特別縁故者として遺産の分与を受ける方法と相続税申告
被相続人に相続人がいないとき、相続人でない者が遺産を受け取ることができることがあります。これを「特別縁故者」とよびます。
この記事では、どうしたら特別縁故者となることができるのか、特別縁故者として財産を受け取ったら税金はどうなるのかについて解説します。
目次
1.特別縁故者となるには
特別縁故者とは、以下のいずれかに該当する者です。
- 被相続人と生計を一にしていた者
- 被相続任の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
「被相続人と生計を一にしていた者」の具体例としては、内縁の夫(妻)や事実上の養親子などです。
「被相続人と特別縁故があった者」に該当するかどうかの判断は難しいところですが、「生計を一にしていた者」や「療養看護に努めた者」と同様に、被相続人と密接な関係があった者のことを指します。
また、法人についても特別縁故者として認定されることがあります。
家庭裁判所がこれらに該当すると認めた場合に、遺産の一部または全部を取得することができます。
2.特別縁故者となるまでの手続き
2-1.財産の相続財産法人化と相続財産管理人選任
戸籍上相続人が確認できない場合や相続人全員が相続放棄をした場合など相続人がいないときは、被相続人の財産は相続財産法人として法人化します。この相続財産法人を管理するのが相続財産管理人です。相続財産管理人の選任については、特別縁故者も申立てが可能です。
相続財産管理人には、家庭裁判所によって選任された弁護士や司法書士など法の専門家がなることが多く、相続債権者や受遺者に対し債権届けを行うよう公告し、届けられると債権者や受遺者に弁済をします。
相続財産がなくなった時点で財産の管理は終了となります。
2-2.相続人捜索の公告・相続人不存在確定
相続財産がある場合は、6ヵ月以上の期間を定め、相続人捜索の公告を行います。相続人がいればその時点で相続財産管理は終了となります。相続人がいなければ公告期間満了時に相続人不存在の確定をして、特別縁故者への相続財産分与へと続きます。
2-3.特別縁故者の申立
相続人不存在が確定すると、確定後3ヶ月以内に特別縁故者の申立てと相続財産の請求を行わなければなりません。
申立期間 | 公告期間満了後3か月以内 |
---|---|
申立先 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立に必要な費用 | 収入印紙800円分 連絡用切手代 |
申立てに必要な主な書類(※) | 申立書 申立人の住民票又は戸籍附票 申立人と被相続人との特別な縁故関係を証する資料 |
※申立てに必要な書類:これ以外の書類が必要になることがあります。管轄の家庭裁判所にご確認ください。
なお、申立書の記載例は、以下の裁判所のサイトからダウンロードが可能です。
【関連サイト】裁判所:「特別縁故者に対する相続財産分与の申立書」
2-4.分与・申立却下の審判
申立後、家庭裁判所の調査や審問があり、その後、家庭裁判所が申立が相当であると認めたときは、相続財産管理人が清算した後の財産を受け取ることができます。
しかし、申立却下の場合は、財産は国庫に帰属することになります。
3.特別縁故者の相続税の申告方法
3-1.特別縁故者の相続税申告
特別縁故者が財産の分与を受けると、遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となります。申告期限、基礎控除、2割加算、小規模宅地等の特例の適用は以下の通りとなります。
申告期限 | 財産分与があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内 |
---|---|
基礎控除額 | 3,000万円(法定相続人がいないため) |
2割加算 | 相続税額の2割が加算される |
小規模宅地等の特例 | 通常は特別縁故者には適用されない |
3-1.分与された財産を売却したときの譲渡所得
分与された財産を売却すると利益が発生し、その利益に所得税が課税されることになります。その利益が譲渡所得です。
譲渡所得には所有期間が5年以下の短期譲渡所得と5年超の長期譲渡所得があり、短期譲渡所得に該当すると税率が高くなります。
譲渡所得では取得時期がいつになるのかがとても重要です。取得の時期は、通常、不動産を買った日ですが、相続や贈与で取得した場合は、死亡した人や贈与した人の取得日をそのまま引き継ぎます。
しかし特別縁故者が相続財産の分与により財産を取得した場合、その財産を得た日が取得日となります。なお、所有期間は、取得日から売却日の属する年の1月1日までで判断します。
例えば、平成24年6月5日に取得し、平成29年7月5日に売却した場合、一般的には5年を超えていますが、譲渡所得の所有期間は平成24年6月5日から平成29年1月1日で考えますので、5年以下となります。