相続した土地・建物を売却した際の確定申告

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土地 売却

 相続により土地や建物を譲り受けても、住む予定がなく、賃貸などで活用する予定もない場合には売却するのも方法の1つです。
売却して手放すことで、固定資産税や維持費の負担から解放され、更に不動産を現金化することで他の相続人への代償金や納税資金の用意ができます。

ただし不動産を売却した年には、譲渡所得の確定申告が必要になる場合がありますので注意しましょう。

1.譲渡所得とは

土地や建物を売却した場合に、購入したときの金額よりも売却したときの金額の方が大きかった場合には、その売却益は譲渡所得となり、所得税と住民税がかかります

簡単な具体例としては、8,000万円で購入した土地が1億円で売れた場合の譲渡所得は2,000万円ということになり、この2千万円に対して所得税と住民税が計算されます。

バブルでもないのにそんな利益が出ることなんてないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、例えば、取得したのは何十年も前である古い実家で、購入金額は今の相場よりもかなり低いのにもかかわらず、土地の再開発などによって立地が良くなってしまったために高く売れた場合などが考えられます。

1-1.長期譲渡所得と短期譲渡所得

譲渡所得はその不動産の所有期間に応じて、長期譲渡所得短期譲渡所得に分けられ、税率が異なります。
長期譲渡所得とは、その不動産の所有者になってから売却した年の1月1日までの所有期間が5年を超える場合をいい、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。 売却した時点ではなく、売却した年の1月1日という点に要注意です。

なお、相続した不動産の場合には、被相続人が所有者になった日からを所有期間として考えます。相続人が相続により取得した日からではありません。

【譲渡所得の税率】
区分所得税率住民税率
長期譲渡所得15%5%
短期譲渡所得30%9%

※確定申告の際には、所得税と併せて復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)も申告納付する必要がありますので注意しましょう。

税率を見ていただくと分かるように、所有期間が5年を超えるか否かで税率が大きく変わります。 譲渡所得2,000万円の場合の納税額を比較してみましょう。

  • 長期譲渡所得
    2,000万円×20%(15%+5%)=400万円
  • 短期譲渡所得
    2,000万円×39%(30%+9%)=780万円

長期譲渡所得では400万円であるのに対して、短期譲渡所得になると780万円と倍近い税額に跳ね上がります。
譲渡所得が大きく出る可能性がある場合には、所有期間が5年を超えるのを待って売却するのも節税方法の1つです。

2.譲渡所得の計算方法

それでは譲渡所得の詳しい計算方法を見ていきましょう。

2-1.計算式

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額= 課税譲渡所得金額

2-1-1.譲渡価額

不動産の売却のことを「譲渡」といいます。 よって譲渡価格とは、売却価格(売た金額)のことです。

2-1-2.取得費

その土地や建物の購入価格、建物の建築費用、リフォームにかかった費用などを合計したものです。
ただし建物の場合には、購入価格から減価償却費相当額を差し引く必要がありますので注意しましょう。

減価償却とは、時の経過によって価値が下がることをいいます。 土地は老朽化していくものではなく、その価値は一定ですが建物は違います。
よって、価値が下がったものがそれなりの金額で売れたのだから、それは売却益として考えるべきであり、建物については価値が下がった状態で譲渡所得を計算します。

2-1-3.譲渡費用

土地や建物を売却するためにかかった費用のすべてです。例えば次のような支払いをいいます。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 印紙代
  • 測量費
  • 建物の取り壊し費用

2-1-4.特別控除額

土地や建物を売却した場合には、次のような特別控除があります。

譲渡(売却)の内容特別控除額
収用等による譲渡5,000万円
マイホームを譲渡(※次で詳しく解説します)3,000万円
特定土地区画整理事業等のための土地譲渡2,000万円
特定住宅地造成事業などのための土地譲渡1,500万円
平成21年及び平成22年に取得した土地等の譲渡1,000万円
農地保有の合理化等のための農地等の譲渡800万円

2-2.取得費が分からない場合

親や祖父母が何十年も前に購入した不動産や、先祖代々受け継がれてきた土地を売却する場合などには、購入金額が不明確である場合が多くなります。
このような場合には、取得費0として計算して、多額の税金を納めるしかないのでしょうか。

大丈夫です。このような取得費が分からない場合に備えて、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算する方法があります。例えば、譲渡価額が5,000万円の場合の取得費は250万円となります。

なお、この方法は実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合にも使うことができますので、取得費が明確、不明確は問わず、一旦5%分の金額を計算してみて、有利な方を選択するようにしましょう。

2-3.マイホームを売却した場合の特例

2-3-1.3,000万円の特別控除

売却した不動産がマイホームである場合には、譲渡所得を計算するうえで3,000万円の特別控除を受けることができますので、譲渡所得が3,000万円以下であれば所得税・住民税はかからないということになります。

この特例は基本的にその住宅に住んでいることが条件となりますが、2019年12月31日までは、相続して住んでいない実家についても適用できます。
ただし、細かい適用要件をクリアする必要がありますので、詳しくは税理士や税務署に確認しましょう。

2-3-2.所有期間10年超は軽減税率

長期譲渡所得と短期譲渡所得を判断する際と同様に、売却した年の1月1日におけるマイホームの所有期間が10年を超えている場合には、3,000万円の特別控除を差し引いた後に乗じる税率は、次の軽減税率となります。

課税所得金額所得税率住民税率
6,000万円までの部分10%4%
6,000万円を超える部分15%5%

3.相続税申告期限から3年以内の売却で節税できる

売却する不動産が相続により取得したものである場合において、次の要件に該当するときには、譲渡価格から差し引ける金額に、その不動産にかかった相続税を含めることができます。

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用+かかった相続税額のうち、その不動産に対応する部分の金額)- 特別控除額= 課税譲渡所得金額

【適用要件】

  • 相続または遺贈により財産を取得した人による売却であること
  • 相続財産を売却する人に相続税が課されていること
  • その相続税の申告期限から3年以内(相続開始の日からは3年10ヶ月以内)に売却していること

4.確定申告書の書き方

譲渡所得は、事業所得や給与所得などの総合課税とは分けて税額を計算する分離課税となっています。
計算自体は区分して行いますが、確定申告手続き自体は他の所得と同時に行います。

4-1.申告書に記載する箇所

土地や建物を売却した場合の譲渡所得の申告には、通常の申告書である第1表、第2表に加えて第3表(分離課税用)を使用します。

あわせて、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)を作成します。

内訳書の書き方やその他の添付書類は、売却や特例の適用状況によりそれぞれ異なります。 詳しくはこちらをご覧ください。
【参考サイト】平成29年分譲渡所得の申告のしかた(記載例)|国税庁 

様式はこちらより入手できます。
【参考サイト】申告書添付書類一覧(所得税及び復興特別所得税(譲渡所得・山林所得関係)申告書添付書類)|国税庁 

4-2.住民税の申告はどうする?

住民税については、所得税の申告をすれば自動的にそのデータが地方自治体へ送られるようにシステム化されていますので、わざわざ住民税の確定申告を別に行う必要はありません。
また税額や納税については、自分で税額を計算して申告する申告納税方式の所得税とは異なり、地方自治体が納めるべき金額を計算し納税者に通知する賦課課税方式となっています。

よって住民税に関して納税者がすべきことは、納税通知書と納付書が届くのを待って、期限までに納税することだけです。

1つ注意が必要なのは、所得税と住民税の納税時期に数カ月のズレがある点です。
所得税は、不動産を売却した年の翌年3月15日まで(振替納税の場合には4月20日頃)に支払いますが、住民税は6月からとなっています。

所得税の申告納税が終わり、全て終わったと思って安心していると、6月の住民税で驚くことになってしまいます。納税計画はきちんと立てておきましょう。

まとめ

相続した不動産を売却すると特例の適用もあり、多くの場合でそこまで大きな税負担にはならないことが分かります。
しかし、いかなる場合でも売却が有利であるとは限りません。相続発生前に売却したり、保有し続ける方が良い場合もあります。

不動産業者に相談すると売却を勧められる場合が多くなりますので、迷う場合には税理士に相談するようにしましょう。

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