相続税の計算方法を図でわかりやすく解説
相続税の計算方法を各ステップごとに、具体例と図を利用してわかりやすく解説します。[続きを読む]
相続が開始すると、相続税が発生するのか、いくらになるのか気になる方は多いでしょう。
しかし、相続財産には相続税が課税されるものとされないものがあります。
ここでは、相続税の課税対象になる財産・ならない財産やみなし相続財産について解説します。
相続税の計算方法について気になる方は、次の記事をご一読ください。
目次
法律上「相続財産」がどのように規定されているか、まずは確認しましょう。
民法には、次の規定があります。
民法895条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
この規定に沿えば、相続人は一身専属権を除き、被相続人の遺した遺産について権利だけでなく義務も相続します。
したがって、相続人はプラスの遺産も借金のようなマイナスの遺産も相続することになります。
しかし、相続税は、「全て」の遺産に課税されるわけではありません。
国税庁によると、相続税がかかる財産は「金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべて」とされています(※)。そして、相続をきっかけとして引き継いだ財産以外のものも、相続税の課税対象として含まれるようになっています。
そのため、相続税を考える上では「相続財産とは何か」よりも、「相続税の課税対象となる財産は何か」を考えるほうが、より有益です。
そこで、相続税の課税対象となる財産と、非課税対象の財産を確認します。
まず、相続財産として相続税の課税対象になるのは、遺産として思いつく、以下の財産を挙げることができます。
たとえばテレビ・エアコン・タンスなどの家具や家電も、金銭に見積もれる限り、相続財産に含まれます。
もっとも、これは財産の評価方法の話になりますが、家にあるものを全て一つ一つ財産として評価するわけではなく、まとめて評価する方式(※)があります。
※ たとえば1個(1組)の価額が5万円以下のものは、「家財道具一式 10万円」などと計上します。
また、金融機関の口座が被相続人以外の名義になっていたとしても、被相続人が原資を出資し、実際に口座を管理していたのが被相続人であった場合には、相続財産とされ相続税の課税対象になります。
こうした口座の預貯金は、実質的には被相続人の預貯金であるとして、相続税の課税対象になります。
本来の相続財産に加え、以下の財産にも相続税は課税されます。
被相続人が亡くなったことで、受取人が手にする死亡保険金や死亡退職金は、民法上、受取人の固有財産で、遺産分割協議の対象にもなりません。
しかし、被相続人が亡くなったことで発生する財産であり、相続税法上は、「みなし相続財産」として相続財産として扱われ相続税の課税対象になります。
ただし、死亡保険金がみなし相続財産となるためには、被相続人が保険料を負担していなければなりません。
みなし相続財産には、次の財産を挙げることができます。
ただし、後述する通り、死亡保険金や死亡退職金には非課税枠があり、その部分は差し引いて相続税が課税されます。
生前贈与した一定の財産も相続税の課税対象になります。贈与税は、課税方法によって暦年贈与と相続時精算課税とに分けることができます。
相続時精算課税制度を選択する場合には、最初の贈与税の申告時に、申告書と一緒に「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければならず、これを提出しなければ、自動的に暦年贈与を選択したことになります。
暦年贈与の場合、相続開始前の一定期間内に生前贈与した財産が相続税の課税対象になります。
2023年度の税制改正で、この「相続開始前の一定期間」が3年から7年に延長されました。ただし、延長された4年分については総額100万円まで相続財産に加算する必要はなく、徐々に7年まで延長されるため、相続開始前7年間の贈与財産がすべて加算されるのは、2031年1月1日の相続からです。
また、贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、この基礎控除以下の生前贈与財産を含めて相続財産に加算する必要があります。
相続時精算課税は、贈与財産が2,500万円を超えた部分に一律20%の税率で贈与税を課し、相続時にすべての生前贈与財産を相続財産に加算して相続税を算出する制度です。
ただし、贈与税の基礎控除額年間110万円は、相続財産への加算額から控除することができます。
相続税がかからない財産は法令で定められています(※)。
「一律で非課税」というより、「基本課税対象だが、一定の限度で非課税とされている」ものが多いため注意が必要です。
これらの財産は、相続税が課税されないため、相続税の計算では相続財産として加算する必要も、相続財産から差し引く必要もありません。
日本の祖先を崇拝するという慣習に配慮し、相続税はかかりません。
ただし、骨董価値があるようなものや、商品として所有しているものは課税対象となります。
お悔みとして支給されるものであり、次の金額の範囲内であれば相続税はかかりません。
超える部分の金額については、死亡退職金に加算して相続税を計算します。
死亡した時 | 金額 |
---|---|
業務中 | 被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額 |
業務外 | 被相続人の死亡当時の給与の半年分に相当する額 |
被相続人が亡くなったことで相続人である受取人が手にする死亡保険金や死亡退職金は、以下の金額まで非課税となっており、相続税はかかりません。
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
たとえば交通事故による精神的苦痛に対する慰謝料請求権などの一身専属権については、相続税はかかりません。
他方、事故の医療費、逸失利益などの財産的損害に対する損害賠償請求権については、相続税がかかります。
相続税の申告期限までに、国や地方公共団体などへ寄付した相続財産には相続税はかかりません。
冒頭でご紹介した通り、相続人は被相続人の次のようなマイナスの財産も相続します。
これらのマイナスの財産は、相続財産から差し引いて相続税を算出することができます。
区分 | 具体例 |
---|---|
負債関係 | 借金(住宅ローン、事業融資など)、小切手、手形、買掛金など |
税金関係 | 未払の所得税・住民税・固定資産税、その他未払の税金 |
その他 | 未払の医療費、未払の地代家賃、未払のクレジットカード利用料など |
被相続人がどんな財産をどれくらい保有していたかを調べる相続財産の調査は、その後の相続税申告などに直結するため、漏れなく正確に行う必要があります。
その後、「課税価額の合計額はいくらか」「控除はどれだけできるか」「税率・各自の税額はいくらになるか」といった計算をいくつも踏んだ上で、最終的に相続税の納付額を算出します。
相続税が課税される財産とされない財産を確認するなど相続税に関するプロセスは複雑です。
しかし、これら相続税申告までの手続きは、税理士に依頼すれば確実に行ってもらうことができます。
さらに、相続税に強い税理士であれば、適切に節税してくれることでしょう。相続税については、まず相続税に強い税理士に相談することをおすすめします。