似て非なる遺贈と死因贈与の違い

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生前贈与

相続と関連したものに、遺贈と死因贈与があります。どちらも相続人の死亡によって効力が発生することは同じです。ただ、これら2つは似ているようでいて異なる性質を持っています。
すべてを記載することはできませんが、遺贈と死因贈与の主な特徴を抽出しながら違いを確認します。

1.遺贈と死因贈与

(1)遺言による遺贈

遺贈とは簡単に言うと遺言によって特定の人に財産を分け与えることです。相続との違いは、相続できるのは法定相続人だけですが、遺贈では、被相続人が財産を渡す人を自由に選ぶことができます。

遺贈には包括遺贈と特定遺贈の2つがあります。

包括遺贈:財産の割合を指定して遺贈する

包括遺贈とは、受遺者(遺贈を受ける人)を特定し、さらに遺贈する財産の割合を指定することです。「総財産のうちの10%を相続花子に遺贈する」といった具合に遺言書に書きます。

特定遺贈:特定の財産を指定して遺贈する

特定遺贈とは、受遺者を特定し、さらにある特定の相続財産を指定することです。銀行預金(○○銀行▲▲支店普通預金1234567)や住宅(○○市××町1丁目2番3号101号室)など、具体的な財産を遺言書に記載します。

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(2)生前の契約による死因贈与

死因贈与とは、相続人の死亡を理由として贈与を発生させることです。あらかじめ贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の間で贈与契約を交わしておき、相続人の死亡によって効力が発生します。
死因贈与は「贈与」と名前がついていますが、相続税法上は「相続」として扱われる点には注意が必要です。

死因贈与には「負担付死因贈与」と呼ばれるものもあります。これは受贈者が何らかの義務を負うことを条件に死因贈与を認める契約です。たとえば、贈与者の介護をすることを前提に、死亡時したら財産をあげるというような場合です。

2.遺贈と死因贈与の違い

遺贈と死因贈与がどのように違うのかを次の5つの観点から述べます。

  1. 手続き方法
  2. 撤回
  3. 放棄
  4. 不動産登記
  5. 税金

(1)手続き方法

遺言書すでに説明した通り、遺贈は遺言によって行います。遺言の場合は原則として遺言内容が他人に公開されることはありません。よって、内容を秘密にしておきたい場合に有効です。
遺言の方式としては、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言の3つがありますが、確実に遺贈したいのであれば公正証書遺言が無難でしょう。

【関連】遺言とは?自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言の違い

一方、死因贈与の場合は両者の贈与契約によって行います。したがって、少なくとも受贈者には贈与内容を知らせ合意を得ることになります。
贈与契約は口頭でも成立しますが、贈与者が死亡したら何も証拠がありませんので、書面で契約することが望ましいです。相続トラブルを防止するためにも、できれば公正証書による贈与契約を締結するのが良いでしょう。

(2)撤回

財産をあげる側の立場から見て、一度は財産を渡したいと思ったが、やはりやめたい(撤回したい)場合に差があります。

遺言書の撤回は自らの意思で簡単に行うことができますので、遺言による遺贈も簡単に撤回することができます

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一方、死因贈与の撤回ですが、贈与契約は本来、贈与者/受贈者両者の合意によるものですが、遺贈の撤回に関する規定が同じく当てはめられ(民法第554条)、贈与者が自由に撤回することができます。原則として書面によらなくても口頭でも撤回可能です。ただ、贈与契約を書面で結んでいるのであれば、相続トラブルのもとになりますので、きちんと書面で撤回するのが良いでしょう。

民法第554条
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

ただし、負担付死因贈与で、受贈者がすでに何らかの負担をしている場合には、特別な事情がない限り撤回できないとされています(民法550条)。たとえば、受贈者がすでに贈与者の介護をしているのであれば、撤回すると受贈者にとって不利益となるからです。

民法550条
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

(3)放棄

今度は、財産をもらう側の立場から見て、相続発生後、財産をもらいたくない場合です。

遺贈の放棄は、財産を受ける人(受遺者)が自由にできます
包括遺贈と特定遺贈では方法がやや異なり、包括遺贈では通常の相続と同様に、相続を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申請をします。
特定遺贈では、いつでも自由に放棄することができます。書面が必要なく口頭でも大丈夫です。

一方、死因贈与の放棄ですが、贈与契約ですので「放棄」とは言わず正しくは「撤回」と言います。
民法550条の規定通り、「書面によらず、まだ履行が終わっていない」ものは撤回可能です。
どの場合に撤回可能かは、意見が分かれる部分がありますので、迷われる場合は弁護士にご相談されるのが良いでしょう。

(4)不動産登記

(i)仮登記の手続き

仮登記とは現在は登記の移転が発生していませんが、条件がそろえば移転が発生することを指します。
AさんからBさんへの不動産の所有権移転登記に関していえば、仮登記の状態ではまだAに所有権がありますが、順位が保全され将来Bによる本登記が優先されます。仮に、Aさんが別のCさんから借金をしCさんに対する抵当権を設定したとしても、Bさんが本登記をすればBさんに所有権が移転し、Cさんの抵当権は無効となります。

さて本題ですが、遺贈では仮登記が認められていません

一方、死因贈与では仮登記が認められています。これを「始期付所有権移転仮登記」といい、贈与者と受贈者の両者が共同で行います。受贈者は財産(不動産)の権利を保全することが可能です。
財産をもらう立場の人にとって、生前の段階では、死因贈与のほうが確実性が高いといえます。

(ii)登記手続き

遺贈、死因贈与が発生したら不動産の所有権を移転させるための手続きを行います。

こちらは仮登記とは逆に、遺贈の方が簡単に手続きできる可能性が高いです。遺言執行者が指定されていれば、受贈者と遺言執行者で所有権移転登記を行うことができます。

一方、死因贈与の場合は受贈者と贈与者の相続人全員で所有権移転登記を行う必要があります。その結果、手続きが煩雑になる可能性があります。

(5)税金

(i)不動産取得税

不動産取得税とは不動産を手に入れた場合に発生する税金です。税額は、固定資産税評価額×4%です(期限付きで軽減税率制度あり)。

遺贈であれば不動産取得税を課税されません。なぜなら、相続では不動産取得税は発生しませんが、遺贈は相続と同じように扱われるからです。ただし、例外として、相続人以外への特定遺贈の場合は、不動産取得税がかかります。

一方で、死因贈与では不動産取得税が課税されます。つまり、贈与と同じ扱いになります。

(ii)登録免許税

登録免許税とは、不動産の所有権移転登記の手続きのために発生する税金です。遺贈と死因贈与のどちらでも発生します。

遺贈での税額は、相続人の場合:固定資産税評価額×0.4%、相続人以外の場合:固定資産税評価額×2.0%です。

死因贈与での税額は一律で固定資産税評価額×2.0%です。

【関連】相続での不動産の税金のまとめ

税金

3.遺贈のメリット/デメリット

以上の内容を、遺贈/死因贈与それぞれのメリット/デメリットという観点で、再度比較してみます。

(1)メリット:秘密にできる、放棄できる

遺贈者(あげる人)の立場からすると、遺贈は遺言書を書くことで他人に知られず自由に行うことができるというメリットがあります。公正証書遺言の場合は、公証人と証人2人には内容を知られてしまいますが、遺贈する相手に知らせる必要はありません。

また、受遺者(もらう人)から見ても、借金が含まれているなど、もらいたくない財産であれば放棄することができます

(2)デメリット:遺言書の書き方次第で無効になるリスクあり

遺贈は遺言書が要ですが、この遺言書の書き方が間違っていて無効になってしまうリスクがあります。そうなると、財産を渡したかった相手に渡せず、財産をもらう権利のある法定相続人の間で分割されることになります。

4.死因贈与のメリット/デメリット

(1)メリット:確実に財産を贈与できる

死因贈与の最大のメリットは、確実に財産を贈与できる点にあります。事前に両者の契約によって取り決めているからです。さらに、負担付死因贈与にして生前に受贈者(もらう人)に負担をさせれば、撤回することはできません。

また、受贈者の立場からしても、不動産であれば仮登記によって権利を保全できるので安心です。

(2)デメリット:税金面で不利になるケースもある

死因贈与のデメリットは、不動産を贈与する場合には不動産取得税が発生する点です。また、登録免許税も高いほうの税率が適用され税金面での負担が大きくなってしまいます。どちらも、受贈者が支払う税金ですので、その分を用意しておかなければならないでしょう。

また、負担付死因贈与の場合には、義務を確実に果たさなければなりません。内容によっては撤回することも難しくなってしまい、受贈者に大きな負担になるケースもあります。

5.遺贈と死因贈与はどちらが優先される?

最後にちょっとマイナーなケースの紹介ですが、もし、遺贈の内容が書かれた遺言書と、死因贈与の契約書の両方があった場合、どちらが優先されるのでしょうか?
この場合、遺贈/死因贈与に関係なく、新しく作成されたほうが優先されます

遺言書には必ず日付が記載されるため作成日付は明確です。
死因贈与契約書には日付は必須ではありませんが、もし日付がなければ、どちらが新しいのか判断することができませんので、遺言書のほうが優先されます。

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