売却と物納のどちらがお得?

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住宅 お金

現金や預貯金がほとんどなく不動産だけの場合、相続税の支払いに困ります。
相続税の支払いは現金一括が原則ですが、どうしても払えない場合は、下記の2つの方法どちらかが考えられます。

  • 不動産を売却して現金に換えて納税する
  • 相続税の物納で、不動産そのものを納税に充てる

「売却」と「物納」のどちらがお得なのか、具体例で検証してみます。

1.手取額の比較シミュレーション

まず前提条件を次のとおりとします。

  • 時価1億円の土地が対象
  • 相続税評価額8,000万円(相続税評価額は時価のおよそ8割)→物納の収納価額
  • 売却価格は次の3パターン
    -ケース1:8,000万円(相続税評価額と同額)
    -ケース2:1億円(時価)
    -ケース3:1億2,000万円(時価の2割増し)
  • 長期所有の土地であり、取得費は売却価格の5%
  • 譲渡費用は、売却価格の3%
  • 相続財産は他に、1億6,000万円の別の土地があるとする。
  • 相続人は子1人とする。
  • 譲渡所得にかかる所得税・住民税は20%(復興特別所得税は考慮しない)
  • 申告期限から売却までの期間の利子税・延滞税は考慮しない

1-1.相続税の取得費加算を適用する場合

相続税の申告期限の翌日から3年以内に不動産を売却した場合、支払い済みの相続税の一部を譲渡所得から控除できる「相続税の取得費加算」という特例があります。まずは、この特例を利用したとしてシミュレーションします。

計算に必要な各値に番号を振っておきます。

①売却価格
②取得費
③譲渡費用
④取得費加算
⑤譲渡所得
⑥譲渡所得税等
⑦手取額

計算の過程は次のようになります。

・相続財産総額2億4,000万円、子1人の場合の相続税は6,480万円
相続税の計算シミュレーションより)

・④取得費加算=6,480万円×(8,000万円/2億4,000万円)=2,160万円

・⑤譲渡所得=①売却価格-②取得費-③譲渡費用-④取得費加算
・⑥譲渡所得税等=⑤譲渡所得×20%
・⑦手取額=①売却価格-③譲渡費用-⑥譲渡所得税等

こちらの細かい計算は省略し、結果を表で示します。

 ケース1ケース2ケース3
①売却価格8,000万円1億円1億2,000万円
②取得費400万円500万円600万円
③譲渡費用240万円300万円360万円
④取得費加算2,160万円2,160万円2,160万円
⑤譲渡所得5,200万円7,040万円8,880万円
⑥譲渡所得税等1,040万円1,408万円1,776万円
⑦手取額6,720万円8,292万円9,864万円
物納の収納価額
8,000万円との差額
-1,280万円292万円1,864万円

ケース1(売却価格が相続税評価額と同額)の場合は、物納がお得です。
ケース2(売却価格が時価)の場合は、売却がややお得です。
ケース3(売却価格が時価の2割増し)の場合は、売却がお得です。

あくまでも前提条件ありきでの計算ですので、各種条件によって異なりますが、時価以上で売却できるのであれば、売却のほうがお得となる可能性が大きいことがわかります。

1-2.相続税の取得費加算を適用しない場合

相続税の取得費加算を適用できるのは、相続税申告期限の翌日から3年以内に売却した場合に限られますので、それを過ぎて売却した場合は適用できなくなります。
その場合は、物納と売却のどちらがお得なのか、同様に計算してみます。

なお、前提条件は同じとし、計算の過程は省略します。

 ケース1ケース2ケース3
①売却価格8,000万円1億円1億2,000万円
②取得費400万円500万円600万円
③譲渡費用240万円300万円360万円
⑤譲渡所得7,360万円9,200万円1億1,040万円
⑥譲渡所得税等1,472万円1,840万円2,208万円
⑦手取額6,288万円7,860万円9,432万円
物納の収納価額
8,000万円との差額
-1,712万円-140万円1,432万円

今度は、ケース1、2の場合で物納がお得、ケース3の場合のみ売却がお得という結果になります。

取得費加算がないと売却時に課税される所得税等が増えてしまいますが、それでも時価よりそれなりに高く売却することができれば、売却のほうがお得となります。

2.売却と物納の比較

2-1.比較表

不動産を物納に充てる方法と不動産を売却して現金で納税する方法、どちらが得になるのか比較してみましょう。

項目物納の場合売却する場合
所得税、住民税かからないかかる
不動産評価額相続税評価額(実勢価格の7~8割程度)実勢価格
土地の実測必須任意
不動産仲介手数料不要必要

物納と売却のどちらが得であるかは、不動産ごとに異なるため一概にはいえません。 不動産の査定と相続税評価額を計算して、更に表のそれぞれの金額を算出して総合的に判断しましょう。

2-2.物納のメリット・デメリット

売却と違って物納についてはイメージがつきにくいと思いますので、物納のメリットとデメリットを簡単に挙げてみます。

2-2-1.メリット

  • 不動産の売却を待たずに相続税が納付できる。
  • 市場で売れないような不動産であっても、相続税評価額で引き取ってもらえる。
  • 譲渡所得が発生しないので、所得税と住民税の負担がない。

市場では売れないような不動産を、物納で引き取ってもらえるのは良い点です。

2-2-2.デメリット

  • 相続税評価額で引き取られるので、価値が市場価格の7~8割程度になる可能性が高い。
  • 測量や境界確定は必ず行わなければならない。
  • 物納申請をして却下された場合でも、測量や境界確定などの費用は発生する。

物納の手続きが複雑なため、現在では、多くの人が物納ではなく、不動産を売却してから相続税を納めているのが実情です。

2-3.売却価格と売却の時期が重要

売却と物納のどちらがお得か比較するには、売却価格と売却の時期(取得費加算を適用できるかどうか)が重要になります。

相続税の申告期限後3年以内に売却すれば取得費加算を適用できますが、一方で、将来的に値上がりが期待できるのであれば、ある程度待ってから売却してほうが良い場合もあります。

綿密なシミュレーションが必要ですので、不動産業者から価格や流通状況の情報を仕入れるとともに、税金の計算は税理士に相談されることをお勧めします。

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