美術品の相続|その評価方法と物納・寄託などの処分方法について

絵画や臺などの美術品を相続した場合には、相続財産として相続税がかかります。美術品は他の動産に比べて価値の差が大きく、価値が高い場合には相続税額に大きく影響してしまう点が怖いところです。
今回は美術品を相続した場合に気になることを徹底解説します。

1.美術品などの相続税評価方法

1-1.評価方法

美術品は次の金額を参考にして評価します。

  • 売買実例価格
  • 精通者意見価格

ただし美術品の特徴として、物によってその評価がピンキリだという問題点があります。
世界に1点しかないような価値ある絵画の評価額を、ネット情報などで調べた売買実例価格だけで決めてしまうのは危険です。

なぜなら、美術品の多くは1点もので市場というものがありません。また、価値が高く値幅も広すぎます。よって、後々税務調査が入った際、本来はこの評価額のはずだと追徴税を取られる可能性があるからです。
美術品の評価方法は、その価値によって使い分けた方が良いです。

1-2.高価なもの

価値が数百万単位になるような美術品は、専門家の鑑定をしっかり受けた精通者意見価格にしましょう。
高い場合には1点数万円程度の鑑定料がかかってしまいますが、税務調査で追徴税と加算税を取られるよりは断然安く済みますし、何より安心して申告できる点は大きいです。

1-3.比較的安価なもの

価値が数十万円程度の美術品については、相続税の計算上、美術品として相続財産に個別記載はせず、家具家電などの家庭用財産に含めてしまいます。
美術品1つ1つすべてを鑑定してもらい、評価額を決めた方が確実ではありますが、家庭用財産に含めてしまうような美術品にまで鑑定料を支払うのは勿体ないです。

このような比較的安価な美術品については、質屋やリサイクルショップに持って行って買取価格を査定してもらいましょう。
鑑定士のようにその道の専門家ではありませんが、無料で査定して貰えますし、実際にその店で売る場合にはその金額となるわけなので、その美術品の価値であるといえます。

1-4.事業者が所有している美術品

美術品の販売事業者が所有している美術品は、棚卸商品等として評価します。 事業者の確定申告にかかる決算書に記載してある、その美術品の帳簿額をそのまま評価額とすることができます。

2.美術品は納税にメリットがある

美術品はその性格上、相続税の納税に利用することができます。

2-1.特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度

特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度とは、一定の条件を満たした美術品を美術館などに寄託していた人が死亡した場合に、その美術品の評価額の80%に相当する相続税の納税が猶予される制度で、2018年度税制改正にて創設されました。

美術品は被相続人が大切にしていても、相続で持ち主が変わると管理が不十分で破損してしまったり、売却されるなどして次世代に引き継がれていかれないことが問題視されており、この制度を作ることで、個人が所有している価値ある美術品が美術館などへ寄託されることを促しています。

納税猶予を受けた相続人が死亡した場合や、寄託している美術品を寄贈した場合などには、その納税猶予を受けている相続税は免除されます。
反対に、寄託している美術品を譲渡した場合などには納税猶予は終了し、猶予されている相続税を納めなくてはなりません。

寄託と寄贈の違い とは?

寄託とは、美術品の所有権はそのままで、美術館で保管展示をしてもらうことです。
寄贈とは、美術品を無償で美術館に譲ることです。

寄託は所有権が移らず、寄贈は所有権が移ります。

2-2.特定登録美術品は物納OK

物納に充てることができる財産には順位があり、美術品は第3順位なのですが、その美術品が特定登録美術品である場合には第1順位となり、不動産などと並んで優先的に物納に充てることができます。

  • 第1順位…不動産や上場株式等
  • 第2順位…非上場株式等
  • 第3順位…自動車や美術品等の動産

特定登録美術品とは、登録美術品のうち相続開始前から所有していたものです。

登録美術品とは、文化庁に登録申請をして登録が決定した美術品で、美術館に寄託されているものをいいます。
この登録はどんな美術品でもできるものではなく、国宝や重要文化財に指定されているものや、世界的に見て優れた価値があるものでなければ登録されません。

3.美術品の相続は税務署にバレるのか?

美術品には、不動産や自動車のように名義がありません。誰が所有しているのかすぐには分からないのが事実です。
そうなると率直に思い浮かぶのが、「美術品は申告しないでもバレないのでは?」ということでしょう。

しかし現実はそう甘くありません。税務署の情報網は凄まじく、美術品の申告漏れはバレます。
美術品などを販売する事業者は、誰に販売したかを税務署に申告するようになっています。さらに税務署は、百貨店などの顧客リストまでも入手することができ、高価な美術品を購入できるような富裕層については、専用のデータベースを作成して、資産の全容を概ね把握できるようにしています。

ただし、これは資産が1億円を超えるような富裕層の話であり、一般庶民についてはここまで追いかけてくることはありません。そもそも相続税自体かからない人がほとんどであり、かかったとしても数十万円の美術品の申告漏れなど大した相続税額にならないからです。

4.相続した美術品の処分方法

せっかく美術品を相続しても、その管理の手間が負担になるなど理由で手放したいということもあるでしょう。
美術品を処分するには、次のような方法があります。被相続人が大切にしていたものであることを意識しながら最善の処分方法を検討してみましょう。

4-1.国などへ寄贈する

相続税の申告期限までに、国や地方公共団体などへ美術品を寄贈した場合には、その美術品は非課税となり相続税はかかりません。
寄贈を行う期限が相続税申告期限までなので、被相続人が死亡した後でも検討することができる点がメリットです。

4-2.美術館へ寄託する

美術品の所有権はそのままで、美術館でプロの管理をしてもらうことができます。
特に絵画は、気温や湿度等をきちんと管理しなければすぐにカビが生えてしまうので、寄託はおすすめです。展示までされたならば、大切にしてきた美術品が多くの人に見てもらうことができ、被相続人も嬉しいことでしょう。

また2-1.で解説した通り、一定の要件を満たす場合には納税猶予を受けることもできます。ただし納税猶予は、被相続人が死亡する前に寄託していないといけない点に注意しましょう。

4-3.物納に充てる

美術品が登録美術品であり美術館に寄託している場合には、相続税の物納に充てることができます。
2-1.の納税猶予制度では、評価額の80%に相当する相続税が納税猶予されますが、物納の場合にはその評価額全額が相続税に充てられます。ただし物納は所有権もなくなります。

4-4.売却する

質屋や第三者などに売却すれば現金として相続できるので、相続税に充てるなど利用できる幅が広がります。 ただし、その美術品の評価額と同じ金額で売れるわけではない点に注意しましょう。

例えば人気番組「開運!なんでも鑑定団」で100万円の鑑定が出たとしても、それが市場の売却価格と一致するとは限りません。場合によっては二束三文の売却額になる可能性もあります。

仮に運よく購入価格より高く売れた場合にも注意があります。利益部分は譲渡所得として所得税がかかります。確定申告が必要になるので忘れずに行いましょう。

4-5.廃棄またはタダで譲る

被相続人が大切にしていたものと思うと少し忍びないですが、不要なものをいつまでも家に置いておくのも負担ですし、大きい美術品であれば尚更です。
価値がなく思い入れもない美術品については思い切って廃棄してしまいましょう。粗大ゴミとして処分料金が高額になる場合には、不用品回収業者も検討してみると良いでしょう。

また自分にとっては不要な美術品でも、それを必要としている人がいるかもしれません。身近にそのような人がいる場合にはタダで譲ったり、ネットオークションや今流行りのスマホのフリマサイトなどに出品してみると意外な高値が付くこともあるかもしれません。

まとめ

美術品は価値が低いものであれば家財に含んで評価すればよいため、相続税についてそれほど気にしなくても良いです。
価値が高い場合には、相続税への影響、納税が難しいのであれば納税猶予制度などの検討、税務調査の可能性など要注意です。
高価な美術品の評価は、素人が適当に金額を付けてしまうのは危険です。必ず税理士に相談しましょう。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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