相続税における土地の評価方法:路線価方式と倍率方式
相続税や贈与税では、土地の評価額は売買金額ではなく相続税評価額と呼ばれる特殊な計算方法によって決まります。ここでは、…[続きを読む]
2022年3月22日、国土交通省は最新の公示地価を発表しました。
新型コロナウイルスが拡大してから2度目となる今回。依然としてコロナウイルスの影響を受けつつも、2年ぶりに上昇へ転じる結果となりました。
今年の公示地価の最新情報をエリア別の傾向も含めてお伝えします。
目次
まず公示地価について簡単にご説明しましょう。公示価格と相続税には密接な関係があります。
公示地価(公示価格とも呼ばれる)とは、その年1月1日時点における全国の標準地約26,000ヶ所の土地価格のことで、毎年3月中旬に国土交通省が公表します。
一般の人が土地取引をするうえで、その土地が今いくらになるのか、客観的な目安として活用されます。
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際の土地評価に用いる金額で、公示地価の約8割を目安に設定されます。
公示地価を国土交通省が公表するのに対して路線価は国税庁で、公表時期も毎年7月1日となっています。基準日はどちらも1月1日で同じです。
公示地価が高くなると、相続税が高くなります。なぜでしょうか。
路線価は公示地価の約8割で設定されており連動しているため、公示地価が高くなれば路線価も高くなるからです。
公示地価が100万円なら路線価は80万円、次の年に公示地価が120万円になったなら、路線価は96万円になるということです。
土地に対する相続税は、路線価を用いて計算される相続税評価額に対してかかるため、公示地価が上がれば路線価も上がり、土地の相続税評価額も上がる、そして相続税も上がるという流れになります。
それでは本題となる最新の公示地価について解説していきます。
公示地価は土地の用途を「住宅地」、「商業地」、「工業地」などに分類して公表されます。
これら全用途の2022年1月1日時点における全国平均は前年比プラス0.6%となり、2020年1月1日以来2年ぶりの上昇となりました。
用途別では、住宅地プラス0.5%、商業地プラス0.6%、工業地プラス2.0%となっており、工業地は6年連続の上昇で上昇率も拡大しています。
住宅地 | +0.5% |
---|---|
商業地 | +0.6% |
工業地 | +2.0% |
住宅地については、長らく続く新型コロナウイルス禍によるが委縮自粛に伴って、おうち時間の充実を図る人が増加し、住宅購入意欲の高まっています。全国的に幅広い地域で地価が回復しています。
商業地についても、新型コロナウイルスの影響が徐々に薄れている印象で、遠くの観光地まではいけないものの、近場の商業地で買い物やレジャーを楽しむ傾向が強まっており、駅周辺や幹線道路沿いを中心に回復が目立ちました。
反対に、インバウンド客が多かった観光地では、依然として下落が続いています。
公示地価の基準日は2022年1月1日時点として公表されていますが、実際の調査が行われたのは、オミクロン株の感染拡大が深刻化する前になります。
コロナワクチンの2回目の接種も8割近く済んだ頃であり、多くの人が感染対策をしながら生活を楽しもうとしていた頃です。
2021年中において、景況感が改善されていたタイミングでの調査結果である点に注意しましょう。
次に三大都市圏である、東京都、大阪府、名古屋エリア(愛知県について、公示地価の傾向を見ていきましょう。
東京都の全用途の平均は前年比プラス0.9%で、前年のマイナス1.0%から上昇へ転じました。標準地2,564点のうち、上昇したのは1,814地点、下落は304地点です。
都心の大きな商業地よりも、自宅近くで買い物をする傾向の強まりから、住宅地が多い区を中心に上昇しています。特に、再開発や区画整理が進んでいる地域では、強い上昇を示してしています。
住宅地の公示地価は、東京23区すべてで上昇しており、特に中央区が2.9%と最も高い上昇率となりました。
東京都は全国的にもテレワークが浸透しており、住環境の見直しから都心のマンション需要が高まったことが要因と考えられます。
商業地で最も上昇率が高かったのは中野区の2.3%で、杉並区2.1%、荒川区2.0%と続きます。
全国の最高価格は、16年連続で今年も東京都中央区銀座4の「山野楽器銀座本店」となっており、1平方メートル当たり5300万円で前年より60万円下がっています。
大阪府は三大都市圏で唯一、全用途で前年比横ばいとなった地域です。
住宅地は、東京都と同様にマンション需要の高まりなどからプラス0.5%となりました。
商業地については、マイナス0.2%となっており前年に続いて下落しています。
ミナミなど新型コロナウイルスの影響によって制限される飲食店街や、インバウンド客が多く訪れていた観光地が多いことが下落に影響しており、商業地の下落率ワースト1位は大阪市中央区道頓堀1丁目の道頓堀で、マイナス15.5%となっています。
県内の最高価格は、大阪市北区大深町4の「グランフロント大阪南館」で、1平方メートル当たり2210万円となっていますが、2年連続で下落しています。
愛知県では住宅地プラス1.0%(前年マイナス1.0%)、商業地プラス1.7%(前年マイナス1.7%)となっており、いずれも2年ぶりの上昇となりました。
住宅地では金融緩和の影響による投資需要の高まりもあり、名古屋市東区などのマンションを中心に上昇率が大きくなっています。
商業地では特に名古屋市中心部の需要が固く、16区すべてで上昇しており、平均上昇率は3.2%となっています。
県内の最高価格は、名古屋中村5-2の「名古屋駅4丁目」で、1平方メートル当たり1,850万円となっており、上位5地点のうち4地点が名古屋駅周辺の土地となっています。
地方圏の全用途平均はプラス0.5%となっています。
上昇率のトップは、住宅地と商業地いずれも北海道北広島市となっており、住宅地26%、商業地19.6%と圧倒的な数値を記録しました。
住宅地では、上昇率ランキング100位中96地点に北海道内の地域がランクインしており、再開発が盛んな札幌市周辺は、コロナ禍でも堅調な住宅地需要があることを物語っています。
北広島市には2023年3月に「北海道ボールパークFビレッジ」が開業する予定となっています。プロ野球チーム北海道日本ハムファイターズの新球場を核として、ショッピングや飲食、レジャーを楽しむことができる敷地面積は5ヘクタールの大規模な施設です。
これが、商業地だけでなく、住宅地の公示地価上昇にも一役買っており、札幌市から流れた住宅需要と、ボールパークの一大再開発が、ここまで大きな上昇率となった理由です。
地方圏の上昇率がプラス0.5%という結果になったのは、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の4市がプラス5.8%となったことが要因であり、これら4市を除く地域の数値では、マイナス0.5%になります。
新型コロナウイルスの影響は首都圏を中心に薄れつつありますが、依然として地方では回復という言葉は遠いようです。
2022年の公示地価は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2021年から一転し、全国平均は上昇に転じています。
特に住宅需要の影響が顕著で、人気の高い都市部やその周辺では上昇傾向が強くなっています。
ただ、まだまだ地方の回復には至っておらず、主要都市圏以外は全体的に下落傾向が続いています。
ただ、いまだに新型コロナウイルスの終息への道は全く見えていない中にあっても、わずか1年でここまで景況感が改善されていることから、これから数年の動向に期待が高まります。
【参考サイト】「令和4年地価公示」 | 国土交通省