恐るべき税務署。親族の通帳までが相続税の税務調査の対象に
遺産相続が発生すると、関係するのは被相続人の財産のみであると考えている方が多いのですが、実は、相続人や親族の財産までもが税務調査の対象となってきます。
1.親族の通帳までが相続税の調査対象に
相続税慣れされていないご家庭には寝耳に水かもしれませんが、実は相続税の申告書を提出すると、税務署がそこに記載されている銀行などの金融機関に対し、過去数年分の口座のお金の出入りを照会します。
この際、被相続人の口座はもちろんの事、申告書に記載してある相続人やその孫など近い親族すべての口座まで調査されるのです。
まずは、税務調査に来たときに、家族の通帳の提示を求めて、どの銀行にどんな口座があるかを一つ一つチェックします。また、そこに、家族や親戚とのお金のやりとりが記載されていれば、その内容を尋ねたり、そこに書かれている家族・親戚の口座も調査します。
もし、自宅に親戚の通帳がなければ、その親戚の家にまでわざわざ赴いて確認することさえあります。
時々、税務署の開示請求に対して通帳の提示を拒否される相続人の方がおられますが、たとえ拒否したとしても銀行側に直接照会手続がされてしまうため、結局分かってしまうので無駄な抵抗は辞めましょう。
ではなぜ相続人や親族の口座まで調べるのでしょうか?
2.税務署は隠し財産を探しまわる
相続税の課税対象となるご家庭の場合、その多くが事前に何らかの対策を取っているケースがあります。
税理士の指導のもと適切に生前贈与等を行なっていれば良いのですが、一部の人は、相続税を逃れるために、多額の資金を他の親族の口座に移していたり、別の財産に組み替えて隠そうとする人も多く、それらを見つける事が税務署の使命なのです。
例えば、被相続人の口座から1,000万円が出金されていたとします。
そしてその送金先が相続人の口座であれば、それが亡くなる前3年以内のものであれば相続税が課税されますし、それ以上前であれば贈与税の課税対象となります。
贈与税が発生していたにも関わらず申告をしていない人は以外と多く、そういった人は口座情報を税務署に出したがりません。
しかし、口座情報を税務署に教えなかったとしても、税務署は何らかの手段でその情報をつかみ、追及してくることが多いです。
たとえば、銀行でもらったカレンダーやボールペン、ティッシュなど何気なく部屋においてあると、税務調査の際に調査官の目にとまって、結局、隠し口座がばれるということもあります。
3.名義預金も油断は禁物
生前に相続税対策として、子供や孫の名義で定期預金口座を開設し、せっせとそこにお金を移す人がいます。これを「名義預金」といいます。
贈与税の基礎控除の範囲内で行なったり、きちんと贈与税の申告をしていれば良いのですが、そうでない場合は相続税申告の時点で税務署の網に引っかかります。
被相続人の口座の記録と、子供や孫の口座の記録を照合すれば明らかに怪しい点が出てきます。
もしもこれを税務署から指摘されると、たとえ被相続人名義の口座でなくとも相続財産とみなされる事もありますので、予め相続税対策を考える際は十分にご注意下さい。
まとめ
相続税については、税務署は徹底して調査を行ってきます。
被相続人の通帳以外に相続人や家族・親戚の口座情報まで見られる事を前提に、しっかりとした対策を取る事が重要です。
税務調査では、プロである調査官に対して素人が立ち向かうのは厳しいですので、税理士に依頼されるほうが良いでしょう。
ただし、その際には、税理士なら誰でもよいわけではなく、相続税に強い税理士にご依頼されてください。