土地の相続税の計算方法

土地 宅地

相続税を計算するためには、各財産を評価する必要があります。中でも土地の評価は、財産評価の中でもキーポイントであり、相続税の額を左右することもあります。
以下では、土地に焦点を当てて、その評価方法と小規模宅地等の特例、相続税計算について解説します。

1.土地の評価方法

1-1.土地の金額は4種類

土地の金額は1つではありません。土地の状態、使用目的、どのような人に需要があるかなどの要因を絡ませながら決定されていきます。
それらに対応するために、土地には次の4種類の金額があります。

区分時価(実勢価格)公示価格固定資産税評価額相続税路線価
内容実際の取引価格土地取引価格の指標固定資産税、
不動産取得税
などの計算の基礎
相続税、贈与税
の計算の基礎
基準日1月1日
公表日3月下旬3月または4月7月下旬
決定機関国土交通省市町村国税庁
評価割合※80~120%100%70%80%

※公示価格を100%とした場合

1-2.評価方法は2種類

相続税における土地の評価方法には路線価方式倍率方式の2種類があり、基本的には相続税路線価を使った路線価方式により計算します。

1-2-1.路線価方式

路線価と面積を元に、接している道路や奥行、形状などその土地が持っている個性を考慮して計算する方法です。

路線価×土地の面積×補正率

1-2-2.倍率方式

路線価が設定されていない土地に使う評価方法で、固定資産税評価額に国税庁が定める一定の倍率を乗じて計算します。

固定資産税評価額×評価倍率

【関連】宅地の路線価方式の計算

路線価と評価倍率は、国税庁のホームページで簡単に調べることができます。
【参考外部サイト】国税庁:財産評価基準書

1-3.価格補正率・加算率

全く同じ土地はこの世に存在しません。形状や立地条件など、それぞれ個性を持っています。相続税評価額の計算では、その個性を評価額に反映させるために、補正率加算率が設けられています。

利便性の低い土地についてはその分評価が減額され、反対に高い土地については加算率が乗じられて評価がアップします。

1-3-1.接道状況

その土地にどのように道路が接しているかによって、評価額が異なってきます。

  • 1本のみ接道
    出入りできる道路が1本のみの場合には、その土地の利便性は奥行によって左右されます。
    このような土地には、奥行価格補正率が乗じられます。
  • 正面と側面が接道
    土地の半分を道路に囲われる形となっている場合は、1本のみの接道と比べて格段に利便性が上がります。
    このような土地には、側方路線影響加算率が乗じられます。
  • 正面と裏面が接道
    土地を挟むような形で2本の道路に接している場合にも、利便性が高い土地となり評価額が上がります。
    このような土地には、二方路線影響加算率が乗じられます。
  • 接道がない
    行する道路がなければ、他人の土地を通って土地にたどり着くしかありません。非常に不便であり、将来的に、通行している土地に建物が建つなどして、土地にたどり着けなくなる恐れもあるため、評価減されます。

1-3-2.土地の形状

通常の土地に比べて、変わった形をしている土地は用途が限られてしまい、売りたくてもなかなか売れない場合が多くなります。

  • 広大地
    広すぎる土地のことを広大地といいます。広大地を通常の計算で評価すると、面積が大きい分莫大な評価額となり、相続税もそれに比例してしまい不公平です。
    広大地に該当する土地については、広大地補正率が乗じられ評価が減額されます。
  • 不整形地
    形がいびつな土地は、不整形地補正率を用いて評価が減額されます。
  • 間口狭小地
    土地の入り口が狭いと、車の乗り入れができなかったり、建築基準法により建物が建てられない場合があり、間口狭小補正率を用いて評価を減額することができます。

それぞれの補正率は、国税庁ホームページで確認することができます。
【参考外部サイト】国税庁:奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |財産評価 

2.小規模宅地等の特例で評価減

小規模宅地等の特例とは、その土地が被相続人や被相続人と生計を一にしていた家族の居住用または事業用にしていた土地である場合に適用を受けることができる制度です。

この特例の適用を受けることができれば、土地の評価を大幅に下げることができます。土地の相続税対策として非常に有効であるため、要件に該当する場合には必ず適用を受けたい制度です。

2-1.最大80%評価を減らせる

一定要件を満たす次の宅地については、評価額が限度面積まで最大80%も減額されます。

  • 特定居住用宅地等…居住用に使用していた宅地等(マイホームの敷地)
  • 特定事業用宅地等…事業用に使用されていた宅地等(不動産貸付事業以外の事業用建物の敷地)
  • 特定同族会社事業用宅地等…貸付業以外の一定の法人の事業用に使用されていた宅地等(不動産貸付事業以外の同族会社への賃貸敷地)
  • 貸付事業用宅地等…不動産貸付事業用に使用されていた宅地等(賃貸物件の敷地)

限度面積と減額割合は、宅地ごとにそれぞれ異なります。
相続開始日が平成27年1月1日以後の場合は以下の通りです。

土地の種類限度面積減額割合
特定居住用宅地等330㎡80%
特定事業用宅地等400㎡80%
特定同族会社事業用宅地等400㎡80%
貸付事業用宅地等200㎡50%

【関連】小規模宅地等の特例、自宅の相続税対策

2-2.その他の特例

土地に限って適用される特例ではありませんが、他にも相続税を減額することができる特例があります。

2-2-1.配偶者の税額の軽減

配偶者の相続人だけが受けることができる制度で、一般的に「配偶者控除」と呼ばれます。ここでいう配偶者とは、婚姻届けを提出した法律婚状態である配偶者であり、内縁関係の場合は対象になりません。
控除額は次のいずれか高い方の金額となります。

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

よって、被相続人の配偶者が相続した財産総額が1億6千万円未満である場合には相続税はかからず、1億6千万円超の場合であっても法定相続分までは相続税がかからないということになります。

【関連】相続税の配偶者控除で少なくとも1億6000万円までが非課税に!

2-2-2.障害者の税額控除

相続人が85歳未満の障害者である場合には、障害区分に応じた次の算式により計算した金額が、相続税額から控除されます。

  • 一般障害者…10万円×(85歳-相続時の年齢)
  • 特別障害者…20万円×(85歳-相続時の年齢)

2-2-3.未成年者控除

相続人が20歳未満の未成年者である場合には、次の算式により計算した金額が、相続税の額から控除されます。

10万円×(20歳-相続時の年齢)

【関連】相続税の障害者控除と未成年者控除

2-2-4.相次相続控除

過去にあった相続の後10年以内に2回目の相続が発生した場合には、前回相続税が課された財産にまたすぐ相続税がかかるようになってしまいます。
相次相続控除は、名称通り相次ぐ相続が発生した場合の相続人の税負担を軽減するための制度で、2回目の相続にかかる相続税から1回目で納めた相続税の一部を控除することができます。

3.土地の相続税の計算

相続税の計算式を簡単に表すと次のようになります。

(相続財産の課税価格-基礎控除)×相続税率=相続税の総額

4.相続税の具体的な計算例

次の条件における相続税を計算してみましょう。

  • 法定相続人3人
  • 自宅土地200㎡
  • 奥行7m(奥行価格補正率0.95)
  • 路線価50万円

4-1.自宅土地の評価を行う

路線価50万円×補正率0.95×200㎡=9,500万円

4-2.基礎控除額を差し引く

3,000万円+600万円×法定相続人3人=4,800万円

遺産総額9,500万円-基礎控除4,800万円=課税遺産総額4,700万円

4-3.相続税の総額の算定

課税遺産総額4,700万円×相続税率20%-控除額200万円=相続税の総額740万円

4-4.【参考】小規模宅地等の特例の適用があった場合

自宅土地が特定居住用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を受けた場合の評価額と相続税は次のようになります。

  • 評価額…9,500万円×(100%-80%)=1,900万円
  • 相続税…基礎控除以下となり相続税はかかりません。

5. 相続税の他に登録免許税もかかる

土地を相続により取得した場合には相続税申告の他に、相続人へ名義変更するための相続登記をしなければなりません

5-1.相続登記に要する費用

5-1-1.登録免許税

相続登記に要する費用の大部分を占めるのが登録免許税です。これは登記の申請をする際にかかる国税で、通常は収入印紙によって支払います。
税額は、「登記する不動産の固定資産税評価額×0.4%」で計算され、登記費用はこの金額次第で大きく変わります。

5-1-2.登記事項証明書の発行手数料

登記する際に最新の登記情報を知るため、登記完了後に登記が間違いなく行われたかを確認するためには登記事項証明書を取得する必要があり、1通につき600円かかります。

5-1-3.登記に必要な書類の発行手数料

登記には様々な書類を添付する必要があります。主な書類の取得費用は次の通りです。

※手数料は自治体によって多少異なりますので、詳しくはお住まいの自治体へ直接お問い合わせください。

被相続人にかかる書類
書類名手数料
出生から死亡までの連続戸籍謄本450円
除籍謄本、改正原戸籍750円
住民票の除票300円

 

相続人にかかる書類
書類名手数料
全相続人の戸籍謄本450円
全相続人の印鑑証明書300円
不動産を相続する人の住民票300円
登記する不動産の固定資産評価証明書400円

5-1-4.司法書士への報酬

登記は司法書士へ依頼することもできます。司法書士報酬は自由化されており事務所ごとに異なりますが、不動産1件につき5万~7万円程度の事務所が多いようです。

5-2.相続登記は必ずした方が良い

実は相続登記は必須ではなく、期限もありません。登記しなければ上記の費用を支払う必要がなく、魅力的に感じるかもしれません。
しかしいつまでも未登記のままでいると、売却しようとした時にすぐ売却手続きに入れなかったり、他の相続人に先に相続登記されてしまったりなど、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。実際に現在、未登記の土地が問題になっており、政府も登記を薦めている状況です。

余程の事情がある場合を除いては、相続登記は速やかに行うようにしましょう。

まとめ

土地の評価は自分で行うことも可能ですが、専門知識のない人が行うのは非常に難しく、誤った計算をしてしまった場合の損失は計り知れません。また、専門家である税理士によっても金額が変わってきます。
相続税を最小限に抑えるためには、土地評価に長けた税理士に依頼するようにしましょう。

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相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
相続税について、下記のような不安・課題を抱えている方は、相続税に強い税理士にご相談ください。

  1. 相続税をなるべく安くしたい
  2. 税務調査が怖い
  3. 評価が難しい土地がある
  4. 相続関連のいろいろな手続きが面倒で困っている
  5. 生前対策をしたいが、何をしたら良いかわからない

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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