アメリカに資産がある人は要注意!アメリカと日本の相続税

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「金利が日本より高いから」、「以前、海外に居住していたから」など、海外に資産を持つ人も多いと思います。しかし、その資産を相続するとなると、相続税はどの国の法律で計算するのでしょうか。また、それはどのくらいかかってしまうのでしょうか。

そこで、このサイトでは、海外資産を国際相続する際の相続税について、日本人が資産を持つことの多い「アメリカ」と「その他の国々」の2つの記事に分けて解説していきます。今回は、「アメリカ」に資産を持つ場合について詳しく説明していきます。

その他の国々(中国、韓国、フィリピン、スイス、タイ)に資産をお持ちの方は、以下の記事をお読みください。

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1.アメリカの「遺産税」ってなに?

ここでは、アメリカの相続制度について説明していきます。

1-1.アメリカにある資産を納税する場合

まず、アメリカに相続財産がある場合は、以下の3つのいずれかの納税が必要となります。

  • 日本の法律に基づいて相続税の納付が必要な場合
  • アメリカの法律に基づいて相続税の納付が必要な場合
  • 日本とアメリカで納税が必要な場合

しかし、アメリカの基礎控除(相続税の納付が必要になる財産額)は、日本と比べて格段に高く設定されているため、多額の資産を持っていない限りアメリカでの相続税の納付は発生しません。

1-2.アメリカの遺産税とは?

 アメリカでの相続税は「Estate Tax」と言い、日本語では「遺産税」と訳されます。

日本の「相続税」と言えば全て国税ですが、アメリカの場合は「連邦遺産税(国税)」と「州遺産税(地方税)」があります。

アメリカの「連邦遺産税」の基礎控除額(相続税の納付が必要になる財産額)は、1,140万ドル約12億円)です。また、税率は累進課税になっており、18%~40%です。 日本の相続税(基礎控除額3,000万円+法定相続人の数×600万、税率10%~55%)と比べると、圧倒的にアメリカの連邦遺産税の税率が低く設定されていることが分かります。

 基礎控除額税率
アメリカ1,140万ドル(約12億円)18%~40%
日本3,000万円10%~55%

州遺産税」は、居住している州によって異なります。詳しくは、「3.居住している州によってこんなに違う!」で説明します。

1-3.アメリカの遺産税の仕組み

アメリカの遺産税は、日本の相続税と根本的に考え方が違います。

遺産税の納税義務者は被相続人(亡くなった人)です。
遺産分割は、遺産総額から連邦遺産税、州遺産税を差し引き、相続にかかる経費を差引いた後の財産を遺言書によって遺産分割を行います。遺言書がない場合には、各州によって定められた法定相続分により遺産分割が行われます。

1-4.「プロベイト」とは?

アメリカでは、遺産を管理する代表者が遺産税の申告納税、遺産分割を行います。この手続を「プロベイト手続き」と呼びます。

プロベイト手続きにかかる弁護士費用等の経費は「相続にかかる経費」として遺産総額から差引かれ、相続人へ分配が行われます。

プロベイト手続きは、被相続人が居住していた州の裁判所で行われます。
通常、このプロベイト手続きに1年以上の期間がかかると言われています。プロベイト手続き中の遺産については、原則、相続人であったとしても自由に使うことができません。また、遺産税がかからない場合でもプロベイト手続きが必要かどうかについては各州のプロベイト関連法によって定められています。

1-5.プロベイト手続きを回避・軽減する方法

プロベイト手続きは、遺言書があったとしても原則的に行わなければならない手続きです。

しかし、プロベイト手続きには高額な弁護士費用や、遺産分割までの長い期間が必要な場合があります。そこで、このプロベイト手続きを回避する方法として、「生前信託」や「共有名義への変更」が広く利用されています。

生前信託(Living Trust)とは?

亡くなった後に特定の資産を受取る人(受託者)を決めておく方法です。

生前信託のメリットは、プロベイト手続きを回避することができることです。
なぜなら、生前信託を設定した時に、その財産の名義が受託者名義に変更になるためです。遺言書と似ていますが、生前に資産の名義を変更する点に違いがあります。

デメリットとしては、手続きには信託契約書の作成費用、名義変更手続きが必要なため、遺言書より費用がかかります
また、生前信託はアメリカの制度のため、日本の税法と同期していません。信託時や、相続時の委託者、受託者の居住形態(アメリカに居住しているか日本に居住しているかなど)によって、日本で贈与税、相続税の申告が必要になる場合があります。

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共有名義への変更とは?

その他にプロベイト手続きを回避する方法として、特定の資産を「共有名義」に変更する方法があります。

アメリカの共有名義のいくつかの方法のうち、次の2つはプロベイト手続きが必要がなくなります。

  • 特定の資産を夫婦の共有名義にすること「Tenancy by the Entirety」
  • 夫婦でなくても等分の権利で特定の資産を共有できる「Joint Tenancy」

その理由は、共有名義者が亡くなった時に自動的にもう一方の共有名義者に所有権が移るためです。

しかし、資産の共有名義化のデメリットは、生前信託と同様に名義変更手続きなどの費用がかかることです
また、委託者、受託者の居住形態によって、共有名義にした時に日本で贈与税が課税される場合があります。「資産の共有名義化」についても両国の専門家に相談されることをおすすめします。

2.アメリカで相続税の納付が必要?それとも日本?

次に、アメリカの遺産税と日本の相続税どちらの申告が必要なのかを、具体例とともにご紹介します。

2-1.アメリカの遺産税の納税義務者は?

アメリカの遺産税の対象は、被相続人がアメリカの居住者(※)かどうかで判断されます。

※居住者とは、生活の拠点がアメリカにある方を指します。永住権を持っているかどうかで判断されません。

被相続人がアメリカの居住者の場合は、アメリカの財産だけでなく、アメリカ国外の財産についても遺産税の対象になります。

一方、被相続人がアメリカの非居住者で、アメリカに財産がある場合は、アメリカの財産のみが遺産税の課税対象になります。

米国居住者/米国非居住者課税対象の財産
米国居住者米国の財産 + 米国外の財産
米国非居住者米国の財産のみ

2-2.日本の相続税の納税義務者は?

日本の法律で相続税の申告が必要な人と、申告が必要な財産は、以下のとおりになります。

海外資産 アメリカ
この表の「国内財産のみ課税」に該当する場合は、外国の資産が日本の相続税によって課税されることはありません。

【参考】財務省HP 個人所得課税・資産課税

2-3.具体例で解説 どっちの国で申告が必要?

アメリカと日本の制度の違いから、相続が発生した時はアメリカで遺産税の申告が必要なのか、それとも日本で申告が必要なのか、よく検討しなければなりません。

どのように判断していくか具体例とともにご紹介します。

具体例A 日本とアメリカ両方が課税対象

・被相続人A:日本国籍、アメリカに20年間居住
・相続人妻B:国籍、居住ともに日本
・相続人子C:国籍、居住ともに日本
・Aの相続財産:アメリカに3億円、日本に2億円

妻Bと子Cは国籍、居住地ともに日本であり、「国内、国外財産に課税」に該当するため、アメリカの3億円、日本の2億円どちらも課税対象になる。

日本の相続税

相続財産5億円-基礎控除4,200万円=4億5,800万円

↓ 税率と配偶者控除等を計算する

1億5,210万円-配偶者控除7,605万円=7,605万円

よって、日本の相続税は7605万円となる。

アメリカの連邦遺産税

Aの生活の拠点がアメリカにあるため、連邦遺産税の課税対象になる。

↓ 連邦遺産税の基礎控除額は1,140万ドル(約12億円)

控除額内のため、連邦遺産税の納付なし

※アメリカの州遺産税については、各州によって法律が異なるため、確認する必要あり。

よって、具体例Aでは、日本に相続税7605万円を納め、アメリカには連邦遺産税は納付なしとなります。

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日本にある財産とアメリカにある財産合計が基礎控除を超えた場合は、アメリカと日本どちらともで同じ資産が課税されることになります。これを「二重課税」といいます。

「二重課税」になった場合は、日本の相続税の計算により、アメリカで支払った遺産税を控除することが出来ます。これを「外国税額控除」といいます。

【参考】国税庁HP No.1240 居住者に係る外国税額控除

具体例B アメリカのみが課税対象

・被相続人D:アメリカ国籍、アメリカに8年間居住
・相続人妻E:アメリカ国籍、Cとともにアメリカに居住
・Dの相続財産:アメリカに3億円(自宅含む)

日本の相続税

DもEも過去15年以内に日本国内に住所を有していた期間が10年以下

 「一時居住者」に該当する

Cのアメリカの財産は、日本の相続税の対象にならない

アメリカの連邦遺産税

アメリカ国内に自宅があるため、連邦遺産税の課税対象になる。

 連邦遺産税基礎控除額は1,140万ドル(約12億円)

控除額内なので、連邦遺産税の納付なし

※アメリカの州遺産税については、各州によって法律が違いますので確認する必要あり。

よって、具体例Bでは、日本の相続税も、アメリカの連邦遺産税も納付なし。

3.居住している州によってこんなに違う州遺産税

現在アメリカでは、13の州が「州遺産税」を定めています。

「州遺産税」については、各州の法律で決められているため、相続が発生した場合はその州の遺産税関連法をチェックする必要があります。「州遺産税」を導入している13の州の州遺産税についてまとめましたので、参考にしてください。

基礎控除額最高税率
コネチカット州360万ドル12%
コロンビア特別区568万2千ドル16%
ハワイ州549万ドル16%
イリノイ州400万ドル16%
メーン州570万ドル12%
メリーランド州500万ドル16%
マサチューセッツ州100万ドル16%
ミネソタ州270万ドル16%
ニューヨーク州574万ドル16%
オレゴン州100万ドル16%
ロードアイランド州156万2千ドル16%
バーモント州275万ドル16%
ワシントン州219万3千ドル20%

3-1.遺産税ではなく、相続税がある州も存在!

アメリカの13州は「州遺産税」があるとご紹介しましたが、相続税(州相続税)を定めてある州もあります。

「州遺産税」と「州相続税」の主な違いは、「納税義務者が誰になるか」です。

州相続税は日本と同様に納税義務者は遺産を相続した「相続人」となります。相続人は相続した財産の中から、相続した財産に見合う相続税を納税します。 「相続税」を定めている州は次の6つの州です。

基礎控除額最高税率
アイオワ州無し15%
ケンタッキー州別途規定あり16%
ネブラスカ州10000ドル 18%
ニュージャージー州無し16%
ペンシルベニア州無し15%
メリーランド州無し10%

3-2.アメリカで遺産税が一番高い州は?

「州遺産税」だけを見てみると、ワシントン州の20%が一番高い税率になっています。

しかし、メリーランド州は、「州遺産税」と「州相続税」の2つが存在しています。この2つの法律は複雑にリンクしており、免税規定などがあるので専門家にご相談ください。

まとめ

今回は、アメリカに財産を持っている場合の「遺産税」についてご紹介しました。

アメリカの「遺産税」は減税傾向になっており、アメリカに多額の資産がない限り納税が伴うケースはありません。しかし、アメリカで納税が発生しない場合でも、被相続人や相続人の居住場所や、国籍などにより日本で相続税の申告納税が必要になるケースがあります。

この場合は、アメリカの法律と、日本の法律が複雑に絡み合いますので、ご自分で判断せず、国際税務の専門家にご相談されることをおすすめします。

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