農地の相続における農地の評価と納税猶予の特例

農地

農地は特殊な土地であり、通常の宅地とは評価方法が異なります。農地には複数の区分があり、その区分に応じた評価をします。
また、農地を相続する場合、条件を満たすと「納税猶予の特例」を受けることができます。また、この猶予は条件次第では免除されることもある特例です。

そこで、農地の評価方法と、「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」について、詳しく説明をしていきます。

農地区分について

農地を評価する上で重要なのが農地区分です。農地区分には農地法による区分と相続税法による区分の2種類があります。それぞれの違いについて確認をしておきます。

農地法による農地区分について

農地法では、食料供給の基盤である優良農地を確保するためと土地計画の必要性から、農地の転用に当たっては都道府県知事または市町村長の許可を必要としています。農地の転用の可否によって農地区分を下記の通りに定めています。

(1)農用地区域内農地

農業振興地域整備計画において農用地区域と指定された農地です。原則として転用は許可されていません。

(2)甲種農地

市街化調整区域内農地で集団的に存在する農地です。高性能機械によって営農に適した農地や特定土地改良事業施行後8年以内の土地が当てはまります。原則として転用は許可されませんが、例外的な措置もあります。

(3)第1種農地

10ヘクタール以上の集合的な農地です。土地改良事業等の対象となっている営農に適している農地です。原則としては転用できませんが、国道や県道になる、またその沿線の施設になる場合には許可されます。

(4)第2種農地

鉄道の駅500メートル以内にあり市街地化が見込まれる農地です。または生産性が低い農地が当てはまります。他に利用できる土地がない場合に転用が認められます。

(5)第3種農地

鉄道の駅300メートル以内にある市街地区域、または市街地化の傾向が著しい区域にある土地です。原則として転用ができます。

本区分は農地の転用可否を判断するうえでの基準となりますが、相続税評価時に使われる農地区分にも利用されます。

相続税法による農地区分について

相続税法では都市計画等を参考に、農地を下記の通りに区分しています。

農地区分次のいずれかに当てはまること
(1)純農地・農用地区域内農地
・市街化調整区域内の甲種農地と第1種農地
・上記2つに該当する農地以外の第1種農地
(2)中間農地・第2種農地
・上記に該当する農地以外の第2種農地
(3)市街地周辺農地・第3種農地
・上記に該当する農地以外の第3種農地
(4)市街地農地・農地法4条、5条による許可を受けた農地
・市街化区域内にある農地
・転用許可を要しない農地

農地区分ごとの評価方法について

相続税法によって規定された農地区分ごとに評価方法が異なります。

純農地と中間農地の評価方法

純農地と中間農地は「倍率方式」によって評価します。倍率方式とは評価対象の農地の固定資産税評価額に、税務当局が定める一定の倍率を乗じて評価する方法です。計算式は下記の通りです。

評価額=固定資産評価額×倍率

農地倍率

これらの倍率は国税庁や税務署にて「評価倍率表」で確認することが可能です。倍率表では区分ごとに倍率を確認できます。倍率は地域ごとに異なるので、あらかじめ確認をしておきましょう。

市街地周辺農地の評価方法

市街地周辺農地は、その農地を市街地農地とした場合の価額の80%に相当する金額として評価されます。計算式にすると下記の通りです。

農地評価額=市街地農地価額×80%

市街地農地の評価方法

市街地農地は「倍率方式」または「宅地比準方式」によって評価されます。宅地比準方式とはその農地が宅地であると仮定して、その価額から転用費用を控除した金額で評価する方法です。

まず農地が宅地である場合の価額を出します。農地区分が「市街地農地」の場合、その価額から、宅地への転用にかかる造成費を控除します。そこに地積(農地の面積)を乗じれば評価額を算出できます。分かりやすく計算式にすると、下記の通りです。

評価額=(農地が宅地だとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの造成費の金額)×地積

農地区分が「市街化周辺農地」の場合は、市街地農地の価額の80%として評価を行います。

農地区分の判定や造成費の計算などは複雑になるため、詳しいことは税理士などの専門家にご相談ください。

貸出中の農地について

農地の利用方法には様々ありますが、農地を貸出中の時は、また別の評価方法があります。

貸出中の農地の評価方法

貸出中の農地は自分用の農地評価額から耕作権または永小作権価額を差し引いて評価します。計算式は下記の通りです。

農地評価額=自分用の農地評価額-耕作権価額(永小作権価額)

耕作権・永小作権割合の評価方法

耕作権割合と永小作権割合は35%~50%の間で設定されることが多いです。なお、農地区分によりその割合が異なります。

  • 純農地、間農地の耕作権割合: 50%
  • 市街地周辺農地、市街地農地の耕作権割合: 税務当局によって異なる

なお、三大都市の基準をあげておきます。

  • 東京国税局: 35%
  • 名古屋国税局: 40%
  • 大阪国税局: 40%

農地等を相続した場合の納税猶予の特例

農地等を相続する場合は、租税特別措置法等の規定により、条件を満たした場合に納税猶予を受けることができます。また、一定の要件を満たせば、相続税が免除されることもあります。

ただし、別の一定の要件から外れた場合には、猶予されていた相続税の一部、もしくは全部を納める義務が発生しますので、要件をよく確認しておく必要があります。

納税猶予の特例を受けられる場合

農地等を相続した場合に、納税猶予の特例を受けるには、下記の3つの要件を満たす必要があります。

(1)被相続人の要件
(2)農業相続人の要件
(3)特例農地等の要件

まず「(1)被相続人の要件」ですが、納税猶予を受けるには、被相続人が死亡するまで農業に従事している必要があります。または、生前一括贈与をしている、もしくは、特定貸付けをしていることが条件になります。これらのように、まずは相続前に農地等を農業に利用していることが大事です。

用語:農地の特定貸付
都市住民等への趣味的な利用を目的とした農地の貸付けのこと。面積、期間などの細かい要件があり、農業委員会の承認が必要です。

また「(2)農業相続人の要件」は、農地を相続後も農業経営に使う必要があります。もしくは、特定貸付け等により、自分以外の人に農業を行ってもらうことが要件です。このように相続後も農業に利用することが必要です。

そして「(3)特例農地等の要件」として、農地として利用されていた土地が、遺産分割されることが条件です。そのほかにも、いくつかの例が認められています。相続税の期限内申告書に、特例を適用する旨を記載する必要があります。

納税猶予に期間はなく、要件が満たされている限り猶予されその間は納税する必要はありません
その後、一定の条件を満たせば猶予が免除に変わり相続税を免除されることもありますが、逆に、猶予が取り消されて納税しなければならなくなる場合もあります。

納税猶予の特例が免除される場合

納税猶予の特例を受けることができた場合、一定の条件を満たせば相続税の納付を免除することが可能です。その要件は下記のいずれかです。

(1)特例を受けた農業相続人が亡くなった場合
(2)特例を受けた農業相続人が、農地を一括生前贈与した場合
(3)特例を受けた農業相続人が、農業経営を20年間継続した場合

これらに当てはまれば、相続税の納付が免除され、支払う必要はありません。

農地等納税猶予税額の納付が課される場合

納税猶予の特例を受けられても、下記の条件に当てはまる場合は相続税の納付義務が課されます。その条件が次の6つです。

(1)特例農地等の譲渡等がある場合
(2)農業経営を廃止する場合
(3)継続届出書の提出がない場合
(4)増担保または担保の変更を求められた際に応じない場合
(5)生産緑地法による買い取りの申出がある場合、または特定市街化区域農地等に該当することになる場合
(6)純農地を申告期限後10年が経過するまでに農業の用に供していない場合

このように、本来の目的である農業経営に利用しない場合は、猶予が失効されます。そして、相続税が課されることとなります。

なお、納付金額が一部になるか全部になるかは、その時になるまで分かりません。また、この納付時には、それまでの利息に当たる利子税も納める必要があるので、税理士や税務署に確認をとると良いでしょう。

納税猶予を受けるための手続き

農地等を相続した場合の納税猶予を受けるには、「申告手続」と「継続届出」の2つの手続きをする必要があります。そこで、それぞれの手続き方法について説明をします。

相続税の申告手続とは?

相続税の申告手続時に行う手続きを説明します。これは大きく3つのステップに分かれています。

①要件を満たしているか確認する
②相続税納税猶予適格者証明書を受ける
③税務署にて申告する

まず「①要件を満たしているか確認する」ことです。すでに説明をした納税猶予を受けるための要件を満たしているかを確認します。この時点で要件を満たしていなければ、特例を受けることはできません。

続いて「②相続税納税猶予適格者証明書を受ける」ことが必要です。こちらは農業委員会にて届け出を受けることで受け取れるものです。農地を相続した人は、農業委員会に届け出ることが義務になっているので、必ず届け出をして証明書を手に入れましょう。

そして「③税務署にて申告する」ことが必要になります。この申告時には、申告書類はもちろん、特例を受けるために「相続税納税猶予適格者証明書」を添付します。そして、これらを期限内に提出し、手続きを完了します。

納税猶予期間中の継続届出とは?

納税猶予を受け続けるためには、税務署に継続届出を行う必要があります。これにより農地を農業に用いていることを証明できます。この手順は下記の通りです。

①税務署から証明書の提出を求められる
②農業委員会に証明書の申請をする
③必要書類を税務署に提出する

まず、①税務署から証明書の提出を求められます。税務署では農地を現在も農業のために利用しているかを確認するため、3年に1度、証明書の提出を求めます。この提出を受けたら、継続届出を開始する合図です。

合図を受けたら、②農業委員会に証明書の交付申請をする必要があります。申請から交付までには20日ほど要するので、余裕を持って申請をしておくといいでしょう。

最後に、③必要書類を税務署に提出します。証明書と併せて、届出書を提出すれば、手続きは完了です。この継続届出は、「免除を受ける」または「納付が課される」まで継続します

まとめ

農地はそれぞれの農地区分に応じて評価を行います。基本的には、「倍率方式」または「宅地比準方式」によって評価します。

また、農地を相続して一定の基準を満たす場合には、「納税猶予の特例」を受けることができます。この特例のポイントは農地を「農業のために利用する」ことです。農地を宅地に転用していますと、特例は受けられません。

農地の評価方法や「納税猶予の特例」の要件はかなり複雑ですので、農地の相続税申告に詳しい税理士に相談されることがおすすめです。

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