相続税申告をしなかったら税務調査は必ず来るのか?

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 税金を支払いたくないのは誰でも同じです。特に相続税は他の税金に比べて納税額が大きい場合が多く、「このまま申告しなければ…」という思いが頭をよぎる人もいるでしょう。

その場合、必ず税務調査に来られて、申告しなかったことが見つかってしまうのでしょうか?
税務調査という観点から、相続税申告をしなかったらどうなるのかについて解説します。

1.税務調査の概要

税務調査というものがあることは多くの人が知っていますが、実際に体験する人は少ないでしょう。特にサラリーマンは、税務調査なんて無縁のまま現役を終える人がほとんどです。
しかし相続税の申告となると別で、税務調査は一気に身近なものになります。

1-1.税務調査が入る確率

平成26年発生分の相続税課税対象者は56,239人で、そのうち税務調査が入ったのは12,116人です。なんと20%以上、5人に1人の確率で税務調査が入ることになります。

ただし平成27年以降は税制改正により基礎控除額が縮小されたことで、課税対象者は2倍近く増加しています。
改正後の税務調査件数はまだ公表されていませんが、税務調査官の人数を改正に合わせて急に2倍用意すること、既に大忙しの税務調査官が2倍の調査件数をこなすことは難しいと考えられるため、調査件数自体は変わらないとすると、確率は下がって10%台前半であろうと思われます。

【参考サイト】平成28事務年度における相続税の調査の状況について|国税庁 

1-2.狙われやすい人

税務調査は相続税の課税対象者の中からランダムに選ばれるわけではありません。
調査官も貴重な時間を使って成果なしというわけにはいきませんから、相続税計算に誤りがありそうだったり、申告漏れがありそうなど、ある程度の目星をつけたうえで税務調査にやって来ます。
中でも次の人は税務調査が入りやすいようです。

  • 無申告者
    税金の大原則である課税の公平を守るため、無申告を逃してはいけません。
  • 富裕層
    財産がたくさんあるため申告漏れや財産隠しが発生しやすく、その分、追徴課税の金額も大きくなり、調査官自身の実績も増やしやすいです。遺産総額が億単位となる人は要注意です。
  • 海外に財産がある人
    外国に財産を移すことで課税逃れをする人もいるため、海外資産の状況把握には力を入れ ています。
  • 税理士が関与していない申告
    相続税申告書の内容に間違いがある可能性が高いためです。

1-3.税務調査の時期

税務調査は相続税申告後すぐにあるわけではありません。申告書を提出してから大体1年から1年半後、三回忌が済む頃が最も多い時期です。税務署側の事前調査に時間がかかった場合などではそれ以降に入る場合もあります。

税務調査は、まず調査が入る旨の事前連絡から始まるので、事前準備ができます。申告に関与税理士がいる場合には、その税理士にも連絡がいきます。
強制捜査(マルサ)でもない限り、ある日突然、調査官が玄関のインターホンを押すことはありませんので、安心してください。

1-4.時効がある

相続税は申告期限から5年または7年を経過すると時効となり、その申告についてのおとがめはなくなります。
5年で済むのは、自分には相続税の申告納税が必要ないと信じ切っていた人です。7年はそれ以外の人で、少しでも申告納税をしなければいけないと分かっていた人が該当します。

2.税務署の調査力はすごい

税務署は、相続税に関するありとあらゆる情報を手に入れることができます。

2-1.KSKシステムの存在

KSKシステムとは、正式名称を「国税総合管理システム」といい、全国の国税庁と税務署をネットワークで結び、申告納税の実績や各種情報など地域や税目を越えた情報を一元的に管理するコンピューターシステムです。

税務調査にも広く利用されており、具体的には次のような使い方で相続税申告を徹底チェックされています。

  • 過去の所得税や固定資産税の情報から、相続税が発生しそうな人を予測
  • 膨大な財産情報と照らし合わせることで申告漏れの有無を確認

2-2.死亡情報はすぐに把握できる

死亡届が提出される市区町村役場には、死亡届を受理した日の翌月末までに税務署に対してその死亡情報を提供する義務があります。
これにより税務署は、死亡の事実を自動的に知ることができるのです。

2-3.対象者は生前から狙われている

上記2-1で軽く触れましたが、KSKシステムとデータ照合することにより、過去の所得税情報や固定資産税情報から、今までの稼ぎや所有する不動産情報などが簡単に明らかになります。

それらから総合的に判断して、明らかに相続税が発生すると見込まれる場合には、生前から目を付けられているでしょう。
死亡後、何の前触れもなしに税務署から相続税申告書一式が送られてくる故人は、このような人が多いです。

2-4.強力な調査権限

税務署には本人の了解を得ずに様々な情報を得られる権利があります。代表的な相続財産の具体的な調べ方をみていきましょう。

2-4-1.預金や有価証券

銀行や証券会社に照会をかけることで簡単に調べられます。
相続開始時点の残高だけではなく、過去にさかのぼって預金や株式の動きも把握されるので、申告すべき生前贈与が無申告であった場合など、すぐに指摘されてしまいます。

2-4-2.不動産

上記「2-2.死亡情報はすぐに把握できる」で解説した市区町村役場からの死亡情報にあわせて、不動産情報も税務署に送られます
また遺産分割が完了した事実は、相続登記の際の登録免許税などの情報を法務局から得ることで知ることができます。

2-4-3.生命保険金

税務署には生命保険会社から支払調書(※)が提出されるので、保険金の支払額は明らかです。 また税制改正により平成30年1月1日以降は、支払調書に契約者変更情報も記載されるようになりました。

※支払調書とは、特定の支払いをした事業者が税務署に提出する書類のことで、受け取った人が漏れなく申告しているかどうかを、税務署が照らし合わせて確認するために利用されます。 生命保険金の場合には、死亡保険金や解約返戻金などが該当します。

2-4-4.その他

税務署は上記の他にも調査の反面資料として様々な資料を入手します。
所得税確定申告書、法人税申告書(調査対象者が法人役員の場合など)、各種支払調書などをはじめとする税務署に提出される資料は当然として、高額所得者名簿、ゴルフ会員権の名義変更情報、高級マンションなどの高額資産の所有者名簿など多岐に渡ります。

また税務署には反面調査を行う権利があります。
反面調査とは、調査先だけでは情報が不確実であり真実が明らかにならないと調査官に判断された場合に、故人と関係のある取引先や銀行に向けて行われる調査のことをいいます。

実際に反面調査が行われてしまうと、調査先に迷惑をかけてしまうだけでなく、故人が事業を行っていた場合には関係先の信頼を失い、その後の後継者の取引にも影響が出る恐れがあります。
反面調査をされなくて済むように、申告書には真実を記載するとともに、税務調査には誠実に対応しましょう

3.無申告がバレたときのペナルティ

無申告であることが明らかになったら、その申告と納税をできるだけ早く行います。
もちろんこれで終わりではありません。申告の義務を怠ったのに、何のおとがめもなく済むわけはなく、本税にペナルティの税金が加算されます。

延滞税や加算税は、税務署が計算をして納付書等を送付してきます。自分で計算して本税と共に納付する必要はありません。
無申告であったら、まずは本税のみ納付すれば大丈夫です。

3-1.延滞税

文字通り、納付が遅れたことに対する利息の意味をもつ税金です。法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。 また延滞税は本税に対してかかるものであり、加算税などにはかかりません。

延滞税の割合は次の通りです。

計算期間原則特例
法定納期限の翌日から2ヶ月を経過するまで年7.3%次のいずれか低い割合
・年7.3%
・特定基準割合(※)+1%
2ヶ月を経過した日以後年14.6%次のいずれか低い割合
・年14.6%
・特定基準割合(※)+7.3%

※特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。

【出典サイト】No.9205 延滞税について|国税庁 

参考として、平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間の特定基準割合は、年1.6%です。
特例の計算式に当てはめると、

  • 法定納期限の翌日から2月を経過するまで:年2.6%
  • 2月を経過した日以後:年8.9%

となり、現行では原則を遥かに下回る割合で済みますが、利息と考えると非常に高い割合であることは変わりません。

3-2.無申告加算税

法定申告期限内に申告しなかったことに対する罰金の意味をもつ税金で、納付すべき税額に対してかかります。
税率は次の通りです。

50万円までの部分15%
50万円を超える部分20%

ただし、税務調査がある前に自主的に期限後申告をした場合には5%で済みます。

3-3.重加算税

事実を仮装隠蔽し申告を行わなかった場合などには、重い罰金として重加算税が加算されます。税率は納付すべき税額に対して40%です。
ただし、これは無申告加算税の代わりに課されるものです。無申告加算税と重加算税が両方かかることはありません。

3-4.【参考】過少申告加算税

きちんと期限内に申告はしたけれども、その内容に誤りがあった場合には修正申告を行い、追加分の相続税を納めます。 この場合には、上記3-1.延滞税と過少申告加算税または重加算税がかかります。

過少申告加算税とは、文字通り、少なく申告納税したことに対しての罰金で、追加分の税金に対してかかります。
税率は次の通りです。

50万円までの部分10%
50万円を超える部分15%

ただし、税務署から指摘を受ける前に間違いに気が付いて、自主的に修正申告を行った場合には過少申告加算税はかかりません。

また、相続財産を隠すなどして意図的に相続税を少なく申告した場合などには、無申告加算税と同様に、過少申告加算税に代えて重加算税がかかります。この場合の税率は35%です。

4.逃げ切ることは不可能

相続税の時効は5年または7年です。「もしかしたら逃げ切れるのでは?」と思うかもしれませんが、税務署の情報網は半端ではありません。無申告は必ず見つかります。あまりに悪質な場合には刑事罰が科されることもあるのです。

元々支払うべきだった相続税に、無申告を隠し続ける不安、税務調査に対応する手間と精神的負担、更にペナルティの税金までプラスされて何も良いことはありません。

まとめ

税務署の圧倒的な情報収集力と、ペナルティの重さをご理解いただけたでしょうか。
税務署には膨大な量の申告がありますが、1つ1つしっかり見られており、無申告者もすぐに明らかにしてしまいます。 相続税申告は申告期限内に必ず行いましょう。

そして申告ミスを防ぐために、可能な限り税理士に依頼することをおすすめします。

相続税に強い税理士が問題を解決いたします

相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
相続税について、下記のような不安・課題を抱えている方は、相続税に強い税理士にご相談ください。

  1. 相続税をなるべく安くしたい
  2. 税務調査が怖い
  3. 評価が難しい土地がある
  4. 相続関連のいろいろな手続きが面倒で困っている
  5. 生前対策をしたいが、何をしたら良いかわからない

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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