連帯納付義務とは?他人の相続税まで負担!

★ お気に入りに追加

家族が亡くなって、葬式やら遺産分割やらで大変だったけれど、自分の相続税を申告・納税したらもう一安心と思いたいところですが、実は、他人の相続税まで負担しなければいけないケースがあることをご存じでしょうか?これを「連帯納付義務」といいます。

本来であれば、自分の分だけ相続税を払えば良いはずなのに、なぜ他人の分まで納付する必要があるのでしょうか?

今回は、連帯納付義務について解説します。

1.相続税の連帯納付義務とは?

相続税法34条1項は、以下の通り規定しています。

相続税法34条1項(連帯納付の義務等)

同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。(括弧内、但書省略)

他の相続人が滞納している相続税額まで、連帯納付しなければならない」ということです。

これが「連帯納付義務」です。連帯して納付義務を負う理由ですが、裁判所が「相続税徴収を確保するため、各相続人に特別の責任を課す必要がある」と考えているからです。その結果、同じ被相続人から相続をしている相続人が滞納すれば、他の相続人がその滞納分を連帯納付しなければなりません。

なお、納付義務は「相続により取得した財産の価額を限度額にしている」ため、それ以上の徴収はありません。あくまでも、自分が取得した財産の金額の範囲内でのみ連帯納付義務が発生します

2.相続税の連帯納付義務制度

2-1.連帯納付義務の対象者:相続人全員が連帯納付義務を負う

ある被相続人から遺産を相続した相続人が、複数人いる場合は、その相続人が相互に「連帯納付義務」を負います

基本的には、相続人が申告・納付期限までに相続税を納税していれば連帯納付をする必要がありません。しかし、誰か1人でも滞納をすると、その時点で国税当局は連帯納付の請求を行うことができます。

2-2.連帯納付義務者の負担範囲:相続人に平等に課される

連帯納付義務の負担範囲は、相続人の間で特約がある場合にはこれに従います。特約がない場合で承継した事業などがある場合は、その事業から得られる利益割合に応じて負担の範囲が決まります。なお、利益割合に差がない場合には、相続人が平等に連帯納付義務を負います

基本的に、連帯納付義務に関する特約をすることは珍しいでしょう。したがって、ほとんどの場合、相続人は「利益割合」もしくは「平等」に連帯納付義務を負うことになります。

2-3.連帯納付義務者の負担:利子税を加えた相続税滞納額

他の相続人が相続税の納税を滞納した場合、相続財産の不動産の割合によって年4.3%(現行の利率)を加えた金額を納税しなければなりません。

相続税の納付期限の翌日から納付基準日(※)又は相続税を完納する日のどちらか早い日までの期間分の利子税を納付します。

※納付基準日:「納付通知書」が発せられた日の翌日から2ヶ月を経過する日又は連帯納付義務者への督促状が発せられた日のいずれか早い日

かつては、この罰則として「延滞税14.6%」が課されていました。しかし、あまりにも負担が大きいことから、平成24年度の制度改革にて「延滞税から利子税へ」と切り替えられ、ペナルティの税率も下がりました。

また、通常の相続税の納税と異なり、連帯納付では延納は認められません

3.相続税の連帯納付義務の手続き

連帯納付義務の手続きは、以下の流れに沿って行われることになります。

3-1.連帯納付義務の手続きの流れ

  1. 本来の納税義務者への督促状の送付後1ヶ月が経過しても完納されない場合には、連帯納付義務者に対して完納されていない旨等のお知らせが届く
  2. 連帯納付義務者へ納付の請求がある場合は、納付通知書が届く
  3. 納付通知書の送付後2ヶ月が経過しても完納されない場合は、督促状が届く
  4. それでも納付がない場合は、財産の差押え

3-2.連帯納付義務者に督促状が届くまで

まずは、納付期限を超えた段階で本来の納付義務者に督促がなされることになります。その後1ヶ月経っても完納されない場合、今度は、連帯納付義務者に「完納されていない旨のお知らせ」が届きます。

連帯納付義務者に納付を求める必要がある場合、連帯納付義務者に「納付通知書」が届きます。

納付通知書の送付後2ヶ月が経過しても完納されない場合、納付税務署は、連帯納付義務者に「督促状」にて通知されます。

督促状を受けた場合には、管轄税務署の担当者にすぐに確認を取るべきです。また、滞納している相続人にも連絡がつく場合には、確認を取ることが重要です。

3-3.差押え

督促後も納税を怠ると、財産の差押えが行われることになります。

困ったことに、法律上、誰の財産を差押えるのかが、明確になっていません。従って、滞納している相続人の財産が差押えられるのか、他の相続人の財産が差押えられるのかは、税務署の判断一つということになってしまいます。

滞納している相続人の財産が不動産など処分が難しいものばかりの場合、他の相続人に対して差押えがなされる可能性もあるのです。

3-4.連帯納付義務は納税するまで続く

連帯納付義務は、「相続税が納付されるまで」続く義務制度です。したがって、滞納された納税額が完納される、または解除要件を満たさなければ、国税当局から納付するように通知が来ることになります。

4.相続税の連帯納付義務への対処法

4-1.遺産分割の際にできること

一番良いのは、遺産分割する時点で、それぞれの相続人が相続税を納税できるように考慮して、遺産を分割することです。現預金の持ち合わせがない相続人には、少なくとも納税用の現金を取得するようにさせます。

4-2.納税額が決まったら確認すべきこと・できること

申告期限から5年以内は連帯納付義務がありますので、まずは他の相続人がきちんと納税したのか確認しておくのが良いでしょう。もし納税できていないのであれば、その理由を聞いて、納税するように促したり、場合によっては、お金の調達方法をアドバイスすることも必要かもしれません。

4-3.相続税を立替えた場合に気を付けるべき贈与税

納付することができない共同相続人のために相続税を立て替えた場合に、気を付けなければならないのは贈与税です。

相続税を立て替えた相続人には、立て替えてもらった相続人に対して求償権が発生します。払えなかった者に対して求償しても戻ってこない可能性は大です。そこで、求償権を行使せず実質的に求償権を放棄したものとみなされてしまうと、立て替えが贈与となり贈与税が課税されてしまうのす。

こうした問題が発生しないように、できるだけ事前に対処しておきましょう。

5.相続税の連帯納付義務解除要件

以下2つが連帯納付義務の解除要件です。要件のうちいずれかを満たせば、連帯納付をしなくてもよくなります。

5-1.申告期限から5年が経過した場合

ただし、申告期限から5年以内に、税務署から連帯納付の督促を受けている場合は、引き続き連帯納付義務を負います。

5-2.納税義務者が延納、納税猶予を受ける場合

納税義務者が納税の意思を見せて延納または納税猶予の手続きをすることにより、連帯納付義務者には責務を問わないものです。
納税猶予には、農地に関する納税猶予と、非上場株式に関する納税猶予(事業承継税制)があります。

詳しくは、以下2つの関連記事をお読みください。

関連記事
相続税が免除されるかも?|農地の相続税評価と納税猶予の特例について
日本の農作物は、「安心・安全・美味しい」と海外でも人気ですが、高齢化により農業人口は、年々減少しています。そんな日本…
関連記事
事業承継税制スケジュール
平成31年度事業承継税制:相続税と贈与税の納税猶予
事業承継における大きな問題の一つが、自社株に対する相続税・贈与税の問題です。自社株の評価額は大きくなりやすく、それに…

相続税の連帯納付義務に関する問題点

連帯納付義務は、国税当局からすれば非常に有効な手段です。一方、自分の納税分を完納した相続人からしてみれば、滞納者の分まで納税するのには納得がいかないでしょう。

この問題をめぐっては、定期的に連帯納付義務に関する「不服申立て」が起きています。しかし、基本的には訴訟を起こしても敗訴してしまうのが実情です。なぜなら、「連帯納付義務は、法律上当然生じる義務」としてみなされるからです。

解除要件が認められたり、延滞による罰則規定が緩和されたりもしていますが、連帯納付義務は未だに存在する義務です。相続税が発生する場合には、しっかりと覚えておかなければならなりません。

まとめ

相続税の連帯納付義務は、あまり注目されることはありませんが、「相続した場合には、連帯納付の義務が課される」とされていますので要注意です。本来であればそれぞれの相続人が自分で納税するのが筋ですが、他の相続人が納税しなかった場合には、連帯納付義務者として他の相続人の分まで納税しなければなりません

「払えない」と分かった時点では、できることが限られてしまいます。不測の事態にしっかりと備えておきましょう。

相続税に強い税理士が問題を解決いたします

相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
相続税について、下記のような不安・課題を抱えている方は、相続税に強い税理士にご相談ください。

  1. 相続税をなるべく安くしたい
  2. 税務調査が怖い
  3. 評価が難しい土地がある
  4. 相続関連のいろいろな手続きが面倒で困っている
  5. 生前対策をしたいが、何をしたら良いかわからない

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

この記事が役に立ったらシェアしてください!