別荘地でよく起こる、評価額が時価より高い時の相続税申告のポイント

古民家

不動産の相続税申告では、不動産の時価ではなく相続税評価額で申告します。通常、評価額は時価の約70~80%程度とされており、時価よりも低い有利な金額で申告できます。

しかし、何らかの事情によって、相続税評価額が時価よりも高くなってしまうことがあります。ここでは「土地」に限定をして、評価額を時価が上回ってしまうケースを見るとともに、その場合の対処法について確認します。

土地の基本的な2つの評価方法

相続税申告をするために、通常行われる土地の評価方法について簡単に触れます。詳しくは下記を参照ください。

【参考】相続税・贈与税における土地の評価方法(路線価方式と倍率方式)

路線価方式

市街地を中心として基本的に多くの土地評価額は「路線価方式」によって算出されます。国税庁によって決められた「宅地価格」に従って土地評価額を算出します。一般的な目安では売買取引時価の7割~8割程度と言われています。

倍率方式

宅地以外の山地や田畑などは一般的に「倍率方式」が用いられます。倍率方式は固定資産税評価額に対して、国税庁が定めた倍率を乗じて土地評価額を算出する方式です。

土地評価額と時価が逆転する要因

基本的には土地評価額を算出すれば時価よりも低く評価されます。しかし、何らかの要因により、評価額が時価がを上回ることもあります。この要因をいくつか確認してみましょう。

不況や震災によって地価が暴落する

かつて、土地価格は下落しないという「土地神話」がありました。しかし、その神話はバブル崩壊によってあっけなく崩れ去りました。地価は「景気変動」によって高くも低くもなります。

また地価は「自然災害」によっても低くなることがあります。特に、昨今の日本列島には震災を始めとする自然災害が増えています。2011年には東北を中心とした東日本大震災が起こり、2016年には熊本地震が発生しています。

路線価は毎年7月ごろに公表されますが、その後に不況や災害で土地価格が急落した場合、評価額は変わりませんので、土地評価額が時価を上回るケースが発生します

過疎化・少子化等により需要がない

日本国内では過疎化・少子化が進んでいる地域は多いです。こうした地域では土地の需要がなく、時価が低くなるケースも見られます。評価額もある程度は地域の情勢を取り込んで決定されますが、まったく人気のない土地は、想像以上に時価が下がってしまうことがあります。

倍率計算でしか計れない

路線価方式は市街地にしか適用されず、別荘地などの地目が山林の地域には「倍率方式」が適用されます。倍率方式では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけるのですが、固定資産税評価額は3年に1回しか改訂されません。その結果、本来の価格で評価されないため、評価額が時価を上回る可能性もあります。

なお、別荘地の相続税評価基準は曖昧に決まっており、評価額が時価を上回るケースがよく起きるので注意をしてください。

土地評価額と時価が逆転した場合の対処法

土地評価額と時価が逆転した場合には、通常、「不動産鑑定士」に依頼をして時価を正しく評価してもらうことで、時価によって相続税申告をすることが可能です。

不動産鑑定士に時価を算定してもらう

不動産鑑定士とは、土地や家屋などの時価評価をすることを認められた専門家です。不動産鑑定士に依頼をすれば、中立かつ公平に土地取引価格を算定してくれますので、土地の正しい時価を知ることができます。

なお、不動産鑑定士以外には時価評価を認められている職業はありません。したがって、もし時価にて相続税申告を希望する場合には、不動産鑑定士に依頼するほかありません。

不動産鑑定士への依頼は税理士にお任せできる

実は不動産鑑定士は、平成24年時点で全国で約9,000人しかいません。これは、税理士や弁護士と比較しても圧倒的に少ない人数です。さらに、不動産鑑定士のほとんどは、東京・大阪の周辺に集中しており地方ではごく少数しかいません(たとえば、秋田県・山形県では18人)。非常に少ない不動産鑑定士を探すのは大変ですし、誰が信頼できる人かもわからないでしょう。

ところで、税理士は土地評価に際して、たいてい不動産鑑定士と連携していますので、上記のように評価額が時価より高いという事態が発生すれば、申告を依頼している税理士のほうから不動産鑑定士に依頼してくれます。依頼者としては何か特別なアクションが必要になるわけではありませんのでご安心ください。ただ、不動産鑑定士の報酬は別途発生します。物件にもよりますが、不動産鑑定士の報酬は通常30~50万円とされていますのでご参考ください。

過去の判例による時価の適用

基本的には相続税申告における相続財産は、路線価でも時価でもどちらでも報告して良いとされてます。しかし、過去にはどちらを採用するかで、法廷で争われたこともあります。(平成9年11月6日裁決や平成12年11月裁決など)

この判決を簡単にまとめると、評価額もしくは時価のいずれかが上回っている場合に、低い評価方法にて評価するのが相当とする内容です。したがって、万が一法廷で争うことになったとしても、正しく土地の取引価格を算定していれば、適用することが可能になります。

土地評価額が時価より高い時の相続税申告のまとめ

不況や災害で土地価格が急落すると、土地の評価額が時価を上回ることが起こりえます。
基本的に相続税申告では、土地は「路線価方式」または「倍率方式」によって評価されますが、時価でも申告することが可能です。ただし、時価で申告するためには、不動産鑑定士に正しく鑑定してもらう必要があります。

不動産鑑定士は全国的に人数が少ないため、相続税申告を含めて、まずは税理士に相談されるのが良いでしょう。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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