老人ホーム入居で小規模宅地等の特例、相続税はどうなる?

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 超高齢化社会の到来に伴い、今後、親の介護を必要とするケースが増えてきます。最近では、住み慣れた自宅を離れ、介護付老人ホームで余生を過ごす選択をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

もちろんそれはそれとして、とても楽しいシニアライフが待っている事でしょう。が、しかし、実はこの介護施設への入所が、なんと相続税に影響を与えるかもしれない事をご存知でしたでしょうか?

ここでは老人ホームで介護を行うことによって生じる相続(税)の問題を、具体的に説明していきます。また、どのように対応をしていけばいいのかについても探っていくこととします。

1.高齢者の介護と相続問題

誰が高齢者の介護をするかは問題になることが多いです。ここでは老人ホームでお世話をしてもらう場合と、家族の誰かがお世話をする場合に生まれる相続問題の概要を説明します。それぞれ、相続問題になりやすいポイントを押さえておきましょう。

1-1.老人ホームで介護をする

家族が面倒を見られない場合は、老人ホームにてお世話をしてもらう必要があります。この場合、相続問題となりやすいのが、「小規模宅地等の特例」と、「老人ホーム入所料の扱い」です。

まず、小規模宅地等の特例について、この特例は被相続人の居住地がどこにあるかで特例適用の可否が決まります。つまり、老人ホームに入ると、「居住地が介護施設に移るのではないか?」と問題になる可能性があります。

また、老人ホーム入所料の扱いについては、入所料は一時金として扱われることがあります。つまり、返還される一時金が相続財産に含まれる可能性があります

これら2つは、老人ホームで介護をする際によく起こる相続問題ですので、これらの問題を後ほど詳しく説明していきます。

1-2.家族の誰かが介護をする

家族の誰かが高齢者の介護をしている場合、相続問題に発展しやすいポイントが「寄与分」でしょう。この寄与分とは、被相続人に対して特別な働きをした相続人が、他の相続人よりも多く相続分を受け取れる制度です。つまり、高齢者のお世話をしたことが寄与分に該当するかどうかということです。

結論から言うと、これは寄与分として該当しないケースが多いです。もちろん、中には寄与分として裁判所で認められたこともありますが、一般的には介護をするだけでは、特別な働きとして認められません。

一般的に寄与分が認められない理由は、介護によって相続財産が形成されたわけではないからです。要するに、相続人の働きによって、相続財産が多くなっている場合のみに寄与分が認められます。したがって、単に高齢者のお世話をしたからと言って、相続分が多くなるわけではありません。

そのため、もし相続分を多くしたい場合は、被相続人が遺言書を残す必要があります。もしくは相続人の働きにより財産形成ができたことや、介護に高額な費用が発生したことなどを、裁判所で立証する必要があります。

【関連】寄与分と相続税の計算

2.老人ホームと小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、一定の条件で減税できる制度のことを言います。本来であれば、住宅などを相続すると相続税法に従って相続税を納めますが、小規模宅地等の特例制度を利用すると、被相続人が住んでいた宅地(330平方メートル以下)を相続して相続人が続けて住み続ける場合に、80%の減税を適用できるものです。

ただし、この特例を適用するには、被相続人が居住していることが条件となります。そこで老人ホームに居住している場合は、どのように扱われるのかが争点になる場合が多いです。

2-1.特例が認められるケース

仮に被相続人が老人ホームに居住していても、小規模宅地等の特例を認められるケースがあります。それは下記の2つを満たしている場合です。

条件①被相続人が指定の介護施設に入居していること
条件②被相続人またはその同一家族が住む住居であること

まず、条件①ですが、これは「租税特別措置法施行令40条の2 第2項」によって定められていることで、介護保険法にて要介護認定・要支援認定を受けている被相続人が、老人ホームや介護老人保健施設等に居住していることです。つまり、身体上・精神上の都合により介護施設に入居している必要があります

また、条件②は「租税特別措置法施行令40条の2 第3項」に定められています。特例の対象となる住宅は「事業に使わない」「家族以外が住まない」ことが条件です。したがって、家族が住むなら純粋に住居として済む必要があり、誰も住んでいなくても、被相続人がいつでも戻ってきて住めるように建物が維持管理されている必要があります

これら2つを満たしている場合にのみ、小規模宅地等の特例を適用することができます。

2-2.特例が認められないケース

特例が認められないケースとしては、まずそもそもとして小規模宅地等の特例の条件を満たしていないことが挙げられます。例えば、申告期限まで相続人が住宅を所有していない場合は適用できないなどです。これらは取得者の属性(配偶者や同居の有無など)によって要件が異なるので、あらかじめ確認しておく必要があります。

また、特別措置法に該当しない場合も、特例を受けることができません。例えば、住宅がすぐには居住地として使えないような場合などです。このように明らかに老人ホームが住宅の拠点となっているような状況では、特例が認められません。したがって、特例が認められるためには、要件をあらかじめ確認しておき、疑問があれば事前に税理士等に相談しておくといいでしょう。

3.相続税における老人ホーム入所料の扱い

有料老人ホームに入所する際、介護費用や維持・管理費用などの利用料金が発生します。また、施設によっては「入所料」がかかることも多いです。金額は施設によって異なりますが、図書館やスポーツジムなどがついている施設ですと、数千万円から数億円に達することもあります

この入所料について「入所一時金」「入居一時金」などと呼ばれ「一時金」の扱いとされる場合は、相続財産として扱われることがあります。つまり、施設に入所してから何年以内など所定の条件を満たせば、入所料の一部が返還される場合がありますが、その入所料を誰が払ったかが問題となります。

3-1.入所料が相続財産となる場合

入所料が一時金として返還される場合、二つのケースで相続財産として扱われます。まず、入所料の「負担者が被相続人である」場合です。この場合は有料老人ホームに対して預け入れている形になり、返還先は被相続人になります。したがって、そのまま返還金が相続財産として充当されるのが一般的です。

また、負担者が被相続人以外の場合でも相続財産として充当されることがあります。これは特殊例で、本来であれば一時金の負担者に入所料が返還されます。しかし、負担者がすでに死亡している場合は、その返還先が被相続人になります。このケースに限り、入所料が相続財産として扱われるので注意をしましょう。

3-2.入所料が相続財産とならない場合

入所料が相続財産とならない場合は、被相続人以外が入所料を支払っている場合です。この場合は、返還があっても支払主に一時金が返還されることになります。

なお、この支払いが贈与として認められた場合には、被相続人が贈与税を支払う可能性があるので注意が必要です。また、この贈与に該当する場合、権利関係により一時金の返還先が被相続人になるか、支払人になるかトラブルになる可能性もあるので、あらかじめ明確にしておく必要があります。

まとめ

親の介護をする上で発生しうる相続問題について見てきました。誰が介護をするのか、また老人ホームで介護する場合の相続財産の扱いなど、それぞれにトラブルの要素をはらんでいるため、しっかりと確認をしておくことが重要です。

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