2023年の公示地価発表|変動率の推移や各エリアの傾向について

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国土交通省が、2023年の公示地価を3月22日に発表しました。

ニュースなどでも取り上げられた通り、今年は、都市圏だけでなく地方でも地価の上昇がみられます。

ここでは、2023年の公示地価の傾向について解説します。

1.全国の公示地価|2023年の傾向

1-1.全国の地価変動率の推移

 2019年2020年2021年2022年2023年
住宅地0.6%0.8%△ 0.4%0.5%1.4%
商業地2.8%3.1%△ 0.8%0.4%1.8%
工業地1.3%1.8%0.8%2.0%3.1%
全用途1.2%1.4%△ 0.5%0.6%1.6%

ご覧の通り、住宅地・商業地・工業地・全用途のいずれも2022年から2年連続で上昇を示し、2023年は1桁台へと変動率もアップしています。工業地にいたっては、7年連続で上昇し、変動率も拡大傾向にあります。

1-2.住宅地

低金利政策や宅取得支援施策などの下支えから、住宅地への需要は堅調です。

新型コロナの影響によるテレワークはピークを越えたとは言え、ある程度定着したものと考えられ、ニーズが多様化したことから、郊外にも地価の上昇は波及しています。

住宅地で最も変動率の高い都道府県は、7.6%で北海道となっています。

1-3.商業地

商業地も回復基調にあります。新型コロナが落ち着いてきたことで、来訪者が増え始めた観光地や、人手が戻ってきた繫華街では、上昇傾向が高くなっています。

商業地で最も変動率が高い都道府県は、変動率5.3%となった福岡県となっています。

2.都道府県別の公示地価の傾向

次に、各都道府県の公示地価の動向を見ていきましょう。

住宅地・商業地とも下降傾向にある都道府県と上昇傾向にある都道府県で明暗を分けているのが読み取れるでしょう。

また、一見堅調に見える北海道ですが、変動率下位10位までのランキングでは、住宅地では5つを占め、商業地では、8つを占めています。さらに、商業地では、広島県の土地もランキングされています。

このことから、少子化や高齢化、人口流出などを原因に、人口減少によって、開発からも取り残されているエリアがあると推定することができるでしょう。

 住宅地商業地
2022年2023年2022年2023年
北海道4.6%7.6%2.5%4.9%
青森△ 0.5%△ 0.3%△ 0.9%△ 0.6%
岩手△ 0.1%0.1%△ 1.0%△ 0.9%
宮城2.8%4.0%2.2%3.6%
秋田△ 0.7%△ 0.1%△ 0.9%△ 0.2%
山形0.1%0.4%△ 0.5%△ 0.1%
福島0.3%0.5%0.0%0.5%
茨城△ 0.4%0.0%△ 0.3%0.1%
栃木△ 0.7%△ 0.6%△ 0.6%△ 0.5%
群馬△ 0.9%△ 0.8%△ 1.1%△ 0.9%
埼玉0.5%1.6%0.2%1.6%
千葉0.7%2.3%1.2%2.9%
東京1.0%2.6%0.6%3.3%
神奈川0.2%1.4%1.0%2.9%
新潟△ 0.8%△ 0.6%△ 1.2%△ 1.1%
富山△ 0.2△ 0.1△ 0.7△ 0.3
石川0.6%1.2%△ 0.8%0.3%
福井△ 0.9%△ 0.7%△ 0.9%△ 0.6%
山梨△ 0.7%△ 0.6%△ 0.6%△ 0.4%
長野△ 0.2%0.1%△ 0.9%△ 0.5%
岐阜△ 0.9%△ 0.6%△ 0.9%△ 0.3%
静岡△ 0.8%△ 0.5%△ 0.8%△ 0.2%
愛知1.0%2.3%1.7%3.4%
三重△ 0.7%△ 0.2%△ 0.8%△ 0.3%
滋賀△ 0.9%△ 0.6%0.0%0.7%
京都0.1%0.7%0.5%2.5%
大阪0.1%0.7%△ 0.2%2.5%
兵庫△ 0.1%0.7%0.0%1.3%
奈良△ 0.7%△ 0.4%△ 0.8%0.2%
和歌山△ 1.3%△ 1.2%△ 1.2%△ 1.0%
鳥取△ 0.5%△ 0.3%△ 1.7%△ 1.4%
島根△ 0.5%△ 0.4%△ 1.2%△ 1.0%
岡山△ 0.3%0.4%0.2%1.6%
広島0.2%0.6%0.8%1.7%
山口0.2%0.4%△ 0.3%0.0%
徳島△ 0.6%△ 0.6%△ 1.0%△ 0.8%
香川△ 0.7%△ 0.5%△ 0.8%△ 0.5%
愛媛△ 1.1%△ 1.0%△ 1.0%△ 0.8%
高知△ 0.6%△ 0.5%△ 1.0%△ 0.8%
福岡3.2%4.2%4.1%5.3%
佐賀0.9%1.2%0.3%1.6%
長崎0.1%0.6%0.4%0.8%
熊本0.9%1.9%0.8%1.9%
大分1.0%1.4%△ 0.2%0.3%
宮崎△ 0.2%△ 0.1%△ 0.8%△ 0.7%
鹿児島△ 1.0%△ 0.8%△ 1.3%△ 1.1%
沖縄2.0%3.6%0.7%2.7%

3.三大都市圏の公示地価|2023年の傾向

三大都市圏の2023年の公示地価変動率は、以下の通りです。

ここからは、それぞれの都市圏について公示地価を見ていきましょう。

三大都市圏2019年2020年2021年2022年2023年
住宅地1.0%1.1%△ 0.6%0.5%1.7%
商業地5.1%5.4%△ 1.3%0.7%2.9%
全用途2.0%2.1%△ 0.7%0.7%2.1%

3-1.東京圏の公示地価の傾向

東京圏では、2022年から2年連続で、住宅地も商業地も地価は上昇しています。

 住宅地商業地
2022年2023年2022年2023年
東京都東京都1.0%2.6%0.6%3.3%
東京都区部1.5%3.4%0.7%3.6%
区部都心部2.2%4.1%0.0%31%
区部南西部1.4%3.2%1.4%4.0%
区部北東部1.3%3.5%1.3%4.2%
多摩地域0.5%1.6%0.5%2.1%
神奈川県神奈川県0.2%1.4%1.1%3.0%
横浜市0.8%1.5%1.6%3.4%
川崎市0.6%1.7%1.5%4.3%
相模原市0.8%1.9%0.9%3.0%
その他△ 0.4%1.1%0.1%1.8%
埼玉県埼玉県0.6%1.7%0.2%1.7%
さいたま市1.5%2.8%1.2%3.3%
その他0.4%1.5%△ 0.1%1.2%
千葉県千葉県0.8%2.6%1.5%3.6%
千葉市1.0%1.9%1.7%3.6%
その他0.7%2.7%1.4%3.6%
茨城県△ 0.4%0.5%△ 0.2%0.6%
東京都圏0.6%2.1%0,7%3,0%

住宅地

東京都に限れば、変動率が2.6%と2022年の1.0%から大きく拡大し、東京都の全区内では3.4%となっています。2022年には、マイナスとなっていた都内の市でもすべてプラスに転じています。

東京都の区では、台東区で、4,8%、豊島区で4,7%、中野区で4,6%と利便性の高いエリアで高い変動率を示しています。

東京圏で次に高い上昇を見せているのが、2.6%の上昇を見せた千葉県です。一方で、埼玉県や神奈川県は、それぞれ1.7%、1,4%と上昇はそれほど大きくはありません。

これは、千葉県が変動率がマイナスになった市・区が少なく、浦安市(9.7%)、 市川市(6,8%)といった大きく上昇したエリアがあることに起因すると思われます。

商業地

商業地では、3.0%もの上昇を見せています。東京都に限れば、2022年の0.7%から2023年には、3.6%の上昇となっています。ちなみに、東京都では、商業地も全エリアで地価が上昇に転じています。特に、北区・荒川区・中野区では5%を超える上昇となっています。

千葉県では、3,6%と東京都よりも高い上昇を示しており、再開発によるさらなる人流による期待の高まりととらえることができるでしょう。

3-2.大阪圏

大阪圏では、住宅地は2022年から2年連続で地価は上昇を見せています。一方で、商業地は、2022年は変動率がゼロだったにもかかわらず、2023年には、2.3%となっています。

 住宅地商業地
2022年2023年2022年2023年
大阪府大阪府0.1%0.7%△ 0.2%2.5%
大阪市0.6%1.6%△ 1.1%3.3%
中心6区1.8%3.0%△ 1.8%3.9%
北大阪0.4%1.1%1.0%2.4%
東大阪△ 0.2%0.4%0.2%1.4%
南大阪△ 0.1%0.3%0.5%1.6%
堺市1.2%1.8%2.3%3.7%
兵庫県兵庫県0.4%1.2%0.5%2.3%
神戸市0.2%1.2%△ 0.3%2.0%
東部4区1.1%2.0%△ 0.8%2.0%
阪神地域0.5%1.3%1.5%2.5%
京都府京都府0.2%0.9%0.7%3.0%
京都市0.5%1.2%0.7%3.3%
中心5区0.7%1.4%1.3%3.4%
その他△ 0.2%0.6%0.8%1.9%
奈良県奈良県△ 0.7%△ 0.4%△ 0.8%0.2%
奈良市0.2%0.8%△ 0.9%2.8%
大阪圏0.1%0.7%0.0%2.3%

住宅地

大阪圏では、大阪市西区の変動率が5,5%と群を抜いて大きな上昇を見せています。このエリアは、自宅購入の中心をなす30代から40代の人口流入があり、このことも地価を押し上げる一因となっているようです。

京都府では、中京区の3.2%、下京区の3.0%といった上昇が目立つ程度です。

兵庫県では、2022年には、3つの区、1つの市でマイナスとなっていたものが、長田区を除き、プラスに転じています。

奈良県では、地価がマイナスをつける市・区があるのが現状です。

商業地

商業地の変動率では、大阪市の福島区と梅田のある北区がそれぞれ5,8%、4,5%と高い上昇を見せています。この2区は、再開発エリアである「うめきた」の最寄りであることから、上昇に結び付いたと考えられます。2022年まであったマイナスを示す市・区はありません。

京都府でも、東山区や下京区、南区、長岡京市では、4%を超える上昇を見せている一方で、いまだマイナスを示すにエリアがあります。

兵庫県では、蘆屋市が5.0%、神戸市灘区が4.3%の上昇を見せており、下降傾向を示すエリアはなくなりました。

3-3.名古屋圏

 住宅地商業地
2022年2023年2022年2023年
愛知県愛知県1.1%2.5%1.9%3.6%
名古屋市2.2%3.7%3.2%5.0%
尾張地域0.5%1.5%0.6%1.6%
西三河地域1.2%3.0%0.8%3.2%
知多地域0.1%1.9%△ 0.5%1.0%
三重県三重県△ 0.3%0.1%△ 0.2%0.4%
四日市市△ 0.1%0.3%△ 0.1%0.5%
名古屋圏1.0%2.3%1.7%3.4%

住宅地

住宅地では、名古屋市中区で11.1%と、驚異の上昇をしています。中区には栄があり、再開発の中心地となっているため、利便性などを考えるとその影響は大きいと言えるでしょう。

この他にも、東区で6.5%、刈谷市で6.3%、安城市で6.2%、東海市で7.8%と上昇率が6%を超えるエリアが4つも存在します。

商業地

名古屋県では、名古屋市千種区(6.2%)、東区(6.4%)では、6%を超える上昇を示すエリアがある一方で、まだマイナスのエリアもあるのが現状です。

三重県では、3市のうち、2市がマイナスから脱却していますが、両市とも一桁に届かず低い上昇です。

4.地方圏の公示地価|2023年の傾向

最後に地方圏の2023年の公示地価の傾向を見ておきましょう。

4-1.地方4市の公示地価の傾向

地方4市とは、札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4つを指します。

これらのエリアは、コロナ禍でも堅調な推移を見せていましたが、2023年では、住宅地で8.6%、商業地で8.1%と、前年以上に伸びており、10年連続の上昇をしています。

 2019年2020年2021年2022年2023年
住宅地4.4%5.9%2.7%5.8%8.6%
商業地9.4%11.3%3.1%5.7%8.1%
全用途5.9%7.4%2.9%5.8%8.5%

4-2.地方圏の公示地価の傾向

 2019年2020年2021年2022年2023年
住宅地0.2%0.5%△ 0.3%0.5%1.2%
商業地1.0%1.5%△ 0.5%0.2%1.0%
全用途0.4%0.8%△ 0.3%0.5%1.2%

4市を除く地方圏では、住宅地が28年ぶりにプラスに転じることになりました。

5.公示地価についてのよくある質問(FAQ)

2023年までの公示地価の推移は?

2023年までの公示地価の推移をまとめると以下の通りです。

住宅地2019年2020年2021年2022年2023年
全国0.6%0.8%△ 0.4%0.5%1.4%
三大都市圏1.0%1.1%△ 0.6%0.5%1.7%
東京圏1.3%1.4%△ 0.5%0.6%2.1%
大阪圏0.3%0.4%△ 0.5%0.1%0.7%
名古屋圏1.2%1.1%△ 1.0%1.0%2.3%
地方圏0.2%0.5%△ 0.3%0.5%1.2%
地方4市4.4%5.9%2.7%5.8%8.6%
その他△ 0.2%0.0%△ 0.6%△ 0.1%0.4%
商業地2019年2020年2021年2022年2023年
全国2.8%3.1%△ 0.8%0.4%1.8%
三大都市圏5.1%5.4%△ 1.3%0.7%2.9%
東京圏4.7%5.2%△ 1.0%0.7%3.0%
大阪圏6.4%6.9%△ 1.8%0.0%2.3%
名古屋圏4.7%4.1%△ 1.7%1.7%3.4%
地方圏1.0%1.5%△ 0.5%0.2%1.0%
地方4市9.4%11.3%3.1%5.7%8.1%
その他0.0%0.3%△ 0.9%△ 0.5%0.1%
全用途2019年2020年2021年2022年2023年
全国1.2%1.4%△ 0.5%0.6%1.6%
三大都市圏2.0%2.1%△ 0.7%0.7%2.1%
東京圏2.2%2.3%△ 0.5%0.8%2.4%
大阪圏1.6%1.8%△ 0.7%0.2%1.2%
名古屋圏2.1%1.9%△ 1.1%1.2%2.6%
地方圏0.4%0.8%△ 0.3%0.5%1.2%
地方4市5.9%7.4%2.9%5.8%8.5%
その他△ 0.2%0.1%△ 0.6%△ 0.1%0.4%

ちなみに、2023年の全国で最も高額な公示地価は、住宅地と商業地で次の通りとなっています。

 所在地公示地価(円/㎡)変動率
住宅地東京都港区赤坂1丁目1424番15,120,0002.4%
商業地東京都中央区銀座4丁目2番4
(山野楽器銀座本店))
53,800,0001.5%

【ここまでの出典】「令和5年地価公示」|国土交通省

公示地価は、相続税の土地の評価に影響するの?

公示地価は、国土交通省が毎年3月に発表し、土地取り引きの客観的な目安として使用されます。

一方で、相続税の土地評価に利用される路線価は、公示地価の約8割で設定されています。そのため、公示地価が上昇すると、相続税の土地評価も上昇するのです。

なお、土地の相続税評価については、「相続税における土地の評価方法:路線価方式と倍率方式」をご一読ください。

まとめ

ここまで、相続税の土地評価を左右する路線価にも影響する2023年の公示地価の傾向について解説してきました。

コロナ禍からウィズコロナへと推移するなかで、地価も堅調に上昇しているように見えます。しかし、その中で継続して地価が下降傾向にあるエリアが存在することも事実です。この傾向は、2024年も続くのではないでしょうか。

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