愛人が生命保険金を受け取ると、みんなの相続税が増える?

★ お気に入りに追加
老夫婦

被相続人の中には生前、家族に知らせていない愛人がいて、愛人にも財産を残したいと思い、愛人を受取人として生命保険をかけていたケースがあります。生命保険金は本来、相続財産ではなく受取人固有の財産ですので、遺産分割の対象にならず、確実に愛人にお金を渡すことができるのですが、実は、他の相続人にとっては大迷惑な話です。

なぜかというと、相続税の計算上では、生命保険金は「みなし相続財産」として扱われ計算の対象になります。相続財産総額が増えてしまいますが、愛人は相続人ではないため、基礎控除額には変化はありませんし、生命保険金の非課税枠も同じままです。その結果、全体の相続税額が増えてしまい、分割したそれぞれの相続税も増えてしまうことになります。
家族が知らない愛人にお金を渡したこと自体、大変腹立たしいのに、さらに相続税まで増えるのは怒り心頭といったところですが、相続税の計算上ではそうなってしまうのです。

愛人が生命保険金を受け取ったせいでなぜ相続税が増えてしまうのか、相続税の計算を交えながら説明します。

相続税の計算の仕組み

まず、簡単に相続税の計算の仕組みを説明しておきます。
詳細は、下記で説明しています。

【参考】簡単にできる相続税の計算

相続税の計算は少し特殊で、実際に誰が相続財産を受け取ったかに関わらず、法定相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定して相続税の総額を計算します。たとえ、相続放棄した人がいても相続放棄はなかったとして計算します。

相続財産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、その金額を法定相続分で分けます。そして、相続税の速算表を元に、各相続人の相続税額を計算し、それをすべて合計します。
最後に、実際に相続した割合で按分して、各人の相続税額を算出します。

文章では理解するのが難しいため、実例を見てみましょう。

通常の相続税の計算

まず、愛人がいない場合の、通常の相続税の計算をしてみます。
被相続人(夫)の家族構成は、配偶者(妻)、子ども2人(長男/次男)で相続財産は2億円だったとしましょう。

相続人は、妻/長男/次男の3人ですから、基礎控除額は、3000万円+600万円×3=4,800万円です。
課税遺産総額は、2億円-4,800万円=1億5,2000万円です。

法定相続分は妻が2分の1、長男/次男が4分の1ですから、各相続人の法定相続分をかけると次のようになります。

妻  1億5,200万円 × 1/2 = 7,600万円
長男 1億5,200万円 × 1/4 = 3,800万円
次男 1億5,200万円 × 1/4 = 3,800万円

相続税の速算表より、各相続人の相続税額を計算します。

妻  7,600万円 × 30% - 700万円 = 1,580万円
長男 3,800万円 × 20% - 200万円 =  560万円
次男 3,800万円 × 20% - 200万円 =  560万円

すべて合計すると、相続税の合計は、

1,580万円 + 560万円 + 560万円 = 2,700万円

もし、相続人全員が法定相続分どおりに相続したとすると、それぞれ支払う相続税は次のようになります。

妻  2,700万円 × 1/2 = 1,350万円
長男 2,700万円 × 1/4 =    675万円
次男 2,700万円 × 1/4 =    675万円

このうち、妻の1,350万円に関しては、相続税の配偶者控除の特例で、支払う必要がなくなります。

あと、法定相続分で相続する場合の相続税の計算は、早見表を使うと簡単にできます。
相続税の計算シミュレーションツールを利用しても良いでしょう。

愛人が生命保険金を受け取った場合の相続税の計算

次に、愛人が生命保険金5,000万円を受け取ったときの相続税の計算をしてみます。

生命保険金は、みなし相続財産とされ、相続財産にプラスしますので、相続財産は2億5,000万となります。
一方、愛人は相続人ではありませんので、基礎控除額は変わらず、4,800万円です。
つまり、課税遺産総額は、2億5,000万円-4,800万円=2億200万円です。

後は通常の場合と同様に計算していきます。
各相続人の法定相続分をかけると、

妻  2億200万円 × 1/2 = 1億100万円
長男 2億200万円 × 1/4 =  5,050万円
次男 2億200万円 × 1/4 =  5,050万円

各相続人の相続税額は、

妻  1億100万円 × 40% - 1,700万円 = 2,340万円
長男  5,050万円 × 30% -  700万円 =  815万円
次男  5,050万円 × 30% -  700万円 =  815万円

相続税の合計は、

2,340万円 + 815万円 + 815万円 = 3,970万円

まずこの時点で、通常の場合と比較して、3,970万円-2,700万円=1,270万円も相続税合計が増えています

そして、愛人も含めて実際に受け取った割合を算出します。

妻  1億円   ÷ 2億5,000万円 = 0.4
長男 5,000万円 ÷ 2億5,000万円 = 0.2
次男 5,000万円 ÷ 2億5,000万円 = 0.2
愛人 5,000万円 ÷ 2億5,000万円 = 0.2

最後に、この割合をかけて、それぞれの相続税額を計算します。

妻  3,970万円 × 0.4 = 1,588万円
長男 3,970万円 × 0.2 =   794万円
次男 3,970万円 × 0.2 =   794万円
愛人 3,970万円 × 0.2 =   794万円

このうち、妻の1,588万円については、相続税の配偶者控除でゼロ円になります。
しかし、なんと、長男/次男の支払う相続税は、通常の場合と比べると、794万円-675万円=119万円も増えてしまいました

生命保険金を受け取った愛人が相続税を払うのは当然としても、長男/次男は受け取った財産の金額が同じなのに、相続税額が増えてしまうのです。
なんとも納得のいかない結果ですが、相続税の計算とはこういうものなのです。

そして、もし、愛人が生命保険金を受け取ったことが当初はわからず相続税申告を終えてしまい、申告期限後の税務調査で発覚したとしたら、過少申告加算税(50万以下の部分は10%、50万円超の部分は15%)のペナルティおよび、延滞税(平成28年12月時点では9.1%)を課せられてしまいます。
しかも、相続税の申告も納税も終えて何年も経っているところで、突然、追加納税が発生するのですから、そのお金を用意するだけで大変です。預貯金で持っていれば大丈夫ですが、不動産を相続していれば場合によっては、追加の相続税支払いのために借金をせざるを得なくなります。

愛人にお金を残すなら、相続税分も考えて

愛人にお金を残すこと自体はそれぞれの考え方の問題ですので、良いとも悪いとも言い難いのですが、他の相続人に迷惑をかけないように、相続税分も考えるようにしましょう。

生命保険金の受取人を複数人にして、それぞれ受け取る割合を指定することができますので、愛人が生命保険金を受け取ることで増えてしまう相続税分は、残りの相続人が受け取ることができるようにしておきます。上記の例でいえば、生命保険金5,000万円のうち、長男/次男がそれぞれ119万円よりやや多い金額(多く財産を受け取った分の相続税アップ分も考慮)を受け取り、残りを愛人が受け取るようにします。
ただし、生命保険によっては受取人の複数人指定が不可能である場合もありますので、詳細は加入している保険会社にお問い合わせください。

また、愛人がいることは家族になるべく知られたくないかもしれませんが、死後何年も経ってから発覚すると面倒なことになりますので、遺言書に書いておくなどして、相続税の申告前に家族がわかるようにしておきましょう。
多額の保険金を受け取れば税務署は間違いなくそれを把握しており税務調査時に必ず問題になるからです。

ただ、愛人がいたと家族が知るとショックと怒りで遺影を飾ってすらもらえないこともあるそうですので、そのあたりはご自身でご判断ください。

相続税に強い税理士が問題を解決いたします

相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
相続税について、下記のような不安・課題を抱えている方は、相続税に強い税理士にご相談ください。

  1. 相続税をなるべく安くしたい
  2. 税務調査が怖い
  3. 評価が難しい土地がある
  4. 相続関連のいろいろな手続きが面倒で困っている
  5. 生前対策をしたいが、何をしたら良いかわからない

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

この記事が役に立ったらシェアしてください!