個人年金と相続税・贈与税といった税金との関係を徹底解説!

公的年金だけでは老後生活に不安がある昨今、個人年金に注目が集まっています。

しかし、加入するにしても、被保険者や契約者が亡くなったらどのような税金が課されるのかを知っておく必要があります。

そこで今回は、将来のために備える個人年金と、将来必ず発生する相続の関係を徹底解説します。 これを読んで個人年金と税金の関係を知り、個人年金への加入を計画的に行えるようにしましょう。

1.個人年金とは?

税金の話に入る前に、まずは個人年金について簡単に解説します。

1-1.個人年金って何?

個人年金とは、公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)とは別に、個人的に生命保険会社などと契約する私的な年金保険のことをいいます。

公的年金だけでは老後生活の資金には足らないと考える場合には、個人年金に加入しておくと安心です。 年金ですが生命保険の一種であり、所得税では生命保険料控除の対象となります。

1-2.個人年金の種類

ひと言に個人年金といっても種類があり、大きく分けて次のようになります。

終身年金

終身年金は、被保険者(保険の対象者)が死亡するまで年金を受け取り続けることができる年金です。
一生涯保証されるので老後の生活設計は立てやすく、長生きした場合にはお得です。ただし、早くに死亡してしまった場合には元本割れになる可能性もあります。

保証期間付き終身年金

早くに死亡してしまった場合の元本割れリスクを補えるのが、この保証期間付きの終身保険です。
保証期間中に被保険者が死亡した場合には、残りの保証期間分に対応する金額が、年金または一時金として遺族に支払われます。

確定年金

確定年金は、契約時に決めた期間までは、被保険者の生死にかかわらず年金を受け取ることができます。
早くに死亡することによる元本割れはありませんが、長生きした場合には途中で年金支給が止まる可能性があるので、一生涯保証される年金ではありません。

有期年金

有期年金は、契約時に決めた期間まで年金を受け取ることができますが、被保険者がその期間内に死亡した場合には、年金支給も止まります。

終身年金が死亡するまでに限って受け取れるのに対して、有期年金はその期限も決まっています。 よって終身年金と同じように、期限が到来する前に死亡してしまうと元本割れの可能性があります。

保証期間付き有期年金

保証期間付き終身保険と同様の考え方の保険です。
有期年金に保証期間を付けることで、保証期間中に被保険者が死亡した場合には、残りの保証期間分に対応する金額が、年金または一時金として遺族に支払われます。

2.個人年金にかかる税金をパターン別に解説

個人年金を契約中の状態で、契約者、被保険者、受取人のいずれかが死亡した場合の課税関係をパターン別に解説します。

2-1.年金受給前に被保険者が死亡した場合の死亡給付金

年金の支給が開始する前に被保険者が死亡した場合には、支払われる死亡給付金の課税関係は次のようになります。

契約者(保険料負担者)=被保険者|相続税

契約者(保険料負担者)=被保険者の場合には、死亡給付金は死亡保険金と同じ扱いで相続財産となり、相続税が課されます。

なお、死亡給付金は解約返戻金相当額が支払われます。 この場合には、あとに解説する死亡保険金の非課税枠は適用可能です。

契約者=死亡給付金受取人|所得税・住民税

契約者=死亡給付金受取人の場合には、自分が支払ってきた保険料に対する給付を自分が受けるので、受取人に所得税と住民税が課されます。

契約者、被保険者、死亡給付金受取人がいずれも異なる|贈与税

契約者、被保険者、死亡給付金受取人のいずれもが異なる場合には、他人が支払った保険料に対する給付を受けることになるので贈与があったものとされ、贈与税が課されます

以上をまとめて例示すると以下の通りとなります。

契約者
(保険料負担者)
被保険者死亡給付金受取人課される税金
相続税
所得税・住民税
贈与税

2-2.年金受給中に被保険者が死亡した場合の年金受給権

まず前提として、「終身年金」や「有期年金」は被保険者が死亡した時点で年金の受給が止まるため、受給中の死亡についての課税は発生しません。

「保証期間付き終身年金」、「確定年金」、「保証期間付き有期年金」については、被保険者死亡後も残存期間分の年金が継続受取人に支払われることになり、年金受給権は相続財産として相続税が課されます。

年金受給権とは、将来年金を受け取ることができる権利のことです。

具体的なパターンは次のようになります。

契約者=年金受取人|相続税

契約者=年金受取人の場合には、年金を受給する権利を相続により引き継いだことになり、年金受給権に対して相続税が課されます。

契約者が年金受取人、継続受取人以外|贈与税

契約者が年金受取人、継続受取人以外である場合には、年金を受給する権利を他人から貰ったこと(贈与)になり、年金受給権に対して贈与税が課されます。

契約者=継続受取人|課税なし

契約者=継続受取人の場合には、保険料を負担した人と年金を受け取る人が同一であるため、課税はありません。

以上をまとめて例示すると以下の通りとなります。

契約者
(保険料負担者)
年金受取人継続受取人課される税金
相続税
贈与税
課税なし

2-3.継続受取人が受け取る年金|所得税・住民税

継続受取人が受け取る年金とは、年金を受け取っている最中の人が、年金受給期間を残して死亡してしまった場合に、継続受取人が代わりに受け取ることになる年金のことです。

年金受給権との明確な違いは、将来受け取る年金であるか、すぐに受け取れる年金であるかという点です。

継続受取人が被保険者死亡後に受け取る年金については、通常の年金と同様に雑所得として所得税・住民税が課されます。

2-4.契約者と被保険者が異なる場合に、契約者が死亡|相続税

契約者と被保険者が契約上同一人物ではなく、契約者が死亡した場合には、被保険者が死亡したわけではないため保険契約は継続します。

よって契約者の相続においては、解約返戻金相当額が相続財産となり、契約を引き継いだ人に相続税が課されます。

契約者
(保険料負担者)
被保険者継続受取人課される税金
相続税

2-5.受給権が発生する前に解約した場合

受給権が発生する前に個人年金契約を解約した場合の課税関係は、解約返戻金を誰が受け取ったかにより異なります。

解約返戻金を契約者が受け取った場合|所得税・住民税

自分が納めてきた保険料に対する解約返戻金なので、一時所得の対象となり所得税と住民税が課されます。

解約返戻金を契約者以外が受け取った場合|贈与税

他人が納めてきた保険料の解約返戻金なので、贈与となり贈与税が課されます。

3.年金受給権の財産評価

次のいずれか大きい金額が年金受給権の評価額となります。

  1. 解約返戻金の額
  2. 一時金相当額(年金に代えて一時金の給付が可能な場合)
  3. 予定利率等をもとに算出した金額

予定利率とは、その保険契約の運用利回りのことをいいます。契約先の保険会社に確認しましょう。 この計算はもう専門知識のない人が誤りなく行うことは不可能に近いです。税理士に依頼しましょう。

【参考サイト】【第24条((定期金に関する評価))関係】|国税庁 

4.注意点

4-1.年金受給権に死亡保険金の非課税枠は使えない

生命保険契約の死亡保険金には非課税枠が設けられており、次の金額までは相続税がかからないようになっています。

500万円 × 法定相続人の数

ただし、年金受給権についてはみなし相続財産ではないため、この非課税枠の対象外となる点に注意しましょう。 年金受給開始前に死亡したことによる死亡給付金については、死亡保険金と同じ扱いとなるため適用対象です。

4-2.年金受給権は現金として手元にはない

年金受給権は相続財産に入ってはきますが、あくまでも、将来年金を受給する権利であり現金を貰ったわけではありません。
算出された相続税額に対して、納税資金が足らないという事態もあり得ることを知っておけば、前もって対策することができます。

4-3.企業年金の取り扱い

同じ私的年金でも、企業年金はどのように取り扱うのでしょうか。 企業年金は企業によりそれぞれ異なりますが、一般的には被相続人の死亡を原因として支給される遺族一時金や遺族年金は退職手当金等として取り扱われ、相続税が課されます。

退職手当金等には死亡保険金と同様に非課税枠(500万円×法定相続人の数)が設けられているので、そこまで大きな相続税負担とはならない場合がほとんどです。

まとめ

個人年金はその契約内容によって、課される税金が異なります。 また年金金受給権は、死亡保険金にはある非課税枠が利用できない点には注意しましょう。
個人年金の課税関係や財産評価は複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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