「更正の請求」で相続税の過払いを取り戻す方法
この記事では、「更正の請求」について解説していきます。苦労して納めた相続税が過払いであった場合、更正の請求を利用すれ…[続きを読む]
「相続税申告期限を過ぎたけど、未だに収めていない」、「申告後に新たな遺産が見つかった」など、相続税納税が完全に終了していない人も少なくないと思います。 相続税は10ヶ月という短期間で相続税を申告しないといけませんので、申告期間に間に合わなかったり、申告内容が間違っている場合があります。
そんなとき、どのような対応をすればよいのでしょうか? 相続税の未払いや過少払いがある場合は、「修正申告」を行う必要があります。 今回は、その「修正申告」について詳しく説明していきます。
目次
納付した相続税が支払うべき税額に比べて少ない場合や、期限内に申告できなかった場合の手続きを「修正申告」と言います。この修正には、修正を行うタイミングによって、次の3パターンがあります。
一方、続税を払いすぎている場合、払いすぎた相続税を戻してもらう手続きを「更正の請求」といいます。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡した日から10ヶ月以内です。
一度申告を行っても、申告期限内であれば修正申告とはせずに、最初から期限内に提出された申告書として取り扱われます。 この場合は、申告期間内に提出されたとみなされるので、ペナルティはかかりません。
相続税の申告期限内に申告した内容を、申告期限後に変更する修正申告です。 次の2種類があります。
これらの場合は、ペナルティがかかります。
申告期限内に申告せずに(未払いの状態で)、申告期限後に行う修正申告です。 この場合も、ペナルティがかかります。
これより、この3つのパターンそれぞれについて見ていきます。
まずは、申告期限前に相続税額を修正する、訂正申告について説明します。
申告期限前であれば、申告書の提出が複数あった場合は、最後に提出されたものが採用されます。 申告期限前の訂正申告は通常の申告と同じ扱いですので、訂正後、原則すべての書類を再び提出します。
しかし、添付書類の中には提出済のものを流入できる場合もありますので、税務署に相談することをお勧めします。
申告期間内に提出された場合は、通常の申告として扱われますので、ペナルティはかかりません。
次に、申告期限後の修正である、修正申告について説明します。
納税した相続税が過大で払い戻しを求める更正の請求の場合は、申告期限から5年以内と期限がありますが、修正申告については期限の制限がありません。 相続税を納めたものの税額が不足していたことが分かった場合は、そのタイミングで税務署に修正申告書を提出します。
ただし、不足税額についてはペナルティがかかりますので、誤りに気がついたら、1日も早く修正申告しましょう。
主な提出書類は次の通りです。
【参照】国税庁HP 相続税の申告書等の様式一覧(平成30年分用)
ここでは、修正申告の場合のペナルティについて見ていきます。 一般的なペナルティについては、次の2種類があります。
不足していた税額について、本来の納付期限の翌日から起算して延滞税が課税されます。 本来の申告期限(納付期限)の翌日から修正申告をした日までの期間ごとにまとめると以下のようになります。
期間 | 延滞税 |
---|---|
2ヶ月以内 | 年 7.3% と 特例基準割合+1% のいずれか低い割合 |
2ヶ月を超える日以降 | 年 14.6% と 特例基準割合+7.3% のいずれか低い割合 |
なお、特例基準割合とは、「各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合」をいいます。
2019年1月1日から2019年12月31日の間の延滞税率は、次の通りです。
期間 | 延滞税 |
---|---|
2ヶ月以内の場合 | 2.6% |
2ヶ月を超える日以降 | 8.9% |
【参照】国税庁HP 延滞税の割合
【計算方法】
【具体例】
相続税申告期限 2019年3月31日、修正申告日 2019年4月30日、追加納税額 100万円の場合
延滞税=100万円×2.6%×30日÷365日≒2,136円
↓ 100円未満端数切捨てると
延滞税=2,100円
ただし、延滞税の特例として、申告期限後1年を経過してから修正申告する場合は、一定の期間を延滞税の計算期間に含めないというものもあります。 なお、仮装や隠ぺいなどによって重加算税が課されている場合は、この特例は適用されません。 対象となる可能性のある方は、税理士に確認するか、税務署にお尋ねください。
税務調査の通知が来る前に修正申告する場合は過少申告加算税はかかりませんが、税務調査通知後に修正申告する場合は、次の2通りの過少申告加算税が加算されます。
ケース | 過少申告加算税 |
---|---|
税務調査の通知後で税務調査前に 修正申告する場合 | 追加納付額の5% ただし、 期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分は10% |
税務調査後に修正申告する場合 | 追加納付額の10% ただし、 期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分は15% |
相続税に限らず税金の支払いには時効(故意に納付しなかった場合7年、納付の必要性を知らなかった場合5年)があり、時効が過ぎてしまえば納付する必要がなくなります。
しかし、当たり前のことですが、相続税は申告して納付しないといけません。 未払い(無申告)の場合、税務調査が行われて、無申告が発覚し、重いペナルティが課される可能性が大ですので、必ず申告するようにしましょう。
申告期限までに納税しなかった場合は、上記で説明した延滞税に加えて、次の無申告加算税というペナルティが課されます。
ケース | 無申告加算税 |
---|---|
税務調査の通知前で自主的に 申告した場合 | 5% |
税務調査の通知後で税務調査前に 申告した場合 | 50万円までは10%、50万円を超える部分は15% |
税務調査によって発覚した場合 | 50万円までは15%、50万円を超える部分は20% |
ご覧のように、かなり重いペナルティが課されますので、一刻も早く申告するようにしましょう。
重加算税は、仮装や隠ぺいなどが行われた場合に課されるペナルティです。
仮装や隠ぺいなどが行われた場合は、個々のケースに基づき、次の重加算税が課されます。
ケース | 重加算税 |
---|---|
申告を偽装した場合 | 過少申告加算税に代えて課される重加算税 35% |
申告しなかった場合 | 無申告加算税に代えて課される重加算税 40% |
なお、重加算税の要件に当たる行為を繰り返す場合は、次の重加算税が課せられます。
ケース | 重加算税 |
---|---|
申告を偽装した場合 | 過少申告加算税に代えて課される重加算税 45% |
申告しなかった場合 | 無申告加算税に代えて課される重加算税 50% |
「修正申告を行わないといけないのだけれど、初めての経験で分からないことが多い」、と考えている方もいることと思います。 皆さんが気になっている事や疑問は、次のような点ではないでしょうか?
申告時の税理士と違う税理士に依頼しても構いません。
しかし、違う税理士に依頼する場合は、ゼロから説明して理解してもらう必要があり、手間がかかります。費用が余分にかかり、必要期間も伸びるかもしれません。 どちらにしても、正式依頼前に、見積もりを提出してもらうことをお勧めします。
相続の複雑さや相続財産の大きさなどによって、費用や必要期間は変わります。 まずは、見積もりを提出してもらうことをお勧めします。
今回は、相続税の修正申告について見てきました。
相続税の申告は個別の案件ごとに状況が異なります。修正申告については、それにもまして個別性が高くなります。 相続遺産の評価にあたっては、国税通則法や相続税法の理解はもとより、場合によっては、裁判の判例も考慮しないといけないケースもあります。
また、皆さんと税務署の見解の相違があるいかもしれません。 相続税の修正申告については、専門性が非常に高いため、相続税の経験豊富な税理士に相談することをお勧めします。