純金の仏具は相続税対策になる?相続税法上の扱いと節税効果
「純金の仏具を購入すれば、相続税対策になる」という話が巷にはあります。確かに仏具は「祭祀財産」に当たるため、相続税法…[続きを読む]
「有事の金」と言われており、株や債券市場が下落傾向にある時期に、資産分散の観点で、資産を守るために有用とされているのが「金」資産です。
そのため、すでに資産ポートフォリオの一部として「金の延べ棒(金地金)」を保有している方もいらっしゃると思います。
そこで、今回は、金地金だけでなく金の仏像仏具を含めた金資産について、その相続税評価方法の説明をするとともに、金資産が相続税対策になるかについても見ていきます。
目次
まず、ここでは、金資産にはどのような種類があるのかについて説明します。
金地金以外にも、いくつかの金資産があります。
一般的な金資産は次のようなものです。
金資産としてまず思いつくのが、金地金、いわゆる金の延べ棒のことです。インゴット、ゴールドバー」とも呼ばれています。
資用に購入される金貨の一種で、外国製、日本製とがあります。
外国製のものとしては、カナダのメイプルリーフ金貨、オーストラリアのカンガルー金貨、ウィーンのウィーン金貨などがあり、日本でも、記念硬貨として発行されているものがあります。
毎月、一定額を積み立て、時価で純金を購入し、資産を運用する方法です。
金の取引業者などに、購入した金を預かって保管してもらえるサービスです。返却してもらうことはもちろん、売却してもらうことも可能です。
ジュエリーもれっきとした資産です。相続時に漏らしがちですので、注意しましょう。
祭祀用として、純金製の仏像やおりんなど仏具を購入する方もいます。
前章で、主な金資産について見てきました。
ここでは、金資産の中で、相続税の課税対象となる金資産について見ていきます。
「1. 金資産とは?」で解説した金資産のうち、次の金資産は、無条件に相続税対象の資産です。
相続税課税対象ですので、正しく評価し相続財産に含めて、相続税を支払わないといけません。
相続税の非課税財産の一つに「祭祀財産」(さいしざいさん)というのがあります。
祭祀財産とは、祖先や神をまつるためのまつりごとを取り行う場面で必要となってくるもので、民法上は、「系譜」、「祭具」、および「墳墓」が挙げられています。
仏具や仏壇は、祭祀財産のなかの祭具にあたります。
そのため、「預貯金や不動産を保有する代わりに、金の仏像や仏具を作って保有すれば、相続税が非課税になる」と考える方がいますが、税務署はそんなに甘くはありません。
仏像や仏具についても、「骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかる」(※)とされています。
※ No.4108 相続税がかからない財産|国税庁
よって、仏具仏壇については、
となります。
詳しくは、以下の関連記事をお読みください。
ここでは、金資産の種類ごとに、その相続税評価方法と、その評価額の調べ方について説明します。
金地金は、上場株式と同じように、市場で売買されていますので取引価格(業者買取価格)があります。
金地金の相続税評価は、相続発生時時点の取引価格が相続税評価額となります。
金地金には貴金属業者の刻印がありますので、取引価格については、その貴金属業者に直接問い合わせるか、ホームページで取引価格を得ることができます。
⾦地⾦の取引価格は1gあたりの⾦額で公表されていますので、金地金の重量をかけた金額が相続税評価額となります。
金地金の相続税評価額 = 1gあたりの取引価格 × 重量
金貨の相続税評価は、原則、相続発生時点の業者買取価格が相続税評価額となります。
貴金属業者に直接問い合わせるか、ホームページで取引価格を得ます。
日本の通貨で、通常、その金貨は額面で使用できますので、この場合は、額面を相続税評価額とします。
相続税評価では、骨とう品の扱いになります。
コイン買取業者で査定をしてもらい、相続税評価額とします。
金現物を手元に保管せずに、貴金属業者の純金積立や預かりサービスを使用して金を保有している場合もあります。
その場合は、そのサービスを利用している貴金属業者に直接問い合わせて、相続税評価を行います。
ジュエリーも相続税の対象資産です。
買取業者などで査定をしてもらい、相続税評価額とします。
仏具仏壇については、日常的に祀っている場合は、祭祀財産として非課税ですので、相続税評価は必要ありません。
相続対策として金の仏具仏壇を購入してしまい、運悪く、祭祀財産とはならず課税対象となってしまった場合は、買取業者などで査定をしてもらい、相続税評価額とします。
ここでは、金資産を使って、相続税対策ができるか見ていきます。
結論から言いますと、基本的に、相続税対策にはなりません。
仏具仏壇以外については、間違いなく相続税の対象資産です。
金資産の相続税評価は、相続発生時点の業者買取価格が相続税評価額となります。
そのため、該当の金資産の購入価格と、相続発生時点の業者買取価格に大きな差が出ることはなく、相続財産を減らすことができないためです。
仏具仏壇については、上記で見てきましたように、通常は非課税ですが、相続対策用に金の仏像などを購入した場合は、課税対象と判断されるリスクが大であり、勧められません。
仮に、金の仏像や仏具を作る場合は、金の加工費や美術品としての価値が加わりますので、同じ重量の金地金に比べて割高になってしまいます。
一方で、金の仏像や仏具を貴金属として売却する場合は、金の重量分の価格となり目減りしてしまいます。
見術品として売却する場合は、その時の需給により相場が異なり不透明です。
仏具仏壇については、課税となってしまうリスクに加えて、資産価値の観点からもお勧めできません。
金資産そのものについては、相続税の節税対策には向きません。
しかし、節税以外の相続対策の観点、例えば、「遺産分割のもめごと防止」については、金資産であれば、不動産などに比べて、相続時に現金化が簡単で、遺産分割も容易になります。
また、資産ポートフォリオの観点では、不動産の固定資産税のような税金がかからずに金資産を保有でき、かつ「有事の金」の考え方もあります。
金資産を相続節税対策ではなく、これらの観点から、資産の一部として金資産を保有するのは良いのではないでしょうか。
今回は、金資産について、その相続税評価についてみてきました。
仏具仏壇以外については、金資産は相続税の対象資産となり、基本、相続発生時点の業者買取価格が相続税評価額となります。
仏具仏壇ついては、通常は非課税ですが、相続対策用に金の仏像や仏具などを購入した場合は、課税対象とみなされるリスクが大きいので、節税対策として金の仏像を購入するのは勧められません。
金資産については、節税対策はできませんが、金資産を保有するメリットはありますので、「有事の金」の観点も踏まえて、資産保全に活用されてはいかがでしょうか?
最後に、悪知恵を働かせて、金の延べ棒を隠して相続税を脱税しようしても、税務署にバレてしまうのがオチです。
税務署は、被相続人の資産の動きを細かく調べ、不自然な箇所があれば税務調査が入り、不正がバレてしまいます。
万一、運良く相続の時点で見つからなくても、売却時に、ある一定価格以上の金の売却の場合、その事業者は、個人番号(マイナンバー)含めた各種情報(支払調書)を税務署に提出することが義務づけられています。
結局、この時点で金の延べ棒の所有がバレてしまい、追徴課税というペナルティを支払うことになってしまいます。
このようにならないように、正しく納税しましょう。