれば、地銀64行合計の預金量は、平成29年3月末現在、約254兆円です。主な内訳は、次のようになっています。

当座預金約10.8兆円
普通預金約136.3兆円
貯蓄預金約2.9兆円
通知預金約0.9兆円
定期預金約96.4兆円
定期積金約0.4兆円
その他の預金約6.3兆円

一方、一般社団法人全国銀行協会(以下、「全銀協」といいます)の「全国銀行の平成28年度決算の状況(単体ベース)」によれば、都市銀行(以下、「都銀」といいます)の預金量は、平成29年3月末現在、約390兆円です。地銀の預金量は都銀には及ばないものの、都銀の約65%という大きな金額になっています。

1-3.地銀の決算状況(利益水準)

地銀協の「地方銀行の決算の状況(地方銀行平成28年度決算の概要)」によれば、地銀64行の単体ベースで、

  • コア業務純益:前年度比▲12.6%(▲1,531億円)の1兆660億円
  • 業務純益:前年度比▲18.5%(▲2,353億円)の1兆348億円
  • 経常利益:前年度比▲18.5%(▲2,574億円)の1兆1,316億円
  • 当期純利益:前年度比▲15.4%(▲1,449億円)の7,954億円

と、4部門とも大幅減益という厳しい状況になっています。
そして、地銀の苦境は今年度も続いており、平成29年11月17日付の日本経済新聞によれば、平成29年4月~9月期決算においても、第二地銀を含む上場地銀82行・グループの連結純利益は前年度比▲16%となっており、6割の銀行が減益決算を余儀なくされています。

また、平成30年3月期決算においてもこの傾向は同様で、前期同様の大幅な減益決算が見込まれています。

1-4.地銀経営が厳しくなった原因

地銀の経営が苦しくなった原因には、主に以下のものが挙げられます。

  • マイナス金利政策の導入による貸出金利の低下と、貸出の利ザヤの縮小
  • 地方経済の低迷を受けた資金需要縮小による、貸出の伸び悩み
  • 国債利回りの低下による運用不振
  • 地方から東京など首都圏への人口流出および高齢化の影響(顧客減少)
  • (地銀間、対都銀、対他業態など)金融機関同士の競争激化

1-5.金融庁の方針

金融庁の地銀に対するスタンスは、現在の森長官が就任して以降、特に厳しくなっています。ひとことでいえば、「地銀にビジネスモデルの再構築を求めている」といえ、ことあるごとに地銀へのウォーニングを発しています。

日銀による現在の金融緩和政策は当分の間続くことが予想され、地方の人口減少や高齢化もすぐに解決するとは思えません。店舗過剰でコストも嵩み、他金融機関との競争も一層激化することが予想されることから、金融庁は地銀に対し、厳しいスタンスを取り続けています。現在の地銀の「不動産向け貸し出しへの過度な傾注」、「金融商品販売による手数料収入増加」にも、ヒアリングや調査を行うなど、強い警鐘を鳴らしています。

例えば、金融庁は、平成29年10月25日に公表した「平成28事務年度 金融レポート」で、現在の地銀の経営について、以下のように指摘しています。

  • 貸出利鞘の縮小により、本業利益(貸出・手数料ビジネス)がマイナスとなる銀行が徐々に増加。
  • ハイリスクな有価証券運用、不動産融資(アパート・マンションローンを含む)の拡大等により、足下の利益を確保している。
  • ビジネスモデルの持続可能性に懸念のある地域金融機関が増えている。

ただし一方、「経営改革に取り組む先も徐々に増加」としています。地銀ではすでに数年前から、経営統合や連携拡大の動きが見られますが、金融庁の本音は「この程度では、まだまだ不十分」です。平成29年11月10日公表の「金融行政方針」でも、明確に地銀に経営改革を促しています。
金融庁の意を受け、今後も地銀の経営改革の動きは続くものと思われます。

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2.ペイオフ制度

地銀の経営の現状を受け、では、私たち消費者は地銀とどう向き合えばよいのでしょうか。まず知っておかなければならないことが、ペイオフ制度です。

2-1.ペイオフ制度とは

ペイオフ制度とは、ひとことでいえば「預金保険制度」のことです。預金保険制度とは、万一金融機関が経営破たんした場合に、預金者の預金のうち一定のもの及び一定額を保護するために設けられた制度のことです。
預金者が預金時に特に申し出をしなくても、預金保険制度に加入している金融機関に預金した場合には、自動的に保険契約が成立し、預金保険制度の適用対象となります。

2-2.どの預金がいくらまで保護されるの?

ペイオフ制度について詳しく知らない人でも、「1つの銀行には預金は1,000万円までにしたほうがよい」と耳にしたことがあるでしょう。概ねそのとおりですが、保護対象預金と金額は、正確には次のようになっています。

  • 決済用預金(当座預金・利息のつかない定期預金等)・・・全額保護されます。
  • 利息のつく普通預金・定期預金・定期積金・元本補てん契約のある金銭信託(ビッグ等の貸付信託を含む)・・・金融機関ごとに預金者1人あたり、元本1,000万円までと破たん日までの利息等が保護されます。

なお、次の預金は預金保険制度の保護対象外です。

  • 外貨預金、譲渡性預金、無記名預金、架空名義の預金、他人名義の預金(借名預金)、金融債(募集債および保護預り契約が終了したもの)等

その他、個人事業主の個人名義の預金は、個人名義のその他の預金と合算されます。また、夫婦や親子であっても別々の預金者となりますので、家族の名義を借用しているに過ぎない預金は上記の「他人名義の預金」になり保護対象外となりますのでご注意ください。

2-3.地銀の多額の預金がある人は、他の銀行に預金を分けた方がよいのか?

ペイオフ制度は、その銀行が経営破たんしなければお世話になることはありません。つまり、その銀行が潰れさえしなければ何も心配することはないのです。しかし、過去多くの銀行が経営破たんしたように、どんな銀行の経営にも絶対はありません。
そのため、やはり特定の地銀1行に預金を集中させることは避けたほうがよいでしょう。預金の総額にもよりますが、保護額1,000万円を上限に預け先の金融機関を分散させることをお勧めします。

2-3-1.預金分散のデメリット

もちろん、預金分散にはデメリットもあります。例えば、

  • 複数金融機関で口座開設するため、手続き等の負荷が生じる。
  • 預金総額が多い場合は、1,000万円ずつにすると、多くの金融機関に分けなければならない場合がある。
  • 預け入れた全ての金融機関の経営状態を定期的にチェックする必要がある。
  • 地方在住の場合は特に、そもそも近隣にそんなに金融機関がない。

などです。「1金融機関1,000万円まで」は理想ではありますが、例えば預金総額が1億円以上などで、物理的に無理な場合も考えられますので、その場合は、ある程度経営がしっかりしていると思われる金融機関に1,000万円以上預け入れることはやむを得ないと思われます。

2-3-2.預金分散以外の方法は?

では、預金分散以外のペイオフ対策はないのでしょうか?正直なところ、絶対の対策はありませんが、例えば以下の方法が考えられます。

  • 当座預金に預け入れる。
  • 比較的安全性、流動性(換金性)が高い他の金融商品に預け替える。
  • 夫婦など親族間で資金移動する(ただし、贈与税に注意する必要があります)。

2-4.最も重要なことは

私たち消費者が、地銀をはじめ金融機関の経営予測をすることは難しいですが、金融機関は、ある日突然経営破たんすることはありません。厳しいディスクロジャーが求められている昨今、粉飾決算を過去何年も行うなどのよほどのことがない限り、経営破たんする金融機関には事前に何らかの予兆が見られるはずなのです。

私たちが、新聞やテレビのニュースなど、銀行経営に関する報道に日頃から接していれば、いわゆる「危ない金融機関」は何となく事前にわかります。つまり、最も重要なことは、決して無関心にならず、日頃から金融経済に関するニュースに接することです。そうすれば、地銀に限らず、経営破たんしそうな金融機関についてある程度事前に把握し、最悪の事態を防ぐことが十分可能になります。

新聞

3.相続後、地銀の預金はどうすればよいか?

近年、相続により地銀の預金が他の金融機関に流出する事例が増えています。
具体的には、相続人である都市部の親族が、相続した預金を自身の口座に移動させています。地方の過疎化・空洞化および東京一極集中が進み、こういった「家計資産の地域間移動」が多く見られるようになってきました。日銀の調査でも「預金の東京一極集中」が鮮明になっています。

3-1.都市部に在住なら、都銀にまとめてしまったほうがよいか?

相続人の立場から見れば、自身の住居に近いメインバンクに預金を移したほうが、管理面での負荷が軽減されるのは間違いないでしょう。ネットバンキングが進んでいるとはいえ、何らかの理由で、被相続人の地元の金融機関に手続きに行く場合は、時間も交通費もかかります。もちろん、相続した預金は、それ以前から預け入れている自身の預金と合算されますので、前述のペイオフ制度の保護額上限には留意する必要はあります。

3-2.地銀に預金を置いておくメリット

ただし、相続した預金を地銀にそのまま置いておくメリットももちろんあります。地銀は、地方経済に大きな影響力があり、「地元密着」を標榜しています。そのため将来、相続人がその地銀に預金を置いたまま、預金以外の金融取引(例えば、住宅ローンや融資など)を行う場合、何らかの優遇を受けられる可能性があります

また、地銀の多くは「相続定期預金」を取り扱っています。相続定期預金は一般的に、通常の定期預金よりもかなり金利が高く、商品によっては預入額に制限がないところもあります。相続した預金に特段使途がない場合、当該地銀の相続定期預金を利用する選択肢もあるでしょう。

【関連】相続定期預金のメリット/デメリット

そして、金融庁が金融機関に求めている「顧客本位の業務運営に関する原則」を忠実に実行するため、地銀の顧客サービスは今後大きく改善される可能性があります。自身のメインバンクより当該地銀のほうが顧客サービスが良い場合は、そのまま地銀に預金を置いておいてもよいでしょう。

4.優良な地銀の見分け方

4-1.優良な地銀はあるか?その見分け方は?

地銀は64行もありますので、経営状態も千差万別です。なかにはもちろん、いわゆる「優良行」とよばれるところもあります。あえて実名は挙げませんが、例えば、伝統的に無理な事業拡大をせず保守的な経営を行っているため財務体質が良好なところや、すでに比較的収益性の高いビジネスモデルが確立されているところ、地域に密着し盤石の優良顧客を多く抱えているところなどです。
優良地銀の見分け方は難しいですが、強いていえば次のようなポイントをチェックしましょう。

  • 業績や預金量、店舗数などの経営基本指標(時系列に分析する必要あり)
  • 預金金利やキャンペーン、顧客サービス(ただし、キャンペーンは無理をしていないか見る必要あり)
  • 地域特性(人口増減や企業の流出入)と、他金融機関との競合状況
  • 将来に向けた戦略(新分野への取り組みなど)

4-2.都銀よりも金利などユーザーメリットがある地銀は?

地銀のなかには、定期預金の金利を都銀よりも高くしているところもあります。例えば、

  • 愛媛銀行 四国八十八ヵ所支店 だんだん定期預金(預入額100万円上限で、0.3%)
  • トマト銀行 ももたろう支店 スペシャルきびだんご定期預金(預入額100万円上限で、0.25%)

などです。この両支店はいずれもインターネット専用支店のため、愛媛や岡山まで行く必要もありません。
荘内銀行のように、東京都内の2支店限定で定期預金キャンペーンを行い、当該支店の周辺の住戸にチラシを配布してPRし、預金獲得を目指しているところもあります。
上記以外にも金利の高い地銀の定期預金は多くあり、マネー誌などで情報を取ることもできます。

5.まとめ

見てきたように、地銀を巡る環境は厳しく、地銀経営の将来は不透明さが増しています。しかしながら一方、経営改革により私たち消費者に対するサービス向上も期待できます。ペイオフ制度も理解したうえで、資産保護を念頭に置きながら、優良な地銀やサービスの良い地銀を選別して付き合っていきたいものですね。

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