相続税申告書に添付する戸籍関係書類が簡単に
2018年度(平成30年度)税制改正で相続税申告書に添付する戸籍関係書類の範囲が広がり、書類を準備する相…[続きを読む]
相続税申告には、多くの書類が必要になります。「戸籍謄本」は、その必要書類の1つです。戸籍謄本には種類があり、相続税申告においては、様々な種類の戸籍謄本を収集する必要があります。
また、代襲相続がある場合、相続人が兄弟姉妹である場合など、誰が相続人になるか、遺言の有無などよってもその収集範囲が異なってきます。
相続税申告に必要な戸籍謄本の範囲、そして、戸籍謄本とその収集の仕方について解説していきます。
目次
戸籍とは、人の出生から死亡までの出来事を記録した文書のことを言い、戸籍はその内容が正しいものであると証明する公的な資料として利用されています。
各市区町村には、戸籍簿という戸籍の原本をひとまとめにした帳簿が保管されており、これを写して交付したものが戸籍謄本です。謄本というのは写しという意味です。
その他に、戸籍抄本、戸籍の附票といったものを市区町村に請求することができます。
相続税申告に必要な戸籍謄本を集めるためには、戸籍の種類についてもある程度理解しておく必要があります。 戸籍には、次の3つの種類があります。
現在戸籍とは、その名の通り現在の戸籍です。
単に「戸籍」と言った場合には、この現在戸籍を指しますが、相続税申告においては、3種類すべての戸籍が必要になりますので、区別するために現在戸籍と呼びます。
死亡、婚姻、離婚、転籍などによって、戸籍に記載されている人全員が抜けた戸籍を除籍と言います。
なお、戸籍から抜ける事自体も「除籍される」という言い方をします。
法律の改正などによって、戸籍の様式が変更されることがあります。そうなった場合、それまでの戸籍は閉鎖され、新しく戸籍が作成されます。この時に閉鎖された戸籍を改製原戸籍と呼びます。
戸籍謄本は、相続税申告の必要書類です。
民法882条が、「相続は、死亡によって開始する」と規定している通り、相続は被相続人(相続される側)が死亡した時点を境に開始します。
そして、民法896条の「相続人は、相続開始の時点から被相続人に属した一切の権利義務を承継する」との規定により、被相続人が死亡した時点で、被相続人の財産などの権利義務が相続人に移ります。
相続は法律上被相続人の死亡により開始し、被相続人の権利義務や財産を引き継ぐために相続人の確定が必要となるため、次の戸籍謄本を提出します。
被相続人 | 出生から死亡までの戸籍謄本 |
---|---|
相続人 | 現在戸籍の戸籍謄本 |
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は、被相続人が死亡していることと、誰が相続人かを確定するために必要となり、少なくとも戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本の3つが必要になります。
また、相続人の現在戸籍の戸籍謄本については、その相続人が生存しているかを確認するために必要となります。
戸籍謄本には発行した自治体の印と発行年月日が記載されます。
戸籍謄本の有効期限が法律などによって明確に定められているわけではありませんが、金融機関によってはその発行年月日から6カ月以内などと独自に有効期限を定めている場合があります。
また、原則として、相続開始(被相続人が死亡した日)から10日を経過した以降に取得した戸籍謄本を申告書に添付することになっています。これは、死亡届が提出されてから7日~10日程度で戸籍に死亡した事実が反映されることが理由となっています。したがって、被相続人の死亡の記載があれば、10日経過せずに取得した戸籍謄本であっても問題ありません。
なお、除籍や改製原戸籍については、閉鎖された後にその内容が変わることがありませんので、一般的に有効期限はありません。
平成30年4月1日以降提出の相続税の申告では、戸籍謄本のコピーでの添付が認められるようになっています。
したがって、戸籍謄本は、原本を一部だけ用意すれば十分です。
ただし、複数の相続人により手分けをして平行して相続手続きを進めたい場合には、謄本の原本を数部用意する必要があるでしょう。
では、戸籍謄本は、どこで取得できるのでしょうか?
戸籍謄本は本籍地のある市区町村役場に請求して取得します。 直接窓口に出向いて取得することもできますし、郵送で取り寄せることもできます。
本籍地のある役所がご自宅から近い場合や、役所の窓口の営業時間内に時間を取れる方は直接窓口に出向いて請求しても良いでしょう。
請求に必要な書類は一般的に次のとおりです。
なお、相続人が被相続人の戸籍謄本を請求する場合で、請求者である相続人と被相続人の関係が戸籍から確認できない場合には、この他に被相続人との関係が確認できる書類が必要となります。
役所以外に、コンビニやパスポートセンター、郵便局で戸籍謄本を取得することができる自治体もあります(ただし、改製原戸籍謄本については対象外となります)。
被相続人が婚姻、転籍などで異なる市区町村に本籍地を移している場合は、遠方の役所に請求しなければならないことがあります。 そのような場合や、お勤めなどで役所の窓口の営業時間内に出向くことが難しい場合には、郵便での請求がおすすめです。
郵便での請求に必要な書類は一般的に次のとおりです。
本人確認書類は、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、健康保険証等のコピーです。氏名、現住所の記載があれば大丈夫です。マイナンバーカードは表面のコピーのみでOKです(通知カードは不可)。
手数料は、窓口であれば現金で支払いますが、郵送の場合は、為替証書(普通為替または定額小為替)を購入して同封します。郵便局で購入できます。為替証書の表・裏面ともに記入します。
返信用封筒には切手を貼ったうえで、郵便番号、現住所、氏名を記入してください。
戸籍謄本の交付手数料は、以下の通りですが、自治体により多少異なる可能性があります。
書類名 | 手数料 |
---|---|
出生してから死亡するまでの連続した戸籍謄本 | 450円 |
全員分の戸籍謄本 | |
除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 750円 |
郵送で取得する場合には別途往復の郵送料が必要です。
戸籍謄本が改製原戸籍謄本や除籍謄本にわかれてしまっていることがあるため、郵送で取得する場合には、定額小為替を多めに同封すると良いでしょう。余った為替は戸籍謄本と一緒に返送されますのでご安心ください。
相続税申告においては、一般的に被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の現在の戸籍謄本が必要となります。
これら以外に必要な戸籍謄本について相続のパターンごとに見ていきましょう。
本来相続人となるべき人が既に死亡している場合、その本来の相続人に子供がいれば、代襲相続によりその本来の相続人のすべての子供が相続人となります。
したがって、本来の相続人の出生から死亡までの戸籍謄本によって、本来の相続人のすべての子供を漏れなく把握する必要があります。
被相続人に子供がおらず、両親も亡くなっている場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
したがって、両親が亡くなっていることと、被相続人のすべての兄弟姉妹を漏れなく把握するために、被相続人の両親のそれぞれの出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。
相続税申告における戸籍謄本の収集についてご理解いただけましたでしょうか?
被相続人が婚姻、転籍などによって市区町村をまたいで本籍地を移しているような場合には、出生から死亡までの戸籍謄本を集めるために複数の市区町村に請求する必要があります。
また、代襲相続や兄弟姉妹相続などの場合には、必要な戸籍謄本がさらに多くなり、場合によっては戸籍謄本の収集だけで2~3か月を要すこともあります。
そのため、早めに収集を開始することと、場合によって、税理士などの専門家の収集代行サービスを利用することも検討すると良いでしょう。