相続税の脱税事件4件をクローズアップ!脱税手口と捜査概要

財産隠し

相続税の申告漏れをすれば、税務署から指摘を受けることになります。そもそも「申告漏れ」すること自体が問題ですが、忘れていたとか認識が間違っていたとか軽度な過失であれば「延滞税」などを支払えば済むでしょう。

しかし、年に数件は故意で悪質な「脱税」によって、事件性を帯びることもあるようです。そんな過去に話題になった脱税事件を、4件クローズアップします。脱税の問題性を認識し、正しく申告するように努めたいものです。

2005年の元経団連会長の息子の脱税事件

2005年以前に経団連会長を務めたことがある、新日本製鉄名誉会長の息子が脱税をした事件です。

概要

2005年10月に東京地検特捜部が、新日本製鉄名誉会長の息子(長男)を脱税の容疑で起訴しました。容疑者は、16億円の財産を隠して、相続税額9億8千万円を脱税したとされています。

脱税手口

脱税の手口に使われた方法は、「無記名割引債」です。無記名割引債とは、額面から利子分を割り引いた債権のことです。相続税の脱税手口としては、よくある手法です。よって、裏を返せば国税当局が見つけやすいとも言えます。

捜査概要

東京地検特捜部が2005年10月に「相続税法違反罪」で、新日本製鉄名誉会長の息子を起訴しました。被相続人の意思により脱税した可能性があることも指摘された事件です。なお、結果的には脱税事件であることには変わりありません。

まとめ

相続財産を債権に変えて隠ぺいしても、その足は国税当局・特捜部に見つかってしまいます。大規模な財産は常にマークされていると考えて良いでしょう。

2006年のタクシー会社会長の脱税事件

2006年3月に大阪府で起きた、タクシー会社会長が約25億円を脱税した事件です。

概要

2006年3月に大阪府にあるタクシー会社会長が、総額24億8千万円を脱税した罪で逮捕されています。大阪地検特捜部と、大阪国税局の調べによって分かっています。当時は、過去最大の脱税事件としてスクープになっていました。

脱税手口

同会長は被相続人である父の財産を、海外の金融機関に送金し隠蔽しています。シンガポールなど一度海外の金融機関を中継したのちに、スイスにある銀行口座に貯蓄し隠しています。なるべく捜査をしにくくした悪質な脱税手口と言えるでしょう。

捜査概要

大阪国税局と大阪地検特捜部は、3月3日に会長の自宅や会社など計8か所を家宅捜索しました。そして相続税法違反の罪で逮捕しました。会長は「上から指示されただけ」と容疑を否認しています。

まとめ

当時としては最高の脱税額として、未だに記憶している人もいるでしょう。たとえ財産を国外に隠したとしても、その証拠は国内に残ってしまいます。その結果、最終的には逮捕されることになってしまいます。

2008年の不動産賃貸会社社長の脱税事件

2008年に大阪府で起きた、不動産賃貸会社社長と妹による、28億6,000万円の脱税事件です。

概要

2008年3月11日に、大阪地検特捜部により大阪市在住の不動産賃貸会社社長(長女)と、その妹(四女)を逮捕しました。申告漏れの総額は59億3,000万円で、相続税額28億6,000万円を脱税した疑いがかけられました。大規模脱税事件として、クローズアップされています。

脱税手口

容疑者2人の脱税の手口は、被相続人である父親名義の預金口座を数年間にかけて解約・現金化するものです。本来であれば現金化した遺産も合わせて、約75億円を相続財産として申告すべきところ、約19億円しか申告しませんでした。

捜査概要

大阪地検特捜部と大阪国税局が合同で、関係各所10か所を家宅捜索しました。自宅のガレージの奥シャッター1枚を挟んだ段ボール箱の中に、現金58億円分を無造作に入れ、保管してあるのを確認し、「相続税法違反」の罪で逮捕しています。

まとめ

預金を現金化しても、国税当局は見過ごしません。なぜなら、引出しの事実を、国税当局は調べることが可能だからです。贈与を受けたならば贈与税を、相続するなら相続税を正しく納める必要があるでしょう。

2015年の和歌山県議会議員の脱税事件

2015年12月に和歌山県で起きた、同県議会議員が脱税行為に関与していた疑いがかけられている事件です。

概要

2015年12月25日に不動産管理会社社長、税理士ら5名が相続税法違反の罪で、大阪地検特捜部に起訴されました。8億5千万円を寄付したと装い、総額4億9千万円の脱税をしたとされています。この事件に和歌山県議会議員も関与していたと疑われています。

脱税手口

県議会議員や税理士らは、和歌山県にある社会福祉法人に8億5千万円を寄付したとして相続税を申告しています。一定の基準を満たす「寄付」であれば、課税対象にならないことを使った脱税の手口です。

そして「寄付」と見せかけるために、同グループでは「遺言書の偽造」を行っています。こちらは別途「私文書偽造罪」に当たる犯罪になります。別の罪を犯してまで脱税を実行しました。

捜査概要

大阪地検特捜部は不動産管理会社社長、和歌山県議会議員、税理士、福祉法人元理事など合計7名を「相続税法違反罪」の容疑で逮捕しました。このうち5名は起訴し、2名は不起訴処分としています。なお、県議会議員は「脱税行為への関与」を否定しており、上申書を提出しています。

まとめ

相続税の非課税制度を悪用した脱税行為として注目が集まりました。犯行グループを作って巧妙に脱税をしても、国税当局は見逃しません。ましてや遺言書の偽造は非常に大きな罪に問われます。絶対にマネないようにしてください。

脱税事件の総括

日本の相続税法違反罪の事件を4件見てきましたがどうでしょうか。このように検察庁まで告発されるほどの脱税事件は、年に数件しかありません。ほとんどの場合、規模が大きく、かつ、隠ぺい工作を図ったなどの悪質なケースです。しかし「小規模なら脱税行為をしてもいいのか」と言えばそうではなく、脱税行為自体がいけないものです。税理士に依頼をしてしっかりと相続税を納めることが肝心です。

もし、相続税を減らしたいのであれば、節税という方法がありますので、方法を理解して正しく節税をするようにしましょう。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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