タンス預金で住宅を購入しても大丈夫?
タンス預金をしている人は、かなり多いと思いますが、そのタンス預金で住宅を購入しても大丈夫なのでしょうか?
目次
1.タンス預金で住宅購入しても大丈夫?
タンス預金をすることも、タンス預金で住宅を購入することも、特に税法上問題になることはありません。
銀行からの借入借金をタンス預金にしても、借手の自由であり、問題ありません。もっとも、借りたお金をタンスにしまう方はいないでしょうが。当然、自己資金をタンス預金しても、税法上問題になることはありません
住宅購入のための手付金の支払いは、金銭の授受と契約を同時に行うために振込みではなく現金が要求されることが多く、何百万円、何千万円単位の現金を持ち込み契約することになります。したがって、この手付金に、タンス預金を使っても問題ないことになります。
しかし、問題は、そのタンス預金を、どのように作ったのかです。
1-1.タンス預金が税法上問題になりうるケース
贈与税がかかる場合
税法上問題になるのは、まず、贈与された金銭をタンス預金にしたケースです。年間110万円をこえる贈与をもらい、贈与税の申告をしていななければ、ペナルティしての税金が課されてしまいます。
所得税がかかる場合
次に、個人事業主が事業での所得をタンス預金にした場合に、確定申告をしていなければ、所得隠しとしてペナルティを課されます。
1-2.タンス預金に贈与税がかかるケース
贈与税には基礎控除があり、年間110万円以下の贈与であれば非課税で申告も不要です。反対に、どんな財産をもらったかに関わらず1年間にもらった金額の合計が基礎控除の110万円を超えていると、贈与税がかかります。
110万円を超える贈与でも、「したことなんてわからないから、申告しなくてもバレないのでは?」と思うかもしれませんが、残念ながらそう簡単にはいきません。
1-3.タンス預金に所得税がかかるケース
アルバイト・パートやサラリーマンなどの給与所得者は、勤め先が年末調整をしてくれるので、確定申告をする必要がありません。ただし、以下の方は、給与所得者であっても勤め先の年末調整とは別に、個人で確定申告が必要です。
- 2か所以上の就業先から一定の収入がある
- 副業で20万円を超える所得があった
- 給与所得が2,000万円を超えている
- 満期保険金や解約返戻金を受け取った
- 不動産の売却益や株式や投資信託の譲渡益が20万円を超えている
など
一方で、フリーランスや個人事業主は、1年間の所得が48万円を超えていれば、ご自分の所得について確定申告をしなければなりません。
こうした方が、確定申告をせずに、所得をタンス預金してしまうと、ペナルティとしての税金が課されることになります。
2.税務署から届く「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」
住宅の購入など不動産の取引をすると、税務署から書類が送付されてくることがあります。
この書類は、どのような仕組みで送付され、税務署はどのようなポイントを知りたいのかを解説します。
2-1.税務署から「お尋ね」が送付される仕組み
住宅などの不動産を購入すると、必ず法務局で不動産登記をします。すると、法務局は、市町村の税務課などに対して、「異動調書(登記済み通知書)」という書類を送付します。その後、法務局から通知書をもらった市区町村の税務課は、税務署に通知します。
税務署は、誰がいつ不動産を購入したか把握しますが、この時点では、お金の出どころまではわかりません。そこで、購入した方に、「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」という質問書類を送付します(下図)。
「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」には、年齢・住所・職業・所得・売主の住所氏名・購入価格・登記費用・仲介手数料などを記入する欄があります。
この書類で重要なのは、支払金額の調達方法という欄です。「預貯金から」「借入金から」「資産の売却代金から」「贈与を受けた資金から」「その他」からというように、資金の調達元を細かく記入するようになっています。
送付されるのは、土地や家を購入したときや、家を建てたとき、比較的規模の大きな増改築をしたときです。こうした不動産に関する行為をすると、その後半年程度で送付されます。
この書類は、不動産に関する行為をすると、必ず送付されるわけではなく、金額が大きいと送付されやすいようです。ちなみに、6,000万円程度の家を購入した方のところには、送付されなかった事例もあるそうです。
2-2.税務署が確認したいポイント
税務署が知りたいのは、所得を隠している事実はないか、親族などから資金の援助を受けている事実はないかです。
所得については、税務署が、年収や年齢、過去の所得税の申告状況と自己資金のバランスをチェックしています。毎年の確定申告で年収300万円の人が、6,000万円の住宅を、借入もなしに現金で購入したら、所得を隠しているのではないかと疑われるわけです。
親族などからの贈与となる資金援助を受けたのであれば、税務署が贈与税の申告がされているかをチェックします。もし申告されていなければ、税務調査をしたうえで、追徴課税となります。
この書類は、返送する義務はありません。しかし、正直に回答して返送したほうが良いでしょう。疑われて、税務調査になるほうがもっと大変です。
3.タンス預金の注意点と対処法
タンス預金自体は問題ないのですが、タンス預金には次の注意点があります。
3-1.一括贈与と疑われてしまう
たとえば、親のタンス預金から、5年間、毎年100万円づつ贈与して、子供のためにタンス預金をしたとします。年間の贈与額は、基礎控除額110万円以下であり、贈与税はかかりません。
しかし、税務署には「500万円を一気に贈与したのでは?」と疑われてしまいます。もし、一括で500万円を贈与したとすれば、親から18歳以上の子供へ贈与した場合に適用される特例税率を当てはめると、48.5万円の贈与税がかかります。追徴課税されれば、延滞税と無申告加算税もかかります。しかし、タンス預金では、基礎控除額以下の贈与をした証拠がありません。税務署の主張が認められてしまう可能性も高くなります。
対処法
こうした場合の対策として、毎年、贈与のたびに、贈与契約書を作成し、贈与者・受贈者が、お互いに署名・捺印して保管しておく方法が考えられます。こうすれば、税務署から指摘されても、毎年少しずつ贈与したことを証明できます。
タンス預金ではなく、銀行口座から振込をすれば、通帳の記録に残ります。
3-2.新札発行でタンス預金が使いづらくなる
2024年には、新紙幣が発行される予定です。現在の1万円札の福沢諭吉は、渋沢栄一に代わります。しかし、タンス預金をしていると旧紙幣のままです。
取引の場所に旧紙幣を大量に持ち込むと、目立ってしまい使いづらくなるかもしれません。もっとも、旧紙幣に利用期限はなく、取引に利用できることに代わりありません。
対処法
もし、旧札が気になるのであれば、日本銀行で新札と手数料を取られることなく、交換してもらうこともできます。
まとめ
タンス預金で住宅を購入すること自体は、まったく問題ありません。
しかし、贈与されたお金をタンス預金している場合には、贈与税がかかる可能性があり、申告していなければペナルティの税金も発生します。
贈与はバレないだろうと考えていらっしゃる方は、以下の記事を、ぜひご一読ください。
贈与税が心配な場合には、贈与税に強い税理士に相談してみましょう。