「地積規模の大きな宅地の評価」とその対策についてわかりやすく解説

広大地

土地が広すぎる場合には、用途の制限や開発行為の負担などが考慮され、その相続税評価額を減額してくれる広大地評価がありましたが、2018年度(平成30年度)税制改正により、「広大地」が廃止され、「地積規模の大きな宅地」が新設されました。

どのように変わったのか従来の制度と見比べながら、その影響とどのような対策がとれるのかを解説していきます。

1.地積規模の大きな宅地の評価とは?

地積規模の大きな宅地は、広大地が廃止された代わりに新設された制度であり、基本的には広大地と同じです。改正されたことで、より実態に即した評価制度となりました。
詳しくみていきましょう。

1-1.地積規模の大きな宅地の評価はどんな制度?

広大地と同様、広過ぎる土地の使い勝手の悪さ、売れにくさ、開発費用などを考慮し、評価を減額補正できる制度です。

この制度の適用による評価の減額効果、相続税の節税効果は非常に大きく、地積規模の大きな宅地に該当する否かは相続税の計算上、非常に重要なポイントです。

改正により変わった点は、適用要件と計算方法です。次項以降で解説していきます。

1-2.地積規模の大きな宅地の評価の適用が受けられる要件

その土地が次のすべてに該当する必要があります。

土地の面積

  • 三大都市圏:500㎡以上
  • その他:1,000㎡以上

土地がある地区

  • 普通商業・併用住宅地区
  • 普通住宅地区

除外される地域

上記の地区にある土地であっても、次の地域にある場合には適用できません。

  • 市街化調整区域で、開発行為を行うことができない地域
  • 都市計画法に規定されている工業専用地域
  • 容積率400%(東京23区は300%)以上の地域

1-3.地積規模の大きな宅地の評価の適用開始時期

適用開始は2018年1月1日以後の相続からであり、すでに導入されています(※)。

※2017年12月31日以前の相続については、広大地の評価が適用されます。

1-4.地積規模の大きな宅地の評価の計算方法

地積規模の大きな宅地の評価額は次の算式により計算します。

まず通常の宅地と同様に、路線価に奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種補正率を乗じます。そしてその後に乗じられている規模格差補正率というのが、地積規模の大きな宅地のポイントとなる補正率で、これがあることで宅地の大きさを考慮して減額することができるようになりました。

規模格差補正率は、土地の面積と宅地の所在地に応じ次の算式により計算します。(小数点以下第2位未満は切り捨てます。)

三大都市圏に所在する宅地

地積普通商業・併用住宅
地区、普通住宅地区
500㎡以上1,000㎡未満0.9525
1,000㎡以上3,000㎡未満0.9075
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85225
5,000㎡以上0.80475

三大都市圏以外の地域に所在する宅地

地積普通商業・併用住宅
地区、普通住宅地区
1,000㎡以上3,000㎡未満0.90100
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85250
5,000㎡以上0.80500

三大都市圏とは、首都圏、近畿圏、中部圏のことをいいます。
ただしその圏内すべての市区町村が対象になる訳ではなく、法律に基づいて指定されている地域のみが該当します。

詳しい地域はこちらからご確認下さい。

【参考サイト】国土交通省:大都市圏整備:大都市圏整備法(首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法)

 掲載されている市区町村は、その全域が該当する場合と一部が該当する場合がある点に注意が必要です。 自分で調べるのが難しい場合には、該当の市区町村役場に確認してみましょう。

【出典サイト】国税庁:No.4609 地積規模の大きな宅地の評価 

地積規模の大きな宅地の評価の計算例

それでは具体的な条件で評価額を計算してみましょう。

  • 宅地の所在地:東京都武蔵野市
  • 面積:700㎡
  • 路線価:50万円
  • 奥行価格補正率:0.98
  • 不整形地補正率:0.88

規模格差補正率

700㎡ × 0.95 + 25/700㎡ × 0.8 = 0.788… → 0.78(小数点以下第2位未満切り捨て)

評価額

 計算式評価額
地積規模の大きな宅地に該当する場合50万円×0.98×0.88×0.78×700㎡235,435,200円
 地積規模の大きな宅地に該当しない場合50万円×0.98×0.88×700㎡301,840,000円

地積規模の大きな宅地に該当しない場合の評価額は301,840,000円であり、規模格差補正率が適用されるだけで評価額が6,000万円以上も減額されます。

地積規模の大きな宅地の評価が適用できるか否かで、大きく相続税が変わってくることが分かります。

2.地積規模の大きな宅地と従来の制度との違い

広大地と地積規模の大きな宅地とで異なる点は何でしょうか。改正によってどうなったのか解説します。

2-1.適用要件が明確になった

広大地の適用要件は非常にあいまいで、適用できるかどうかの判断が困難であることが問題でしたが、改正後では地積規模の大きな宅地は適用要件が明確化され、判断が容易になりました。

それでは広大地と地積規模の大きな宅地とで、適用要件を比較してみましょう。

 
区分地積規模の大きな宅地広大地
土地の面積

・三大都市圏:500㎡以上

・その他:1,000㎡以上

・三大都市圏:500㎡以上

・その他:1,000㎡以上
(ただし、ミニ開発分譲が多い地域では500㎡未満でもOK)

土地がある地区

・普通商業

・併用住宅地区

・普通住宅地区

に限定
工業地域や準工業地域 でも認められる可能性あり
除外される地域

・市街化調整区域で、宅地開発ができない地域

・工業専用地域

・ 容積率400%(東京23区は300%)以上

・容積率300%以上
・マンション適地

広大地は要件が定められてはいますが、あやふやな例外の存在で線引きがよく分からない部分がありました。これに対して地積規模の大きな宅地は限定的な要件となっています。

これにより、適用できるかどうかの判断がつきやすくなり課税の公平が保たれます。税務調査で適用外を指摘され、追徴税が発生する可能性も低くなります。

2-2.土地の形状も評価

広大地を評価するための算式は、「路線価×広大地補正率×面積」であり、宅地の形や接道状況を評価額に反映することができる、奥行価格補正率などの各種補正率は考慮されていませんでした。

整った形の土地といびつな形の土地を比較してみると、面積が同じであれば評価額は同じとなってしまい、実態に合わせた評価ができていませんでした。

これに対して地積規模の大きな宅地の算式では、各種補正率と、土地の大きさを反映する規模格差補正率を乗じることで、土地の形と大きさを考慮した評価が可能となりました。

3.「地積規模の大きな宅地」新設後にできる対策

広大地から地積規模の大きな宅地になったことで、どのような影響があるのか。またそれに対する対応策を解説します。

3-1.「地積規模の大きな宅地」新設による影響

形の良い土地は評価額が上がる可能性

改正前は土地の形に関係なく、改正後は土地の形状も考慮されるようになりました。これにより、形の良い土地は改正前と比べて大きく評価額が上がる可能性があります。

土地が大きいほど改正前後の差が大きくなる

改正前は評価減される金額が面積の大きさに比例していましたが、改正後は評価の基準が面積だけではなくなります。 よって、評価額を改正前と比較すると、面積が大きいほどその差額が大きくなります。

適用対象外から対象となる可能性

改正前では適用要件に該当しなかった人も、改正後では適用できる可能性があります。

ただし、この逆のパターンも考えられますので注意しましょう。

3-2.「地積規模の大きな宅地」新設後の対応策

評価シミュレーションのやり直し

評価額が上がる可能性については、試算をやり直して改正後の評価額を把握しておき、相続発生後に評価計算をしていて、「え!?」となるのだけは避けましょう。

前もって分かっていれば節税対策の検討などができます。

適用要件に該当するようにする

広大地の要件にあった、土地に開発道路を入れる必要性の有無は、改正後はなくなりました。

地積要件を満たせば、地積規模の大きな宅地に該当する土地が増えたことになりますので、地積がぎりぎり足りないなどの場合には、次のような方法を検討しましょう。適用対象外から適用対象にできる可能性があります。

  • これから土地を購入する場合には、500㎡(または1,000㎡)以上の土地を探す。
  • 土地の測量をやり直す。
  • 隣地を親子別々で所有している場合には、贈与して1つの土地にする。

4.地積規模の大きな宅地は税理士に依頼がお勧め

広大地から地積規模の大きな宅地になったことで、評価減制度が適用できるか否かの判断は簡単になりました。

しかし、2018年1月1日にスタートしたばかりのまだ新しい制度であり、情報が少ないのが現状です。地積が大きい分、相続税に対する影響も大きいので、税理士に依頼した方が安心です。

また、小規模宅地等の特例の要件を満たしていることを条件に、上限面積まで小規模宅地等の特例との併用が可能なので、要件に当てはまる可能性がある方は、相続税に詳しい税理士に相談するといいでしょう。

まとめ

地積規模の大きな宅地への改正により、適用できる宅地の判断が明確になりました。評価計算においても、規模格差補正率が導入されたことで、土地の形状も評価されることになりました。

従来より課税の公平が図られるようになったことは良い点ですが、評価額が高くなったり、制度自体の適用ができなくなる人もいます。 広い土地を所有している人は、新制度での相続税シミュレーションは必須です。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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