相続税申告と納税の方法

★ お気に入りに追加
相続税の申告と納税

2015年の相続税法大改正で基礎控除額の減額が行われて以来、相続税申告の対象となる人は以前の倍となりました。 自分は関係ないと思っていても、実は対象となっているかもしれません。

今回は、相続税申告と納税についての基本をわかりやすく解説します。相続税の大枠を知ることで、いざという時に焦ることがないようにしましょう。

1.相続税申告とは?

最初に、相続税と申告について簡単に説明しておきましょう。

1-1.相続税とは

相続税とは、亡くなった人の財産を相続や遺言によって貰った場合に、その財産の金額に応じて課される税金で、財産を受け取った人が納めなければなりません。

では、なぜ相続税を納付しなければならないのでしょうか?

相続税は、「富の再分配」という考え方の下に徴収されています。国が一定額以上の財産を相続した人達から税金を徴収し、それを社会に還元するという考え方です。

相続では亡くなった人のことを「被相続人」、財産を受け取った人を「相続人」といいます。

1-2.相続税申告とは

相続税申告とは、申告書に相続財産の金額や相続税の計算経緯などを記載し、税務署に提出します。こういう相続だったので相続税をこれだけ納めますよ、というものです。

申告するのは納税者である相続人です。相続人が複数いる場合は、通常、まとめて一緒に申告します。ただし、連絡が取れないなど特別な事情があれば別々に申告することも可能です。

2.相続税申告の基礎知識

次に、相続税申告の最低限の知識について解説します。

2-1.相続税申告が必要となる人

相続税申告は相続人が行いますが、すべての相続人に必要なわけではありません。次に該当する人に相続税申告が必要となります。

  • 相続財産の総額が基礎控除額を超えた場合に財産を取得した相続人全員
  • 配偶者の税額軽減の適用を受ける配偶者
  • 小規模宅地等の特例の適用を受ける者

相続税にはすべての人に基礎控除額が設けられており、その金額に達するまでは相続税がかからないようになっています。

配偶者控除や小規模宅地等の特例の適用を受けない限り、相続財産総額が基礎控除額以下であれば申告は不要です。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数え方

相続税における法定相続人の数え方について簡単にルールを挙げておきます。民法の法定相続人の数え方と異なるからです。

  • 相続放棄をした人は、放棄がなかったものとして扱うので、相続人の数に入る。
  • 被相続人に実子がいる場合は、養子は1人までしか入れられない。
  • 被相続人に実子がいない場合は、養子は2人までしか入れられない。

例えば配偶者と実子1人と養子2人がおり、実子が相続放棄をした場合、相続税の考え方では、配偶者と実子1人と養子1人まで法定相続人として数えることができ、実子の相続放棄はなかったものとして扱うので、法定相続人は合計3人ということになり、4800万円が基礎控除額となります。

3000万円 × 600万円 × 3人 = 4800万円

2-2.特例による税額軽減と相続税の控除

特例による税額軽減

また税額を軽減してくれる特例も色々あります。相続税の申告が必要になる人で触れた「配偶者の税額軽減」と小規模宅地等の特例について少し説明しておきましょう。

相続税の配偶者控除

配偶者の税額軽減は被相続人戸籍上の配偶者にのみに適用される制度で、最低1億6,000万円までの相続財産については相続税がかかりません

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、一定要件に該当する土地についてはその評価額を大きく減額してもらえる制度です。

いずれの制度も相続税申告をすることが適用要件の1つとなっています。特例の適用で相続税がかからないとしても、相続税0円での申告の必要があるので注意しましょう。

小規模宅地等の特例について詳しくは、以下の関連記事をご覧になってください。

関連記事
小規模宅地等の特例の「同居」の考え方をケース別に徹底解説!
小規模宅地等の特例の一つに特定居住用宅地等がありますが、その要件に「同居」があります。「同居」は、法律上の難しい言葉…

自分に相続税申告が必要かどうかの判断は、まず相続財産総額が基礎控除額以下であるかどうかからスタートします。

基礎控除額を超える場合には申告が必要、基礎控除額以下である場合には、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例の適用を受けるのかどうかで判断してください。

債務・葬儀費用の控除

債務控除では、借入金や未払いの租税公課など、相続人が引き継ぐものを「総遺産額」から控除することができます。債務控除には葬儀費用などは含めますが、香典返戻費用や墓地・墓碑の購入費用は対象外となります。

2-3.相続税の申告・納付期限

相続税の申告と納税は、相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、提出する必要があります(相続税法第27条)。提出期限が土日・祝日等の場合は、翌日が提出期限となります。

例えば、相続開始があったことを知った日が1/20だった場合の申告期限は11月20日となります。
もし20日が土日祝日の場合には、申告期限は翌日にずれます。20日(土)であったとしたら、申告期限は22日(月)ということになります。

相続開始があったことを知った日とは、=(イコール)被相続人死亡の日と捉えてもらって問題ありません。
海外旅行に行っていて連絡が取れず、日本に戻って死亡を知ったとしても、基本的には被相続人死亡日となります。死亡日と異なると認められる場合は稀です。

2-4.相続税の申告書の提出先

相続税の申告書は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長に提出します。「相続人」の住所地ではありません。

なお死亡した人の所得税の準確定申告と相続税の申告に関して、e-Tax(電子申告)は利用できません。税務署に直接、申告書を提出する必要があります。

2-5.納税方法

納税は、税務署、金融機関、郵便局の窓口で行うことができます。 また「バーコード付き納付書」を税務署に発行してもらえばコンビニでの支払い、「国税クレジットカードお支払いサイト」を利用することでクレジットカード払いも可能です。

現金一括納付が原則ですが、特別な事情があり税務署に認められた場合には、延納または物納という納税方法もあります。

【参考サイト】 国税クレジットお支払サイト|トヨタファイナンス株式会社

2-6.相続税申告しなかった場合のペナルティ

申告しないまま申告期限を過ぎてしまった場合には、利息と罰金の意味合いで延滞税や加算税がかかります。

ただでさえ高い相続税にプラスαの税金がかかってしまい、非常に勿体ないことです。

相続財産を分ける話し合い(遺産分割協議)が進まないなどの理由があっても、問答無用に申告期限は近づいてきます。 その場合にはとりあえず概算で申告納税するなどの対策があるので、申告期限に間に合わなそうなときは、迷わず税理士に相談しましょう。

では、ここまで解説した基本的なことを整理しておきましょう。

相続税の申告が必要な人相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、財産を取得した相続人全員
(相続財産総額が基礎控除額以下であれば申告不要
配偶者の税額軽減の適用を受ける配偶者
(相続財産総額が基礎控除額以下でも申告必要) 
小規模宅地等の特例の適用を受ける者
(相続財産総額が基礎控除額以下でも申告必要) 
相続税の申告期限相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内
相続税の申告書の提出先被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長
納税方法原則:現金一括払い
例外:税務署に認められた場合、延納・物納が可能
申告期限を過ぎた場合のペナルティ延滞税や加算税がかかる

3.相続税の計算手順

 

相続税の計算

相続税申告の流れを簡単に解説すると、まず相続財産総額から課税価格の合計を計算します。 相続財産総額=課税価格合計ではありません。小規模宅地等の特例などの適用により、評価額の減額などがあるからです。

そして課税価格の合計から基礎控除額が差し引かれ、相続税の総額が算出されます。

それを一定の割合で按分し、各相続人に相続税額が割り振られ、そこから各相続人の税額控除などを加減算し、最終的な相続税額が計算されます。

難しい用語ばかりが並び、なかなか理解が難しいところですが、そこまで気にしなくても結構です。

税理士に依頼すればすべて行ってもらえますし、自分で申告書を作成する場合でも税務署などに確認しながら行えます。

問題は、スケジュールです。ここまでのことを相続開始から10ヶ月以内に行わなければなりません。スケジュールには、さほど余裕がないと考えていただいたほうがいいでしょう。

関連記事
相続税 計算シミュレーション | 相続税理士相談Cafe
相続税 計算シミュレーション 「1.法定相続人の情報」と「2.相続財産の情報」を入力し、最後に「計算」ボタンを押して…

4.相続税申告の必要書類

相続税申告書には多くの別表と必要書類があります。基本的なものを列挙します。

4-1.申告書の種類

相続税の申告書は、第1表から第15表までありますが、15種類すべてが必要になるケースは少なく、通常は一部を利用します。 今回は一般的に必要とされる表を抜き出して解説します。

表名表題名説明
第1表相続税の申告書相続税申告書のメインとなるページです。第2表以降で計算される金額がここに集約されています。
第2表相続税の総額の計算書相続税の総額を計算する計算書です。
第5表配偶者の税額軽減額の計算書配偶者の税額軽減の適用を受ける人が使います。
第6表未成年者控除額・障害者控除額の計算書未成年者控除・障害者控除の適用を受ける人が使います。
第9表生命保険金などの明細書相続や遺贈によって取得したとみなされる保険金額を記入する明細書です。
第10表退職手当金などの明細書相続や遺贈によって取得したとみなされる退職手当金の額を記入する明細書です。
第11表小規模宅地等についての課税価格の計算明細書小規模宅地等の特例の適用を受ける人が使います。
第13表債務及び葬式費用の明細書債務や葬儀費用について負担する人の氏名と金額を記入する明細書です。

申告書様式はこちらから取得できます。該当年分のものを利用してください。

関連記事
相続税申告書 第1表
図解!相続税申告書の書き方
1.はじめに 平成27年相続税法の改正より、相続税の課税ベースが広がり、これまでは相続税の課税対象ではなかった相続に…

【参考サイト】相続税の申告書等の様式一覧(平成30年分用)|国税庁

4-2.添付書類

相続税申告書には身分を証明するものなど多くの添付書類が必要になります。
必要な書類は、相続財産の種類や何の特例を適用するかなどによって変わってきます。 ここでは多くのケースで必要となる添付書類を列挙します。

書類名誰のコピー
出生から死亡までの連続した戸籍謄本被相続人
住民票の除票×
身分証明書
略歴(各自作成)
戸籍謄本相続人全員
住民票×
印鑑証明書×
相続関係説明図
戸籍の附票相続時精算課税適用者×
遺言書・遺産分割協議書

【参考サイト】(参考)相続税の申告の際に提出していただく主な書類|国税庁 

5.相続税は申告して終わりではない!

相続税申告は他の税金に比べて税務調査が入りやすく、国税庁が公表している2014年分の税務調査実績では、相続税申告者の20%以上、実に5人に1人の確率で税務調査が入っています。
調査の可能性が高いのは、申告後1年から1年半後、三回忌が終わる頃です。

調査の結果、申告書に不備が見つかった場合には、不足していた相続税を追加で納めることになり、更に上記1-7の解説と同様、延滞税や加算税のペナルティも課されます。

6.相続税の申告は税理士への依頼がおすすめ

6-1.複雑な財産評価

相続税には財産評価があります。相続財産が現金預金や株式など確実な評価額がある場合には問題ありませんが、不動産がある場合には評価計算は複雑になります。
税理士によっても評価額が異なるほどなので、専門知識のない人が行うと、後々、大きな追徴税がかかってしまう可能性があります。

6-2.特例のベストな適用

相続人の税負担を軽くするために設けられている各種特例制度ですが、上手に利用しなければ、逆に損失となってしまう場合があります。

6-3.節税対策

税理士は可能な限り相続税が最小となるように申告書を作成してくれます。被相続人の生前から相談をしていれば、更に節税効果が高くなる可能性が高いです。
税理士に依頼すると報酬が発生しますが、それを上回る節税効果が期待できます。

6-4.税務調査の立ち会い

税務調査が入る場合、その場に税理士がいるのといないのとでは、心強さは雲泥の差です。 また税理士が関与していない相続税申告については、関与している場合より税務調査が入りやすくなります。

6-5.相続人の負担軽減

相続には、相続税申告以外にもやるべきことが山ほどあります。相続税申告は税理士に丸投げすることで、時間を有効利用することができます。

6-6.争続(相続)対策

相続人が複数いる場合、そのうちの誰かが計算した申告書では、「間違っているのでは。」、「自分に有利な計算をしているのでは。」など、他の相続人が信用してくれないことがあります。
税理士という確実かつ公平な立場の人間が介入することで、相続手続きをスムーズに進めることができます。

まとめ

相続税申告と納税について、簡単に解説しました。 ポイントは税理士への依頼です。

相続税の仕組みは複雑であり、専門知識のない人が間違いのない申告納税をすることは不可能に等しいことです。 「相続税申告=税理士」くらいのイメージを持っておきましょう。

相続税に強い税理士が問題を解決いたします

相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
相続税について、下記のような不安・課題を抱えている方は、相続税に強い税理士にご相談ください。

  1. 相続税をなるべく安くしたい
  2. 税務調査が怖い
  3. 評価が難しい土地がある
  4. 相続関連のいろいろな手続きが面倒で困っている
  5. 生前対策をしたいが、何をしたら良いかわからない

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

図解!相続税申告書の書き方 »

「相続税申告の概要がわかる」連載一覧

この記事が役に立ったらシェアしてください!