タンス預金の平均額はいくら?自宅に現金はいくらくらい必要?

銀行に預けていても利息はあまり付かず、そのうえ、ATMを利用するたびに手数料をとられてしまう。「いっそタンス預金にしたほうがいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、今回は、タンス預金の平均額や、自宅に現金はいくらくらい必要なのかについて取り上げてみたいと思います。

1.タンス預金の平均額は?

家計に占める現金の額は、年々増えています。2021年の12月末時点での家計の現金保有額は107兆円でした。昨今のインフレを考慮したとしても、タンス預金の平均額は増大していると推測されます

残念ながらタンス預金の平均額を正確に把握するのは難しいと言えます。

しかし、この107兆円を令和2年の日本の世帯数5,583 万戸で割ると、1世帯当たりおよそ192万円となります。仮にこのうち半分をタンス預金だとすると、1世帯につき平均額は約96万円となります。

事実、第一生命経済研究所の試算によると、2017年2月末時点のタンス預金の額について、43.2兆円という数字も存在します。この数字を2017年時の世帯数5,042.5万で平均すると、約85万円となります。

【出典】「現金と消費~巨大化するタンス預金の理由」|第一生命経済研究所

もっとも、上記の第一生命経済研究所の分析にも書かれている通り、これほどの額のタンス預金を保有するご家庭はそれほど多くはないでしょう。

事実、2022年における貯蓄額の割合を見ると、貯蓄額300万円以下の層が過半数となっており、この人たちにこれだけの額のタンス預金をする余裕はないと思われます。

【出典】「あなたの貯金はいくら?過半数が「300万円以下」と回答 “節約=禁欲”じゃない?貯蓄術を専門家が伝授」|テレ東プラス

世帯収入や財産は、それぞれ異なります。盗難や災害といったリスクを避けるために、現金はできるだけ家には置かない主義の方もいるでしょう。

したがって、現実的には、一定の富裕層が巨額のタンス預金を持っていると推定されます。

2.自宅にタンス預金はいくらくらい必要?

では、次に自宅に現金がいくらくらい必要なのかを考えてみることにしましょう。

2-1.世帯別の平均支出月額

総務省の2020年の国勢調査の結果によると、日本の1世帯当たりの人数は、2.21 人となっています。そこで、2021年の総務省による「家計調査(家計収支編)調査結果」から、1月あたりの2人世帯と3人世帯の一般的な支出額を見てみましょう。

2人世帯の平均支出月額

食費66,327円
住居設備修繕・維持費11,573円
水道光熱費19,168円
家具・家事用品代11,048円
被服・履物代6,539円
保険医療費14,924円
交通・通信費34,529円
教育費507円
娯楽費21,481円
その他の支出54,099円
合計240,195円

【出典】「家計調査(家計収支編)調査結果」|総務省

2人世帯家族の平均的な1ヶ月の支出額(家賃・地代を除く)は、240,195円であることが分かります。ちなみに、家賃・地代としては、月額平均7,948円が支出されています。1ヶ月25万円程度のタンス預金があれば、2人世帯の家族が暮らせることになります。

3人世帯の平均支出月額

食費77,578円
住居設備修繕・維持費8,990円
水道光熱費22,503円
家具・家事用品代11,974円
被服・履物代8,800円
保険医療費14,635円
交通・通信費41,110円
教育費11,403円
娯楽費24,346円
その他の支出53,413円
合計274,752円

【出典】「家計調査(家計収支編)調査結果」|総務省

3人世帯家族の平均的な1ヶ月の支出額(家賃・地代を除く)は、274,752円であることが分かります。ちなみに、家賃・地代としては、月額平均10,003円が支出されています。1ヶ月30万円程度のタンス預金があれば、3人世帯の家族が暮らせることになります。

2-2.長期間無収入が継続する場合

病気や失業などの理由で、長期間無収入になるリスクは誰でも負っています。そんな時にタンス預金があると心強い限りです。

会社員が、病気や怪我で働けず会社から十分な給与が支払われず収入減となった場合には、傷病手当金の給付があります。傷病手当金は、給与の2/3ほどの金額です。

しかし、この傷病手当金の支給までには、申請から1ヶ月~2ヶ月程度の時間がかかります。

また、会社が失業保険に加入していれば、リストラなどで失業しても、失業手当を受けることができます。ただしこの場合も、給付までには、会社都合・正当な理由のある自己都合で退社した場合には、7日間の待機期間経過後、1ヶ月自己都合・懲戒による退社の場合には、同じく7日間の待機期間経過後、2ヶ月が必要となります。

以上のことから、少なくとも、1ヶ月~2ヶ月の生活費が必要です。

2-3.災害が発生した場合

地震や台風といった災害については、最避難を余儀なくされてしまうこともあります。

一般的に避難所で生活をするのは数日間ですが、近年の豪雨災害や大地震では、避難生活が数か月に及ぶこともあり得ます。

少なくとも1月程度の生活費が手元にあると安心かもしれません。

2-4.一家の稼ぎ頭に万一のことがあった場合

上記では、保険医療費は、平均支出に計上されていますが、一家の稼ぎ頭が亡くなってしまった場合には、支出が増えてしまいます。葬儀費用や僧侶へのお布施、お墓がなければ、永代使用料を払いお墓の使用権を取得し、墓石を買って建てなければなりません。

以下のサイトによると、お墓を建てるための主な費用の全国平均額は次の通りです。

永代使用料67.73万円
墓石価格133.83万円
合計額201.56万円

実際には、その他に墓地や霊園に支払う管理費用などが発生し、法事などを行うとその都度費用がかかることになります。

しかし、この金額をタンス預金として現金を保有しておくかべきかどうかは、議論の分かれるところでしょう。

【出典】「お墓の価格相場全国一覧 – 墓石、永代使用料、諸費用、墓地タイプ別にかかる費用目安」|いいお墓

3.タンス預金はいくらくらいが適当?

離婚に備えてタンス預金がどうしても必要といった切羽詰まった方はいらっしゃるかもしれません。

そういった事情を抱えているケースを除けば、現金を家庭に置いておく必要はあまりないようです。万一、災害で被災したとしても、日本銀行が被災地の金融機関に対して「災害時における金融上の特別措置」を要請し、通帳・印鑑がなくても柔軟な対応が可能になります。

緊急時の対応として自宅に現金を置いておくにしても、数十万円あれば足りるのではないでしょうか。この機会に、タンス預金をいかに活用すべきか検討してみるのもいいのではないでしょうか。

4.タンス預金はタンスではなく金庫に!

「タンス預金」だからといって、本当にタンスにしまっていると、盗難や火災での焼失のリスクが大きくなります。

床下に隠したり、庭の地中に埋める方もいらっしゃるようですが、これでは使い勝手が悪くなります。

一般的には、金庫に保管するのが良いでしょう。金庫にもいろいろな種類がありますので、サイズや耐火時間を考慮しながら、ご自分で最も使いやすいものを選ぶと良いでしょう。

監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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