生命保険金で税金!?相続放棄しても税金を納付すべき場合とは
「相続に関しては相続放棄をしたので、税金に関しても支払い義務がないはず…」 相続放棄を行なった場合、最初から相続につ…[続きを読む]
皆さんの中には、「生命保険金(死亡保険金)」を受取ったり、また、会社在職中にご主人が亡くなり「死亡退職金」を受取ったりした方も多いと思います。
このようにして受取った財産について、「どのように相続手続きをしたらよいか分からないな?」、「そもそも、死亡保険金や死亡退職金に相続税がかかるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
死亡保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」と呼ばれており、相続税の課税対象になります。
そこで、今回は、「そもそも、みなし相続財産って何?」を説明するとともに、「みなし相続財産の相続税評価方法」について解説します。
目次
あまり聞きなれない「みなし相続財産」ですが、みなし相続財産とはどのような財産なのでしょうか?通常の相続財産とどこが違うのでしょうか?
民法上は相続財産ではないが、相続税法上は相続財産とみなされて課税対象となってしまうのが「みなし相続財産」です。
ここでは、まず、民法上の相続財産とみなし相続財産との違いについて見ていきます。
民法上の相続財産とは、「個人が死亡した場合に、その者の有していた財産上の権利義務」です。
つまり、お亡くなりになった方が有していた土地、家屋、預金、株式など遺産と呼ばれている財産のことを言います。
ちなみに、負債も遺産に含まれます。
この相続財産を被相続人から相続人へ承継させるのが相続という事になります。そこで、相続財産をどのように分割して相続人に承継させるかを決めるため、遺産分割協議を行う必要があります。
みなし相続財産は、死亡時に被相続人が有していた財産ではないけれど、死亡によって発生する財産のことを言います。
死亡保険金が代表的なみなし相続財産です。死亡保険金は被相続人の死亡時に被相続人が有しているのではなく、死亡によって発生したものです。そのため、生命保険金は、民法上は相続財産ではありませんが、相続財産とほとんど変わりませんので、相続税法上はみなし相続財産として扱われて課税対象になります。
みなし相続財産は、被相続人から相続人へ相続によって承継するものでなく、相続人に直接支払われるものですので、遺産分割協議の対象にはなりません。
ここでは、みなし相続財産にはどのようなものがあるかを見ていきます。
上記で取り上げた死亡保険金以外にも、いくつかみなし相続財産に該当するものがあります。
代表的なみなし相続財産には、次のようなものがあります。
被相続人の死亡により受取るのが生命保険金で、被相続人から承継した財産ではありません。
生命保険金を受取る時は、相続税が課される場合、贈与税が課される場合、および所得税/住民税が課される場合があります。その中で、生命保険金の保険料を被相続人が負担していた場合にみなし相続財産となり、相続税の対象となります。
保険料負担者が被相続人でない場合は、相続税ではなく、受取人によって、贈与税又は所得税/住民税の対象となります。
被相続人の退職金が死亡により支給され、その支給が死亡後3年以内に確定した場合は、みなし相続財産となります。
死亡退職金の受取人は、会社の規程により決められています。
なお、3年以内に確定しなかった場合は、所得税/住民税の対象となります。
また、確定拠出年金で積み立てた資産について死亡一時金として支払われる場合も、死亡退職金同様、みなし相続財産になります。
確定拠出年金死亡一時金の受取人も、あらかじめ決められています。確定拠出年金では、次の通り、民法上の相続順位と異なっています。
被相続人が亡くなる前の3年以内に生前贈与された財産は、みなし相続財産となります。110万円の基礎控除以内の贈与についても、みなし相続財産に含まれます。
生前贈与を行ったときに贈与税を支払っていれば、その分の税額は相続税額から控除されるため、二重に税金を払わされることにはなりません。ご安心ください。
みなし相続財産とみなされるのは、生前贈与を受けた人が、生命保険金などのみなし相続財産も含めて、被相続人の死亡時に財産を受取る場合に限られます。
被相続人の死亡時に財産を受取らない場合は、生前贈与をしていてもみなし相続財産になりません。
相続時精算課税を適用して贈与を受取った財産はみなし相続財産となり、相続税の課税価格に加えます。
この場合は、無条件でみなし相続財産となり、課税対象になります。
定期金とは、定期金給付契約に基づき保険会社などから定期的に受取る事ができるお金のことです。保証期間内に定期金の受取人がお亡くなりになった場合は、受取人の相続人等が定期金を受取ることができます。
また、保証期間内に退職年金の受取人がお亡くなりになった場合も、同様に、受取人の相続人等がその年金を受取ることができます。
これらの定期金や退職年金はみなし相続財産になります。
ここでは、みなし相続財産の相続税評価方法について見ていきます。
非課税枠が設けられているみなし相続財産があり、節税ができるケースがあります。
生命保険金には、次の非課税枠が設けられています。
生命保険金から非課税枠が控除され、控除後の金額が相続税対象となります。
生命保険の非課税枠
500万円×法定相続人の数
事例1.:以下の条件で相続した場合の生命保険非課税枠・課税対象額
被相続人:夫
相続人:妻、長男、長女
生命保険金受取人
・妻:3000万円
・長男:2000万円
・長女:1000万円
非課税枠
500万円 × 法定相続人の数 = 500 × 3 = 1500万円
課税対象額
生命保険金の合計 - 非課税枠 = 6000 - 1500 = 4500万円
なお、生命保険金の受取人毎の非課税枠は、受取る生命保険金の割合で案分します。
相続人 | 計算式 | 受取人の非課税枠 |
---|---|---|
妻 | 1500 × 3000 ÷(3000+2000+1000) | 750万円 |
長男 | 1500 × 2000 ÷(3000+2000+1000) | 500万円 |
長女 | 1500 × 1000 ÷(3000+2000+1000) | 250万円 |
なお、相続人でない人が生命保険金を受取る場合は、非課税枠の適用はありません。
死亡退職金、確定拠出年金死亡一時金(以下、死亡退職金等と記します)には、次の非課税枠が設けられています。
死亡退職金等から非課税枠が控除され、控除後の金額が相続税対象となります。
なお、死亡保険金と確定拠出年金死亡一時金を同時に受取る場合は、その合計額から非課税枠が控除されます。
死亡退職金等の非課税枠
500万円 × 法定相続人の数
事例2.:以下の条件で相続した場合の死亡退職金等の非課税枠・課税対象額
被相続人:夫
相続人:妻、長男、長女
死亡退職金等受取人
・妻:3000万円
非課税枠
500万円 × 法定相続人の数 = 500 × 3 = 1500万円
課税対象額
死亡退職金等 - 非課税枠= 3000 - 1500 = 1500万円
なお、相続人でない人が死亡退職金等を受取る場合は、非課税枠の適用はありません。
非課税枠はありません。
みなし相続財産として相続財産に加算される財産の価額は、相続時の価額ではなく、贈与時の価額となります。
非課税枠はありません。
みなし相続財産として相続財産に加算される財産の価額は、相続時の価額ではなく、贈与時の価額となります。
非課税枠はありません。
相続税評価額は、以下の1.~3.のうちいずれか多い金額となります。
なお、終身定期金の場合は、「定期金の給付が受けられる残りの期間」を「余命年数」と読み替えて、厚生労働省より発表している平均余命データを使用します。
相続財産に負債がある場合や、他相続人に遺産を相続させるために、相続放棄ができることはご存知だと思います。
それでは、相続放棄をすると、みなし相続財産はどうなるのでしょうか?
生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産は、被相続人から相続人へ相続によって承継するものでなく、相続人に直接支払われるものです。
相続放棄は、被相続人から相続人への相続を放棄するものですので、相続人に直接支払われるみなし相続財産は、相続放棄の対象ではなく、相続放棄をしても受取れます。
しかし、相続放棄してもみなし相続財産は受取れますが、みなし相続財産として相続税の課税対象になりますので注意が必要です。
今回は、みなし相続財産について見てきましたが、でも、「生命保険金」はほとんどの方が対象になるのではないでしょうか?
生命保険金以外でも、亡くなった方が在職中の場合は「死亡退職金」が対象になり、生前譲与を行っている方は「被相続人死亡前3年間に贈与された財産」が対象になるかもしれません。
みなし相続財産を相続人が受取る場合はご自分で評価できそうですが、みなし相続財産を相続人でない方が受取る場合や相続放棄を行う場合などイレギュラーなケースでは、専門知識が必要になってきます。
また、みなし相続財産は遺産分割協議に含まれませんので、みなし相続財産が極端に多くて通常の遺産が少ない場合は、遺産分割や民法で保証している遺留分(相続財産に対する最低限度の取り分)をめぐって相続人間のもめ事が起こるケースもあります。
遺産分割協議においては、みなし相続財産も考慮したうえで、行う必要があります。
どちらにしても、みなし相続財産について理解したうえで、相続税の経験豊富な税理士に相談することをお勧めします。