相続登記が義務化される!?所有者不明土地解消のための取り組み

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所有者の不明な土地が問題となっています。

そこで、この問題を解決するために検討されているものの一つが、相続登記の義務化です。ここでは、所有者不明土地の問題点や、相続登記の義務化との関係や所有者不明土地を解決するために検討されている遺産分割の期間制限、土地の所有権放棄について解説します。

1.相続登記はなぜ義務化されるのか?

まずは、所有者不明土地でなぜ相続登記の義務化が検討されているのかについて説明しましょう。

ご存知の方も多いと思いますが、現在、「相続登記」は義務ではありません。登記をするには、登録免許税という税金を納めなければなりませんが、勤め先から離れた価値の低い土地は、登記する理由を探すほうが難しいかもしれません。

また、相続登記には、色々な書類を集めなければならず、登記申請も決してわかりやすいものではありません。
不都合さえなければ、お金を払ってまで登記したくないと思う人がいてもおかしくありません。
どうしても遺産分割がまとまらず、土地の所有者が決まらないといったケースもあるでしょう。

こうして、相続登記をしない人が増えています。

1-1.現状における登記簿上所有者の不明な土地

国土交通省による2016年度地籍調査(563市区町村における計622,608筆)において、登記簿上の所有者の所在が不明な土地は20.1%とされています。

「所有者不明土地問題研究会」によれば、2016年時点での所有者が不明な土地は、全国で410万ヘクタールあるとされ、九州本島を上回るとのことです。このまま放置すれば、2040年には、合計720万ヘクタールまで膨れ上がると予測されています(同所有者不明土地問題研究会)。

【出典】所有者不明土地問題研究会:~所有者不明土地問題は今後どれだけ拡がるのか その面積の将来推計と経済的損失(速報値)~平成29年10月26日

また、2017年の法務省による「不動産登記簿における相続登記未了土地調査」(全国10か所の地区(調査対象数約10万筆)の結果は以下の通りでした。

 最後の登記から90年以上経過しているもの最後の登記から70年以上経過しているもの最後の登記から50年以上経過しているもの
⼤都市
(所有権の個数:24,360個)
0.4% 1.1%6.6%
中⼩都市・中⼭間地域
(同上:93,986個)
7.0% 12.0%26.6%

【出典】法務省:不動産登記簿における相続登記未了⼟地調査について

所有者不明土地研究会は、所有者不明土地の背景として以下の理由を挙げていますが、いずれにせよ、こういった理由で、相続後も登記がされない土地が増え続けていることは間違いありません。

  1. 人口減少、少子高齢化による土地需要・資産価値の低下
  2. 先祖伝来の土地への関心の低下や管理に対する負担感の増加
  3. 地方から大都市・海外への人口移動に伴う不在地主の増加
  4. 登記の必要性の認識の欠如

では、相続登記がないと何が問題となるのでしょうか?

1-2.正確な登記がなされなければ土地の有効活用ができない

土地の所有者を確認するには、登記を調べるのが最も確実な方法です。しかし、登記簿を見ても、古い代の所有者しか記載されておらず、上記で解説した通り、現在の所有者まで辿れない土地が増えてしまっているのが現状です。

登記のない土地の弊害については、以下の記事をご覧いただくとして、一番の問題は、たとえ国であっても、所有者にことわりなしに土地を処分することができないということです。

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1-3.所有者不明土地による累積した経済的損失は6兆円

土地を有効に活用するためには、所有者を特定するために所有者検索のコストも発生し、潜在的な損失が発生します。

所有者不明土地の所有者を確認する作業や手続き、土地の処分の機会損失、管理コストなどをまとめると、2017年から2040年までに約6兆円の経済損失がある、としています。

大項目 小項目 経済的損失
(2017-2040年の累積)
所有者不明土地を利活用する場合のコスト・損失探索コスト約500億円
手続きコスト算出不可
(一部探索コストに含まれる)
機会損失約22,000億円
災害発生時の潜在コスト算出不可
恒常的に発生するコスト・損失管理コスト算出不可
管理不行き届きによるコスト約36,000億円
税の滞納約600億円
合計約59,100億円(約6兆円)

※ ここでの経済的損失は、把握可能なデータの制約のもと、一定の仮定を置いた上で、算出可能な事項についてのみ行った試算の結果である点に注意が必要である。

【出典】所有者不明土地問題研究会:最終報告概要 平成29年12月13日 ~眠れる土地を使える土地に「土地活用革命」~

2.相続登記の義務化について

そこで、これ以上、所有者が不明な土地が増えるのを回避するために、相続登記を義務化することが法制審議会によって検討されています。

2-1.相続登記の義務化

相続登記の義務化に伴って、様々なことが検討されており、一部既に法制化されているものもあります。

登録免許税の免税措置

登録免許税の免税措置については、既に、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部施行によって実施されています。

まず、2018年4月1日から2021年3月31日までの間に、相続で土地を取得したがその登記をする前に死亡した者を登記名義人とする相続登記には、登録免許税を課さないことになっています。

次に、市街化区域外の土地で、公共事業目的に必要があるものとして法務大臣が指定する土地のうち不動産の価額が10万円以下(※)の土地については、2018年11月15日から2021年3月31日までに相続登記をすれば登録免許税が課されません。

※1 不動産の所有権の持分の取得に係るものである場合は,当該不動産全体の価額に持分の割合を乗じて計算した額が不動産の価額となります。

一定期間内に登記義務を履行しない場合の罰則の設置

一定期間内に、登記義務を知りながら相続登記をしなかった者については、過料を科すことも検討されています。

その他の検討事項

この他にも、相続人のうち1人でも登記をすれば義務を履行したと認め、登記に伴う煩雑な書類を簡素化し、費用の軽減も検討されています。

また、土地を相続した場合、登記の前に、新たに所有者となった者に対して届出義務を課すことや、被相続人の死亡届の提出時に、登記に法定相続人について記録する制度の創設も検討されています。

2-2.相続登記の簡略化

当然、登記の簡略化も検討されています。登記は、原則として、登記義務者と登記権利者の共同申請で行う旨、不動産登記法に規定されていますが、例外として相続登記は、単独申請が可能です。

そこで、法定相続分での相続登記がされた後で、一定の要件を満たす登記手続の簡略化、すなわち単独申請を可能にすることが検討されています。

3.遺産分割の期間制限

遺産分割協議の期間を制限することも検討されています。期間制限を設けることで、遺産分割の促進と、所有者が不明な土地をこれ以上増やさない狙いがあります。

遺産分割協議の期間は、「相続開始」から10年ということになりそうです。相続開始から10年以内に遺産分割協議もしくは遺産分割の申立がなければ、法定相続分(または指定相続分)で遺産分割が行われたとみなされます。

期間制限を超えると、相続開始から10年経過すれば、相続分に応じて土地を分割することができるようになります。

4.土地所有権の放棄

自宅から遠方の価値の低い土地は相続したくない人が多いかもしれません。

確かに、現状でも、相続放棄をすることで、土地を放棄することは可能です。しかし、相続放棄をすれば、土地以外すべての遺産を放棄しなければなりません。また、相続放棄後も、土地が被相続人名義であれば、次順位の相続人か相続財産管理人が引き継ぐまでは、注意・管理業務が継続します。

そこで、一定の要件を満たす場合についてのみ、土地の所有権を放棄できるように法制度を見直すことが検討されています。

5.義務化される前に相続登記は必要?

法制審議会は2020年1月から中間試案についてパブリックコメントを実施する予定です。その後、国会の審議を経て、いずれは法制化されるでしょう。

では、義務化される前に相続登記をしておく必要はあるのでしょうか?

もし、「事情があって遺産分割が終わっていない」などやむを得ない事情がある場合は、この法案の行方がはっきりするまでその事情を解決すればいいでしょう。

では、登記をサボっている場合は、どうでしょう?登記をしていないということは、その不動産について今現在もリスクを負っているということです。
リスクを減らすためにも、義務化される前に登記することをお勧めします。

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