2022年の路線価|弱まるコロナの影響と都市部・地方との二極化
2022年の路線価が発表になりました。路線価は、相続税や贈与税を課税する際の土地評価の基準となるだけでなく、土地取引…[続きを読む]
2022年7月1日時点の基準地価を9月20日に国土交通省が発表しました。基準地価は、全用途平均と商業地が3年ぶりに、住宅地が31年ぶりに上昇に転じました。
土地を売買するタイミングを見極めるためにも、地価動向のチェックは欠かせません。相続した土地を売却したい方にとっても、地価の動向は気になるところでしょう。
この記事では2022年の地価の状況や今後の展望について考えます。
目次
では、全国、三大都市圏、地方圏に分けて2022年の基準地価の動向を見ていきましょう。
冒頭でも触れた通り、2021年の基準地価は、次の通り全用途平均、住宅地、商業地とも上昇に転じました。住宅地は3つの中でも上昇が低いものの、31年ぶりの上昇です。中でも商業地は、一番の伸びを示しています。
2020年調査 | 2021年調査 | 2022年調査 | |
---|---|---|---|
全用途平均 | ▲0.6 | ▲0.4 | 0.3 |
住宅地 | ▲ 0.7 | ▲0.5 | 0.1 |
商業地 | ▲ 0.3 | ▲0.5 | 0.5 |
三大都市圏では、大阪圏が昨年は、住宅地・商業地とも下落傾向にあったものが、上昇に転じています。
東京圏、名古屋圏では、住宅地・商業地とも堅調に上昇しています。
全用途平均 | 住宅地 | 商業地 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
三大都市圏 | 0.0 | 0.1 | 1.4 | ▲ 0.3 | 0.0 | 1.0 | 0.7 | 0.1 | 1.9 |
東京圏 | 0.1 | 0.2 | 1.5 | ▲ 0.2 | 0.1 | 1.2 | 1.0 | 0.1 | 2.0 |
大阪圏 | 0.0 | ▲ 0.3 | 0.7 | ▲ 0.4 | ▲ 0.3 | 0.4 | 1.2 | ▲ 0.6 | 1.5 |
名古屋圏 | ▲ 0.8 | 0.5 | 1.8 | ▲ 0.7 | 0.3 | 1.6 | ▲ 1.1 | 1.0 | 2.3 |
住宅地・商業地で基準地価が最も高かったのは昨年と同じ箇所ですが、住宅地・商業地とも3大都市圏で1㎡当りの地価は上昇しています。
住宅地 | 商業地 | |||
---|---|---|---|---|
住所 | 価格 | 住所 | 価格 | |
東京圏 | 東京都港区赤坂1丁目1424番1『赤坂1-14-11』 | 504万円/㎡ | 東京都中央区銀座2丁目2番19外(明治屋銀座ビル) | 3,930万円/㎡ |
大阪圏 | 京都市上京区室町通下立売上る勘解由小路町156番 | 66万5,000円/㎡ | 大阪市北区大深町207番外『大深町4-20』(グランフロント大阪 南館) | 2,200万円/㎡ |
名古屋圏 | 名古屋市中区錦1丁目324番1『錦1-3-28』 | 140万円/㎡ | 名古屋市中村区名駅3丁目2701番外『名駅3-28-12』(大名古屋ビルヂング) | 1,880万円/㎡ |
一方で、全国的には、基準地価が上昇傾向を示す中で、地方圏ではマイナスから脱しきれてはいないことが次のチャートからお分かりいただけると思います。
しかし、札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4都市では、住宅地・商業地とも堅調に推移しています。
全用途平均 | 住宅地 | 商業地 | |||||||
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2020年 | 2021年 | 2022年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
地方圏 | ▲ 0.8 | ▲ 0.6 | ▲ 0.2 | ▲ 0.9 | ▲ 0.7 | ▲ 0.2 | ▲ 0.6 | ▲ 0.7 | ▲ 0.1 |
地方4市 | 4.5 | 4.4 | 6.7 | 3.6 | 4.2 | 6.6 | 6.1 | 4.6 | 6.9 |
その他 | ▲ 1.0 | ▲ 0.8 | ▲ 0.4 | ▲ 1.0 | ▲ 0.8 | ▲ 0.5 | ▲ 1.0 | ▲ 1.0 | ▲ 0.5 |
【出典】ここまでの資料はすべて「令和4年都道府県地価調査」(国土交通省)によっています。
2022年の都道府県別の基準地価変動率は以下の表のとおりです。一見して、住宅地も商業地も変動率がマイナスを付けている都道府県が未だに多いことがお分かりいただけるでしょう。
【出典】令和4年都道府県地価調査 第4表
新型コロナの影響から経済活動が正常化することで、住宅地の基準地価は、住宅・店舗等の需要は回復傾向にあり、都市圏を中心に全国の基準地価は、上昇傾向を示しています。
さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、生活スタイルの変化による需要者のニーズの多様化がもたらされたことで、郊外部にも上昇範囲が拡大しています。
また、地方四市の上昇率は拡大しているため、四市の中心部の地価上昇や供給不足で需要が拡大した周辺の市町では、上昇率が高まっています。
全国的には、個人消費の持ち直しの動きがあるため店舗需要は回復傾向にあり、また、堅調なマンション用地の需要やオフィス需要から、全国平均で上昇に転じました。
また、三大都市圏、地方四市で再開発事業が進展する地域では、利便性・繁華性向上への期待感から地価上昇が継続しています。
全国的に経済活動の正常化に伴い基準地価が回復してきた一方で、地方は、未だに回復傾向にあるとは言えません。その原因として、日本全国で出生率が下がる傾向に輪をかけて、都市部への人口の流出が考えられるでしょう。人口減少によって、地方の土地の需要が減少しているのです。
しかし、コロナ禍を経験したことにより、必ずしも都市部にオフィスを構える必要がないことに気付いた企業や個人事業主も多く、基準地価の上昇に貢献しているエリアもあります。
都市圏と地方における基準地価の二極化が今後も進むのか注視する必要があるでしょう。
さらに、昨今の物価上昇を考えると、せっかく持ち直しを見せていた個人消費が冷え込んでしまう可能性も大きく、土地の売買を考える方は、これからも地価の動向には注目していく必要があります。