国税庁が発表する路線価図は、相続税・贈与税で使用する「土地の相続税評価額」を算出するうえで必要不可欠です。ここでは、…[続きを読む]
2022年の路線価|弱まるコロナの影響と都市部・地方との二極化
2022年の路線価が発表になりました。路線価は、相続税や贈与税を課税する際の土地評価の基準となるだけでなく、土地取引の価格にも影響します。
2021年の路線価は、新型コロナウイルス拡大の影響により下落しましたが、2022年の路線価にも、影響しているのでしょうか?
ここでは、2022年の路線価の概要について解説します。
なお、具体的な土地の路線価をお知りになりたい方は、以下の国税庁のHPからご覧いただくことができます。
【参考外部サイト】「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」|国税庁
また、路線価図の見方については、次の記事をご一読ください。
目次
1.2022年までの公示地価の推移
路線価を解説する前に、路線価にも影響する2022年の公示地価について簡単に触れておきます。
公示地価は、「住宅地」、「商業地」、「工業地」と用途別に分類していますが、下の表は、「全用途」の平均の対前年比の推移です。
対前年平均変動率の推移(全用途平均)( 変動率:% )
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|---|
三大都市圏 | 1.5 | 2.0 | 5.4 | △0.7 | 0.7 |
東京圏(※1) | 1.7 | 2.2 | 5.2 | △0.5 | 0.8 |
大阪圏(※2) | 1.1 | 1.6 | 6.9 | △0.7 | 0.2 |
名古屋圏(※3) | 1.4 | 2.1 | 4.1 | △1.1 | 1.2 |
地方圏(※4) | 0.0 | 0.4 | 1.5 | △0.3 | 0.5 |
地方4市(※5) | 4.6 | 5.9 | 11.3 | 2.9 | 5.8 |
地方圏その他(※6) | △0.5 | △0.2 | 0.3 | △0.6 | △0.1 |
全国平均 | 0.7 | 1.2 | 3.1 | △0.5 | 0.6 |
※1 東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町の区域をいう。
※2 大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域をいう。
※3 名古屋圏:中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域をいう。
※4 地方圏:三大都市圏を除く地域をいう。
※5 地方圏(地方四市):札幌市、仙台市、広島市、福岡市の4市。
※6 地方圏(その他):地方圏のうち地方四市を除いた市町村の区域。
※ △はマイナスを表しています。
【出典】「令和4年地価公示」|国土交通省
ご覧いただくとお分かりの通り、2021年の公示地価は、新型コロナウイルス拡大の影響により、地方4市を除き、すべて前年比マイナスとなっています。2021年以前は、5年連続前年比増でしたが、6年ぶりの下降です。
しかし、2022年1月1日時点における全国平均は対前年比プラス0.6%となり、2020年1月1日以来2年ぶりの上昇となりました。
一方で、2022年には3大都市圏で、名古屋圏が最も高い上昇を見せており、さらに、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の4地方市が、より高い上昇を見せています。
しかし、4市を除く地方圏では、2022年にも若干の下降を示しています。
なお、2022年の公示地価について詳しくは、次の記事をご一読ください。
2.2022年の路線価の傾向について
路線価は、国土交通省発表の公示価格の約80%とされており、公示地価と同様の傾向を示すはずです。7月1日に公表された、路線価をより細かく見てみましょう。
2-1.2022年標準宅地の対前年比変動率
以下は、都道府県別にした標準宅地の路線価の対前年比変動率です。
令和4年都道府県別標準宅地の対前年度変動率の平均値
2021年 | 2022年 | 2021年 | 2022年 | ||
---|---|---|---|---|---|
全国 | △0.5 | 0.5 | 三重県 | △1.2 | △0.9 |
北海道 | 1.0 | 4.0 | 滋賀県 | △1.2 | △0.8 |
青森県 | △0.9 | △0.4 | 京都府 | △0.6 | 0.2 |
岩手県 | △0.4 | △0.2 | 大阪府 | △0.9 | 0.1 |
宮城県 | 1.4 | 2.9 | 兵庫県 | △0.8 | △0.2 |
秋田県 | △0.9 | △0.6 | 奈良県 | △1.1 | △0.7 |
山形県 | 0.0 | △0.1 | 和歌山県 | △1.2 | △1.3 |
福島県 | △0.1 | 0.5 | 鳥取県 | △1.3 | △0.7 |
茨城県 | △0.7 | △0.6 | 島根県 | △1.0 | △0.4 |
栃木県 | △1.1 | △0.5 | 岡山県 | △0.4 | 0.3 |
群馬県 | △1.0 | △1.0 | 広島県 | △0.3 | 0.9 |
埼玉県 | △0.6 | 0.4 | 山口県 | △0.1 | 0.1 |
千葉県 | 0.2 | 0.8 | 徳島県 | △1.3 | △0.9 |
東京都 | △1.1 | 1.1 | 香川県 | △1.1 | △0.9 |
神奈川県 | △0.4 | 0.6 | 愛媛県 | △1.4 | △1.1 |
新潟県 | △0.9 | △0.7 | 高知県 | △0.9 | △0.4 |
富山県 | △0.8 | △0.4 | 福岡県 | 1.8 | 3.6 |
石川県 | △1.3 | 0,2 | 佐賀県 | 0.4 | 1.1 |
福井県 | △0.8 | △0.9 | 長崎県 | △0.8 | 0.5 |
山梨県 | △1.1 | △0.8 | 熊本県 | 0.1 | 0.6 |
長野県 | △0.5 | △0.4 | 大分県 | △0.1 | 0.1 |
岐阜県 | △1.4 | △0.9 | 宮崎県 | △0.6 | △0.4 |
静岡県 | △1.6 | △0.7 | 鹿児島県 | △1.1 | △0.6 |
愛知県 | △1.1 | 1.2 | 沖縄県 | 1.6 | 1.6 |
※△はマイナスを表しています。
2021年には、39都道府県でマイナスになっていたた路線価ですが、2022年に入ってもなお、全都道府県の過半数である27の県で下降が続いています。首都圏であっても、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県はマイナスです。
一方、2022年に上昇したのは20県と、2021年の7県から大幅に増加しています。同じ首都圏であっても東京都を中心として千葉県や神奈川、埼玉県といったエリアでは、上昇を示しています。東京都以外の3大都市圏を含む大阪府、愛知県もプラスに転じています。また、公示地価の地方4市を含む愛知県、北海道、宮城県、広島県、福岡県では、広島県を除く3県で、2021年から対前年比上昇傾向にあることがわかります。
新型コロナウイルスの影響は、小さくなっていると言えるでしょう。
2-2.2022年都道府県庁所在地の最高路線価
次に、都道府県庁所在都市の最高路線価を見てみましょう。
令和4年 都道府県庁所在都市の最高路線価
都市名 | 最高路線価の所在地 | 最高路線価 | 対前年変動率 | ||
---|---|---|---|---|---|
令和2年分 (千円) | 令和元年分 (千円) | 令和2年分 (%) | 令和元年分 (%) | ||
札幌 | 中央区北5条西3丁目 札幌停車場線通り | 6,160 | 5,880 | 4.8 | 2.8 |
青森 | 新町1丁目 新町通り | 155 | 155 | 0.1 | △3.1 |
盛岡 | 大通2丁目 大通り | 225 | 230 | △2.2 | △8.0 |
仙台 | 青葉区中央1丁目 青葉通り | 3,390 | 3,300 | 2.7 | 3.8 |
秋田 | 中通2丁目 秋田駅前通り | 125 | 125 | 0.0 | 0.0 |
山形 | 香澄町1丁目 山形駅前大通り | 175 | 170 | 2.9 | 0.0 |
福島 | 栄町 福島駅前通り | 195 | 190 | 2.6 | △2.6 |
水戸 | 宮町1丁目 水戸駅北口ロータリー | 220 | 225 | △2.2 | 0.0 |
宇都宮 | 宮みらい 宇都宮駅東口駅前ロータリー | 310 | 300 | 3.3 | 3.4 |
前橋 | 本町2丁目 本町通り | 130 | 130 | 0.0 | 0.0 |
さいたま | 大宮区桜木町2丁目 大宮駅西口駅前ロータリー | 4,400 | 4,426 | 3.3 | 0.0 |
新潟 | 中央区東大通1丁目 新潟駅前通り | 440 | 440 | 0.0 | △2.2 |
長野 | 大字南長野 長野駅前通り | 280 | 285 | △1.8 | △3.4 |
千葉 | 中央区富士見2丁目 千葉駅前大通り | 1,240 | 1,180 | 5.1 | 3.5 |
東京 | 中央区銀座5丁目 銀座中央通り | 42,240 | 42,720 | △1.1 | △7.0 |
横浜 | 西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り | 16,560 | 16,080 | 3.0 | 3.1 |
甲府 | 丸の内1丁目 甲府駅前通り | 260 | 265 | △1.9 | △3.6 |
富山 | 桜町1丁目 駅前広場通り | 500 | 490 | 2.0 | 0.0 |
金沢 | 堀川新町 金沢駅東広場通り | 890 | 920 | △3.3 | △4.2 |
福井 | 中央1丁目 福井駅西口広場通り | 330 | 330 | 0.0 | 3.1 |
岐阜 | 吉野町5丁目 岐阜停車場線通り | 470 | 470 | 0.0 | 0.0 |
静岡 | 葵区紺屋町 紺屋町名店街呉服町通り | 1,140 | 1,160 | △1.7 | △4.1 |
名古屋 | 中村区名駅1丁目 名駅通り | 12,480 | 12,320 | 1.3 | 1.3 |
津 | 羽所町 津停車場線通り | 190 | 195 | △2.6 | △2.5 |
大津 | 春日町 JR大津駅前通り | 275 | 270 | 1.9 | △1.8 |
京都 | 下京区四条通寺町東入2丁目御旅町 四条通 | 6,730 | 6,530 | 3.1 | △3.0 |
大阪 | 北区角田町 御堂筋 | 18,960 | 19,760 | △4.0 | △8.5 |
神戸 | 中央区三宮町1丁目 三宮センター街 | 4,900 | 5,200 | △5.8 | △9.7 |
奈良 | 東向中町 大宮通り | 690 | 700 | △1.4 | △12.5 |
和歌山 | 友田町5丁目 JR和歌山駅前 | 360 | 360 | 0.0 | 0.0 |
鳥取 | 栄町 若桜街道通り | 100 | 105 | △4.8 | 0.0 |
松江 | 朝日町 駅通り | 140 | 140 | 0.0 | 0.0 |
岡山 | 北区本町 市役所筋 | 1,500 | 1.480 | 1.4 | 0.0 |
広島 | 中区胡町 相生通り | 3,290 | 3.180 | 3.5 | △3.3 |
山口 | 小郡黄金町 山口阿知須宇部線通り | 145 | 145 | 0.0 | 0.0 |
徳島 | 一番町3丁目 徳島駅前広場通り | 295 | 295 | 0.0 | 0.0 |
高松 | 丸亀町 高松丸亀町商店街 | 350 | 360 | △2.8 | 0.0 |
松山 | 大街道2丁目 大街道商店街 | 660 | 660 | 0.0 | 0.0 |
高知 | 帯屋町1丁目 帯屋町商店街 | 210 | 210 | 0.0 | △2.3 |
福岡 | 中央区天神2丁目 渡辺通り | 8,800 | 8,800 | 0.0 | 0.0 |
佐賀 | 駅前中央1丁目 駅前中央通り | 205 | 200 | 2.5 | 2.6 |
長崎 | 浜町 浜市アーケード | 760 | 760 | 0.0 | 0.0 |
熊本 | 中央区手取本町 下通り | 2,060 | 2,100 | △1.9 | △0.9 |
大分 | 末広町1丁目 大分駅北口ロータリー | 530 | 530 | 0.0 | 1.9 |
宮崎 | 橘通西3丁目 橘通り | 230 | 230 | 0.0 | 0.0 |
鹿児島 | 東千石町 天文館電車通り | 900 | 910 | △1.1 | △1.1 |
那覇 | 久茂地3丁目 国際通り | 1,420 | 1,430 | △0.7 | △1.4 |
※△はマイナスを表しています。
チャートで、都市名が赤文字、最高路線価が太字となっているところは、2022年の都道府県庁所在地の路線価トップ10の所在地と路線価になります。
2020年までこのトップ10には、広島市の「中区胡町 相生通り」がランキングされていましたが、2021年からは、その代わりに仙台市「 青葉区中央1丁目青葉通り」がランクインしてきました。
2020年の順位は、統計を始めて以来、連続して東京都中央区銀座5丁目銀座中央通り(鳩居堂前)が1位です。しかし、2022年に入っても、下落傾向が止まっていないことがわかります。
上昇率は、千葉市の「中央区富士見2丁目千葉駅前大通り」が、5.1と最も高くなってはいますが、それでも10桁には及びません。都道府県庁所在都市の最高路線価であっても、16箇所において下降傾向が見て取れ、トップ10のうちでも、東京、大阪、神戸の3都市で対前年比マイナスとなっています。
3.弱まる新型コロナウイルスの影響
2022年の路線価に新型コロナウイルス拡大の影響は、弱まったかもしれません。テレワークの普及によって、都市部周辺の住宅地の価格が上昇するといったいい面もありました。しかし、ウイルスの拡大については、今もって予断を許さない状況にあります。
円安によって来日する観光客に期待したいとことですが、水際対策が多少緩和されたとはいえ、来日が自由になってインバウンドの効果が現れ、路線価に反映されるまでには、まだ時間がかかるでしょう。
路線価がコロナ前の数字に戻るには、長期戦を覚悟しなければならないかもしれません。
4.都市部と地方との路線価の二極化について
2020年に顕著であった都市部と地方との二極化も、改めて気になるところです。2020年の路線価には、都市部と地方では路線価の上昇率に大きな差が現れ、二極化が顕著になっていました。
群馬県、和歌山県、愛媛県といったエリアでは、2022年に入っても、下降傾向が-1.0を上回る状況にあります。公示地価でも見た通り、札幌市、仙台市、広島市、福岡市を除く地方圏では、未だに下降傾向から脱することができずにいます。
都市部と地方の路線価の乖離については、今後も注視する必要がありそうです。