株式の相続手続き

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親族が亡くなって、株式を相続したことのある人は多いのではないでしょうか?
例えば、日本証券業協会が2017年4月19日に発表した「NISA口座開設・利用状況調査結果 (2016年12月31日現在)について」によると、勘定設定口座数約628万口座のうち、60歳代の割合は24.6%、70歳代の割合は20.5%、80歳代以上の割合は10.0%となっており、60歳代以上の合計は55.1%以上と過半数を占めています。

このように資産運用を行う高齢者は多いため、自分が運用しなくても、将来相続が発生し、株式を相続することもあるかもしれません。株式の相続手続きや相続後に発生するさまざまなケースについて詳しく紹介します。

1.株式の相続手続き

1-1.株式の相続が発生したら

1-1-1.上場株式の場合

上場株式の相続が発生した場合の対応は、投資信託や国債を相続する時と同じで、まず被相続人の口座がある証券会社(取引支店)に連絡しましょう。ほとんどの場合、相続に必要な書類のセットをすぐに送ってくれます。

1-1-2.非上場株式の場合

非上場株式の場合は上場株式と異なり、証券会社を経由していないので、その株式の発行会社に直接確認することになります。部署がわからない場合も多いと思いますが、まずは代表電話から総務部門につないでもらい、照会するとよいでしょう。

1-2.必要書類

手続き時の必要書類は、証券会社により異なる場合もありますが、証券会社所定の書類以外の必要書類は概ね以下のとおりです。ただし、これらの書類はすべて必要になるわけではありません。

  • (1)被相続人の死亡および法定相続人が確認できる戸籍謄本等
  • (2)相続人全員の戸籍謄本等
  • (3)被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本等
  • (4)相続届に署名・押印した人の印鑑証明書
  • (5)遺産分割協議書
  • (6)遺言書

なお、相続のパターンにより上記の必要書類の組み合わせは異なってきます。例えば「遺言書も遺産分割協議書もない場合」であれば、上記(1)(2)(4)が必要となります。

1-3.相続税評価額の計算方法

株式の相続税評価額の計算方法は、上場株式と非上場株式では異なります。

1-3-1.上場株式の場合

上場株式は、次の4つのうち最も低い価額で評価します。

  • 課税時期の終値
  • 課税時期の属する月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均額

なお、REIT(不動産投資信託)やETF(上場投資信託)も同じ評価方法です。
上場株式については、残高証明書の発行の際、評価参考価格を案内してくれる証券会社も多いです。

1-3-2.非上場株式の場合

非上場株式の評価方法は複雑で難しいため、細かい計算式は割愛しますが、基本的には、①同族株主等に該当するか否か、②大会社、中会社、小会社のどれに該当するか、③特定会社に該当するか否かの判定により評価方式が決まります。評価方式には「原則的評価方式」と「特例的評価方式」の2つがあり、原則的評価方式はさらに「類似業種比准方式」、「純資産価額方式」、「併用方式」に分かれます。特例的評価方式の評価方法は「配当還元方式」となります。

税理士でも、相続が専門でない場合は、この非上場株式の評価を苦手としている人は多いです。もし非上場株式を相続した場合の財産評価は、相続専門の税理士に依頼するのがよいでしょう。

【関連】上場株式と非上場株式の評価方法

1-4.相続後に発生するさまざまなケース

1-4-1.相続人に証券口座がない場合

冒頭ふれたとおり、資産運用に興味がない人が上場株式を相続した場合、その相続人が証券口座を持っていないケースは考えられます。この場合、被相続人は証券会社に新しく証券口座を開設する必要があります。必ずしも被相続人と同じ証券会社にする必要はありませんが、同じ証券会社の方が移管が早く終わります。口座開設自体はさほど面倒ではありません。

遺産分割協議の結果、複数の口座へ移換する場合は、相続人がそれぞれ口座を開設する必要があります。
なお非上場株式は、ほとんどの場合、そもそも証券会社を介していないため、相続した場合でも相続人の証券口座の有無は関係ありません。

1-4-2.タンス株を相続した場合

タンス株とは、ひとことでいえば電子化されていない紙の株券のことです。現在では、上場株式の株券は電子化されており、昔のようなペーパー株券はありません。
ただし、株券電子化は2009年1月からですので、それまでの紙の株券がタンス(金庫)に眠っている場合も十分考えられます。そのようないわゆるタンス株を相続した場合、その株券は、上場会社が、信託銀行等に株主の名義で開設する「特別口座」で株主としての権利は確保されています。ただし、株券自体は無価値のため、証券会社に持ち込んでも売却・換金はできません。

そこで、このタンス株については、信託銀行等に対して口座振替申請書等の必要書類を提出して、証券会社の自分(相続人)の口座に振替依頼を行います。これによりタンス株が自分の口座に移管され、自由に売却・換金できるようになります。

1-4-2-1.ほふりとは

タンス株の話が出ましたので、「ほふり」についてもふれておきましょう。ほふりとは、証券保管振替機構のことで、現在の株式等振替制度(「社債、株式等の振替に関する法律」により、上場会社の株式等に係る株券等をすべて廃止し、株券等の存在を前提として行われてきた株主等の権利の管理(発生、移転及び消滅)を、機構及び証券会社等に開設された口座において電子的に行う制度)の根幹をなす機関です。

1-4-3.株券を紛失している場合

「被相続人が株券を保有していたはずなのに、見当たらない」という場合もあるでしょう。その場合、上場株式であれば、「1-4-2.タンス株を相続した場合」の信託銀行等に照会してみてください。非上場株式の場合は、発行会社に照会することをお勧めします。

1-4-4.譲渡制限付株式を相続した場合

非上場株式について、譲渡制限付株式を相続することもあるかもしれません。譲渡制限付株式の場合は、発行会社から売渡請求を受ける場合があるので注意しましょう。この場合は当該会社に株式を譲渡し、売却代金を受け取ることになります。

1-5.売却と遺産分割のどちらを優先するか

株式の相続にあたり、特定の相続人がすべて相続して売却する、あるいは代表となる相続人が相続して売却し、売却代金を分割する、のどちらがよいかはケースバイケースで一概にはいえません。それぞれの方法で手間と税金が異なり、また上場株式か非上場株式かでも異なります。

上場株式であれば流動性が高いため、相続後に売却するのにさほど苦労しませんが、非上場株式の売却は手間と時間がかかります。非上場株式の売却価格の妥当性を確認するのも、資産運用に詳しくない人にとっては負担かもしれません。

一般的には、例えば他の相続資産に不動産など流動性が低い資産が多い場合や、相続人のなかに「株式は相続したくない」という人がいるような場合は、売却優先がよいでしょう。
逆に相続人のなかに資産運用に詳しい、あるいは株式の相続を希望する人がいるような場合は、遺産分割優先がよいでしょう。

1-6.遺産分割完了前の議決権行使

遺産分割完了前の議決権行使とは、例えば相続財産としての株式は、遺産分割完了までは各相続人間で共有(準共有)の状態になります。しかし、株主総会等で議決権を行使する場合は、権利行使をする人を1名定める必要があります。なお、もしこの1名を選定しない(できない)場合は、持分の過半数を有する相続人が選定する人が権利行使者になります。

1-7.その他

財産の状況や相続人の人数によっては、株式を売却しないと遺産分割協議書や遺言書の指定どおりに相続財産を配分できないことが考えられます。この場合は、相続人全員の同意により代表者(代理人)を選任し、「売却専用口座」を証券会社に設定し換金することになります。売却専用口座は、相続手続き終了後は閉鎖されます。

まとめ

株式の相続は、特に非上場株式の場合は独特の注意点があります。例えば、被相続人と発行会社(あるいはその代表者や役員など)の間に、何らかの人的関係や取引関係、資本関係などがあったことが予想され、その経緯を知ることも必要になるかもしれません。

「親族の資産運用の内容はよく知らない」という人も多いかもしれませんが、自分が資産運用に詳しくない場合、相続してからの事務手続きの負荷が大きくなることが予想されます。株式の相続手続きについて、基本的なことを押さえておくとともに、日頃から親族の資産運用の内容について、把握するよう心がけておくとよいでしょう。

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