パターンで見る、二世帯住宅で小規模宅地等の特例を受ける条件

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二世帯住宅

最近流行りの二世帯住宅でも「小規模宅地等の特例」を適用可能ですが、一定の条件があります。パターン別に詳しく説明します。

1.二世帯住宅

1-1.二世帯住宅とは?

二世帯住宅とは、親世帯と子世帯が同じ一つの建物に居ながらにして、それぞれ別々の空間で暮らせるように設計された住宅です。
かつては「サザエさん」のように親・子・孫の世代が同じ空間で暮らしていたものですが、生活空間を共有しているため様々な問題がありました。
お互いのプライバシーを守れないのでストレスを感じることも多く、「嫁姑問題」に代表されるような家庭内不和が発生するケースも見られます。

二世帯住宅は、お互いのプライバシーを尊重する構造になっています。
ほとんどの部屋や設備を共有する「完全共有型」から、玄関や浴室、キッチンなどだけを共有してリビングや寝室を別々にする「部分共有型」や、玄関なども別々にして完全に生活空間を分ける「完全分離型」など、様々なタイプがあります。

1-2.二世帯住宅のメリット

二世帯住宅は、複数の世帯が独立して暮らすことができるにも関わらず、土地と家が1つで済むのが大きなメリットです。
各世帯がそれぞれ土地や家を持つと、固定資産税が別々にかかってしまいます。2世帯住宅は固定資産税の節約効果があるのです。

家族が近くにいることもメリットです。二世帯住宅はプライバシーを守ることができますが、いざという時には助け合うこともできます。
固定資産税の減税効果を得られ、プライバシーを守ることができ、いざとなったら家族の絆で助け合えるのが二世帯住宅の3大メリットなのです。

2.小規模宅地等の特例

2-1.小規模宅地等の特例とは?

小規模な宅地を相続する場合に、その宅地の相続税評価額を50~80%減額するのが『小規模宅地等の特例』です。
この特例を受けるためには、主に以下のような条件が必要となります。

  • 面積…200~400㎡
  • 用途…居住or事業目的
  • 被相続人(故人)と相続人の関係…配偶者or親族等
  • 相続人と宅地の関係…同居していたか等
  • 申告期限前に遺産分割が完了…期限後でも期限から3年以内なら適用可

地価の高い都市部であれば、小さな土地でも評価額が上がってしまい、多額の相続税が発生する事があります。
そういった場合でも、この特例が適用できれば330㎡までの土地なら80%の減額が期待できます。相続の際には最優先で利用したい制度です。

【関連】小規模宅地等の特例

住宅地

2-2.二世帯住宅で小規模宅地等の特例を受けるには

冒頭で述べたように、宅地上の建物が二世帯住宅でも小規模宅地等の特例を受けることができます。
この特例は、故人の配偶者が土地を相続する場合には問題なく適用されるのですが、故人の子などの親族が相続する場合は「故人と同居していて、引き続き居住を継続すること」という要件が追加されます。

二世帯住宅で故人(親)と同一の建物に暮らしていれば、この同居義務を満たしていることになり、小規模宅地等の特例による恩恵を受けられます。

2-3.相続税法の改正

平成25年12月31日以前は「親世帯と子世帯の居住部分を建物内部で往来可能な構造」の二世帯住宅のみが小規模宅地等の特例の適用を受けられました。

具体的に説明をすると、二世帯住宅の1階部分に親世帯が居住し、2階部分に子世帯が居住していたとします。このとき、建物内部に1階部分と2階部分に行き来できる通路がある場合にだけ特例を適用できました。つまり、入口が別々で互いに行き来できない完全分離型の住宅では、特例を受けられませんでした。

しかし、相続税法の改正により、平成26年1月1日以降、建物の構造に関する要件が撤廃され、大抵の二世帯住宅において小規模宅地等の特例を受けられるようになりました。

2-4.故人と同居していない相続人でも小規模宅地等の特例を受けられる?

故人の配偶者が宅地を相続する場合、基本的に小規模宅地等の特例を受けられます。
配偶者でない相続人が宅地を相続する場合は、前述のように故人と同居していた事実がなければいけません。

では、同居していなかった相続人は小規模宅地等の特例を絶対に受けられないのでしょうか?
実は、以下の条件を全て満たしていれば、特例の適用を受けられるのです。

  • 故人に配偶者がいない
  • 故人と同居していた相続人がいない
  • その宅地等を相続税の申告期限まで所有している
  • 相続開始前3年以内に、日本国内に自分または配偶者が所有する家屋に居住したことがない(相続開始前3年以内にマイホームを持っていなかった人

特に最後の条件は「家なき子特例」などと言われ、マイホームを持たず賃貸住宅に居住をしている人が小規模宅地等の特例を受けて故人の家に住めるチャンスを得られる規定です。

逆に、故人と同居していた子であっても、相続開始前3年以前に自己または配偶者が所有するマイホームで暮らした経験があれば、小規模宅地等の特例は適用されません。親の介護などでマイホームを引き払って同居をはじめ、3年以内にその親が亡くなったケースでは特例の恩恵を受けられないことになります。

ただし、マイホームを他人に貸している場合は特例の対象となる可能性があります。事例ごとに扱いが異なるので、詳しくは税理士等の専門家に相談してみましょう。

3.区分所有登記の場合の注意点

3-1.区分所有登記とは?

二世帯住宅は基本的に小規模宅地等の特例の適用を受けられますが、「区分所有登記」がされた建物では注意が必要です。
区分所有登記とは、建物が1つでも法律上は2人で登記を行っているような建物です。

例えば親が1階を、子が2階を別々に登記している場合がこれに当たります。
区分所有登記を行うことで、固定資産税や不動産取得税を節税できる場合があります。融資の際にも有利になりやすいので、業者から進められるままに登記をするケースが散見されます。

しかし、小規模宅地等の特例を使う上ではデメリットになります。仮に親が亡くなった場合、親が登記していた部分(上記の例では1階部分)のみしか小規模宅地等の特例を受けられないからです。適用される面積が少ないと節税効果が薄れてしまうので、結果的に損をすることになります。

3-2.区分所有登記をしていたら?

区分所有登記をしていると、親子が二世帯住宅をおおよそ2分割し、各自で所有している状態になります。
区分所有登記を解消すれば、二世帯住宅の全部を1つ建物として扱うことになり、小規模宅地等の特例を受けた時に大きな節税効果が得られます。
区分所有登記の解消には「共有登記」か「合併登記」を行いましょう。

共有登記複数人が1つの建物を共有で登記する方法です。
親子の共有名義で二世帯住宅全体を登記します。
合併登記別の建物として登記された建物を、
1戸の建物として登記し直す方法です。

どちらの方法でも建物全体に小規模宅地等の特例を適用できますが、共有登記も合併登記も素人考えで行うと、建物の一部を贈与したとみなされて贈与税の対象となることがあります。税理士や司法書士などに相談して、無駄に税金を払わないようにしましょう。

4.パターン別、二世帯住宅の特例適用条件

ここからは、代表的な例を具体的に見ていきましょう。
前提として、以下のケースを設定します。

  • 父が被相続人(故人)
  • 土地の所有者は父
  • 相続人は母、長男
  • 各世帯は生計を別にしている
  • 土地と建物はすべて長男が相続

(1)建物内を行き来できる二世帯住宅・区分所有登記なし

適用:OK

建物内にある階段などでお互いの居住スペースを行き来できるタイプで、一見すると単なる同居に近いケースです。
区分所有登記がされていなければ、父親死亡後に長男が相続する際、問題なく小規模宅地等の特例を活用できます。

(2)建物内を行き来できる二世帯住宅・区分所有登記あり

適用:NG

同居に近いタイプの二世帯住宅で、区分所有登記がされているパターンです。
建物内を行き来できる建物を区分所有登記することは、原則的にできません。
区分所有登記後に建物内を行き来できるように変更した場合などが、このケースにあたります。

この場合、原則として小規模宅地の特例が適用されません。
ただし、例えば1階に台所がないため日常的に父母が長男と2階で一緒に食事をしているような事実があれば、2階部分も父の居住スペースと認定されます。
2階も父の居住スペースと認定されれば、父の死後に建物全体を相続した長男が特例を利用することができます。

(3)建物内を行き来できない二世帯住宅・区分所有登記なし

適用:OK

建物の内部からはお互いの居住スペースに行き来することができず、完全に分離されたタイプの二世帯住宅です。玄関が別々に設けられており、外部にある階段などで行き来します。

相続法の改正前は、このタイプの二世帯住宅では小規模宅地等の特例を活用できませんでした。
現在では問題なく特例を利用できます。

(4)建物内を行き来できない二世帯住宅・区分所有登記あり

適用:NG

玄関が別で建物内の行き来が不可なタイプの二世帯住宅です。このケースでは父と長男が各自で区分所有登記をしています。
この場合、小規模宅地等の特例の対象外となります。
法改正によって、建物の構造ではなく区分所有登記の状態で特例の適用の可否を判断されるようになったからです。

(5)元の建物に増築した場合・区分所有登記なし

適用:OK

母屋に増築した部分に長男が住んでおり、増築部分単体で生活できる設備がある場合で、建物の内部で往来できないタイプです。
増築部分を含めて1つの建物とみなされるので二世帯住宅にあたります。
区分所有登記がされていないので、小規模宅地等の特例を受けられます。

(6)別々に登記された二棟の建物

適用:NG

玄関が別で、建物の内部で繋がっているタイプです。それぞれ別の建物として登記されています。
この場合、原則的には小規模宅地等の特例を受けられますが、それぞれが別個の建物とみなされた場合には特例を受けられません。

判例によると「社会通念に照らし、構造上外観上および機能上の各面を総合的に判断して一体性が認められる建築物」であれば全体で1つの建物とみなされるので、特例の対象となります。

(7)別々に登記された建物を渡り廊下で繋げた建物

適用:NG

別々に建築されて登記された建物を、後から渡り廊下で繋いだような場合です。
この場合はそれぞれが1棟の建物とされるので、別の建物に住んでいるとみなされます。
「別の建物に住んでいる=同居とみなされない」ため、小規模宅地等の特例を受けることはできません。

(8)三世帯住宅・区分所有登記なし

適用:OK

各世帯に玄関があり、外階段等で繋がっているタイプです。建物内部では繋がっていません。
区分所有登記がないので、三世帯住宅であっても小規模宅地等の特例を受けることが可能です。

長男の子は父の親族なので、三世帯住宅全体について特例の恩恵を受けられます。
仮に3階に住むのが親族以外の者であれば、父と長男の居住スペースの床面積に応じた分しか特例の適用がありません。

(9)建物内を行き来不可・建物の登記自体がない

適用:OK

未登記の建物であれば、区分所有登記自体が存在しないことになります。
区分所有登記がないため、小規模宅地等の特例を受けられます。

まとめ

二世帯住宅で小規模宅地等の特例を受けるには、区分所有登記が1つの鍵となります。
覚えがなくても、建築時に業者に勧められるままに区分所有登記をしている場合もあります。念のため確認しておきましょう。

区分所有の登記をしていた場合でも、「共有登記」や「合併登記」を行うことで特例の適用を受けることができます。
いざという時に慌てないように、専門家と連携しながら対応しておきましょう。

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