借入金を利用して相続税対策をする

相続税 借入金

「借金をすれば相続税が減らせるって聞いたけど、本当なの?」と考えている方も多いと思います。

借入金による相続税対策については、お金を借りること自体が節税対策になるわけではなくて、この借入金を有効に活用することによって相続税が節税できます。

その借入金による節税方法について解説します。

1.借入金だけでは相続税対策にはならない

相続財産は、プラス財産とマイナス財産(負債)との相殺金額になります。

そのため、「借金をすれば負債が増えるので相続財産が減り、その結果、相続税が少なくなる」、と考えている方がいらっしゃると思います。

しかし、借金をするだけでは、相続税の節税効果はありません

例えば、1,000万円借金する場合、負債が1,000万円増えますので、相続財産は1,000万円減るように見えます。しかし、同時に借りた現金1,000万円が手元に残って相続財産が増えてしまいますので、結果的には、相続財産はプラスマイナスゼロとなります。

しかも、借金をすると利息がかかりますので、実質的には、利息分だけ損をしていることになります。

2.借入金を利用した有効な相続税対策とは

上記で見ましたように、借金をするだけでは、相続税の節税効果はありません。それでは、どのようにすれば、借入金を利用して有効な相続税対策ができるのでしょうか?

借入金を利用した有効な相続税対策とは、次のような方法です。

  • 借入金で評価額が低くなる財産を購入する
  • 借入金で相続財産の非課税枠を活用する対策を行う

これらの方法について、これより見ていきます。

2-1.不動産を利用した相続税対策

「借入金で評価額が低くなる財産を購入する」方法の代表的なものが、不動産の購入です。

この方法は、不動産の購入価格(時価)と相続税評価額との差額に着目した対策です。「マイホーム用不動産」と「賃貸経営用不動産」の2つのケースについて説明します。

マイホーム用不動産の購入

土地の相続税評価額は実際の時価(実勢価格)の80%程度、建物の相続税評価額は固定資産税評価額で、建設費の50~70%程度(以下60%を使用して例示)と言われています。

以下、具体例で見ていきます。

借入金8,000万円で、3,000万円の土地に5,000万円の建物を建てた場合、相続税率を30%としたときの計算は、以下の通りです。

土地の相続税評価額3,000万円×80%=2,400万円
建物の相続税評価額5,000万円×60%=3,000万円
相続税評価額 合計2,400万円+3,000万円=5,400万円

借入金8,000万円−5400万円=2,600万円

2,600万円×相続税率30%(※)=780万円

※相続税率は10~55%であり、仮に、相続税率:30%(以下、同様)を使用する

上記の例ですと、780万円の節税になります

さらに、「小規模宅地等の特例」を活用すれば、さらに節税することができます。

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アパートの賃貸経営用不動産の購入

①土地の評価額

同じ広さの土地でも、その土地がマイホーム用なのか、アパート賃貸経営用なのかによって、相続税評価額は大幅に違ってきます。アパートを建てて賃貸経営を行えば、その土地は「貸家建付地」となり、さらに相続税評価額を下げることができます。

貸家建付地の評価額
=マイホーム用土地の評価額×{1-(借地権割合)×(※借家権割合)×(賃貸割合)}

※…借家権割合は、全国一律で30%です。

借地権割合と借家権割合は、不動産を賃貸することによる価値の減価です。

②建物の評価

建物(アパート)の評価も、マイホーム用に比べて相続税評価額は大幅に違ってきます。アパートの場合は、さらに相続税評価額を下げることができます。

アパートの評価額=固定資産税評価額×{1-(借家権割合)×(賃貸割合)}

賃貸割合が100%の場合、アパートの相続税評価額は、固定資産税評価額の70%となりま

借入金での相続税対策の具体例

借入金8,000万円で3,000万円の土地に5,000万円のアパートを建てて、満室の場合、次のようになります。今回は、借地権割合は70%であると仮定します。

アパート土地の評価額は、

マイホーム用土地の評価額×{1-(借地権割合)×(借家権割合)×(賃貸割合)}

=(3,000万円×80%)×(1-70%×30%×100%)

=2,400万円×79%

1,896万円

アパート建物の相続税評価額は、

アパートの評価額=固定資産税評価額×{1-(借家権割合)×(賃貸割合)}

=3,000万円×(1−30%)

2,100万円

これらをまとめると、

アパート土地の評価額アパート建物の相続税評価額相続税評価額合計
1,896万円2,100万円4,004万円

借入金8,000万円ですので、相続税評価額は4,004万円削減されます

仮に、相続税率が30%の場合、約1,200万円節税になります

2-2.死亡保険を使用した相続税対策

「②借入金で相続財産の非課税枠を活用する対策を行う」方法の代表的なものが、亡保険を使用した相続税対策です

死亡保険金は「みなし相続財産」と言い、相続財産に加算されて相続税が算出されます。

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この死亡保険金には非課税枠が設けられています。この非課税枠を利用することにより、相続税を節税することができます。

非課税枠

非課税枠=500万円×法定相続人の数

死亡保険金から非課税枠が控除され、控除後の金額が相続税対象となります。

この非課税枠まで控除されますので、相続税節税の観点では、非課税枠と同等の生命保険金を受取るようにするのが効果的です。それ以上いくら生命保険金が大きくても、節税効果は変わりません。

非課税枠を利用した相続税対策

死亡保険金を受取る時は、「相続税が課される場合」、「所得税/住民税が課される場合」、および「贈与税が課される場合」があります。

次の表をご覧ください。

 被保険者保険料負担者保険金受取人税金種類相続税種類相続税非課税枠
被相続人A被相続人A相続人相続税みなし相続財産あり
被相続人A被相続人A相続人以外相続税みなし相続財産なし
被相続人A被相続人以外B被相続人以外B所得税/住民税
被相続人A被相続人以外B被相続人以外C贈与税

この中で、みなし相続財産となり、相続税非課税枠が適用されるのが、

①保険料負担者が被相続人A、かつ、保険金受取人が相続人のケースです。

②保険料負担者が被相続人Aでも、保険金受取人が相続人以外のケースは、みなし相続財産となりますが、相続税非課税枠は適用できませんので、注意が必要です。

以上より、みなし相続財産として、生命保険金の非課税枠を利用するためには、

  • 保険料負担者:被相続人
  • 保険人受取人:相続人

である必要があります。

非課税枠を利用した相続税対策の具体例

死亡保険金から非課税枠が控除され、控除後の金額が相続税対象となります。

次のケースをもとに、節税効果を見てみます。
法定相続人の数が3人、借入金2,000万円で、死亡保険金2,000万円の保険に加入する場合、

非課税枠=500万円×法定相続人の数=500×3=1,500万円

相続税加算額=2,000万円-1,500万円=500万円

一方、借入金で保険に入り、死亡保険金の非課税枠を活用する場合は、借入金2,000万円で死亡保険金2,000万円もらえますが、相続税対象財産は保険金2,000万円ではなく、非課税枠1500万円控除後の500万円となります。

結果的には、相続税対象財産が1,500万円削減されたことになります

相続税の税率は10%~55%ですので、仮に相続税率を30%と仮定すると、

1500万円×30%=450万円

となり、生命保険金の非課税枠を活用することにより、450万円の相続税節税になります。

3.注意事項

3-1.アパート賃貸経営

相続税の節税対策としては、借入金でアパート賃貸経営を行う事は、とても大きな節税効果があります。一方で、賃貸物件には空きが生ずることもありますし、最悪の場合は、ローンの返済に行き詰まることも考えられます

アパート賃貸経営を始める場合は、相続税節税対策という事に加えて、30年~40年も続くアパート賃貸経営ビジネスを始めるという観点での検討を行い、総合的に判断しないといけません。

3-2.土地・建物の資産価値

土地の価値は、更地の場合が資産価値が一番高いです。

土地の上にアパートを建てることにより、借地権割合/借家権割合に応じて資産価値が下がります。その土地・建物の資産価値が下がったために、結果的にその不動産の相続税評価が下がり、相続税の節税になるわけです。

アパート経営は相続税節税対策としては非常に効果がありますが、皆さんの資産を減らさないという観点でも、中長期的な視点での十分な検討が必要です。

3-3.借金をすること自体にリスクがある

アパート賃貸経営のために、あるいは、死亡保険金の非課税枠活用のために借金をする場合、借金をすること自体にリスクがあることも考える必要があります。

借りたお金は、利子をつけて返さないといけません。その返済計画も、きちんと考えておく必要があります。

4.まとめ

今回は借入金による相続税対策について見てきました。

お金を借りただけでは節税対策にはならず、

  • 借入金で評価額が低くなる財産を購入する
  • 借入金で相続財産の非課税枠を活用する対策を行う

などの場合に、節税対策となります。

最後に、このような相続税節税の対策については、今回の「借入金を利用した相続税対策」以外にも数々の対策が考えられ、早く検討を始めれば早いほど、取れる節税対策の範囲が広がります。

まずは、相続税の経験豊富な税理士に相談することをお勧めします。

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監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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