事業用資産の買換え特例を利用しよう

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事業用資産 買換え特例

「相続で事業用の土地を所有することになったけど、収益や利回りが良くない」などと感じている方も多いと思います。

そこで、今回は、相続で所有することになった事業用資産を有効活用するための方法の一つとして、「事業用資産の買換え特例」について解説していきます。

現在所有する事業用の土地をある条件下で買い替えることにより譲渡税の節税効果が期待でき、また、ご自分の相続時の節税対策にも効果的です。

1.事業用資産の買換え特例とは

1-1.特例の概要

事業用資産の買換え特例とは、個人が、事業用の土地建物等を譲渡し、その代わりの資産を取得した場合、一定の要件を満たせば、譲渡益の一部の課税を将来に繰り延べることができる特例です。

その結果、今納める税金を少なくすることができます

ただし、今納める税金を少なくすることはできますが、あくまで課税の繰り延べですので、譲渡益が非課税となるわけではありません。この点に注意が必要です。

1-2.特例の要件

次に、この特例を受けるための要件について説明します。以下の6つ全ての要件を満たす必要があります。

事業用であること

譲渡する土地建物等が事業に使われており、取得する資産も事業に使うことが必要です。
対象の事業には、農業、製造業、小売業などいろいろあり、賃貸マンションや駐車場など不動産の貸付けも含まれます。 

【参考】国税庁HP No.3402 事業用の資産の範囲

譲渡資産と買換資産が一定の組合せに当てはまること

この組合せの代表的なものとして、次の㋐、㋑があります。

㋐の組み合わせ(1号買換え)

譲渡資産買換資産
東京都の23区、大阪市などの既成市街地等内にある事業所(工場、作業場、研究所、営業所、倉庫等)として使用されている土地建物で、その譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超えるもの既成市街地等以外(※)の一定の地域(国内)にある事業用の土地建物を取得する場合

※【参考】国税庁HP No.3408 既成市街地等の区域内から区域外への買換えの具体例

㋑の組み合わせ(9号買換え)

譲渡資産買換資産
譲渡の年の1月1日において、所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地建物等国内にある事業用の土地建物。ただし、土地の場合は、その面積が300㎡以上

取得する土地の面積が譲渡する土地の5倍以内であること

買換資産が土地であるときは、取得する土地の面積が、譲渡した土地の面積の5倍以内である必要があります。

平成31年(2019年)12月31日までの譲渡資産の譲渡に限って、一定の農地への買換えの場合は10倍以内とされることがあります。

譲渡前年、当年、翌年に買替資産を取得をすること

資産を譲渡した年か、その前年、あるいはその翌年に買換資産を取得する必要があります。

前年に取得した資産を買換資産とするためには、取得した翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出する必要があります。
また、譲渡した翌年に買換資産を取得する予定の場合には、譲渡した年の確定申告の際に、「買換(代替)資産の明細書」を提出する必要があります。

1年以内に事業に使うこと

買い換えた資産をその資産の取得日から1年以内に事業に使う必要があります。

贈与/交換などでないこと

買い替えが対象ですので、贈与や交換など売買でないものは対象になりません。

2.事業用資産の買換え特例の効果

課税される譲渡益は、原則、本来の譲渡益の20%です。

本来の譲渡益の80%分は繰り延べられますが、地方から都心の物件に買い換える場合には、繰り延べ割合が75%や70%に引き下げれる場合があります。

【参考】国税庁HP No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例

2-1.譲渡価格≦取得価格の場合

課税割合が20%の場合は、次のようになります。

  • 譲渡価格=譲渡価格×0.2
  • 必要経費=(譲渡資産の取得価格+譲渡費用)×0.2
  • 譲渡益= 譲渡価格- 必要経費

次のケースで特例の効果を見ていきましょう。

譲渡価格:10,000万円、譲渡費用:200万円、譲渡資産の取得価格:6,000万円、買換資産の取得価格=12,000万円の場合、

  • 譲渡価格=10,000×0.2=2,000万円
  • 必要経費=(6,000+200)×0.2=1,240万円
  • 譲渡益=2,000-1,240=760万円


↓ 税額20%をかけると

税額=760×0.2=152万円

特例を使わない場合は、「課税される譲渡益={10,000-(6,000+200)}=3,800万円」、「税額=3,800×20%=760万円」となりますので、

760万円-152万円=608万円 も減額できます

2-2.譲渡価格>取得価格の場合

課税割合が20%の場合は、次のようになります。

  • 譲渡価格= 譲渡資産の譲渡価額-買換資産の取得価額×0.8
  • 必要経費=(譲渡資産の取得価格+譲渡費用)×(譲渡価格÷譲渡資産の譲渡価格)
  • 譲渡益= 譲渡価格 - 必要経費

次のケースで特例の効果を見ていきましょう。

譲渡価格:16,000万円、譲渡費用:200万円、譲渡資産の取得価格:6,000万円、買換資産の取得価格=8,000万円の場合、

  • 譲渡価格=16,000-8,000×0.8=9,600万円
  • 必要経費=(6,000+200)×(9,600/16,000)=3,720万円
  • 譲渡益=9,600-3,720=5,880万円


↓ 税額20%をかけると

税額=5,880×0.2=1,176万円

特例を使わない場合は「課税される譲渡益={16,000-(6,000+200)}=9,800万円」、「税額=9,800×20%=1,960万円」となりますので、

1960万円−1176万円=784万円 も減額できます

3.事業用資産の買換え特例の申告手続き

ここでは、この特例を利用する場合の手続き(必要書類や期限など)を、ケースごとに説明します。

3-1.譲渡と取得を同一年度にする場合

次の書類を添付し、確定申告することが必要です。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 買換資産の登記事項証明書などその資産の取得を証する書類
  • 譲渡資産及び買換資産が特例の適用要件とされる特定の地域内にあることを証する市区町村長等の証明書など

3-2.前年に取得する場合

前年に取得した資産を買換資産とするためには、取得した年の翌年3月15日までに、「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出します。

3-3.翌年に取得する場合

譲渡した翌年に買換資産を取得する予定の場合には、譲渡した年の確定申告書を提出する際に、取得する予定の買換資産について「買換(代替)資産の明細書」を提出します。

翌年に取得する場合の手続きは、次のようになります。

  1. 確定申告書に「買換(代替)資産の明細書」を添付
  2. 記述される取得価額の見積額に基づいて譲渡所得の計算して納税
  3. 買換資産を実際に取得した清算を行う
  • 清算結果の税額が減少  →  更正の請求し、所得税の還付を受ける
  • 清算結果の税額が増加  →  修正申告

3-4.期限までに買換資産を買えなかった場合

やむを得ない事情で、資産を譲渡した年の翌年中に買換資産を取得できない場合は、譲渡年の翌年12月31日後から2年以内で税務署長が認定した日まで、買換資産の取得期間を延長することができます。

このやむを得ない事情とは、次のようなケースです。

  • 工場などの敷地の造成や建設移転にかかる期間が通常1年を超えること
  • 法令の規制等により取得計画の変更をしなければならなくなったこと
  • 売主、その他の関係者との交渉が長びき、簡単に資産の取得が出来ないこと
  • 上記3つの条件に準じた事情があること

買換資産の取得期間の延長を受けたいときは、資産を譲渡した年の確定申告の際に、「やむを得ない事情がある場合の買換資産の取得期限承認申請書」を税務署長へ提出します。

4.事業用資産の買換え特例の注意点

4-1.相続した土地建物の取得日

相続した土地建物は、死亡した人の取得日が、そのまま引き継がれます。

したがって、死亡した人が取得した時から、相続で取得した人が譲渡する年の1月1日までの年月が所有期間となり、長期譲渡所得か短期譲渡所得などを判断されます。

4-2.相続した土地建物の取得費

相続した土地建物は、死亡した人がその土地建物を取得した時の購入費が引き継がれます。

死亡した人が事業用資産の買換え特例を使っていた場合は、「買換資産の取得費」が引き継がれます。

また、建物であれば費用として計上できる減価償却費が小さくなるため見かけの利益が増え、結果として所得税、住民税の負担増になります。

4-3.資産の所有者

特例を受けるためには、譲渡資産も買換え資産も所有者自身の事業用に使われている必要があります。

しかし、売る資産がその所有者と生計を一にする親族の事業に使われていた場合には、所有者本人の事業に使われていたものとして取り扱うことができます。 また、買換えた資産についても同様です。

5.まとめ

「事業用資産の買換え特例」は、事業をやめて資産を売却しない限り、半永久的に繰り延べができますので、事業継続の観点で、有用な特例と言えます。

どちらにしても、細かい適用条件の判定や、特例利用時の収支シミュレーション等を実施する必要があり、専門知識が必要ですので、信頼のおける相続に強い税理士と共同で検討することをお勧めします。

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