相続税の修正申告と更正の請求

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相続税申告書 第1表

相続税の申告は非常に複雑であるため場合によっては申告してからその間違いに気がつくことも少なくありません。

実際の税額よりも多く申告した、あるいは少なく申告した、どちらの場合でも、放っておかずに、適切な対処をすることが大切です。
そこで、相続税の「修正申告」と「更正の請求」について解説します。

1.修正申告と更正の請求について

相続税において修正申告と更正の請求はいずれも納税者側が申告後に行う手続ですが、その行う場面が全く異なります。

  1. 修正申告:相続税額が申告により確定した税額よりも過大であることが判明した場合に納税者側が自主的に行う申告。
  2. 更正の請求:相続税額が申告により確定した税額よりも少ないことが判明した、または、申告後の事情により過少となった場合に納税者が税務署長等に対し、減額の更正を求める申請。

修正申告も更正の請求もいずれも相続税に関しては、相続税額が申告により確定した後の納税者側の手続ですが、以下の表で確定した税額の変更の方法という視点から概説してみましたので、参考にしてください。

なお、相続税額が申告額よりも過少な場合に、過少申告により申告で確定された税額を減額することができるかといえば、できません。
課税の公平の観点から法律上規定された更正の請求によってのみ、このようなことができます。

以下では、申告により確定した税額を修正する方法としてどのような方法があるかを概説しつつ、修正申告と更正の請求の要件・手続などについて実務的観点から解説します。

修正申告 更正の請求

2.税額の確定

そもそも税金は、国の国民に対する租税債権に基づくものですから、それがいくらか確定しない限り、租税債権(税金)の支払を国民に求めることはできません。そこで、租税法においては租税債権額をいくらとするかを「確定」するという概念が存在します。

そして、相続税のような申告納税制度を採用している税制は、基本的には、申告(期限内又は期限後を問わず)により、税額が確定します。確定した税額は、租税手続法定主義の観点から、法律で定められた方法以外の方法(合意など)で変更することはできません。

申告納税制度
納税者が自ら税務署に申告して税額を確定させ、その税額を自ら納付する制度のこと。

そこで、申告により確定された税額を変更する手段として上表の①から④のまでのケースに対応する更正の請求・修正申告について概説します。

3.更正の請求(相続税額が申告額よりも過少であった場合)

図で示したように、更正の請求にもいくつかの種類がありますが、まずは、相続税額が申告額よりも少なかった場合(図①のケース)について解説します。

なぜ申告額が本来よりも多くなってしまうのかについては、こちらをご覧ください。
【関連】更正の請求により払い過ぎた相続税の還付を受ける方法

3-1.国税通則法上の更正の請求

この場合は、国税通則法(以下「通則法」といいます。)上の更正の請求(通23①)を行うことになります。
典型例としては、土地などの財産評価の過大評価により本来の税額よりも多くなった場合です。

3-1-1.要件

  • 申告書に記載した課税価格または税額に誤りがあったことにより、申告による納付すべき税額が過大である場合・・・法定申告期限から5年以内

3-1-2.手続等

STEP1
更正の請求書を期限内(原則として法定申告期限から5年以内)に所轄税務署長に提出します。

STEP2
更正の請求書に何を書くかですが、まず、申告額と更正の請求が認められたとした場合の税額を書きます(当然ですが、後者が前者より高いか同額である場合には、却下されます。)。
次に、理由欄に理由を具体的に書きます。適法な請求であれば、調査が始まるので(通23④)、理由書の補完はできるのですが、やはり最初から具体的に書く必要があります。

STEP3
添付資料として、更正の請求が認められる理由を証明する証拠書類(先の例でいえば土地の評価書等)を添付します(通23③、通則法施行令6②)。

最後に、虚偽の内容で更正の請求を行った場合には罰則が科されていますので、ご注意ください(通127Ⅰ)。

3-2.特例・控除と更正の請求の関係について

3-2-1.小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは、相続税額を減額する特例措置として、被相続人の居宅や被相続人が経営していた事業所などの土地を相続により取得した場合には、その土地の大部分に係る相続税を減額するという特例です。

上記のとおり、小規模宅地の特例は、相続により具体的に特定の相続人が取得した場合の特例ですので、原則は、相続税の申告期限までに遺産分割が終了していない土地は、対象にできません。したがって、更正の請求時にその旨を申し出ても、特例の適用はできません。

ただし、①申告期限までに分割がされていなかったことにより、どこの土地を特定の対象とするかについて選択ができなかった場合で、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しているときは、特例の適用を受けることができます。

また、②3年以内に分割できなかったことについてやむを得ない事情がある場合で、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署長に提出しているときは、遺産が分割できるようになってから4か月以内に更正の請求を行うことを条件として、特例の適用を受けることができます。

宅地

3-2-2.配偶者の税額軽減措置

配偶者の税額軽減措置とは、被相続人の配偶者が取得した財産のうち、1億6000万円または相続分の2分の1のどちらか低い額に対応する相続税額を減免するという措置です。

配偶者の税額軽減を受けようとする場合には、配偶者が財産を具体的に取得していなければなりませんので、原則として未分割の財産を除外して申告しなければなりません。
つまり未分割などで配偶者が財産を取得していない場合には、適用できないことになります。

ただし、3-4-1①又は②の場合のように一定の届出や税務署長の承認を得ている場合には、分割した財産に関し配偶者の税額軽減を受けた相続税税額に関し更正の請求を行うことができます。

4.更正の請求(相続税額が申告後に過少となる事由が発生した場合)

次に、相続税額が申告後に少なくなる理由が発生した場合(図②のケース)です。

4-1.通則法上の更正の請求(通23②)

申告時に確定された税額の基礎とされた事実が後で変更されたような場合(この事実の変更を生じさせた事実のことを「後発的事由」といいます。)、通則法は、後発的事由にも基づく更正の請求という制度を設けています。
この場合には、後発的事由による更正の請求を行うことになります。

例としては、遺留分留分減殺請求により返還すべき額が確定して、相続税額が減少することがあります。

4-1-1.要件

以下のAからCまでのいずれかの事実が生じたこと。

A 申告等の課税価格の計算の基礎となる事実に関する訴えに対する判決(判決と同一の効力を有する和解のその他の行為を含む。以下判決と併せて「判決等」といいます。)により、申告等が基礎とした事実と異なることが確定した・・・判決確定日から2か月以内(1号参照)

例えば、相続財産であるとして申告した財産が、申告後に確定した判決により第三者の財産であることが確定した場合です。
なお判決等に、民事調停法上の調停・訴訟上の和解・家庭裁判所の行う審判・調停が含まれますが、訴訟上の和解については、いわゆる馴れ合い和解は含まれないとされていますのでご注意ください。また、公正証書の作成は判決等に該当しません。

B 申告等の課税価格の計算に当たり申告者に帰属するとしていた課税財産が他の者に帰属するとするその他の者に対する更正・決定があった・・・更正・決定から2か月以内(第2号参照)

例えば、相続財産である土地の帰属について被相続人に帰属するとして相続税の課税価格に算入して計算していたものの、他の者に帰属するとして更正処分がなされたような場合です。

C 法定申告期限後に生じた(ア)又は(イ)に準じるやむを得ない理由があるとき・・・・理由が生じたときから2か月以内(第3号参照)

「やむを得ない事由」とは国税通則法施行令第6条第1項に列挙されていますが、
例えば、被相続人が土地を購入し、相続が発生したものの、何らかの事情で売主が契約解除を行ったため、その土地が相続財産ではなくなったような場合や、申告時に適用していた通達の解釈が変更されたような場合です。

4-1-2.手続

通常の更正の請求と同じです。

4-2 相続税法上の更正の請求(相32)

相続税法では、相続手続が長期にわたり行われることを考慮し、通則法上の後発的事由による更正の請求に加えて、相続手続に特有の後発的事由を設け、納税者の権利の救済を行っています。

4-2-1.要件

相続税法上の後発的事由とされているものは以下のとおりです。

A 未分割財産が分割された場合

相続税法においては、未分割の場合には、民法の定める法定相続分で申告することが求められております(相55)。その後に、分割されたような場合で、かつ、各人の取得した相続財産の額が法定相続分と異なるような場合には、各人の相続税額の変動を招くものですから、後発的事由として認められたものです。

B 相続人に異動が生じた場合(認知、相続人の廃除又はその取消しの裁判の確定、相続回復、相続の放棄の取消)
  • 認知とは、例えば、愛人との間の子を自分の子として認める場合のように、相続人の資格がある子として認めることをいいます。
  • 相続人の廃除とは、例えば、子が父親を虐待するといった行為を行っていた場合に、家庭裁判所が、子の相続人の資格を喪失させる審判を行うことといいます。
  • 相続の回復とは、例えば被相続人に子がいないとされ、当初配偶者と兄弟が相続人とされていたのですが、あとから子がいることが判明し、その子が兄弟に対し相続権の回復を求め、これが認められたような場合です。
  • 相続の放棄とは、相続人が相続開始後に相続人の地位を放棄することを家庭裁判所に申述し、これが受理された場合をいいます。

いずれも相続人の数に異動が生じた場合に当たり、そうすると相続税の計算上、基礎控除の変動があり、相続税額の変動を招くものですから、後発的事由として認められたものです。なお、相続人の廃除の場合と異なり、相続欠格(民法891条)に該当する場合は該当しないのでご注意ください。

C 遺留分減殺請求により返還すべき又は弁償すべき額が確定した場合

例えば、共同相続人のうち特定の相続人のみが相続財産を取得したような場合に、他の相続人は、遺留分(兄弟姉妹以外の相続人が相続財産の中から最低限取得できるとされた割合)を侵害されたとしてその減殺の請求を行うことがあります。

これを遺留分減殺請求といいますが、遺留分減殺請求がなされた場合で、請求者に対する返還額又は弁償額が確定したときには、相続人間で取得した相続財産の額が変動し、相続税額の減少を招きますので、後発的事由として認められたものです。

D 遺贈に係る遺言書が発見され又は遺贈の放棄があった場合

遺言により相続財産を特定の者に取得させることは可能でありますので、相続税の申告時には遺言が存在していないとして申告したものの、あとで遺言が発見されたような場合や、その逆に遺言に基づき申告したもののその遺言が放棄されていたことが発覚した場合には、相続人・受遺者間で取得した相続財産の額が申告時と比べて変動することになります。そうすると、相続税額の変動を招きますので、後発的事由としてみとめられたものです。

E 上記アからオまでの事由に準じる事由

税務署

5.相続税額が申告額よりも過大であった場合

5-1.納税者が自主的に申告する場合(図③のケース)

5-1-1.修正申告

納税申告書を提出した者及び更正又は決定を受けた者は、①納付すべき税額に不足があるとき、②還付金の額に相当する税額が過大であるときなどにおいて、税務署長の更正があるまでは、課税標準等又は税額等を修正する納税申告書を提出することができます。
修正申告書の記載の方法は、国税庁のホームページ等でご確認ください。

5-1-2.加算税

相続税で問題となる加算税は、法定申告期限までに適正な申告がなされない場合に、その申告を怠った程度に応じて課されるものであり、申告の義務違反に対する一種の行政制裁の性格を有するものです。

(1)過少申告加算税

納付すべき税額の10%
ただし、正当な理由がある場合には、課さない、ということになっています。
また、修正申告書の提出が税務調査を予知してなされたものではない場合で、その提出が事前通知前のものであった場合には課さない、ということになっています。事前通知後であった場合には5%になります。

(2)重加算税

仮装又は隠ぺい行為を用いて申告した場合 納付すべき税額の35%

5-1-3.延滞税

法的申告期限までに納付しなかった場合には、その納付の遅れた期間に応じて延滞税を納付しなければなりません。

5-1-3-1.原則

原則として、修正申告の場合には、申告書を提出した日から2か月を経過する日までの期間は年利7.3%(特例で特例基準割合+1%とされています。)。
その期間経過後に提出した場合には、年利14.6%(特例で特例基準割合+7.3%とされています。)。のそれぞれ延滞税を納付する必要があります。

5-1-3-2.例外

例えば、

  1. 未分割財産について法定相続分と異なった分割がなされた場合、
  2. 認知の訴えなどの事情により相続税額に異動が生じた場合、
  3. 遺留分減殺請求により返還すべき額又は弁償すべき額が確定した場合、
  4. 遺贈に係る遺言書が発見又は遺贈の放棄があった場合

には、法定納期限の翌日から申告書の提出があった日までの期間の延滞税は免除されます。

【関連】相続税・贈与税の加算税(ペナルティ)がアップ!

 

5-2.税務署長が確定した税額を変更する場合(図④のケース)

この場合には、税務署長等から更正処分・再更正処分がなされます。

6.税理士報酬と還付金の実例

相続税は極めて個別性が高い税目であり、またその中でも更正の請求や修正申告の場合にはさらに個別性が高まります。そこで、まずは税理士事務所に対し依頼の前に見積もりを提示していただくことをお勧めします。

また、実際にどのくらいの還付があるかといえば、裁判例においては、同族会社の株式評価が争われた事例ですが、3億円ほどの還付額に至る事例もあります(平成21年2月27日東京地方裁判所判決参照)。

7.税理士のセカンドオピニオン

相続税の修正申告はともかく、更正の請求となると、極めてマイナーな分野であり、例えば、国税OBや国税審判官の経験がある税理士に対しセカンドオピニオンを求めるというのも一案であると考えます。

相続税の更正の請求は、「相続税の還付請求」という表現がされることもありますが、こちらのほうが一般的にはわかりやすいかもしれません。

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【参考】相続税申告書の種類

期限内申告書修正申告書期限後申告書更正の請求
提出期限相続の開始を
知った日の翌日
から10ヶ月以内
更正を受けるまで決定を受けるまで申告期限後
5年以内
特別理由が
ある場合の
の提出期限
相続人でない者が
特別な理由により
新たに財産を取得
した場合、それを
知った日の翌日
から10ヶ月以内
更正を受けるまで相続人であった者が
特別な理由により
新たに財産を取得
した場合決定を受けるまで
特別な理由を
知った日の翌日
から4ヶ月以内

※特別な場合

  • 未分割財産の分割が行われた場合
  • 認知、相続人の廃除等の裁判の確定等により相続人が変わった場合
  • 遺留分減殺請求により弁償すべき金額が確定した場合
  • 遺言書が発見された場合

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