海外預金の相続問題・手続き・申告のまとめ

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預金 銀行

 最近では、日本への在住を問わず、海外の銀行に預金をする人が増えています。海外の銀行のほうが、利率などの面で優遇されること、税金対策などが理由のようです。2016年4月には、タックスヘイブン(租税回避地)に関わるパナマ文書がニュースで話題になりました。日本でも多くの個人や企業が節税対策のために海外に資産を移していることが判明しています。

海外に預金すること自体は合法的に行えば何も問題ありませんが、相続が発生した場合、様々なトラブルに見舞われることがあります。一番困るのは、相続人が海外預金を引き下ろすために現地の銀行との複雑なやりとりが発生することです。そして、海外預金を取り戻せたかどうかにかかわらず、相続税の申告は海外預金も含めて相続開始から10ヶ月以内に行わなければなりません。

自分または被相続人が海外に預金している場合には、亡くなったときのことを考えて事前に良く備えておく必要があります。

1.海外預金に関する2つの相続問題

海外預金の相続問題は大きく2つに分類できます。1つが遺産分割問題で、もう1つが税務問題です。

1-1.海外預金の遺産分割問題とは?

遺産分割問題は「海外預金を相続するための手続き上の問題」のことです。日本国内の口座から引き落としをする場合であれば、遺産分割協議書や印鑑証明書、住民票などを金融機関に提出すれば口座から預金を引き出せます。しかし、海外預金はこんなに簡単には手続きが終わりません。

海外預金を引き出す際には、多くの国で「プロベート」を受ける必要があります。これは裁判所による検認手続のことで、相続財産管理人を確定する手続きを言います。この「プロベート」という手続きでは、書類を現地の言葉に翻訳したり、外務所に行って手続きをしたり、領事館に行ったりしなければなりません。

そのため、海外預金の引き出しには短くても6カ月程度、長いと3年近く要するケースも珍しくありません。また、時間だけでなく費用も100万円近くかかることもあるようです。自分たちだけで海外の金融機関や役所とやりとりするのは難しいため、通常は弁護士に依頼することになり、弁護士費用も発生します。これが「海外預金の遺産分割問題」の問題です。

1-2.海外預金の税務問題とは?

税務問題は「海外預金を相続する際に発生する相続税上の問題」のことです。被相続人も相続人も日本国籍・在住であれば、たとえ海外預金であっても日本の相続税法に従って申告・納付手続きをしなければなりません。単に海外預金をしているだけでは、相続税対策になりませんので注意が必要です。

しかし、被相続人または相続人のどちらかが、外国籍もしくは海外在住の場合は事情が変わります。この場合は被相続人・相続人の国籍等によって、日本の相続税を適用するのか、居住先の相続税を適用するのかが決まります。日本の相続税だけであれば、税務の手続きは簡単です。けれども、外国の相続税・遺産税を適用する場合は、外国の税法が関わり非常に複雑になりますので、現地の税務に詳しい税理士に依頼をすることをオススメします。

なお、補足ではありますが、2012年度税制改正により国外財産調書制度が設けられ、株や預金、不動産など5000万円を超える海外資産を所有している日本の居住者は、その資産の詳細を記した書類(国外財産調書)を、毎年3月15日までに税務署に提出しなければならなくなりました。この制度には罰則があり、故意に提出しなかったり虚偽の記載をすると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることがあります。

かつては、海外に資産を移して税金逃れをしようと企む人もいましたが、現在では、海外資産を持つことで相続税逃れはできませんので注意をしましょう。

2.相続するために海外預金を引き下ろす方法

海外預金を相続する際に、どのように引き下ろせばいいのか簡単に説明します。なお、実際にはどこの国のどの金融機関で海外預金の口座開設をしているかで手続き内容は異なります。詳しくは国際相続に詳しい弁護士・税理士に相談をしてください。通常は

2-1.海外預金を引き出すための書類を確認する

あらかじめ外国の銀行から預金を引き出すために必要な書類を確認しておきます。代表的な書類は次の通りです。

  • 死亡診断書
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 住民票
  • 戸籍謄本

1つでも足りないと、後々引出の際に苦労することになります。漏れ・抜けのないように書類をリストアップしておきましょう。

2-2.国内で書類を調達する

必要書類が分かったら、まずは日本語で記載されている書類を調達します。仮に遺産分割で問題が起きておらず、調停を起こす必要がなくても「調停」手続きを取っておく方が良いかもしれません。なぜなら、調停が済めば裁判官の署名が入った調停調書が作成され、公的性を高められます。

2-3.調達した書類を現地の言葉に翻訳する

無事に必要書類がそろったら、次に海外預金が預けてある国の言葉に翻訳する必要があります。日本語で書いてある書類を提出しても、金融機関は翻訳をしてくれません。翻訳に自信がない場合は、翻訳家に依頼をするといいでしょう。

2-4.原本と翻訳した書類を公証役場に持ち込む

日本語で書かれた海外預金を引き出すために必要な書類と翻訳した書類を公証役場に持ち込んで証明を受けます。これによって「翻訳した書類が必要書類であること」を公に証明することになります。

2-5.公証を受けた書類を外務省に持っていく

公証役場にて証明を受けた書類を、今度は外務省に持って行きます。そして外務省で「公証を受けた書類が日本の公証によるもの」であると証明を受けます。この結果、ようやく諸外国向けに公的性を持った書類になります。

2-6.外務省に証明された書類を大使館に持って行く

最後に海外預金をしている外国の大使館に持って行き、大使館職員から証明を受けます。これによって両国間で認められる書類になり、海外預金を引き下ろすことが可能になります。

2-7.必要書類を海外の銀行に提出する

必要書類がそろったら、あとは「預金払戻請求書」を作成し、国際郵便で郵送するだけです。その後、1カ月程度で銀行から小切手等の形で返金されます。それを日本の銀行で換金すれば、相続時の海外預金の引き下ろしが完了となります。

なお、ここでは相続時に海外預金を引き出すための一般的な方法を説明したまでです。引き下ろししたい国によって相続手続きは異なります。後々のトラブルを回避するために、国際相続に強い弁護士・税理士に依頼することを、再度おすすめしておきます。

なお、海外預金を引き下ろす手続きについては、相続弁護士カフェにて、より詳しく説明しています。

【参照】国際相続:海外預金を確実に取り戻すには?

3.海外預金の相続税申告・納付手続き

海外預金の相続税は、基本的に相続人が申告・納付しなければなりません。しかし、被相続人の居住先が変わっていたり、相続人の居住先が変わっている場合には適用する相続税法が変わります。

そこで海外預金が課税対象になるかどうかの条件を確認します。

3-1.海外預金が相続税の課税対象になるケース

海外預金が相続税の課税対象なるケースとして、まず被相続人が「日本国籍であることです。万が一、外国籍であればその国の相続税法が当てはまります。被相続人が日本国籍である場合、次の3つのパターンがあります。

<被相続人の状況>
①日本に住所がある
②日本に住所がなく、海外移住が10年以下
③日本に住所がなく、海外移住が10年超え

①日本に住所がある場合、相続人の状態に関わらず、「全ての財産が課税対象」です。したがって、海外預金にも日本の相続税法が適用されます。
②日本に住所がなく、海外移住が10年以下の場合、「相続人が日本国籍」を持っていれば、海外預金も課税対象になります。
③日本に住所がなく、海外移住が10年超えの場合、相続人が日本国籍を持っており、海外移住年数が10年以下であれば、海外預金も課税対象になります。

注:以前は、被相続人・相続人とも海外移住が5年超であれば、海外預金は対象になりませんでしたが、平成29年4月1日以降、5年→10年に変更されました。

3-2.海外預金が課税対象にならないケース

海外預金が課税対象にならないケースは、被相続人が「外国籍である」場合です。また、被相続人が日本国籍であっても、条件次第で課税対象にならない、次の2つのパターンがあります。

<被相続人の状況>
②日本に住所がなく、海外移住が10年以下
③日本に住所がなく、海外移住が10年超え

②日本に住所がなく、海外移住が10年以下の場合、相続人が「外国籍」であれば課税対象から外れます。
③日本に住所がなく、海外移住が10年超えの場合、相続人が外国籍、もしくは相続人が日本国籍でも10年以上海外に在住していれば、海外預金が課税対象から外れます。

相続税 納税義務者

海外預金が相続税の課税対象になるケースとならないケースについてまとめてみました。上図で「制限納税義務者」と記載された部分が、課税対象にならない場合であり、その他は課税対象になります。

もし、海外預金を使って日本の相続税の課税対象外にしたいのであれば、被相続人・相続人両人が10年以上海外に移住している必要があります。ただし、日本の相続税がかからなかったとしても、現地での税金がかかる可能性はありますので、ご注意ください。

4.納税管理人とは?

海外預金が相続税の対象になるかどうかの判定基準として、被相続人、相続人それぞれの海外での居住年数の条件が出てきましたが、海外移住に関連してもう一つぜひ知っておきたいことがあります。

最近では国際化社会が進んでいますから、日本国内ではなく外国に居住している日本人の方も多くいます。例えば、両親が日本に住んでいて、子供が外国に住んでいるような場合において、万が一両親が死亡して相続が発生した場合、外国に住んでいる子供にも相続税の申告義務が発生します

この場合に、相続税申告のためにその都度日本と外国を何度も往復するのはとても大変です。そこで、日本に住んでいる親族などに、自分の代わりに納税事務処理をお願いする必要が出てきます。
納税管理人とは、このように外国に住む人やこれから海外に出国する人から依頼を受けて本人の代わりに納税事務処理を行う人のことをいいます。

4-1.納税管理人になれる人

納税管理人はその地域に住所を有する個人、または事務所や事業所を有する法人であればなることが可能です。相続税申告や多額の贈与税申告の場合は、税理士に税金計算も含めて申告手続きを依頼することが多いため、納税管理人についても一緒に税理士に依頼するケースが多いでしょう。

納税管理人を選任した場合は、それぞれ以下の提出先に「納税管理人届出書」を提出しなければなりません。なお、納税管理人を税理士に依頼すると基本的には税理士報酬が発生します。

  • 相続税の場合:被相続人の納税地を管轄する税務署
  • 贈与税の場合:自身の納税地を管轄する税務署

4-2.納税管理人がすること

納税管理者は、本人に代わって以下の2点について事務処理を行います。

  1. 本人に代わって相続税、または贈与税の申告書を提出して納税すること。
  2. 税務署から送られてくる納税通知書などの郵送物を代わりに受け取ること。

あくまで、納税者本人に代わって事務処理をするだけですので、納税管理人本人に対して直接納税義務が発生するわけではありません。仮に依頼した本人が、納税管理人が提出した相続税申告書に従って相続税を納税しなかったとしても、納税管理人の財産が差し押さえられたりすることはありません。

ですので、遺産分割協議の交渉を代理したり、相続税を計算して相続税申告書を作成するような場合は、弁護士や税理士などの専門家に依頼する必要があります。
納税管理人には特段の資格は必要ないため、あくまで、書類を受け取ったり、申告書を提出したりというごく単純な事務手続きをするにとどまります。

4-3.納税管理人はだれに依頼すべき?

納税管理人は相続税や贈与税だけではなく、毎年の確定申告の事務処理を本人の代わりに行うことができます。所得税などの申告および納税については、毎年発生するものですので、本人の家族などに納税管理人を依頼する形でも特段問題はありませんが、申告書の作成が難しい相続税や贈与税については、納税管理人を税理士に依頼することをおすすめします。

4-4.納税管理人はいつ決める?

納税管理人を決めるということは、税務署に「納税管理人届出書」を提出するということですが、基本的には、出国の日までに提出します。ただ、相続税に関しては、被相続人が亡くなることを想定して事前に納税管理人を選任していることはほとんどありませんので、出国後でも納税管理人を決めたときに提出できます。

なお、海外に住んでいても、不動産家賃など日本で得られる所得に対しては所得税を払う必要があり、所得税の納税管理人を指定することになりますが、相続税の納税管理人とは別の内容になります。所得税、相続税、それぞれ別々に納税管理人届出書の提出が必要です。

相続税に強い税理士が問題を解決いたします

相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
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相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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