【この記事は3分で読めます】
去る2017年7月12日のことですが、こんなニュースがありました。
相続税の税務調査において東京国税局が「売却が決まっていた土地の相続で13億円の申告漏れ」として、重加算税を含む8億円の追徴課税処分を行ったというものです。
見出し
(このニュースについて解説しますが、事実関係はあくまで報道等で知り得たものです。筆者が直接確認したものではないことにご留意ください。)
22億円で売買契約していた土地について相続開始直前に契約解除し、財産評価基本通達により評価した9億円で評価し申告したところ、差額の13億円について申告漏れを指摘された上、重加算税まで追徴されたとのことです。
この事例についてポイントとしては以下の2点が挙げられます。
報道等で知り得た情報を時系列で整理します。
相続税法第22条に「評価の原則」が規定されています。相続により取得した財産の価額は、財産を取得した時における時価とするものです。
財産を取得した時とは正に相続が発生した時ですから、相続発生時にすでに売買契約がなされているのであれば、売買金額こそが時価となり、ひいては相続税申告における評価額だというわけです。
【外部参考サイト】相続税法
他にも見解があります。答えは一緒ですが、売買契約を結んだ時点で評価すべき財産は土地そのものではなくて、未収金(相続開始前においてまだ貰っていない土地代金)とすることから、財産額は売買代金だという見解です。
これは裁判例によるものですが、相続税法第22条による時価とは何か?というアプローチの方が理解頂きやすいのではないかと思います。
いずれにせよ、相続開始時点で売買契約がなされている土地については財産評価基本通達による評価ではなく、売買金額により評価することとなります。
この事例では、相続開始2日前に契約を解除しています。にもかかわらず、売買金額での評価を指摘された上、重加算税までも課されたとのことです。
国税当局はこの契約解除こそ仮装隠蔽だと判断したのだと考えられます。いよいよ死期が迫り、このままでは売買金額での評価を強いられることを相続関係者は知っていて、評価額の低い基本通達による評価を行うために相続開始直前になって契約を解除したのでしょう。
金額などは不明ですが被相続人の死後数ヶ月でちゃっかり売却しています。国税当局はこれら一連の流れが評価額を低くするための悪質な行為と判断し、契約解除は形だけのものなので評価額は売買金額としたうえで重加算税も課したのだと思われます。
以上、あるニュースを題材に見てきましたが、相続開始時点で売却が決まっている土地については売買金額が評価額となります。
基本通達による路線価評価より高くなることが予想され、税務調査で修正となれば金額も多額となります。
土地の売買については税務当局も把握しています。あまりないケースではありますが、相続の際には対象不動産に売買契約中のものがないか念のため確認するようにしましょう。
「不動産の評価方法」連載一覧
【PR】税理士が電話で無料相談に乗ります!