二次相続の相続税対策にご注意!法定相続のほうが有利な場合も
二次相続の相続税対策とは 「一次相続」「二次相続」という言葉をご存じでしょうか? 例えば、高齢のある夫婦に長男/次男…[続きを読む]
遺産分割については、「突然相続が発生して、何から始めたら良いのか分からない」、「遺産分割をしないといけないが、どのような手順で進めていけばよいのか頭を痛めている」と、途方に暮れている方も多いのではないでしょうか。
特に相続税申告には、相続発生後10か月以内という期限があり、計画的に対応していくことが必要です。
それでは、遺産分割を行う際、どのような手順で、どのような書類を作成すれば良いのでしょうか?また、それらの書類は自分たちだけで作成できるのでしょうか?
今回は遺産分割に焦点を当てて、その遺産分割協議について説明すると共に、遺産分割に関しての税理士の役割について、徹底的に解説していきます。
目次
遺産相続を行う場合、相続人が1人であれば、その相続人がすべての遺産を相続するので遺産を分割する必要はありません。
しかし、原則的に遺言書がなく相続人が2人以上いる場合には、誰がどの遺産を相続するのかを決める必要があります。
遺産分割を決める方法には3つの方法があります。まずは、その方法を1つづ見ていきます。
遺産を分割する方法には3つの方法があります。
被相続人が遺言書を残している場合は、基本的にはその遺言書に従って遺産が分割されます。
このように、遺言書の指定によって遺産を分割する方法を「指定分割」と言います。
指定分割にも、遺言書に書かれている分割方法によって、次の種類に分けられますが、それぞれ遺産分割協議が必要な場合があります。
遺言書に相続遺産を特定して、その遺産ごとに特定の相続人に相続させる方法です。
例えば、「自宅の土地建物を妻に相続させる」、「○○銀行の預金を長男に相続させる」「××銀行の預金を長女に相続させる」、のように記述して指定します。
しかし、全ての遺産が記載されていない場合は、遺産分割協議が必要です。
相続遺産自体は特定せずに、相続割合だけを指定する方法です。
例えば、「妻の割合を3/4とする」、「長男の割合を1/4にする」、のように指定します。
この場合は、どの相続遺産を誰に相続させるかが指定されていませんので、遺産分割協議が必要です。
遺言では、上記以外にも、「分割の指針を指定する(例:家業を長男に任せる)」や「分割を第三者に任せる(例:遺産分割○○に決めてもらう)」、または「遺産分割の禁止」、といったことが記載されることもあります。
この場合も、全ての遺産分割方法が記載されていない場合は、遺産分割協議が必要です。
遺言がない場合、または、遺言があっても、全ての相続財産の処分方法が指定されていない場合は、相続人全員が話し合って遺産分割方法を決めないといけません。
この遺産分割についての話し合いを「遺産分割協議」と言います。
なお、遺言で全ての遺産について、誰がどの遺産を相続するか指定されている場合でも、相続人全員が合意して、遺産分割協議により遺言と異なる分割方法を定めることも可能です。
遺産分割協議で遺産分割方法が決まらない場合は、まず、「家庭裁判所の遺産分割の調停」を利用し、それでも決まらない場合は「審判」により分割することになります。
遺言がない場合、または、遺言があっても、全ての相続財産の処分方法が指定されていない場合は、相続人全員が話し合って遺産を分割する方法を決めないといけません。
この遺産分割についての話し合いを「遺産分割協議」と言います。
相続人全員が参加して遺産分割協議を行った後、そこで決まった遺産分割方法を書面に残し、相続人全員が署名・捺印(実印)したものが「遺産分割協議書」です。
全ての相続人は遺産分割協議書に拘束され、撤回することができません。
遺産分割協議書を書き換えることもできますが、相続人全員の合意が必要となります。
相続人は遺産分割協議書の内容を守らなければいけません。遺産分割協議書は、「契約書」の意味合いがあります。
対外的には、遺産分割協議書は、遺産分割の合意内容を証明する「証明書」としての意味合いもあります。
次に、遺産分割協議、および遺産分割協議書作成の手順について見ていきます。
まず、遺言書があるかどうかを確認しなければなりません。遺言書の内容によって、前述した通り、遺産分割の方法が変わってしまいます。
相続人は、相続の経験がほとんどないのが実情です。まず、相続手続きの全体像やスケジュールを把握して、相続手続きを進めていくことが大事です。
特に、相続税を申請する必要がある場合は、期限が決まっているので、それまでに終わるように計画的に進めていく必要があります。
法定相続人の範囲を理解したうえで、相続人を確定させる必要があります。
通常はそれほど困難ではありませんが、被相続人に、離婚した元配偶者との間に子供がいる場合や、他の女性との間に子供(非嫡出子)がいる場合、養子がいるなどの場合は、調査や相続人の確定に注意が必要です。
被相続人の全ての財産を調査します。銀行や証券会社から入手する残高はもとより、不動産や動産の全てについて調査します。
ちなみに、負債も相続財産に含まれます。
財産調査に基づき、相続財産目録を作成します。この後の遺産分割協議では相続する遺産額が重要になりますので、このタイミングで相続遺産ごとの評価額を把握することが重要です。
特に、株式の評価や不動産の評価には専門知識が必要です。
ゼロから遺産分割を協議するより、遺産分割協議書の素案がある方が協議がスムーズにいくことが多く、この後の遺産分割協議のもとになる素案を作っておくことをお勧めします。
相続人全員で協議します。
遺産分割協議の結果、相続人全員の合意により遺産分割方法を最終化して、遺産分割協議書を作成します。
では、税理士は遺産分割協議書を作成することができるのでしょうか?税理士が、遺産分割協議書を作成すると違法になることがあるのでしょうか?
確かに、税理士が遺産分割について依頼を受け、交渉・折衝をすれば、弁護士法72条に抵触し、違法な行為となります。
しかし、依頼人に対して、どのように遺産を分割すれば税制上有利かについてはアドバイスをすることができます。
しかし、相続税の申告書に遺産分割協議書の添付が必要な場合は、問題なく作成することができます。税理士は、依頼者の相続税申告に必要な添付書類の作成はすることはできるのです。
また、税理士は、行政書士として登録することができます。行政書士は、官公署に提出する書類作成を生業とする職業であり、行政書士として登録のある税理士であれば、遺産分割協議書だけを作成することに問題はありません。
そこで、相続税申告に必要があるのであれば、遺産分割協議書の作成については、税理士に依頼することをお勧めします。
ここでは、なぜ税理士に依頼するのが良いのか、そのメリットを説明します。
相続手続きには期限がありことが多々あり、相続開始から相続税申告までを総括的に見てもらえることが重要と考えます。
税理士であれば、相続手続き開始から相続税支払い、および、その後の税務調査まで一貫して依頼することができ、期限に慌てる必要がなくなります。
相続税を納める必要がある方にとって、相続税の控除や特例を活用して相続財産の評価を下げ、相続税額を下げることが重要です。
相続税に強い税理士であれば、それを可能にしてくれます。
また、二次相続などを考慮した相続財産の分割方法についてのアドバイスももらうことができます。
遺産分割協議書を作成する際にも、このような税理士からの情報を参考にするのが賢明です。
相続税の申告手続きができるのは税理士だけです。
遺産分割協議書に基づいて、それぞれの相続人が相続税を納税するので、税理士にまとめて依頼すれば、手続きがスムーズに行えます。また、遺産分割協議書は、相続税申告の際に税務署に提出する添付書類となります。
また、後々税務調査が入った場合でも、税理士に対応を依頼することができます。
では、税理士に依頼するデメリットにはどのようなものがあるでしょうか?
しかし、税理士にもできない相続手続きがあります。
税理士は、不動産の相続登記(相続による名義変更)ができず、また、家庭裁判所関連の手続きや遺産相続紛争の代理交渉ができません(非弁行為の禁止)。
これらの相続手続きが必要な場合は、依頼する税理士と協力関係にある司法書士や弁護士などと連携をとってもらうことになります。
税理士に限らず、専門家に依頼すると報酬がかかります。
しかし、専門家の知識と経験をお金で買うと割り切り、逆に、依頼した専門家を使い倒すぐらい有効活用するようにしてはいかがでしょうか。
最後に、遺産分割協議書を作成する上での注意点を挙げておきます。
※代償分割:遺産を相続する代わりに、遺産を相続した相続人が他の相続人に金銭を支払う
相続税申告とともに遺産分割協議書の作成を税理士に依頼する場合に重要なポイントは、相続の経験が豊富で信頼できる税理士事務所を選ぶことです。相続に強い税理士事務所もありますが、相続をほとんどやったことがない税理士事務所があることも事実です。どの税理士事務所に依頼するか、よく吟味することが重要です。
人がお亡くなりになると、相続以外に、やらなければいけないことがとても多くあります。「餅は餅屋」で、専門家に依頼できるところは専門家に依頼することをお勧めします。
専門家の知識や経験を有効活用するのに加えて、専門家に依頼することにより、忙しい中にも、多少なりともご自分に「心の余裕」を持つことができるのではないでしょうか。