税務署の組織と税務調査・マルサ・リョウチョウの違い

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税務署は、国税庁・国税局を含めると日本全国で約55,000人を抱える巨大組織ですが、その実態はあまり知られていません。また、税務調査と関連してマルサ、リョウチョウといった言葉がテレビドラマなどで登場しますが、なんとなく怖いイメージがあるだけでその違いを知っている人は少ないのではないでしょうか。

そこで、税務署の組織の概要と、税務調査の種類などについて解説します。

税務当局の組織構成

税務当局とは財務省を頂点とする国税業務を担う組織機構のことです。

財務省

財務省は日本国の財務を担う省庁であり、約100兆円近い歳入予算を扱っています。
財務省の組織は本省外局に大きく2分されています。本省には、約15,000人が所属しており、一般会計予算の編成を担当するほか、各種税制の企画・立案や税法や税率等の決定をします。日本全国にある税関も本省の管轄です。

【出典】財務省の機構

国税庁

国税庁は財務省の外局として設立されている組織です。約55,000人が所属しており、課税・徴収といった税務運営を行っています。国税庁の配下に国税局および税務署を抱え、三段階の組織構造となっています。
国税庁本部には約900人の職員が所属しており、国税庁長官をトップとして、課税部や徴収部、調査査察部といった部署が置かれているほか、税務大学校や国税不服審判所などもあります。

【出典】国税庁の機構

国税局

国税庁の地方支分部局であり全国に12か所設置されています(札幌、仙台、関東信越、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、熊本、沖縄)。合計で1万人以上の係官が国税局に勤めています。

「マルサ」が属する調査査察部や「リョウチョウ」が属する課税部があり、税務署では対応できない資本金1億円以上の大規模法人や、富裕層の個人の税務調査を行います。また、国税庁と税務署とをつなぐ役割を担っている組織です。

税務署

国税局の下部組織で、国税局の業務の一部を担当するために設置される組織です。全国に524か所設置されており、4万人以上の係官が従事しています。
主として中小企業や個人の課税と徴収を行います。基本的に個人が相続税・贈与税の申告を行ったり、所得税の確定申告をする場所は「税務署」です。

税務署の内部組織と職務内容

税務署内にはいくつかの部署が置かれており、税務調査を行う部署とそうでない部署があります。

税務署の組織

総務課

税務署内における事務の総括を実施しています。具体的な仕事内容としては部署間に渡る事務の調整や申告書の受付などを行います。

税務広報広聴官

一般の方や子どもたちに対して税金の意義や役割を理解していただくための広報活動を行っています。

管理運営部門

申告書の受付や、各種用紙の交付、納税証明書の発行等を行っている部門です。国税に係る制度や手続きに関する相談等にも対応しています。

徴収部門

国税の納付相談の受付をしたり、滞納処分等を行っている部署です。

個人課税部門

所得税や個人事業主の消費税を扱う部署です。主として個人が相手であり、確定申告手続きの説明会なども実施しています。個人課税部門でも税務調査を行っています。

資産課税部門

相続税や贈与税などを扱う部署です。相続手続きや、贈与手続き等の相談を受け付けています。資産課税部門でも税務調査を行います。

法人課税部門

人税や法人の消費税を扱う部署です。主として企業を相手にしており、法人税に関する相談等を受け付けています。法人課税部門でも税務調査を行います。

酒類指導官

酒税の相談や調査を行っています。また未成年の飲酒防止活動等や販売管理等も実施している部署です。

国税専門官(キャリア)と税務職員(ノンキャリ)で職務が異なる

約55,000人いる国税庁の職員のうち約半数以上は高卒者と言われており、職人気質が強い職場のようです。
国税庁の職員になるためには、主に大卒生が対象の「国税専門官」試験と、主に高卒生が対象の「税務職員」試験に合格する必要があります。

「国税専門官」試験の合格者(いわゆるキャリア)は、税務大学校での基礎研修・専門研修と税務署での実務を繰り返し、比較的短期間(20代半ばくらい)で国税調査官となります。さらにトップ組織である国税庁と、下部組織である国税局、税務署での実務を経験を積んでいきますが、税務署での仕事をすることは少なく、国税庁と国税局での業務が主なものとなります。このうち、優秀な人は、国税庁長官をはじめとするポストへの道を進んでいきます。

一方で、「税務職員」試験の合格者(いわゆるノンキャリ)は、税務大学校で基礎研修を1年程度受けた後、税務署で数年間実務経験を積みます。このうち優秀な者だけが試験で選抜され専門研修を受けた後に国税調査官になることができます。ノンキャリの場合は、国税庁や国税局のポストまで出世することはほとんどなく、税務署長が一般的なゴールとなります。

このように、同じ職員でも、大卒者と高卒者では、出世ルートや職務内容がだいぶ異なります。また、税務署で多くの人材を抱えるのは、実際に課税や税務調査を行う、個人課税部門、資産課税部門、法人課税部門の3つになりますが、それぞれ扱う税法が異なるため、一度そこに配属されると基本的にはその部門内でずっと業務を行っていきます。医者や税理士にも専門分野があるように、税務署の調査官にも専門分野があるということです。

税務調査・マルサ・リョウチョウの違いとは?

国税局や税務署の仕事の一つとして税務調査がありますが、この業務内容に似たものに「マルサ」や「リョウチョウ」と呼ばれるものもあります。脱税したら「マルサ」が来るみたいなイメージがあるかもしれませんが、マルサがすべて担当しているわけではありません。これらの違いについて解説します。

税務調査とは?

税務調査とは各種税金の「申告漏れ」を調査するために行われる業務のことであり、税務署と国税局の両方で行われています。

個人部門や法人部門の係官は申告内容から申告漏れ・抜けなどを探します。もし申告漏れを発見した場合には、任意で納税者に質問等を行うことが可能です。これがいわゆる税務調査と呼ばれているものであり、個人の自宅や会社にやってきて徹底的に調査します。

なお、税務調査を実施して修正申告を促しても納税をしない場合には、国税不服審判所で裁決を行います。それでも納得しない場合には法廷にて判決をします。

国税局査察部(マルサ)とは?

マルサ」とは国税局査察部のことを指す隠語(組織内だけで使われる言葉)ですが、「マルサの女」という映画などで有名な言葉になったようです。マルサは国税犯則取締法のもと「犯罪事件(脱税事件)」を調査しており、その手続きが査察です。主に脱税額が1億円規模の悪質な案件を扱います

査察は税務調査とは異なり、強制調査です。裁判所の令状を持っており、調査のために帳簿書類を捜索・差し押さえすることが可能です。マルサは、納税者が脱税をしていると判断すれば検察庁に告発することもできます。

もし告発する場合には検察に送られ、起訴・不起訴の検討が行われます。起訴される可能性は高く、この場合は法廷で争われることになります。なお、告発見送りや不起訴になれば修正申告等をして終了となるでしょう。

情報部門と実施部門の連携プレー

マルサは強制捜査して相手を刑事告発することがある以上、間違いは決して赦されないため、実施に当たっては事前に丹念に調査したうえで証拠を抑え確実な当たりをつけたうえで行うとされています。

まず情報部門(「情」の字から通称「ナサケ」とも呼ばれる)が、机上調査、現場調査を徹底的に行い、脱税嫌疑者の資産やお金の流れなどの情報を調べ上げます。自宅の外観調査や、顧客に扮しての店舗での売上調査など幅広い調査が行われます。

そのうえで、実施部門(「実」の字から通称「ミノリ」とも呼ばれる)が、情報部門からの情報をもとに裁判所から捜索差押状を発行してもらい、実際に脱税嫌疑者の自宅や会社に赴いて関連書類や物品の押収および差し押さえを行います。脱税内容が悪質であれば刑事告発します。

査察件数は年間で70件程度

国税庁では毎年、年間の査察件数を発表していますが、平成27年では処理件数が68件であり、それほど多いわけではありません。このうち、検察庁に告発したのは43件であり、約6割強の告発率です。

処理した案件の脱税額は合計で約47億円、1件当たりでは約9,700万円です。だいたい平均で約1億円の案件が対象になっていることがわかります。
告発件数を税目別で見ますと、法人税が29件(約7割)、所得税が10件(約2割)とこれだけで9割を占めています。他は、相続税が1件、消費税が3件です。

【出典】平成27年度 査察の概要

脱税額1億円となると、それなりに利益を出している企業か、かなりの所得がある経営者や富裕層でないとそこまでいきませんので、一般の方がちょっと脱税したくらいでは、マルサが来ることはないと考えて良いでしょう。ただし、脱税自体は犯罪であり、マルサが絡まなくとも立件される可能性はありますのでご注意ください。

余談になりますが、世間的には「マルサ」は国税局の花形部門とされていますが、実際には、業務内容がハードなこともあり職員の中ではあまり人気がないようです。

国税局資料調査課(リョウチョウ)とは?

リョウチョウ(料調)」とは国税局資料調査課のことを指す隠語です(「料」の偏をとって通称「コメ」とも呼ばれる)。国税通則法に定められた「質問検査権」という権限によって調査を行います。リョウチョウは任意調査であり令状なしで取り調べをすることが可能な部署です。

リョウチョウもマルサと同様で、主として脱税額1億円規模の脱税事件を扱いますが、令状が必要ないために強引な調査活動をすることもあるようで、マルサよりも恐ろしいとも言われています。マルサのように何件処理したかの統計資料も公開されていませんので、実態もつかみにくいところです。

納税者側からするとマルサとリョウチョウのどちらも取り調べをされることに変わりはありませんが、マルサが検察庁への告発を目的としているのに対して、リョウチョウは重加算税(ペナルティ)を課すことを目的としているのが異なります。

税務署員もノルマがある

税務署員はなぜ厳しく税務調査を行うのか?脱税を防ぎ公平な社会を実現するという立派な目的がありますが、それ以外の理由として、実は、脱税や申告ミスの指摘および追徴課税に関してノルマがあると言われています。警察官がノルマ達成のために交通取り締まりをしているようにです。

税務署員も国税庁に雇われているサラリーマンであり、組織の命令に従い成果をあげなければ出世できないのですから、厳しく税務調査をして少しでも多く追徴課税をするのが当然といえば当然になります。

税務署の事業年度は7月開始~6月終了

税務署の事業年度は一般の会社や学校などとは異なり、7月から翌年6月までとなっています。そのため、7月~12月の秋期と、1月~6月の春期に大きく分けられます。

秋期では、7月に人事異動を終えて新しく年度をスタートしますので、金額重視で大きな金額の案件を追います。税務署側も余裕があり、じっくり調査してきますので、この時期に税務調査に入られると手強いでしょう。

一方、春期では2,3月は個人の確定申告という大きなイベントがあります。それが終わると、6月の年度末に向けて、件数重視で細かい案件も追っていきます。この時期に税務調査に入られた場合は、いわゆる「お土産」と呼ばれる、税務署員の指摘をすぐに認めてその部分の修正申告だけで終わらせるという方法が通用する可能性もあります(もちろん通用しない可能性もあります)。逆にいえば、突然、税務調査に入られる可能性もありますので、注意が必要です。

まとめ

税務署の組織および、税務調査やマルサ、リョウチョウの違いを解説しました。納税者側から見ると税務調査は怖いことかもしれませんが、納税の公平性を担保するために存在する手続きであり、大きな目で見たら日本国がちゃんと運営されていくための市民の味方であると考えれば良いでしょう。

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