相続税における土地の評価方法:路線価方式と倍率方式 | 相続税理士相談Cafe
相続税や贈与税では、土地の評価額は売買金額ではなく相続税評価額と呼ばれる特殊な計算方法によって決まります。ここでは、…[続きを読む]
土地の価格(評価額)を算定する場合には、4つの指標が存在するのをご存知でしょうか?
次に挙げるのが4つの指標です。
同じ土地でも、この4つの異なる指標で計算すると、異なる土地の価格が算出されます。それぞれ異なった指標は、算出する「目的」によって使い分けられます。
今回は、各指標の説明と、相続税ではなぜ相続税路線価を使用して地価を評価するのかをご紹介します。
目次
土地の価格(評価額)についての4つの指標は、それぞれ違う公的機関が異なる算出方法により決定しています。最初に4つの指標の概要を見ていきましょう。
公示地価 | 相続税路線価 | 基準地価 | 固定資産評価額 | |
---|---|---|---|---|
公的機関 | 国土交通省土地鑑定委員会 | 国税庁 | 都道府県 | 市町村 |
算定方法 | 地価公示法に基づき、1つの基準地点に2人以上の不動産鑑定士が別々に評価 | 土地の売買実例価格、公示地価、不動産鑑定士の鑑定評価、精通者意見価格などを踏まえて、最終的に国税局長が決定 | 国土利用計画法に基づき1つの基準地点に1人以上の不動産鑑定士が評価 | 不動産鑑定士が正常価格を評価し、その価格に70%を乗じる。更に画地補正を施して土地の固定資産税評価額を評価。 なお、市街地評価にあたっては、路線価を付設して求めることとされている |
評価時期 | 毎年1月1日時点 | 毎年1月1日時点 | 毎年7月1日時点 | 毎年1月1日時点 |
算出価格の単位 | 1㎡当たりの価格(標準地) | 路線に面する土地の1㎡当たりの価格 | 1㎡当たりの価格 | 1筆の価格 |
公示地価とは、地価公示法に基づき国土交通省土地鑑定委員会が発表する「1㎡あたりの土地の価格」です。
対象になる土地は、都市計画法による都市計画区域と、土地取引が相当数見込まれる区域です。公示地価は、路線価や固定資産税評価額を算定する際の基準となっており、土地を評価する上での目安の価格となっています。
通常、土地の売買では、売主と買主の間で決められた売却価額によって取引が行われます。しかし、「地価公示法 第1条の2」では、「土地の取引を行う者の債務」として「公示価格を指標として取引を行うように努めなければならない」と規定されています。
つまり、土地の売買を公示価格とかけ離れた金額で行うことは難しいのです。
公示地価の算定は、公平性を重視して考えられています。また、地価公示法に基づき、1つの基準地点を2人以上の不動産鑑定士が別々に算定することになっているため中立性が確保されています。
不動産鑑定士が算定した、鑑定評価書情報を誰でも閲覧することできるため透明性の高いシステムになっています。
【参考外部サイト】「地価公示」|国土交通省
相続税路線価とは、市街地にある道路(不特定多数が通行する道路)に面する土地の1㎡あたりの評価額のことです。
相続税や贈与税の土地の評価額(相続税評価額)の算定基準になります。土地の売買では、先程の「公示地価」を参考に売り手と買い手で価格を決定しますが、相続税評価額を算定する場合は「相続税路線価」、路線価が付されていない地域の場合は評価倍率表を使用して計算をします。
「相続税評価額」は、「公示地価」の80%程度の水準に設定されており、最終的には国税局長が路線価の金額を決定し、例年7月1日に公表することになっています。
【参照】国税庁HP 路線価図 評価倍率表
基準地価とは、各都道府県が「国土利用計画法」に基づいて公表している全国2万ヶ所以上の基準値の標準価格のことです。
公示地価と類似していますが、公示地価とは異なり、算定対象地域を限定していないのが特徴です。公示地価の算定対象地域は都市計画区域、又は相当数の取引が見込まれる区域のみですが、基準地価は全国津々浦々の地価が公表されています。
基準地価の算定は、1ヶ所につき1人以上の不動産鑑定士が鑑定評価を行い、1㎡あたりの評価額を算出します。基準地価の評価額は、毎年7月1日を基準日として9月下旬に各都道府県が公表します。
公示地価が1月1日を基準日としているため、基準地価と公示地価を比較することで半年に1度のペースで地価の変動をみることができます。
参考までに以下のサイトでは、東京都の基準地価がご覧いただけます。
【参考外部サイト】東京都財務局HP 東京都基準地価格
固定資産税評価額とは、固定資産評価基準に基づいて各市町村が決定する評価額です。
固定資産評価基準は、地方税法の規定によって総務大臣が定めた土地や建物などの評価方法を定めたものです。固定資産税は毎年1月1日を基準日にして算定されるため、固定資産税評価額についても毎年1月1日現在の評価額になっています。
土地の固定資産税評価額の算定は、地目(※)を実地調査により認定し、対象の土地の評点数を計算し、評点1点あたりの価額を乗じる方法です。土地の地目により評点の計算方法が異なります。
例えば、「宅地」であれば、市街地宅地評価法 ( 路線価方式 )で計算され、「田」であれば標準地比準方式で計算されます。
※地目:土地の用途ごとの区分で、宅地、田、畑、山林、雑種地など23種に亘ります。
各市町村により「固定資産税評価額」が決定され、次に固定資産税が課税されます。固定資産税は、次の計算式により算出されます。
固定資産税の税額=固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
「固定資産税評価額」は、固定資産税の算出以外にも「登録免許税」「不動産取得税」の計算にも使用されます。
土地の価格は、ここまでご紹介した4つの地価(評価額)に実際の取引時価(実勢価額)を加えた5つの価格が存在します。
この5つの評価額はそれぞれ目的によって使い分けられています。それぞれの評価額の関係性を簡単にご紹介し、なぜ相続税評価は相続税路線価を使用するのかを見ていきましょう。
土地の価格についての5つの方法で算出した地価(評価額)には、算出方法の違いなどから結果が大きく異なります。一見関連性が無さそうですが、算出した価格には一定の法則があります。
相続税や贈与税での土地の評価方法は、「相続税路線価」又は「評価倍率表」により計算することになります。なぜなら、国税庁が、相続財産の評価基準について財産評価基本通達で定めているからです。
財産評価基本通達とは、不動産の評価基準や株式の評価基準などの相続財産の評価基準を定めている通達です。通達の中で、相続財産の評価は時価で行うことを原則としています(相続税法22条)。
しかし一方で、相続や贈与の対象となる財産は多種多様であり、財産の的確な評価が必ずしも容易ではなく、税務行政の円滑化のために課税庁内部での取り扱いを統一するために、相続税・贈与税の対象となる財産の評価は、別途財産評価基本通達が定められています。路線価方式とは、この財産評価基本通達に定められた評価方法なのです(※)。
※第2節 宅地及び宅地の上に存する権利|国税庁
つまり、「相続税路線価」又は「評価倍率表」を使用して算出した相続税評価額であれば、税務署から税務否認されることはありません。
相続税路線価により評価した価格は、公示地価の約80%程度と言われています。
「相続税路線価」により評価した価格は「財産評価基本通達」上の時価と規定されていますが、なぜ相続税路線価と公示地価との間に20%も差があるのでしょうか。
これには諸説あります。
実勢価格(取引時価)は売手と買手により決まるため、取引金額が公示地価や基準地価より大きく下回る場合も多々あります。これは、相続税評価額を公示地価と同水準にした場合、相続税評価額が実勢価格(取引時価)を上回ってしまう可能性があるということになります。
相続税評価額が実勢価格より過大になってしまえば、納税者に過大に相続税を負担させてしまうことになりかねません。このようなケースを防ぐために、「相続税路線価」は、「公示地価」の80%を目安に設定されていると言われています。
今回は、4つの土地の評価方法と、なぜ相続税評価は相続税路線価を使用して評価を行うのかをご紹介しました。
それぞれの評価方法は、異なる公共機関から発表され、異なる目的に使用されています。相続税路線価についは実勢価格に比べて約80%になっており、実際の時価とは異なっています。土地の価格を求める時は、その目的に合った評価方法を使用する必要があります。