新型コロナウイルス感染症による相続税申告への影響
新型コロナウイルス感染症は、健康や経済だけではなく税金の申告にも大きな影響を与えています。今回は、現在分かっている「…[続きを読む]
新型コロナウイルス感染症の影響に関する経済対策の1つとして支給される現金10万円のことを「特別定額給付金」と言います。お住いの地方自治体を通じて、郵送による申請とマイナンバーカードを利用したオンライン申請により受給することが可能です。
郵送による申請は、各地方自治体で発送スケジュールが異なるため、もう既に特別定額給付金申請書を受取られている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、この特別定額給付金は相続税の課税対象になります。経済政策の一環の給付金が、なぜ相続税の課税対象になるのでしょうか。ここでは、特別定額給付金の相続税の課税関係についてご紹介します。
なお、新型コロナウィルス感染症が相続税に対して与える影響については、次の関連記事を是非お読みください。
目次
特別定額給付金の課税関係について、通常であれば「所得税」が課税され、一時所得として所得税が計算されます。ただし、今回の特別定額給付金については、法律により「所得税は課税されない」と定められましたので、所得税及び住民税は課税されません。
この情報だけを聞くと、「特別定額給付金に税金はかからない」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は「特別定額給付金は相続税の課税対象」になります。どういった場合に、特別定額給付金が課税されてしまうのでしょうか?
特別定額給付金は、令和2年4月27日時点で各地方自治体の住民基本台帳に記載されている人全員が給付対象者になります。もし、住民基本台帳に記載されていない方でも、実際に居住されている自治体に住民登録手続きを行えば給付を受けることができます。
特別定額給付金の受給に必要な書類(郵送で申請する場合)は、各地方自治体が5月中旬を目途に配布を行っており、実際に申請を行うのは6月上旬になります。給付金の振込は、申請から概ね1ヵ月程度かかると見込まれているため、早くても7月上旬になる予定です。
亡くなった方の特別定額給付金の給付については、次のように取り扱うことになっています(※)。
※「特別定額給付金 申請方法に関するよくある質問」|総務省
上記のことから、特別定額給付金に相続税が課税されるケースは下記の場合に限られると思われます。総務省の見解としても、世帯主1人分だけが相続財産になるとしています。
受給権者(給付金を受給できる権利を持つ人)は、住民基本台帳に登録されている世帯の世帯主になります。
したがって、世帯主が、基準日(4月27日)以降に給付金の請求(5月下旬ごろ)を行い、給付決定後から給付金が振り込まれるまでの間に亡くなった場合に、特別定額給付金の受給権が相続税の課税対象になります。
給付決定前に世帯主が亡くなった場合は、新たな世帯主が受給権者になるため、亡くなった方の本来の財産とはならず、相続税が課税されることはありません。
以上の点を図にすると次のようになります。
※ただし、各地方自治体には膨大な量の申請書が短期間に届くため、支給決定を知らせる「特別定額給付金 支給決定通知書兼振込予定日通知書」の送付が迅速に行われず、給付金の振込の方が早く行われるケースも考えられます。その場合、申請日が支給決定日になる可能性があります。(総務省の質問の回答には、「申請を行った後に亡くなった場合」と記載があり、「支給決定後に亡くなった場合」と記載されていないため。)
単身世帯の方が、4月27日以降に亡くなった場合であっても、相続人が特別定額給付金を受給することはできません。
なぜなら、特別定額給付金は世帯主が受給者になるため、単身世帯の方が亡くなった場合は、受給者が存在しないことになるため特別定額給付金の受給権は消滅してしまうと考えられるからです。
したがって、亡くなった方が世帯主ではなく世帯員の場合、受給権者はその世帯の世帯主になるため、特別定額給付金の受給権は亡くなった方の本来の財産とはならず、相続税が課税されることはありません。
ただし、単身世帯の方が、特別定額給付金の支給決定後に亡くなった場合は、特別定額給付金の受給権は本来の財産となりますので、相続税の課税対象になり得ます。
給付金の支給決定については、給付金の申請日が支給決定日になる可能性があります(総務省の質問の回答参照)。
4月27日以降に亡くなった人の特別定額給付金の受け取り方法は、亡くなった人が世帯主であったのか、それとも世帯員であったのかによって異なります。
亡くなった人が世帯主であった場合は、死亡届を提出することにより住民基本台帳の登録から抹消されます。
代わりに世帯主となった人が特別定額給付金の受給権者になるため、他の世帯員と一緒に亡くなった方の給付金の申請を行います。後日、世帯全員分の給付金が世帯主の銀行口座に入金されます。
※この場合における、特別定額給付金は相続税の対象になりません。
世帯主が、給付金の申請を行い、給付確定後に亡くなった場合は、法定相続人(家族)が給付金の受給手続きを行います。
世帯主が亡くなった後、預金口座が凍結されるため、亡くなった世帯主が申請書に記入した預金口座には給付金は入金されません。直接、お住いの地方自治体に連絡をし、給付金の相続手続きを行いましょう。
手続きには、亡くなった方の法定相続人であることが分かる戸籍謄本などが必要になります。地方自治体によって、必要な書類が異なりますので、事前に確認しましょう。
4月27日以降に亡くなった方が世帯員であった場合は、特別な手続きは必要ありません。
世帯主の方が、特別定額給付金申請書に亡くなった方の分も含めて給付金申請を行うことで完結します。
ここまで、特別定額給付金についての相続税の課税関係についてご紹介しました。では、他の新型コロナウイルス感染症に関する給付金はどうなるのでしょうか。
給付金の対象は、令和2年4月分の児童手当の受給者になります。
原則的に、給付金を受給するために個別の申請書は必要なく、対象になる児童がいる世帯の世帯主へ自動的に支給されます。(希望しない場合は給付金受給拒否の届出書を提出することができます。)そのため、通常の児童手当と同様に、死亡時に未収入金になっている部分は相続財産となり、相続税の対象になります。
離職などにより経済的に困窮し、家賃の支払いができなくなった場合に自治体が家賃相当額を給付する制度です。
経済的に困窮している方に相続税が課税されることはないと思いますが、原則的に住居確保給付金制度を申請し、給付金が確定した時点から振込日までの期間に請求者が亡くなった場合、住居確保給付金は未収入金として請求者の相続財産となります。
新型コロナウイルス感染症による経済的支援として、市独自支援制度を行っている自治体もあります。
支援制度で給付される給付金は申請決定後から振込日までに申請者が亡くなった場合、本来の相続財産として相続税の課税対象になります。
ここまでご紹介したとおり、亡くなる前に確定した給付金などの収入は亡くなった後に入金になった場合でも相続税の対象になります。
ただし、例外として相続税の対象にならない収入もあります。ここでは、間違えやすい相続開始後に入金になる収入(未収入金)をご紹介します。
健康保険から支給される金品は法律の規定により、相続税は課税されません(国民健康保険法第68条・健康保険法第62条)。
亡くなった方の遺族が受け取れる一時金です。この一時金は、法律の規定により相続税は課税されません(国民年金法第25条、国民年金法第133条)。
法定相続人(家族)は、被相続人(亡くなった人)が亡くなった日から4ヵ月以内に所得税の準確定申告を行わなければなりません。
所得税の計算で所得税が還付され、還付金に利息(還付加算金)が発生した場合、還付加算金については相続税の課税対象になりません。ただし、還付金本体は、被相続人の本来の相続財産として相続税の課税になりますので注意が必要です。
今回は、特別定額給付金と相続税の課税関係についてご紹介しました。特別定額給付金については所得税の課税対象になりませんが、給付確定後(給付申請後)から給付金振込日までに亡くなった場合に相続税の課税対象になります。
各地方自治体によって給付確定日が異なりますので、この時期に相続が発生した場合はお住いの自治体に確認しましょう。